学生の皆さまがいまできること(2022年以降の就職に向けて)

2021.2.2

やみくもにインターンシップに参加する前に、企業選びや働き方の「軸」を考えてみよう

2022年入社の就職活動が始まる3月を前に、冬のインターンシップ・1day仕事体験などに参加しながら最終準備の段階に入る学生も多いことでしょう。オンラインでの参加が多くなるなど、例年とは様相が異なる中、この期間でいかに実り多い経験を積めるのか悩まれている方もいるのではないでしょうか。実際に学生からは今、こんな声が聞かれます。

インターンシップだけで本当に企業の全容が見えるか分からない

インターンシップには参加した方がよいと聞くが、今年はオンライン型のものが多く、それらに参加して意味があるのかと疑問に思い参加していないが、参加しないことにも不安を感じる

就職のために自身の能力を向上(資格取得や、プログラミングスキル取得)させた方がいいのか、インターンに参加した方がいいのかが分からない

新型コロナウイルス禍では、就職活動準備も例年とは違い、オンラインでのインターンシップ・1day仕事体験の開催が多くなっています。オンライン化が進み、移動にかかる時間やコストを削減できることで、より視野を広げて多くの企業のプログラムに参加できる可能性はあります。しかし、「数多く体験しても自分が何をやりたいのか分からない」「会社説明会のような簡易的なものが多くて特徴がつかみ取れない」など本質的な不安を感じる声も多く聞かれます。

せっかく大切な時間を使って参加するインターンシップ・1day仕事体験だからこそ、有効に活用したいですよね。『リクナビ就職エージェント』のキャリアアドバイザー佐藤光紘と濱田千佳は、就職活動準備に励む学生に対して、「自分の軸を見つけること」「自分の軸を仮置きして準備活動に挑むこと」が重要だと説きます。就職活動が始まる3月までの約2カ月間を有意義に過ごせるよう、自分の「軸」を見つけ出し「仮置き」する方法や意義について解説します。

  • 自分の「軸」って何?「仮置き」に必要な5つの視点
  • 「軸」って具体的にどうやって見つけるの?
  • 「軸」がある就職活動とない就職活動はどう違うのか

自分の「軸」って何?「仮置き」に必要な5つの視点

「軸」とは、就職先を決定する上で、自分の中に潜在的に眠っている「就職先の企業を選択する上で、自分自身が何を大切にしたいのか」を判断する要素を指します。大事なのは、まずは自分の中で軸を定めてみることです。私たちはそれを「仮置き」と呼んでいます。

なぜ「仮」なのか。それは、最初から軸を完全に把握している必要はないからです。

インターンシップ・1day仕事体験に参加してみたり、企業研究やOBOG訪問などをしてみたりすることでアップデートしていき、これまで自分では気づかなかった本当の「軸」にたどり着けばよいのです。またその軸は、目先の就職活動での企業選びだけでなく、就職して社会に出てからも働く上での指針として磨き続けることができます。

それではまず、「軸」を構成する「5つの視点」を見ていきましょう。

「軸」を考えるための5つの視点

「職場の環境・風土(Culture)」や「キャリアの志向(Career)」、「条件(Condition)」は、分かりやすい視点のため、すぐに自分の中で答えがでてくるのではないでしょうか。多くの学生は、これら3つの視点ばかりに着目しがちですが(もちろんこれらの視点も大変重要です)、社会に出て働く上で本質的に必要なのは、「どのような事業を志望しているのか」「自分の強みをどのような業務内容でどう生かせるのか」という2つの視点なのです。

自分は「何がやりたくて」、そのやりたいことを達成するために「何ができるのか」。自分が「本質的にやりたい仕事(Will)」や、「自分の役割を認識する(Can)」ことを掘り出していくことが肝要なのです。

こうして、まずは自分の中の「軸」を導き出せても、「私は、僕は、この軸で絶対に会社を選ぶんだ!!」と、固執する必要はありません。インターンシップ・1day仕事体験や会社説明会など、さまざまな経験を重ねることで軸はアップデートされ、より自分の中で鮮明化していきます。まず重要なのは、現時点での「軸」を明らかにして「仮置き」することなのです。

「仮置き」することで、

  • 「自分の軸に合った事業内容だったな」
  • 「軸にはなかったけど事業内容に興味があったな。なぜ興味を持てたのかもう一度軸を考えてみよう」

などと内省を深め、自己理解を促進することができるのです。

「軸」って具体的にどうやって見つけるの?

