『一般社団法人リディラバ』代表理事 安部敏樹さんのリクルート考

『一般社団法人リディラバ』代表理事 安部敏樹さんのリクルート考

「『働く人たちの意志』という見えない体力があるリクルート」に期待すること

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

※リクルートグループ報『かもめ』2023年3月号からの転載記事です

問題の発見・社会化が解決への第一歩に

大学3年生の時にボランティア団体として立ち上げた『リディラバ(Ridilover)』はridiculous things loverの略から作った造語です。「社会課題を、みんなのものに」というミッションを掲げ、誰かの困りごとから、「問題の発見」と「問題の社会化」により、皆で解決できるように「資源を投入」して事業で社会課題を解決することに挑戦してきました。

コロナ禍もあり2年ぶりの開催となった国内最大級の社会課題カンファレンス『リディフェス』に、リクルート サステナビリティ推進室とのご縁で40名以上の従業員の方にご参加いただけて嬉しかったです。

振り返ると、リクルートにはたくさんの影響を受けてきました。就職活動もしていなかった私に、リクルーターとして声をかけてくれたのが、当時の人事部の担当者(現OBOG)。その後、私は大学院に進み、リクルートホールディングス主催のアメリカ横断ワークショップにも参加させてもらいました。

また、ある時、リディラバのメンバーだった学生が当時のリクルート住まいカンパニーの内定者だったご縁から、私たちが学生向けに実施していた社会課題の研修を、部長研修としてアレンジして採用いただくことに。これが我々の法人研修事業の最初のケースとなりました。

また、その参加者だった従業員がリクルートを離れた後にリディラバに入社、最初の出会いだった担当者も人事のプロボノとして参画いただき、事業も会社もリクルートの方々からたくさんの影響を受けてきました。勤め人をしたことのない私にとっては、リクルートの方たちに職業人としての先輩や上司的な役割を果たしてもらったように思います。

新しい価値を生むための「人への投資」と「ハレの場」

リクルートに通底する強い印象は、「新しい価値を生むために人への投資を厭わない」ことや、「ハレの場を大切にして人の情熱を絶やさせない」方法論など。社会課題という重いテーマを扱っていても、課題が生じる社会構造自体を変革するような新しいコンセプトや価値を生み出すことに意識を向けるようにしています。

多様な社会課題の現場と伴走してきた我々だからこそ、課題の悲惨さを理解した上であえて前向きな「ハレの場」を大切にしていきたいと思っています。

企業は意欲と主体性が全て次世代型経営をリード

私は「社会と個人の間に企業は正しく入らないといけない」と考えています。個人だけでは社会は変えられないのですが、個人の思いを束ねる企業が間に入ることで社会変革が実現できる。これが企業の持つ力であり存在意義。一方で理念が濁ると、企業は人を惹きつけることができなくなり存続が難しくなる。

リディラバを立ち上げてからこの14年で、社会と個人は大きく変わったことを実感しています。

リクルートは常に従業員個人の意志を問い、社会を変えていく意気込みにあふれた企業で、多くの人を惹きつけてきた。これまでは情報によって市場を変えることで変革が起こせました。例えば縁故による入社が主流だった時代に、就職情報誌を生み出したことで市場を公正化した。それ自体が大きな社会課題解決だったといえます。

一方で、市場が成熟するに従って、課題解決の残滓(ざんし) を利益に転換するだけの戦略を取ったとしたら、その組織の社会変革の理念や意欲は濁ってしまう。社会課題解決に寄与するパーパス経営が重要だといわれながら、真の成功事例はまだ見当たらないと感じています。多くの企業が様子見のなか「『働く人たちの意志』という数字には見えない体力があるリクルート」に大きな可能性を感じています。

「人の意欲」と「主体性」が企業の全て、可視化できないけれど最も大事なアセットです。リクルートにはそれがあふれているし、引き出す仕組みもある。だからこそ、濁らない理念で、社会課題解決と企業利益が同時に達成できることを証明して欲しいと思います。

これは順序が大切です。既存の市場のなかで儲かりそうで、かつ社会にもいいこと…といった小さい野望ではなく、世界を変えるという大義と野心のもとに新たな価値を創り、市場や経済の仕組みそのものを変えていくことで利益も得ていくチャレンジこそ、リクルートに期待したいと思っています。

登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

安部敏樹(あべ・としき)
株式会社Ridilover 代表取締役/一般社団法人リディラバ 代表理事

1987年生まれ。2009年、東京大学在学中に、社会問題をツアーにして発信・共有するプラットフォーム『リディラバ』を開始。2012年に一般社団法人、翌年に株式会社Ridiloverを設立。2012~2015年度東京大学教養学部にて、1・2年生向けに社会起業の授業を教える。特技はマグロを素手で取ること。
第1回 総務省「NICT起業家甲子園」優勝、「KDDI∞Labo(ムゲンラボ)」第4期 最優秀賞など、受賞多数。2017年、米誌『Forbes(フォーブス)』が選ぶアジアを代表するUー30選出。著書『いつかリーダーになる君たちへ』(日経BP)、『日本につけるクスリ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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