リクれぽ Vol.6:学生に必要な「就活PDSサイクル」とは
『リクれぽ』は、リクルートキャリアの新卒領域に特化した活動レポートです。学生の皆さま(以下、学生)の意見や、就職活動での悩みなど「声」を明らかにしながら、当社サービスの実態をご報告。今後のお知らせも発信してまいります。
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『声』を聞く
政府による緊急事態宣言の解除や、都道府県をまたぐ移動の容認などにより、中断していた就職活動も、少しずつ選考の段階が進みつつあるかと思います。一方で、志望していた業界や企業などでの採用中止・規模縮小などが相次ぐ中、思うように進路を決められず、自分に何が不足しているのか分からずに、戸惑う声も聞かれます。
学生の声:「面接ではフィードバックがないことが多いので、何が悪かったのか判断ができない」「落ちる原因が分からず落ち続けるのが苦しい」という声が多く聞かれます
- 現時点で内定をもらったこともなければ一次選考も通過したことがないので、内定をもらえるかとても不安です。なぜ選考に進めなかったのか、どこを直すべきなのか分からないです
- 選考を受けたあとの会社からのフィードバックがないことが多いので、なぜ採用されたのか、なぜ採用されなかったのかの判断が出来ないことが不満に思いました
- 落ちる原因も、いまいちわからないまま落ち続けるのが苦しかったのでもっとフィードバックがほしい。自信を失うことが多く、負担が大きい
- やはり次々と周りの人々が内定を獲得していくと、焦るし自分に自信がなくなっていることが身にしみた
- エントリーシートで落とされる理由が分からないので改善できない。内定もらえるか不安
- コロナもあり自分が本当に楽しんで出来る仕事が分からないこともあり将来の先行きが不安でならない
- 数週間前に書類審査通過後の一次面接を受けて以降、連絡が全く来ず、当落が分からないまま公務員試験に突入するのでもう後がないというプレッシャーと同等な不安を抱いている
- 早めに自主的に行動を起こしていく必要が感じられました。内定が取れるか分からないので、「行きたい所」よりも「入れる所」を優先する思考に偏りがちになっています
- こんな時期だけど、業種や職種が決まらなかったり、結局自分が何をしたいのか分からない。また、何が出来るのか分からない
- 焦ってはいるが、どのように行動すればよいか分からない。面接で自己アピールできないので内定をもらえるか不安です
- 自分の今後を考えた時に最善の選択をできているのかが全く分からない
- 分からないことが多くて焦っている
新卒事業の現場から
選考を通じて学生が持ち味を自覚する「就活PDSサイクル」のススメ
今年の就職活動は、選考日程が後ろにずれ込んでいます。7月1日時点の内定率は73.2%と対前年では11.9ポイント低かったのですが、今年の6月1日時点から16.3ポイント増えました。特に対面での面接が進み、内定を取得する学生も増え始めたと言えます。しかし、合否の結果が出始めたゆえに、学生からはこのような声が目立つようになりました。「自信があったのになぜ落ちたのか分からない」「面接を受けたのに企業からの連絡がないので改善しようがない」。学生は、特に縁のなかった場合に、企業の皆さま(以下、企業)の対応は無機質だと感じることが多いようです。さらに、不合格が続くと、人格を否定されたような錯覚に陥る場合もあるようです。これはいたたまれない状況です。なぜなら、本来は持ち味のない学生は一人もおらず、その自己認識は就職活動を通じて深められるものだからです。
当社では、学生が就職活動を進めながらふと立ち止まり、自分の持ち味を把握し、社会に出たあとの活躍イメージから逆算して進路選択できる仕組みを作れないか検討しました。その結果、編み出されたのが、就職支援サービス『リクナビ就職エージェント』が賛同企業とともに提案する「就活PDSサイクル」です。PDSサイクルとは、Plan(計画)Do(実行)See(検証)の一連を繰り返し、業務改善を図るマネジメントフレームです。それを、「就活PDSサイクル」では以下のように応用しています。
