「バーチャル背景」で社風を伝える工夫も!楽天株式会社に学ぶ
2020.8.6
新型コロナウイルス感染症の影響により、中途採用におけるコミュニケーションの在り方が大きく変化。ソーシャルディスタンス確保の観点から、多くの企業が採用活動や研修をオンラインに移行しています。
前回は、PayPay株式会社に緊急事態宣言解除後もWeb面接を導入し続けるメリットを伺いました。
今回は、楽天株式会社で採用をご担当されている小池一馬さんにお話を伺い、採用活動や研修をオンライン化してみて実際に感じたメリットや手応え、課題について教えていただきました。実際に様々な場面で実践している企業の声を聞くと、思ってもみなかった気づきがあるようです。ぜひご参考にしてみてください。
Web面接導入で感じたメリットとは?
Q いつからWeb面接を導入しましたか?
3月下旬には採用セミナーも面接も基本的にオンラインに切り替えていました。新型コロナウイルス感染症の影響が出る以前からWeb会議システムの『Zoom』を使ってWeb面接を行っていましたから、オンラインへの移行には特に抵抗感はなく、「以前よりWeb面接の割合が増えた」という感覚です。
当初、「Web面接だけでは見極めがしづらいのでは」という声も上がっていましたが、始めてみるとその声は消えましたね。まったく問題ありませんでした。応募から内定までのコンバージョンも特段落ちていません。(小池さん)
Q Web面接に移行して、どんな点にメリットを感じていますか?
Web面接はメリットが多く、この先、新型コロナウイルス感染症による影響が収まったとしても、原則Web面接でいいのではないかと考えています。具体的には次のようなメリットを感じています。(小池さん)
面接にかかる工数が減少
応募者が来社されたら、受付まで迎えに行き、面接室へご案内し、終了後はお見送りする――細かなことですが、面接の数が多いので、これらのオペレーションがなくなっただけでもかなり効率化できています。(小池さん)
部屋を確保する必要がなく、時間に追われない
本社オフィスには数十室の面接専用ルームを設けてはいますが、時間帯によっては部屋を確保できないこともありました。また、応募者と話が盛り上がったり、もっと話を聴きたいと思ったりしても、面接室に次の予約が入っていると、部屋を空けるために途中で打ち切らなければならない。Web面接では終了時間にある程度の余裕を持つことができるのがいいですね。(小池さん)
面接日程を調整しやすく、選考期間が短縮
対面での面接よりも時間を柔軟に使えるので、応募者も面接担当者も日程の調整がしやすいです。感覚的には、1次面接の後、2次面接を行うまでの期間を3~4日は短縮できていると思います。(小池さん)
忙しい方にも面接を受けてもらえる
業務が多忙な方、出張が多い方、子どもを保育園に送り迎えしなければならない方など、面接のために来社するのが困難だった方々にも、面接を受けていただきやすくなりました。
以前は応募者のスケジュールとの兼ね合いで20時からスタートすることもありましたが、Web面接移行後は移動時間を省けることもあり、遅くても18時~18時30分にはスタートできています。なお、育児中の方には「お子様を抱っこした状態で面接を受けてもいいですよ」とお伝えすることもあります。(小池さん)
Q Web面接以外に、オンライン化してメリットを感じたことはありますか?
新卒社員が入社式直後から参加する新入社員研修では、意外な効果が表れています。今年の4月は700人が入社し、3カ月間、フルリモート・オンラインで研修を行いました。
すると、全員がひとつの場所に集まってスクリーンに映し出された資料を見ながら研修を受けるよりも、目の前のパソコンのモニターで見る方が「集中できる」、「見直して復習できる」といったポジティブな感想が多く寄せられました。研修期間中のアンケート結果を見ても、リアルな場での研修以上に効果は上がっていたのです。同期入社者同士、『Zoom』で対話もしているので、横のつながりも築けているようです。(小池さん)
Web面接を導入する際の不安や疑問について
Web面接の導入を迷っている人事担当者の皆さまからは、次のような疑問・不安の声が寄せられています。実際にWeb面接をされていて、どう感じていらっしゃるか、伺いました。
Q Web面接では、人柄を見極められないのではないでしょうか?
モニター越しでも人柄は感じられる。不安なら時間・回数を増やしても
当社でも、最初はそのような懸念の声もありました。しかし、実際にWeb面接をしてみると、そんなことはありませんでした。人柄とは自然ににじみ出るものなので、モニター越しでも十分伝わってきます。
ただ、現場から、より深く人柄を知りたいと要望があった場合は面接回数を増やす、あるいは1回あたりの時間を長くするなどで対応しました。
それに応募者は会社の会議室だと緊張しがちですが、自宅という「安心できる空間」で面接を受けるため、素の表情が出やすいのではないでしょうか。(小池さん)
Q Web面接では自社の魅力が伝わりにくく、応募者を惹きつけられないのではないでしょうか?
動画や「メンバーとの対話」で魅力を伝えています
来社いただく場合でもお見せしている資料は、すべて写真や映像に置き換えられるものです。以前から会社案内の動画はありましたので、それを活用しています。
細かな工夫としては、オリジナルの「バーチャル背景」も制作しました。リアルの会議室には、楽天のカルチャーを紹介する“成功の法則”や“ブランドコンセプト”などを掲示しているのですが、それを再現したバーチャル背景をWeb面接時に設定し、社風を伝えています。
また、面接担当者以外のメンバーが応募者と対話する「フォローアップ面談」も設けています。リクルーターが応募者の疑問や相談に応えるほか、配属部門のメンバーと直接話すことで職場の雰囲気を感じてもらいます。現場メンバーとの対話は1対1か1対2で行うことが多いですが、多いときには4人が参加したこともあります。このフォローアップ面談も、オンラインなら日程が調整しやすいですね。(小池さん)
Q 応募者とスムーズに面接できるかどうか不安……
オペレーションスタッフによる事前チェックでトラブルを防ぎます
オペレーションのヘルプスタッフが面接直前に接続状況、音声、映像をチェックしています。事前に、「面接開始10分前にWeb面接室に入ってください」「緊急連絡先をお知らせください」の2点をアナウンスしています。
確かに、音声が聴き取りづらかったり、途中で途切れたりすることもあります。それをカバーするために、「今の発言は伝わらなかったかな」と思ったら、繰り返し話をしたり、理解できているか確認したりするなど、かける言葉を増やすようにしています。(小池さん)
Web面接を続けていくにあたり、今後の課題は?
新型コロナウイルス感染症が拡大する以前から、リファラル採用の強化を図っています。通常なら、社員が友人・知人と話をして、「うちの会社に応募してみないか」と声をかけるわけですが、今は「ちょっと飲みに行こう」と誘いにくい状況ですよね。そのため、リファラル採用活動を含め、オンライン環境でいかに楽天で働くことに興味を持っていただける方々の母集団形成をしていくかが課題として挙がっており、今後アイデアを練っていこうと考えています。(小池さん)
ご協力いただき、有難うございました。
取材日:2020年7月8日