テレワーク下でチェックしたい、生き生き働く8つの要素
2020.6.4
新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、毎日を生き生きと働くことに難しさを感じる人が多くいらっしゃると思います。特に、テレワークなど、新しい働き方を試行錯誤する中で、ストレスをためないためにも、自分の「生き生き働くバランス」をどう整えればよいかは、「働く」すべての人にとって大切なことだと思います。ここでは、リクルートワークス研究所の研究プロジェクトで分かった「生き生き働くために必要な8つの要素」を知ることで、テレワーク環境下で「生き生き働く」ヒントにしていただけるよう、リクルートキャリアHR統括編集長の藤井薫がお届けします。
※この記事は、リクルートワークス研究所の“「働く×生き生き」を科学するプロジェクト”プロジェクトリーダーである辰巳哲子主任研究員の協力を得て、作成いたしました。
生き生き働くために必要な8つの要素とは
リクルートワークス研究所の“「働く×生き生き」を科学するプロジェクト”で行った、全国1万人のアンケート調査から、働く個人が「生き生き働く」ために必要な8つの要素があることが分かりました。
(要素1)活力実感 |
自分に任された仕事に没頭し、熱意ある取り組みを通じて活力を得ている |
(要素2)強みの認知 |
これまでの仕事を通じて得た経験や専門性を、自分の強みとして自覚している |
(要素3)職務満足 |
責任ある仕事への取り組みを通じて、周囲からの信頼と会社への誇りを感じている |
(要素4)有意味感 |
取り組んでいる仕事の意味や価値を理解しており、自分自身の成長を実感している |
(要素5)オーナーシップ |
仕事のプロセスを理解し、進め方やペースを自分で考えながら効率的に取り組んでいる |
(要素6)居場所 |
周囲のメンバーからの期待を理解し、職場の一員としての信頼と安心を感じている |
(要素7)持ち味発揮 |
現在の仕事の内容とやりたいことが合っており、自分らしく強みを発揮できている |
(要素8)多忙感 |
周囲のメンバーや仕事の状況にかかわらず、いつも全力で働くことに充実を感じている |
(要素1)活力実感 |
(要素2)強みの認知 |
(要素3)職務満足 |
(要素4)有意味感 |
(要素5)オーナーシップ |
(要素6)居場所 |
(要素7)持ち味発揮 |
(要素8)多忙感 |
新しい働き方というと、労働時間や働く場所、オンライン環境といった目に見える条件が語られがちですが、上記で示すように、個人が「生き生き働くために必要な要素」は、自分の価値観に合った働き方を新たに発見することや、周囲の仲間との共有や信頼関係といった目に見えない条件を明らかにすることが大切です。また、これら8つの要素は、人によって重視する要素のバランスは異なり、また、同じ人であっても状況に応じて変化することがわかっています。
Step1
自分の価値観にあった働き方を可視化する
ワークシートを使い、自分の「生き生き働く」要素を知る
私たちは普段、「自分がどういう状態で働いているときに、生き生きとしているのか」を考える機会は少ないと思います。まずは、自分自身が真に求める働き方、自分に合った仕事の進め方が何なのかを明確にしてみましょう。自分はどの要素を重視するのか、それは満たされているのかが明確になれば、自らの環境の改善に努めるなど、「自分の価値観に合った働き方」、つまり「生き生き働く」状態に近づけるでしょう。まず、あなたが今大事にしている「生き生き働く」要素を考えてみましょう。以下ワークシートの手順に沿って回答すると、自分がどの要素をどの程度重視しているのかが見えてきます。
※ワークシートのPDFはこちらからダウンロードできます。
WORK SHEET 自身の「生き生き働く」要素を知る (422KB)
Step2
重視したい要素に応じて、自ら環境をマネジメントする
「生き生き働く」要素が現在満たされていない場合、どうすれば、自分の価値観に合う働き方に変えることができるでしょうか。自分なりの「生き生き働く」を実現している4人のエピソードをご紹介します。
Column1 参考事例 「生き生き働く」ために自分でできること
「持ち味発揮」要素を活かした
顧客に喜んでもらえている状態、チームで楽しみながらプロジェクトを進めることに 「生き生き働く」イメージを持つEさん。以前、顧客先の非協力的なマネジャーを障壁に感じたことがありました。しかし、コミュニケーションやヒアリングが楽しいという 「持ち味発揮」によって、当のマネジャーに集中的にヒアリングを行いプロジェクトヘの巻き込みに成功したのです。最終的には一番の協力者になってもらえ、チームと顧客の一体感あるプロジェクトになりました。
(Eさん:30代男性、業務改革コンサルティング)
「オーナーシップ」要素を取り戻した