- Plan(計画)
まずは学生自身で自己分析をして、持ち味などの自己PRや企業の志望理由などを練る - Do(実行)
Planをもとに実際に面接を受ける。企業は面接の合否に関係なく、学生の持ち味や課題をフィードバック。フィードバック内容は、『リクナビ就職エージェント』のキャリアアドバイザーにも共有される - See(検証)
『リクナビ就職エージェント』のキャリアアドバイザーが、企業からのフィードバックをもとに、学生と面接を振り返る。ここでは、企業の面接担当者の視点で見た持ち味や、次への課題を明らかにする。その後はまたPlanの工程に戻り、学生が内省し、持ち味などのPRに磨きをかけて次の選考に臨む
目先の内定ではなく、社会に出てから支えになる軸を
「就活PDSサイクル」の肝は、目的を「内定を取る」と置かないことです。もちろん学生が自分に合った1社から内定を取ることは大事ですが、ここでは、社会に出た後の未来にまで視野を広げます。社会に出れば、様々な困難が待ち受けているでしょう。その時に、就職活動で気付けた自分の持ち味を拠り所に、自信を持って働いてほしいのです。実際に「就活PDSサイクル」を実践した学生からは、「自分の思う自分と、他者からみた自分は違うと気づいた」「フィードバックをもらえないと一生迷ったままだった。今後の改善点が明確になり、また、よい点も分かった。非常に嬉しい部分もあった」などの声が寄せられています。
また当社のキャリアアドバイザーではなく、実際に面接を実施した企業の担当者が、学生の持ち味を見いだしてフィードバックする座組みも特徴です。企業は「当社に興味を持っていただき、お時間をいただくので、今後の就職活動の一助になれればと感じています」「就職活動という人生のターニングポイントで、学生のよりよい就職活動のためにお力添えできるのであれば、当社としても非常に価値のあることだと考えています」など、選考を超えた人材育成の観点で価値を見いだしてくださっています。
この取り組みは2020年3月に開始し(※)、7月10日時点で、『リクナビ就職エージェント』利用企業の内、約8割の企業にご賛同いただいています。
※ 企業へのご案内は2019年12月より開始しています
「就活PDSサイクル」での、企業から学生へのフィードバック一例:
- 学生時代に打ち込んできたスポーツについては理解が出来ました。自分の強み・弱みも客観的に理解されていましたが、そのスポーツでの挫折経験から何を今の自分に生かせているのかが分からず、自己分析不足であると感じてしまいました。その部分がしっかりと伝わると今後はいいと思います。
- 人物としては優秀であることはとても伝わりましたが、当社への志望理由としては、当社事業に対する関心ではなく、働き方など制度への共感が強い印象でした。非常にスキルは高いと思うので、本当に志望されている企業でご活躍された方がいいと思いました。
- 自己紹介での⾧所の裏付けエピソードがなく根拠のない自信に感じてしまいました。伝えていただいていたのかもしれないですが、うまく当方に伝わってきておらず、今後は「自己PRの工夫」が必要だと感じました。
- この業界を志望している理由はしっかりと伝わってきたのですが、業界にある多くの企業の中で何故当社を選んだのか、という観点の説明が不足していました。なぜ選考を受ける会社(今回でいえば当社)を選んだのかということは、しっかり考えていただくことが今後の選考で必要なことだと思います。
就職活動・新卒採用の現場から
志望業界が突然の採用中止や規模縮小。
手探り状態の学生に、いま知っておいてほしいこと
