Case07
量子アニーリングによる、
まだここにない未来のデータを最適化
Case07
量子アニーリングによる、
まだここにない未来のデータを最適化
Case07
量子アニーリングによる、
まだここにない未来のデータを最適化
Case07
量子アニーリングによる、
まだここにない未来のデータを最適化
01Outline
事例のアウトライン
未来のカスタマーの行動をデータで示すことは難しく、例えば、未来のカスタマーの行動に沿ったTVCM出稿の最適化をしようとしても、未来のデータを入手することはできません。そこで、過去のデータから予測した値に基づいて最適化を行うことになります。しかし、予測値と実際に観測される値に乖離が出てしまうことが課題でした。
この課題への対処として、最適化モデルを工夫する方法もありますが、モデルが複雑化し実運用が難しいという問題も考えられます。
本案件では、量子アニーリングを用いることで、モデルのチューニングなしに未来のデータに対しても高い精度で最適化できる可能性を見出すことができました。この知見をTVCMの出稿案件に適用することで、従来の出稿方法よりも評価指標(全種類のTVCMを視聴した視聴者数)を92%上昇させることに成功しました。
02Issue
直面していた課題
制約条件のもとで目的の指標を最大化する手法である数理最適化、これはリクルート社内でも頻繁に使われる手法です。社内では予測値に基づいた最適化をする場合が多いですが、予測値と実測値の乖離により、思ったような結果が得られないケースも散見されます。特にクーポン最適化やメール配信の最適化でよく起こるケースです。
この問題への対処方法として、機械学習の予測精度向上が挙げられます。予測精度向上を考えましたが、限界がありました。そこで、最適化モデルで対処できるのではないかと考え、この課題にチャレンジしたのが本プロジェクトのテーマです。
03Solution
実現した解決策
今回チャレンジしたのがTVCM出稿の最適化です。一人ひとりの視聴者に、より多くの種類のTVCM素材が分配される状態を目指しました。
しかし、視聴者が何のテレビ番組を視聴するかはまさに「未来のデータ」で、予測は困難です。そういった予測値に誤差が含まれていても最適化の性能に大きな影響が出ないことを「ロバスト性が高い」と表現します。一般的にロバスト性が高いとはどのような状態かというと、予測値に誤差が含まれていても最適化の性能があまり変わらない下記図の右のオレンジの点のような状態を言います。一方ロバスト性が低いというのは、予測値の誤差で大きく最適化の性能が変わる下記図の黄緑色の点のような状態を指します。
このロバスト性が高い状況がアニーリングで得られやすい解と似ているのではと考え、専用ハードウェアであるアニーリングマシンで解くことにしました。しかし、今回のように制約条件が大量にある問題は、本来アニーリングマシンで解くことが困難です。そこで、当時D-Waveから出たばかりのCQMと呼ばれる、GPUと量子アニーリングのハイブリッドアニーリングマシンが今回の問題にフィットすると考え、適用を試みました。
04Technical Background
技術的な背景
大前提として、大きく2つのロバスト最適化の工夫を試みました。
まず1つ目は、安定して達成したい閾値を超えるよう上げ幅αをプラスして算出しました。しかし、この適切な上げ幅αを算出することが困難でした。2つ目は、視聴確立の不確実性をベイズモデルで算出し、不確実性を数値として表し、正則化項として導入する試みです。こちらも、1つ目と同様パラメータの調整が困難で、結果的に導入は断念しました。
そこで、アニーリングによるロバスト最適化を試みてみることにしました。そもそもアニーリングとは、乱雑性の高い状態から徐々に乱雑性の低い状態を探すもの。ここで重要になるパラメータが、実は「温度」なのです。アニーリングの解における様々な研究がありますが、そのひとつにFreeze outという概念があります。下記の図のように温度が低くなると谷ができ、裾野の広い谷により多くの状態が入り込み、ロバスト最適な解が得られやすいのです。そのため、今回のような複雑な最適化に、量子アニーリングを用いることが適切ではないかという見解にたどり着くことができました。
※アニーリングとは乱雑性の高い状態から徐々に乱雑性の低い状態を探すものであり、そこにおける重要なパラメータがアニーリングの温度である。
05Outcome
得られた成果
全種類のTVCM素材を見た視聴者数は、従来の手法と比べ92%も増加しました。また、事業が行ったTVCMに関する広告効果アンケートの結果では、一定の広告効果を高めることにつながったという事実が分かりました。この成果はTVCM最適化のみならず、メールやクーポン、レコメンドなど多くのリクルートの施策に対して適用できる可能性を持っています。アニーリングによって成果の向上を担い、リクルート全体の成長に貢献していく。そのような研究へのチャレンジを続けていきたいと思います。
事例紹介Case Study
機械学習モデルによる
予測値を利用し、カスタマーの
新ジャンル利用数を最大化
Case01 データサイエンティスト × ビューティー
飲食店の調理順序を最適化し
料理の提供遅れを防止
Case02 データサイエンティスト × 業務・経営支援
対話型チャットボットで実現する
旅行代理店のような検索体験
Case03 機械学習エンジニア × 旅行
dbt™CLIデータ開発に
自動テストを導入
Case04 アナリティクスエンジニア × 自動車
大規模機械学習システムを守る
自動データバリデーション
Case05 データエンジニア × 住まい
複数領域の横断プロジェクトの
活用を目指し、活用フェーズに応じた
マルチテナント展開方式の確立
Case06 データエンジニア × 事業領域横断