就職して以来、オフィスの設備系の職種で、予算取りのアプローチから工事完了後の請求書作成までの現場業務を一人でやってきたFさん。自分に合っていると感じていましたが、会社が大きくなり自身も経験を積むにつれ、マネジメント業務が主になり、仕事がつまらなくなってしまいました。そこで、再び自分で企画・実行してフィードバックが得られるような「オーナーシップ」のある仕事につきたいと考え、他部署の部長にコンタクトを取り、人事異動をかなえました。
(Fさん:50代男性、IT系自営業)
「居場所感」要素を得た
自分だからこそできる仕事や一歩踏み込んで人の支えになる仕事にやりがいを感じるGさん。前職では、自社サービスの効果的な使い方を顧客企業に啓蒙する部門にいましたが、オンラインチャットのみでのやり取りであったため、期待に応えられている実感が得られず「居場所感」がありませんでした。「直接人とコミュニケーションが取れる仕事をしたい」と周囲に伝え続け、現在は学生に対面でインタビューしフィードバックをもらうという、最もユーザーに近い部門へ異動しました。
(Gさん:30代女性、学生向けマーケティング)
「活力実感」要素を得た
プロサッカー選手を目指す子どもたちを指導していたころは、「この子たちの夢をつぶしてはいけない」「勝たないと自分は評価されない」という重圧があり、仕事を心から楽しめていなかったというHさん。そんなときに、技術はなくても純粋にサッカーを楽しむ自閉症の男の子と出会い、「この子とサッカーをしたら楽しそうだ」と、障がいのある人が通えるサッカークラブをつくりました。そこが、自身もありのままでいられる居場所になり、「活力実感」要素が高まりました。
(Hさん:40代男性、サッカークラブ運営)
Column2 「生き生き働く」要素の掘り下げ方
上記でご紹介したワークシートを使うと、自分が最も重視する要素が明らかになります。では、その要素は今の仕事で十分満たされているでしょうか? もし満たされていると感じたら、重視する要素を具体化することで、自分の価値観に合う働き方の実現方法が見えてくるかもしれません。参考に、いくつかのキャリアアドバイスの事例をご紹介します。
活力実感を掘り下げる→過去の経験を振り返る
社会人になる前の経験に「生き生き働く」の原点が眠っていることがあります。例えば学生時代、団体競技の部長として情熱を傾けていたという人は、(1)一人で活動するよりもチームをゴールに向けてまとめること、(2)自分で目標を立てるよりも最初からゴール設定があること、(3)ゴールのために一生懸命頑張ること、などから「活力実感」を満たせる可能性があります。
- 自分に質問してみましょう
過去、私はどのようなことに集中していましたか? どんな人といるときの自分が好きでしたか? そのときの自分はどんな行動をしていましたか? そのときに得意だったことを、今の仕事で活かす場面はありますか?
居場所感を掘り下げる→要素を分解する
居場所感は多くの場合、「誰かの役に立っている」という貢献感にも置き換えられます。その貢献の仕方は一様ではありません。例えば 「仕掛け型」と「受け止め型」の違いがあります。運送ドライバーが顧客ニーズを聞き出し新たな提案をする、小売店スーパーバイザーが天候急変を見越して仕入れ変更を提案するなど、自分が動いて相手に変化を起こすのは「仕掛け型」です。一方、警察官が道に迷った人に道案内をする、コールセンターオペレーターが製品の不具合を伝える消費者の問題を解決するなど、求めに応じて貢献するのは「受け止め型」です。
- 自分に質問してみましょう
私は、仕事で誰にどのような方法で貢献できると喜びを感じますか?
持ち味発揮を掘り下げる→サブの仕事経験にも注目してみる
業務におけるサブの内容に着目してみましょう。例えば教師は、メインの教える仕事のほか、進路相談、クラス担任、学生募集など多様な役割を担い、1対1のマネジメント、1対多数のマネジメント、戦略立案など異なるスキルを持っています。運送ドライバーの場合は、車両を運転して荷物を届けるメイン業務のほか、効率のよい配送順を考える、お得意先ニーズに気づき受注につなげるなど、工程管理や顧客サービススキルも必要になります。そこに自分の持ち味があるかもしれません。
- 自分に質問してみましょう
私にはどのようなサブの仕事があるでしょうか? サブの仕事のどの部分を楽しんでいますか?
これらの方法は、有意味感やオーナーシップなど、ほかの要素を掘り下げる際にも応用できます。
自分が重視する要素の中身を具体化すると、それが満たされていない場合に、どうすれば満たせるのか自分にできることを考えやすくなるのではないでしょうか。
いかがだったでしょうか。8つの要素で、自分が大事にする価値観を可視化する。自分の内側をじっくり見つめる。そのことこそ、自分らしく「生き生き働く」チカラになると思います。テレワークなどの新しい働き方を「自分らしく」「生き生き」と彩る。その契機になれば幸いです。