新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、日本経済にさまざまな影響をもたらしています。特に大きな打撃を受けている航空業界や観光・ホテル業界などは、採用の中止・規模縮小の声も聞こえてきます。それらの業界を志望していた学生の中には、突然の事態にどうしたらいいか分からず、今年の就職活動を諦めてしまっている人もいるかもしれません。このような状況下で、一歩ずつでも就職活動を進めていくために、いま学生は何をすべきで、どう対応していけばよいのでしょうか。就職みらい研究所所⾧の増本全と、新卒で航空会社に入社後グランドスタッフ(地上勤務)を務めた経験があり、現在は日々学生の就職相談にのる『リクナビ就職エージェント』のキャリアドバイザー松村祐花がアドバイスいたします。
- 就職みらい研究所 所⾧ 増本 全
株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所所⾧。入社以来、新卒採用や就職支援に係る業務に従事。2018年10月より現職。全国求人情報協会新卒等若年雇用部会事務局⾧や文部科学省「令和元年度大学等におけるインターンシップ表彰選考委員会」委員など複数の公職を務める。 - 『リクナビ就職エージェント』キャリアアドバイザー 松村 祐花
株式会社リクルートキャリア 『リクナビ就職エージェント』 キャリアアドバイザー。航空業界、ホテル業界を志望し、エアラインスクールに通いながら就職活動をした経験を持つ。新卒で航空会社に入社し、国際線地上職として4年間勤務後、リクルートキャリアに入社。入社後は『リクナビ就職エージェント』のキャリアアドバイザーとして、グローバル人材(海外大生・外国人留学生)の就職活動支援などを担当。現在はチームリーダーを務めながら、主に理系人材の就職活動支援を担当している。
大きな不安の中で、何から手を付けていいか分からない学生が大半
増本 新型コロナウイルス禍において、航空業界や観光・ホテル業界への就職活動の影響が大々的に報じられていますね。これらの業界を強く志望していた学生の皆さんにとっては、本当に苦しい状況だと思います。やはり、相談に来られる学生は多いでしょうか?また、どのような方がいらっしゃるのでしょうか?
松村 6月頃から、ご相談いただく機会が多くなっています。これまで航空業界に志望を絞っていた学生が多く、不測の事態に大きな不安を抱えていらっしゃいます。これまで他の業界を見てこられていないため、何をしたらいいのか分からない方が多いです。業界研究をしようにも、志望理由を見つけられずに、困り果てています。
増本 航空業界や観光・ホテル業界を目指していた学生は、なぜそれらの業界を志望したのでしょうか?
松村 接客業のアルバイト経験などを通して、「人と接する仕事が楽しい」と感じた学生が多い印象です。また、英語などの語学が堪能であることから「グローバル」の軸を掛け合わせ、「接客×グローバル」で志望される方もいらっしゃいます。アルバイトでの経験と同様に、「飛行機での経験」や「旅行での楽しい思い出」などの原体験を通して憧れを抱いたり、身近に感じたりしたようです。
志望した理由は何か、自分の「軸」を理解する
増本 強い憧れがあっても、諦めざるを得ない。その業界への就職は諦めなければいけないかもしれないーこのような状況下でどのようにアドバイスをするのでしょうか?
松村 まず学生に伺うのは、「なぜ航空会社や観光・ホテル業界に行きたいと思ったのか」ということ。そして「ご自身のどの経験がその業界で働くときに生かせると思うのか」ということもヒアリングします。「自分は何をやりがいと感じるのか」「何をしているときが一番嬉しいのか」など、自己分析と同じく、自分自身を見つめ直すことが大切なステップです。そうすると、例えば「人を助けたいという気持ちが強かった」であったり、「人と協力して何かを成し遂げることが好きだ」であったりと、自分の軸が見えてくるのです。
増本 自分を深く知っていくことで、何が自分の志望の「源泉」になっているのかを発掘していくわけですね。では、次のステップで重要なことは何でしょうか?