5つの視点をご理解いただけたところで、実際に「軸」を仮置きしてみましょう。「軸」の探し方にはさまざまな方法があります。モチベーショングラフを作成したり、人生年表を作り幼少期から振り返ったりすることで、自分が何を大切に生きてきたのかを見いだしていきます。『リクナビ就職エージェント』では、記憶の中にまだ鮮明に残っているであろう、大学時代や高校時代にフォーカスして思い出してほしいと問いかけています。

経験の棚卸ワーク:あなたが前向きに取り組めた経験とは何ですか?

大学時代や高校時代を思い出していただき、「自分が前向きに取り組めた経験」や、「やりがいを感じることができた経験」などを中心に詳細を書き出し、一番前向きに取り組めた経験を順位付けしていきます。同時に、書き出した経験の中で、自身のモチベーションが最も上がったポイントを特定していきます。それにより、経験の中に隠れているモチベーションの要因や、生かされた持ち味を掘り出していくのです。

経験の棚卸ワークサムネイル
経験の棚卸ワークシート

実際のキャリアアドバイスでは、面談を実施する前に、「経験の棚卸ワーク」と題し、約10日間から2週間程度かけてそれらの経験を自身で振り返っていただくようにしています。

「何が興味を駆り立てたのか」「やりがいをもって活動できたのはなぜか」という視点から複数の経験を振り返ることで、自分が夢中になれるポイントや、強みを具体的に特定していくことができます。

「楽しく、やりがいを感じた、プラスとなったこと」、逆に「ストレスになり、苦手だと感じた、マイナスとなったこと」を特定

いよいよ最後のステップです。この棚卸ワークで経験を開いたら、その各々の経験の中で「楽しく、やりがいを感じた、プラスとなったこと」、そして逆に「ストレスになり、苦手だと感じた、マイナスとなったこと」を特定していきます。自分が主体的になることができた経験のプラス面とマイナス面を把握していき、自分なりに言語化していくのです。

その上で、ご家族や友人、キャリアセンターの方やキャリアアドバイザーなどとぜひ会話をしてみてください。社会に出て「やりたいこと」、それに対して自分が「貢献していけること」がより鮮明化されていきます。このやりがいと強みに、職場の環境・風土、キャリアの志向性、条件を追加して、自分だけの「軸」を導き出していきましょう。

「軸」がある就職活動とない就職活動はどう違うのか

「軸」がある就職活動とない就職活動。具体的にはどのような差が生じていくのでしょうか。

「軸」がある就職活動とない就職活動の違い

「軸」がない就職活動では、企業説明会やインターンシップなども参加はするけれど「なんとなく」参加してしまうため、主体性に欠けてしまい吸収すべき情報が定着せずに終わってしまいます。その後、選考が進み面接などにおいても、自分の持ち味をどう生かせるのか、という軸が明確に分かっていないため、志望動機が思いつかないなどの状況に陥ってしまいがちです。

そのような状態では、仮に内定を獲得して入社しても、入社後に「仕事の内容が合わない」や「やりたいと思ったことができない」、「こんなはずではなかった」と後悔してしまうこともあり得るでしょう。

一方で、自分の軸を持って就職活動に臨むことができれば、自分の軸を元に強みがどのように生きるのか、という観点で説明会を聞くことが出来るため、環境や条件面ではなく、自分自身の持ち味を生かせること、興味関心が高いこと、そして成長のために切磋琢磨できることなど、自分の「Will(意思)」や「Can(できること)」に目を向けた就職活動を意識することができるのです。

また、「今まで見てきていない業界だけど自分が仮置きした軸に合いそうだな」、「今の軸には合わないけどこれには興味があるな」など、軸があることで自分の視野を広げることもできます。この繰り返しで、軸をアップデートしながらより深い内省ができるようになり、自己理解が深まるのです。