中国・東南アジア・インドの求人・求職者動向レポート 2020年1-3月期
2020年04月28日
株式会社リクルート
その他
株式会社リクルートホールディングスのグループ会社であり、アジアを中心に人材紹介事業を展開するRGF International Recruitment Holdings Limited(本社:香港、 CEO:中重宏基)は、このたび、2020年1-3月期の中国・東南アジア・インドにおける日系企業を中心とした求人・求職者の動向をまとめました。
中国大陸
新型コロナウイルスの影響を受け、採用市場全体が停滞。一方IT・通信領域は影響が限定的。
総経理
木村 秀之(きむら ひでゆき)
木村 秀之(きむら ひでゆき)
- 当社で取り扱う日系企業を中心とした1-3月期の求人案件数は、前年同期比で減少。新型コロナウイルスの感染拡大によって経済が停滞し、先行き不安が拡大したことから、企業の採用意欲だけでなく、求職者の転職活動も制限され、採用市場は大幅に冷え込んだ。感染の危機的状況は脱しつつある中国だが、経済や採用市場が感染拡大前の水準に戻るにはまだ時間がかかるだろう。
- 業界別には、製造業や建築、不動産分野での採用活動が停滞するなかで、技術系人材の人手不足は継続しており、 IT・通信といったテクノロジー分野での採用活動への影響は限定的だった。また、経済状況に左右されにくい製薬や医療機器業界の採用需要は逆風のなかでも安定している。
- 3月以降、前職で非日系企業に勤めていたという求職者を中心に、経済停滞による失業から再就職先を探すケースが増え始めている。一方、自発的に転職を考える求職者は、現在の状況を踏まえて活動に慎重になっているため、全体として求職者が増加しているという状況ではない。
【転職事例】EHS(環境・労働安全衛生)管理(現地人材)/日系・自動車企業/20代/約21万中国人民元(年収)
香港
抗議運動や新型コロナウイルスの影響を受けて企業の採用の動きが鈍化。
ゼネラル・マネージャー
細田 裕子(ほそだ ゆうこ)
細田 裕子(ほそだ ゆうこ)
- 香港では、1月半ばから新型コロナウイルスの影響が広がった。2000年代初頭のSARSの経験や、昨年から続く抗議運動対策等もあり、多くの企業で在宅勤務や時差通勤などがスピーディに行われた一方、不急の採用活動はペンディングとなることが多く、転職市場は年初から滞った。結果、当社1-3月の求人案件数は前年同時期と比べ減少した。
- 日本人求職者については、採用活動のための動きが取りづらい状況が続いている。新型コロナウイルスの影響で、外国人へのビザ発給や渡航後の待機期間等さまざまな環境変化があり、現地在住者や、配偶者の都合での香港赴任等以外は日本人求職者の動きはほとんどみられなかった。
- 香港は、月単位での労働契約を行うケースが多いため、特に外国人観光客向けの小売業や観光業を中心に、新型コロナウイルスの影響による雇い止めなどで再就職先探しに動く求職者が複数みられた。
- 一方、経理、財務関連職など、企業の財政管理にまつわる職種においてメンバーレベルからマネジメントレベルまでの求人案件が微増。事業を行う環境変化が大きいなかで、企業の体制を整えなおそうという需要がみえる。
【転職事例】経理(現地人材)/日系・メーカー/20代/約19.5万香港ドル(年収)
インド
昨年から続く景気後退に加え、新型コロナウイルスの影響を受け自動車関連業界が停滞。一方IT・医療・農業は堅調。
カントリー・マネージャー
坂本 智一(さかもと ともかず)
坂本 智一(さかもと ともかず)
- インドでは例年1-3月は昇給時期ということもあり、求人案件数・転職者数ともに増加する傾向にあるが、今年は昨年からの自動車産業等を中心とした景気後退の影響もあり、例年に比べて求人案件数・求職者数ともに減少傾向。インド経済における新型コロナウイルスの影響は3月25日に発令されたロックダウン(外出禁止・工場ストップ)のタイミングから出始めている。