職業を固定化された「イメージ」で決めつけない
松村 志望外だった職業に対して誤ったイメージを抱えているケースが多くあります。例えば「人と接する仕事」という軸ですと、「営業」や「MR」という職業はまさにど真ん中です。しかし、それらの職業を提示すると、「ノルマが嫌だ」「新規顧客への飛び込み営業は出来ない」など、実態とは異なるイメージを潜在的に持っている学生が少なくないです。実は「営業職」一つをとっても、バリエーションはさまざまなのです。
- 個人で数字を追わず、チーム単位で数字を管理する営業
- すでに取引のある顧客とのリレーションを強化するルート営業
- カスタマーからニーズが上がってきたところでサービスを提供するPull型営業など
固定化されたイメージはその職業のほんの一部の情報にすぎないのです。「人と接する仕事」という軸でもさまざまな選択肢がある、ということに気づき、自分の軸と交わる職業があることを知ってほしいと思います。
増本 なるほど。視野を広げて他の職業の実態を解像度高く理解することは必要ですね。そのために、周りの友人や先輩、大学、両親、親戚など、実際に社会に出て仕事をしている方を中心に、「第三者の意見を聞く」ことも大切ですね。自分では見えない世界を自分が知らないだけで、自分の軸にある強みを生かせる仕事や、興味を持てる職業は目の前に広がっているのかもしれません。
松村 私のファーストキャリアは航空会社のグランドスタッフでしたので、皆さんが直面している現実が大変つらいことは痛いほど分かります。グランドスタッフの仕事は、体力が必要であり、かつさまざまなトラブルに迅速に対応しなければならず、高いストレス耐性力が求められる仕事でした。しかし、それらの経験から培われたスキル・知見は、今のキャリアに生かされています。自分の夢である職業への憧れを捨ててほしいということではなく、人生100年時代、さまざまな職業に就ける可能性がある中で、自分の軸を把握し、さまざまな職業の実態を知ることで、将来に多くの選択肢を残していけるよう行動に移してほしいです。
増本 希望の職業に必要な力は何でどのように身に着けるか?も一つの視点ですね。今は辛い状況でも事態はきっと改善します。その時に自身が望む選択を可能にするために、自分の軸を見つけることと、他の職業へ目を向けること、この二つをまず実践してみてください。
新型コロナウイルス禍で日々刻々と状況が変わる中、企業の採用中止・規模縮小を受けて志半ばでこれまでの歩みを止めてしまう学生の話が聞こえてきています。今回の対談から見えてきたこと、それは、航空業界や観光・ホテル業界に憧れた多くの学生が、実際に働いている方を見たり、自分自身がサービスに触れたりしてその職業に興味を持ったように、働くイメージを持てるまで仕事を理解することが肝要だということです。突然、軸を見つける、視野を広げて他業界・他職種も見る、働くイメージを持つ、と言うと気持ちが伴わないこともあるかと思いますが、ここで歩みを止めずにぜひ、自分の軸に立ち返り、一歩踏み出してみていただければと願っています。
お知らせ
介護業界における新卒採用の取り組みを紹介
福祉・介護業界からポジティブな情報を発信することで、新型コロナウイルス禍の日本を元気に、笑顔にしたい!福祉・介護の未来を応援する『HELPMAN JAPAN』では、応援プロジェクト「#つむぐ!笑顔メッセージ‼」を実施しています。各介護事業所の新型コロナウイルス禍の対応などをご紹介するコラムですが、企業説明会をLIVE配信で実施したり、面接はオンラインで実施したりするなど、介護業界における新卒採用活動に関してもご確認いただけます。ぜひ、ご覧ください。
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社会課題に向き合う!3社合同オンライン会社説明会開催
「新型コロナウイルス感染症に関する企業の取り組み」を企業に取材してまとめました (7月16日時点)
新型コロナウイルス感染症の影響で、企業と学生のコミュニケーションの在り方が大きく変化しています。対面で行われていた説明会や面接などがWeb化し、時間的・金銭的な学生の負荷は軽減しました。一方、「話が伝わっていないのでは」「面接の評価が低くなるのでは」といった学生から不安の声が大きいのも事実です。そこで、すでに学生とのコミュニケーション手法の改革を実践している企業に利点や課題、学生へのメッセージを伺いました。ぜひご確認ください。
Vol.6 NTTコムウエア株式会社
Vol.7 コマニー株式会社
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