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高校生約15万人を対象とした初の大規模調査で
「主体性」の育み方解明への一歩へ
目標設定と振り返りが「主体性の向上」に寄与

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2020-02-10

高校生約15万人を対象とした初の大規模調査で
「主体性」の育み方解明への一歩へ
目標設定と振り返りが「主体性の向上」に寄与

2020年2月10日 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ

株式会社リクルートマーケティングパートナーズ(本社:東京都品川区、代表取締役社長:柏村 美生)と株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区、代表取締役社長:藤島 敬太郎)は、教育改革を契機に学校教育で求められる「主体的な学び」について、その育成のメカニズムを明らかにするために全国約15万人の高校生を対象に調査を実施しましたので、その分析結果をお知らせいたします。

1.背景:「主体的・対話的で深い学び」を育むことを目指す教育改革

目まぐるしく変化する社会において、子どもたちが活躍するための資質・能力を育むことを目的に、新しい学習指導要領が告示され、2021年より大学入学共通テストも始まります。入学者選抜においては、「知識・技能」だけでなく 「思考力・判断力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」が求められるようになり、多面的・総合的な能力・適性の評価へ変わります。学校教育においても、「主体的・対話的で深い学び」が求められています。
一方、企業における新人・若手育成の場面において、自分で行動や環境を意味付けし、主体的に周囲を巻き込むことが苦手な若手が増えており、入社後に壁にぶつかるケースが増えてきています。
そこで、学習・進路領域で学校を支援しているリクルートマーケティングパートナーズと、企業の人材育成を支援しているリクルートマネジメントソリューションズは、教育界・産業界において先行きの予測が難しいVUCA(ブーカ)時代に、不可欠な力として注目されている「主体性」がどのようにしたら育まれていくのかを明らかにし、人材育成の手がかりを得るべく、合同プロジェクトを立ち上げました。

2.調査の概要:「目標設定」「振り返り」のサイクルが主体性育成に大きく寄与

本プロジェクトでは、教育界・産業界において、主体性を育むメカニズムを明らかにすることを目的に調査を行いました。
今回の調査対象は、リクルートマーケティングパートナーズが提供するオンライン学習サービス『スタディサプリ』を導入いただいている高等学校のうちの 計618校、高校生15万2030人です。
今般、リクルートマーケティングパートナーズとリクルートマネジメントソリューションズは、文部科学省が提唱している「新しい学習指導要領等が目指す姿」にある学びに向かう力の要素として「主体性」、人間性等の涵養の要素として「多様性・協働性」(※1)などに関わる調査項目を共同開発し、学校教育において生徒の「主体性」はどのようにして育まれるのか、得られたデータをもとに分析したところ、「目標設定・振り返り」をおこなうことで「主体性」が高まる可能性が示唆されました。今回の分析では、3つの主体的な行動の発揮度合いを確認する項目をまとめて「主体性」としています。また、今回の分析からは「主体性」が高まることで「多様性・協働性」が高まることも示唆されました。
(※1):平成27年11月文部科学省 中央教育審議会 教育課程企画特別部会 論点整理より『新しい学習指導要領が目指す姿』


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▼「主体性」として分析した質問項目
・人から言われる前に自ら進んで行動している
・自分で決めたことは最後までやり遂げようとしている
・周囲から与えられた課題でも、自分がやるべきことに対しては逃げないで取り組んでいる
※文部科学省が提唱している「主体性」を参考に、独自に質問項目を設定

3.テスト校での追加調査の概要:日々の学びや気づきを記録すると主体性が高まることを示唆

某高校(以下、A高校)の生徒458人を対象に、2018年9月、12月の2度にわたり「主体性得点の変動」について調査を実施しました。
その結果、日々の学びや気づきを記録できる、『スタディサプリ』のポートフォリオ機能の一つである「活動メモ」の投稿数が多い生徒ほど、主体性の得点にプラスの影響を及ぼす関係性であることが明らかになりました。

▼『スタディサプリ』ポートフォリオ機能について
生徒一人ひとりの「日々の活動状況」などをデジタルでいつでも記録し、振り返りに活用することができる機能です。
※対象は導入頂いている高校会員向けのみ

▼『スタディサプリfor TEACHERS』について
学校教育のサポートツール『スタディサプリ for TEACHERS』は、先生の"生徒一人ひとりに寄り添いたい"をICTでサポートするツールとして、全国約5000校のうち、2575校の高校で活用されています。https://teachers.studysapuri.jp/

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4.調査結果を受けての取り組み:学校の教員向けに「生徒の主体性育成」に関する支援を開始

今回の分析結果をふまえ、「教員がどのように生徒一人ひとりに合った目標設定・振り返りの指導をするのか」が重要になると捉え、リクルートマーケティングパートナーズとリクルートマネジメントソリューションズは、学校の教員向けに「生徒の主体性育成」に関する支援を2019年7月末より開始しました。企業向けの人材育成を行うリクルートマネジメントソリューションズの知見を生かし、ガイダンスなどを通じて学校組織や教員への支援を行います。主体性の育成に不可欠である教員からの働きかけや、生徒の目標設定に対する振り返りの質の向上を通じて生徒一人ひとりの自己効力感を高め、内省を通じた自己成長の促進を目指します。
また、今回得られた結果は一時点での本人回答のデータであるため、今後はA高校での分析のように同一人物の経年での変化や主体性育成や振り返りの促進に影響を及ぼす環境要因がどのようなものか、などを明らかにする計画です。