- 当社で取り扱う日系企業を業界別に見ると、インド国内の景気減速の影響を受けない、海外向けの仕事をしているIT企業等では採用需要が高い状態が続いた。IT 関連のR&Dセンターの立ち上げや、ITエンジニアチームの拡大等がバンガロールやチェンナイ等の地域を中心に盛ん。また、その他の業界では、医療や農業分野が景気の影響を受けず、堅調に求人案件数が増加している。昨年進出が加速した小売、食品・飲食等の企業でも高い採用意欲がみられたが、4月以降はロックダウンの影響を受ける可能性が大きい。
- 年始から新型コロナウイルスの影響で日本人向け求人案件数は減少傾向にあるが、日本人求職者の新規登録数は現状大きな影響を受けておらず例年通り。ただ転職希望時期が半年以上先と回答している求職者の割合は倍増。インドでは3月頭より日本人の新規就労ビザの発給が停止しており、その影響を受けたものと考えられる。
【転職事例】プロジェクトマネージャー(日本人材)/日系・IT/30代後半/約450万円(年収)
インドネシア
製造・建設業を中心に採用意欲が高い。新型コロナウイルスの影響は3月中旬以降。
カントリー・マネージャー
宮尾 真司(みやお しんじ)
宮尾 真司(みやお しんじ)
- 当社で取り扱う日系企業を中心とした1-3月の転職決定数、求人案件数ともに、前年同期比で増加し、製造業・建設業といった業界の企業を中心に活発な採用の動きがみられていた。しかし3月上旬に国内で初めて新型コロナウイルス感染者が確認されたことで、3月中旬以降新規採用の問い合わせが低下し始めている。
- 日系企業での経営現地化の流れに伴い、日本語スピーカーや管理職の採用ニーズが更に高まっている。日本語スピーカー、現地マネージャーの求人数は前年同期比でそれぞれ50%、51%と大幅に増加し、求人案件数全体の伸び率を大きく上回った。
- 業界別にみると、1-3月は製造・建設業の採用意欲が高かった。消費財メーカー、IT、コンサルティング、金融業界などは3月中旬以降も安定的に採用が継続されているが、今後は新型コロナウイルスの影響が表面化してくる可能性もある。
- 新型コロナウイルスの影響で、企業の多くがオンライン面接を採用プロセスにおいて積極的に導入している。これまで対面重視だった業界においても導入が進み、意識や採用活動のあり方が変わりつつある。
【転職事例】人事マネージャー(現地人材)/日系・製造/40代前半/約3.25億インドネシアルピア(年収)
シンガポール
3月以降新型コロナウイルスの影響で企業が採用活動に対して慎重に。オンライン面接が主流化の兆し。
ジャパンデスクヘッド
野﨑 裕司(のざき ゆうじ)
野﨑 裕司(のざき ゆうじ)
- 例年通り、シンガポールの転職市場は、12月の賞与支給後となる1月後半以降活発化。しかし3月以降、新型コロナウイルスの影響により、多くの企業が採用活動に慎重になっている。
- 企業の採用活動としては、1-2月においては前期に引き続き人事、IT、経理等のコーポレート部門の強化を図る日系企業の動きを受け、コーポレート部門での求人案件数 (日本人、現地人ともに) が増加。3月以降は新規採用は例年ほど多くはないが、日本人駐在員の帰国や1-2月で転職活動を終え退職する現地人材の欠員補充を行うため経理、経営企画の求人案件数が増加。また新型コロナウイルスの影響によりオンライン面談の導入が進み、3月以降は約5割以上の企業がオンライン面接に切り替えている。
- 新型コロナウイルスの影響により、新規での就労ビザ発行の承認確率は極めて低い状況であり、状況が鎮静化するまでしばらく続くとみられている。そのため多くの企業が採用ターゲットを在シンガポールの候補者に絞って進めるなど採用の見直しを行っている。
【転職事例】オフィスマネージャー(日本人材)/日系・金融業界/30代後半/約500万円(年収)
タイ
新型コロナウイルスの影響でタイ国内の日本人が減少、日本人求職者の採用ニーズが高まる。
カントリー・マネージャー
宮尾 真司(みやお しんじ)
宮尾 真司(みやお しんじ)
