PEOPLE ワークス研究所 研究員/アナリスト社員インタビュー
リクルートのHR事業が持つ
リソースを味方にしながら、
中立性、自律性高く研究ができる環境。
愛と情熱を持って「働く」を探求したい。
研究員/アナリスト
リクルートワークス研究所
調査設計・解析センター
孫 亜文
Yawen SUN
「受託調査・研究はしない」。
中立性、自律性を重んじる研究姿勢に惹かれて。
どのような魅力と可能性を感じて、リクルートを選んだのでしょうか?
もともと私は、社会に存在するさまざまな格差に興味があって研究の道に進みました。「格差を研究したいのなら、労働に関する格差の実態や背景を取り扱う労働経済学を専門にしてみてはどうか」。そんなアドバイスもあって、労働をテーマに扱うように。大学の研究所でのアシスタントやOECD(経済協力開発機構)でのインターンなどで、労働に関わる調査・研究を行っていました。大学院ではパネルデータを使った研究を行い、修士論文と博士論文を執筆していたのですが、その経験に注目して声をかけてくれたのがリクルートワークス研究所です。
実は、紹介されるまで民間の研究機関に就職することは全く考えていませんでした。というのも、私は民間の研究機関に漠然とした先入観を抱いていて、「短期的な成果を求められすぎて、研究員が活躍し辛い環境なのではないか」「利益を生み出すために、行政や他の企業・団体からの受託研究・調査をしなければならず、自分のやりたい研究ができないのではないか」というイメージがあったからです。
しかし、実際に面接で話を聞いてみるとイメージは一変しました。一番印象的だったのは、「受託調査・研究は一切しない」と言われたこと。リクルートワークス研究所は「一人ひとりが生き生きと働ける次世代社会を創造する」ことをミッションに掲げ、中立的立場で、ミッション実現に必要な研究・提言をすることを大切にしているため、とのことでした。自律性の高い研究ができる環境だと感じたのと同時に、そんな研究機関が民間にあることに驚きました。しかも、リクルートワークス研究所が扱っているのは、私が研究してきたテーマでもある労働。人や組織の問題に情熱を持って取り組んでいる人たちだと分かり、ここでなら自分のやりたい研究を思う存分できるのではないかと感じて入社を決意しました。
調査や研究の実務にとどまらず、
社会での活用を視野に、責任を持って関わる。
仕事内容について教えてください。
リクルートワークス研究所では、労働政策、労働市場、組織・人事、個人のキャリア・学び、キャリア教育…といったさまざまな研究領域があり、私の主な研究領域は労働市場です。その中でも入社時から現在までメインで担当しているのが、リクルートワークス研究所の基幹調査の一つである「全国就業実態パネル調査(略称:JPSED)」です。JPSEDは全国約5万人の同一個人の就業実態を毎年追跡調査するもので、有識者で組織した調査設計委員会と協議しながら質の高い調査設計を行っているのが特徴。私はこのJPSEDに2015年の立ち上げから関わっています。具体的な業務としては、調査内容の設計・実査に伴う運営業務・データ集計はもちろん、その後の分析・示唆だし・提言なども一気通貫して担当。調査データをもとに日本の働き方の変化や現在のトレンドを5つの指標で評価する「Works Index」というレポートの発行も毎年行っています。
さらに、自分が手掛けた調査・研究データを広く社会で活用してもらえるように、いわゆる広報活動にも主体的に携わっていくのが私たちのやり方です。JPSEDで用いているパネル調査という手法は、アメリカでは1970年代から活用されていますが、日本ではコストの問題などでほとんど実施されていなかった歴史があります。そのためJPSEDを立ち上げた際は、リクルートワークス研究所で大規模パネル調査をはじめたことや、信頼性の高いデータであることを広く知っていただく必要がありました。
リクルート社内のHR事業で事業戦略の検討や顧客向けの参考資料として自由に使えるように情報公開していくのはもちろん、社外でも大学などの学術研究機関で自由に活用できるよう、東京大学社会科学研究所のデータアーカイブセンターに毎年寄託しています。また、官公庁から毎年発表されている“白書”などでも活用していただくべく、各省庁にうかがって調査結果を紹介してまわったこともあります。このように調査や研究の実務にとどまらず、実際に活用していただくところまで責任をもって動けるのも、リクルートワークス研究所における特徴の一つだと思いますね。
国内有数のHR事業を保有する会社だから、
机上の空論ではなく、地に足のついた研究ができる。
仕事のやりがいについて教えてください。
一つ目は、広く社会で活用されること。単に調査・研究の実務だけではなく広報活動にも関わっているからこそ、自分の手掛けたものが社会で活用されることは大きな喜びに繋がります。例えば、JPSEDのデータは内閣府「令和4年度年次経済財政報告」、通称「経済財政白書」や厚生労働省「令和4年版労働経済の分析」、通称「労働経済白書」でも使用されています。白書で活用されることをひとつの目標にして活動していたので、何ページにもわたってJPSEDのデータを使った分析が掲載されているのを目にしたときは、これまで粘り強く活動を続けてきた甲斐があったと思いましたね。