5.スタディサプリ教育AI研究所 所長 小宮山 利恵子のコメント

テクノロジーの進展に伴って社会は目まぐるしく変化し、終身雇用は崩れ、大学をはじめとした高等教育機関卒業後も学び続けることが必須の時代になりました。その際に必要なのが「主体的な学び」です。本調査では、その主体性育成がどのように育まれるのか、高校生を対象とした大規模な調査を通じて明らかにしています。主体的な学びについては、日本だけではなく海外においても重要視されており、早い学齢からの習得ならびに習慣づけは非常に大切だと考えられています。昨今増えているプロジェクト型学習においても主体性は非常に大きな役割を果たします。本調査の主体性を育むサイクルの過程においては、生徒自身が持つ興味・関心を伸ばすだけではなく、生徒本人も気づいていない潜在的な興味・関心を引き出せる可能性もあり、それが主体的な学びへとつながるものと考えられます。
世界のトップ企業が人材採用時に欠かせない要素として「好奇心」を挙げていますが、その好奇心と主体的な学びは密接に関係しています。本プロジェクトにより、生徒一人ひとりの主体的な学びが分析され、人生100年時代と言われる社会で活躍できる個のサポートが少しでもできればと願っています。

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6. リクルートマネジメントソリューションズ シニアコンサルタント 立野 正行のコメント

当社は「個と組織」に焦点をあて、企業の経営・人事課題の解決と事業・戦略の推進を支援しています。近年、業務の複雑化や高度化により、従業員一人ひとりに、より主体的に周囲を巻き込みながら行動することが求められています。その中で、人材育成の領域では、職場や仕事に適応できず壁にぶつかる新人・若手に関するご相談が、年々増加傾向にあります。
今般の主体性に関する調査や結果分析を通じて、当社が長年培ってきた、企業向けの人材育成の知見やノウハウが教育現場にも生かせることが確認できました。主体性育成には、周囲からの影響も大きいと考えられます。学校を主体性育成の場にしていくためには、学校という組織や教員への支援が重要です。今後、当社の持つ企業向けの人材育成の知見やノウハウを学校や教員向けに応用し、高校生の主体性育成に関わる支援をしていきたいと考えています。

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7.調査結果の詳細

調査1(15万人に対するアンケート調査)
■目的:主体性を高める構造を明らかにすること
■期間:2019年3月~2019年5月投函締切 ※5月24日到着分までを集計対象
■方法:郵送調査
■対象:全国の高等学校618校の生徒15万2030人

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■分析概要
生徒に自分自身について「主体性」や「多様性」「協働性」等のテーマに基づいた23の質問について「あてはまる」~「あてはまらない」の5段階で評価してもらい、因子分析や信頼性分析、共分散構造分析を実施した。

■分析結果①(因子分析・信頼性分析)
因子分析の結果、大きく6因子が抽出された。また、1項目がどの因子にもあてはまりが悪く、以降の分析からは削除した。念のため、各因子について信頼性分析をおこなったところ、α係数は0.67 ~0.83(平均0.78)の値をとっており、因子としてのまとまりがよいことが確認された。
*1因子分析:複数の変数(質問項目)のうち、相関が強い項目の背後に共通する基準(因子)を探し出す分析
*2信頼性分析:想定した因子に含まれる質問項目群の内的整合性を確認する分析(クロンバックのα係数)

■分析結果②(共分散構造分析)
分析結果①により、因子としてのまとまりがよいことが確認されたため、共分散構造分析をおこない、以下のモデルが確認された
*3共分散構造分析:因子間の因果関係や影響度合いの強さなど仮説モデルを検証する分析

<今回確認されたモデル>
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調査2(A高校に対する調査)
■目的:主体性を高める構造を明らかにすること(活動メモによる「目標設定・振り返り」との関係確認)
■時期:2018年9月と12月の2回
■方法:『スタディサプリ for TEACHERS』上のデータ集計
■対象:A高校の生徒458人

■分析概要
先生による活動メモ投稿への働きかけなどの違いがあることを考慮し、主体性得点(平均)の変動の分析をおこなった。
活動メモの投稿が2回目の主体性の得点にプラスの影響を及ぼす関係性であることが明らかになった。

■分析結果
活動メモの投稿が2回目の主体性の得点にプラスの影響を及ぼす関係性であることが明らかになった。


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※縦軸の数字が主体性項目の平均
また、どのような活動に対する投稿が多いのか「活動メモ」投稿時につけるタイトルの割合を見ると、一番多いのは「その他」であったが、次に学校行事に関するものが多く、全体の約30%を占めた。以降は部活、探究活動、学校以外の活動などが見られた。

【本件に関するお問い合わせ先】

https://www.recruit.co.jp/support/form/

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