- タイの転職市場は、1-2月にかけて求人案件数は増加傾向にあったが、新型コロナウイルスの影響を受け、3月後半から採用活動を延期・中止にする企業が増加。業界・業種問わずさまざまな企業で採用方針を変更する動きが出ているが、特にベンチャー企業や中小企業の採用見直しが目立つ。
- 業界別にみると、タイのマーケットにおいて大きなウェイトを占める自動車・観光産業が大きな影響を受けている。大手自動車メーカー一部では3月後半から工場の稼働を停止しており、生産停止期間が長引けば取引会社にもその影響が波及してくる可能性がある。また観光客の減少により、バンコク都心部の観光・宿泊業に影響が出始めている。
- 当社で取り扱う1-3月の求人案件数は前年同期比で減少。新型コロナウイルスの影響を受けて企業側の採用意欲が低下していることが主な要因。一方で海外からの入国禁止措置に伴い、国内で転職が可能な日本人求職者の採用ニーズの高まりがみられる。
- 選考活動も対面での面接が難しくなるなかで、オンライン面接に切り替える企業が増加。日本在住の転職希望者については、日本国内の拠点での面接に切り替える他、入社後は新型コロナウイルスが落ち着くまで日本拠点で研修する形に方針を変更する企業も増えてきている。
【転職事例】生産管理マネージャー(日本人材)/日系・製造/50代/約170万タイバーツ(年収)
ベトナム
新型コロナウイルスの影響は限定的であるものの、転職市場はやや鈍化。医療業界が堅調。
カントリー・マネージャー
横沢 朋(よこざわ とも)
横沢 朋(よこざわ とも)
- 他の東南アジア諸国に比べ、ベトナムは政府の積極的な予防策もあって新型コロナウイルスの影響は限定的。そういった状況のなかでも2月中旬以降、対面面接を極力回避したり、採用活動を延期する企業が増加し、企業の採用意欲低下および求職者の転職意欲低下を招いた。
- その結果、弊社で取り扱う日系企業を中心とした求人案件数は前年同期比で減少となった。例年旧正月明けに離職者が出るため、多くの企業で欠員補充のための採用を行うが、今年はあまり見られなかった。理由としては、新型コロナウイルスの影響による先行き不透明感から、現職に留まりながらの転職活動者が多く、企業からの依頼も少なかったとみられる。
- 業界別にみると、2019年通して採用需要が右肩上がりであった消費者向けサービス業界からの求人が、1-3月期では前年同期比で減少した。一方、医薬品、医療用機器メーカーを中心としたヘルスケア関連企業については、ベトナムへの進出社数は他業種に比べ少ないものの、求人案件数は2019年から継続して増加しており1-3月期も前年同期比で増加となった。
- 日本人求職者の登録人材数は安定的に増加。年齢分布では25-35歳の人材流入が伸びており、キャリアの比較的早い段階で、海外でチャレンジしたい人材が増加している。
【転職事例】営業マネージャー(現地人材)/日系・電機設備 プラント製造/30代前半/約49,000 USD(年収)
リクルートグループのアジアにおける人材紹介事業について
- リクルートグループは、中国・東南アジア・インドにおいて、RGF Executive Search、 RGF Professional Recruitment、RGF HR Agentの3つのブランドで人材紹介事業を行っています。
- 2006年の中国進出以来、進出地域の拡大や、買収を通じ、アジアの11の国と地域、26都市で事業を展開しています。
- 日系企業のみならず多国籍企業や現地企業への人材紹介事業を通じて、主要な業界・職種を網羅し、経営幹部からスタッフレベルまでの企業の正社員採用・求職者の転職を支援しています。
日系人材紹介会社最大規模の拠点網 11の国と地域、26都市
日本、中国大陸、香港、台湾、シンガポール、インド、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ
日系企業のみならず多国籍企業・現地企業にもサービス提供
日系企業にとどまらず、多国籍企業や現地企業に対して、経営幹部の採用サポート、若手~中堅のミドルマネジメントの転職支援など、幅広い層の採用を支援するサービスを提供しています。