リクルートワークス研究所がこのように社会と関わることができるのは、HR事業を持つリクルートの研究機関であるということも大きく影響していると感じます。私たちの仕事は、もちろん調査やインタビューをもとにするとはいえ、研究者という労働市場から一歩引いた立場であるため、理論としては正しいかもしれないが実際の労働の現場では通用しない「机上の空論」になってしまう怖さと常に背中合わせです。そのため、事業を通して世の中のさまざまな企業や働く人々と常に対話をしている人が社内にいるのは、リクルートワークス研究所の大きなアドバンテージ。しかも、リクルートは日本の労働市場にさまざまなサービスを投入し、新しい価値の創造に貢献してきた歴史があります。そのように労働市場に深く入り込んでいる仲間からマーケットのリアルな実情を踏まえたアドバイスをもらうことで地に足のついた研究ができ、より社会で使われやすいものにできるのだと思っています。
二つ目は、自分のやりたいことを実現していけること。リクルートには「圧倒的な当事者意識」を持って仕事に向き合うというカルチャーがあり、その姿勢は私たち研究員にも共通して根付いていると感じます。ワークス研究所では、受託調査や受託研究ではなく自分たちの意思で研究テーマを設定していくからこそ、働く人の当事者意識が高く、こだわりや信念を持って研究に取り組んでいる人が多い。そんな人たちに囲まれて、私自身も自分が手掛ける調査や研究に、愛を持って向き合い続けられています。もちろん自分のやりたいことを実現するには努力も根気も必要です。それでも、少しでも世の中の雇用や労働を良くしたいという強い信念や愛を持って向き合い続け、困難があっても乗り越えて実現できたときには、大きなやりがいを感じますね。
自分の調査・研究で社会に変化の兆しを創る。
目指すは、「ドミノの一枚目」を倒すこと。
これまでの経験の中で印象に残っているエピソードを教えてください。
2020~2021年にかけて社会人の学び直しの重要性を発信していった「リスキリングプロジェクト」が印象深いです。「DXの必要性が強く叫ばれる時代に突入し、企業は人的資源戦略を変える必要があるのではないか」、という課題感からプロジェクトはスタート。DX人材を外部から獲得していくことが非常に困難な現在の環境下で企業はどうするのか、といった課題に対して、自社の従業員の学び直しを進める方法を解決策の一つとして発信していきました。このプロジェクトの活動を通して私たちが発信し続けてきたのが、当時は耳馴染みがなかった「リスキリング」という用語です。働きながら新たなスキルを獲得すること、転職などに限らず社内で新たな経験を積むことも含めた「リスキリング」の重要性を繰り返し訴え続けました。そうした活動が実を結んだのか、今では雇用や労働をテーマにした場では「リスキリング」が当たり前に使われるキーワードに。企業が実際に動きだすのはまた次のステップですが、言葉や考え方が浸透していくことが、実現に繋がる最初の第一歩です。リクルートワークス研究所が提起することの影響力を改めて実感した出来事でした。
「リスキリング」が社会で徐々に広まっていったように、リクルートワークス研究所では「ドミノの一枚目を倒せるようなプロジェクトにしよう」とよく言われます。リクルートワークス研究所はあくまでも中立的な立場の研究機関であり、プロダクトを通じて直接世の中に影響を与えるような立場にはありません。けれど、少しでも世の中が良い方向に変わってほしいと純粋に願う気持ちは、リクルートで事業やプロダクトを動かす人たちと同じです。だからこそ、自分たちの提起したことによってさまざまな人が気づきや学びを得て、仕事や働き方や組織が少しずつ変わっていくきっかけになれることを目指しています。
「人と組織をより良くする」という目的のもと、
“半歩先”の研究に取り組みたい。
リクルートで働く魅力と、今後の目標について教えてください。
リクルートで良かったと感じるのは、働く環境の良さですね。大学院にいたころは、会社員として研究に携わる場合、働き方にもさまざまな制限が生まれるだろう、と少し窮屈な印象がありました。しかし、リクルートは全社的に柔軟な働き方を実践している企業。私たち研究員も時間や場所にとらわれない働き方を行っており、研究員の中には東京と地方の二拠点生活をしている人もいます。私自身も柔軟な働き方ができていますし、しっかり休めるからこそ、日中は勤務に集中して仕事を進めることができると感じています。
そうした環境のもと、2022年10月からは「労働移動」をテーマにした新たなプロジェクトが始動しました。このテーマは私が起案し採択されたもので、はじめてプロジェクトリーダーを務めます。起案前にはいろんな人と対話を繰り返して何度もテーマを練り直し、さまざまな観点で検討し尽くしました。その後、研究者それぞれが取り組みたいテーマを持ち寄る共有会で議論した結果、プロジェクトの実現が決まりました。
このテーマを私が設定した理由は、コロナ禍を経て新たな社会に突入しようとしている今こそ、労働市場の本筋でもある転職を含めた労働移動という大きなテーマに真正面から向き合う必要があるのではないかと思ったからです。職場や仕事を変えることでキャリアや収入を高めていく人もいれば、下がってしまう人もいる。その差はなぜ生まれるのか、私個人が人生を通して向き合っていきたい「格差」とも関連するものです。
まずは1年、やれることは精一杯取り組むものの、このテーマは1年で結論が出せるほど生半可なものではありません。中長期でじっくり取り組み、少し未来の社会でトレンドとなれるような研究にしていきたいです。研究しつくされたテーマで同じようなことを提言しても意味がありませんし、現実から乖離した夢物語では社会の共感を得られません。自分の知的好奇心に従いつつも、社会と密接した半歩先の研究を続けていくこと。それが、今の私が目指す姿ですし、リクルートワークス研究所なら実現できると思っています。
記載内容は取材当時のものです。