兼業・副業に対する企業の意識調査(2019) 社員への兼業・副業認める企業3割越え 「本業に還元できている」推進・容認企業、早期実感高まる
株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区、代表取締役社⾧:小林 大三)は、兼業・副業に対する企業の意識について調査を実施し、 3,514人から回答を得ました。結果について、一部抜粋してご報告申し上げます。本調査に関して、「兼業・副業制度というひとつの手段は、従業員の自律的なキャリアを促す」と題して解説をしています(P.2)。なお、前回調査は別途リリースをご参照ください(※1)。
本件の詳細はこちらをご覧ください。
20200324.pdf(1.8MB)
調査結果トピックス
- 社員への兼業・副業について認めている企業(推進+容認)は30.9%と前回調査(2018年)(以下、2018年度調査)の28.8%より2.1ポイント上昇
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兼業・副業の導入背景のうち、2018年度調査と比較し、「人材育成・本人のスキル向上につながるため」が最も上昇し(+6.2ポイント)、次いで「社員の離職防止(定着率の向上、継続雇用)につながるため」(+5.3ポイント)であった
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兼業・副業のルールや施策のうち、定期的な報告義務やルール違反への罰則は2018年度調査より低下傾向にあり、副業・兼業の申告認可制、副業開始する事前面談は上昇傾向にあった
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兼業・副業を容認している企業のうち、「今後推奨レベルまで引き上げていく可能性がある」と回答している企業は2018年度調査よりも8.1ポイント上昇
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兼業・副業者を既に受け入れている企業もしくは受け入れを検討している企業のうち、兼業・副業者を受け入れるメリットに感じていることは、「多様な人材を確保できる」が最も高く(44.8%)、次いで「自社では培えない経験・知識が得られる」(40.3%)
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兼業・副業を推進・容認している企業のうち、3割以上は「本業に還元できている」と感じていることが分かった。また、本業への還元を感じ始めた時期については、6割以上が「1年以内」と回答しており、兼業・副業制度の導入効果は早期に現れることが判明した
※1
兼業・副業を容認・推進している企業に関する前回調査(2018年度)
兼業・副業に対する個人の意向に関する前回調査(2019年)
解説:兼業・副業制度というひとつの手段は、従業員の自律的なキャリアを促す
株式会社リクルートキャリア 事業開発室 狩野 美鈴(かりの みすず)
「兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)」「兼業・副業に対する個人の意識調査(2019)」を担当
兼業・副業を解禁する上での懸念事項は色々とあると思いますが、本音の部分では「自社の社員を他社で働かせることが自社にはメリットがない」ということだと思います。ただ、今回の調査で見えてきたことは、既に副業を「推進・容認している企業」の3割以上は、社員の副業経験が「本業に還元できていると感じている」ということです。
ではその解禁に踏み切った企業の目的は何かというと「育成」と「離職防止」です。
高度成⾧期にはスタンダードだった同質化・標準化が進んだ環境からの変革は一筋縄ではいかないので、兼業・副業制度をひとつの手段として、非連続な成⾧を体験させる機会と捉える考えが広がってきています。
また、他社を知ると「本業の魅力を再認識する」という調査結果もあります。禁止して会社に繋ぎとめておくのではなく、信頼関係を前提に兼業・副業制度というひとつの選択肢を用意すれば、いきなり辞められてしまうという事態も防げるかもしれません。
「兼業・副業に対する個人の意識調査(2019)」
人生100年時代となり、個人にも自律的なキャリア形成が求められることになります。そんな中で、企業も従業員に対して、自らのキャリアを考える機会を提供していく必要性が高まっていくと考えます。
兼業・副業の推進状況と内訳
社員への兼業・副業について認めている企業(推進+容認)は30.9%と2018年度調査の28.8%より2.1ポイント上昇した。
業種別では、その他業種を除くと、サービス業が最も高く(38.6%) 、次いで運輸業情報通信業(34.5%)となった。従業員規模別では、10-49 人の企業が最も高かった(43.3%)。人手確保が経営に大きな影響を与えるなど、熾烈な人材争奪戦が展開される業種では比較的推進・容認が進んでいると考えられる。
「推進・容認」企業における兼業・副業の容認時期については、「3年以内」が最も高い結果となった(27.2%)。
これは、近年、大手企業を含めた兼業・副業解禁の流れによるものと思われる。
【推進・容認企業】兼業・副業の導入理由や背景
兼業・副業の導入をしている企業の導入理由や背景のうち、伸び率は2018年度調査と比べて「人材育成・本人のスキル向上につながるため」が最も上昇し(+6.2ポイント)、次いで「社員の離職防止につながるため」(+5.3ポイント)であった。
2018年度調査では、「特に禁止する理由がないから」という受け身の導入理由が高かったところから、今回調査では、目的を持った制度導入へと変化してきている。これは先行して兼業・副業を導入した企業の事例が出てきたことにより、兼業・副業の効果に対する期待が高まってきていると考えられる。
【推進・容認企業】兼業・副業のルールや施策
兼業・副業のルールや施策のうち、定期的な報告義務やルール違反への罰則は、2018年度調査に比べ低下傾向にあり、副業・兼業の申告認可制、副業開始する事前面談は上昇傾向にあった。
2018年度より減少したものは「人事部や上司、産業医に、定期的に報告する必要がある」が最も低下し(-4.7ポイント)、次いで「ルールに違反した場合は、懲戒解雇、減給などの罰則規定がある」(-3.0ポイント)であった。一方で、2019年度調査では、「申請して、許可を得る必要がある」が最も上昇し(+3.8ポイント)、次いで「人事部や上司、産業医と、事前に面談する必要がある(+2.7ポイント)であった。
【兼業・副業容認企業】兼業・副業の推奨の可能性
兼業・副業を容認している企業のうち、今後推奨レベルまで引き上げていく可能性があると回答している企業は2018年度調査よりも8.1ポイント上昇。
業種別では、サービス業が全体平均よりも高く、50.0%が「推奨の可能性あり」と回答している。次いで建設業での「推奨の可能性あり」が46.9%となっている(※2)。
※2「推奨の可能性あり」:「推奨する可能性が、かなりある」と「推奨する可能性が、ややある」を合計したもの
【推進・容認企業】兼業・副業の導入による効果
兼業・副業の導入による効果のうち、「人材採用への効果」で効果があったと回答した企業は2018年度調査より5.0ポイント増加した。「社員の離職防止・エンゲージメント向上への効果」で効果があったと回答した企業は2018年度調査より4.3ポイント上昇した。人材育成の観点からの効果としては、「人材育成への効果」で効果があったと回答した企業は2018年度調査より低下したが、 「いまのところ効果はないが、期待している」が6.4ポイント上昇した。これは、2019年に兼業・副業を実際に始めた社員が増加したことが影響していると考えらえる。
【推進・容認企業】兼業・副業をした社員による本業への還元
兼業・副業をした社員による「本業への還元」のうち、3割以上は「本業に還元できている」と感じていることが分かった。また、本業への還元を感じ始めた時期については、6割以上が「1年以内」と回答しており、兼業・副業制度の導入効果は早期に現れることが見えてきた。
兼業・副業経験者による本業への還元では、34.0%が「還元できている」と感じている。還元効果を感じ始めた時期のうち、「兼業・副業を認めてから、1年以内」が最も高く(42.9%)、次いで「兼業・副業を認めて、すぐに」であった(21.6%)。
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