共生社会の実現を目指す『パラリング』では、学校向けに、障がい者への理解が深まる教材を無償でご提供しています。
2023年2月現在、教材をご提供した学校は全国で50校を超えました。北海道川上郡にある標茶町立標茶中学校はそのうちの1校。本記事では指導を担当された小杉山先生にインタビューさせていただき、教材のご感想や生徒たちの反応、授業の今後の展開などを伺いました。
2022年11月、キャリア教育や福祉をテーマとする総合的な学習の時間に、中学1年生47名を対象に実施されたといいます。
「障がいを持つ方を理解するために、釧路にある車いすバスケットボールチームとの交流を企画し、より深い学びにつなげる事前学習の教材として『パラリング』の動画をみんなで視聴しました」と小杉山先生。
楽しみながら、意識を変えていった生徒たち
特に生徒たちの反応が良かったのが、『パラスポーツVR動画編』だったといいます。
「先生よりも上手に使いこなし、視点をぐるぐる切り替えながら楽しんでくれました。クイズ形式で主体的に参加できるのも良かったです。大きな気づきとしては、パラスポーツは障がいのある人だけのものではないということ。障がいのある方もない方も一緒に楽しめる競技だと知れたのは良かったですし、ルールや器具の工夫に共生社会のヒントがあると感じられました」と小杉山先生。
一方、先生ご自身は『パラアスリートの生き方編』により強く共感くださったといいます。
「生徒たちは、障がいのある社会人と接する機会がないんです。そのため障がいがある人は弱者、助けてあげなければならない存在だと意識を固定しています。助けてあげたいという優しさは大切ですが、固定化した意識を超えた理解や、もし自分が当事者になったとき、どう生きるかという想像まで及ばない難しさを感じていました。この教材はそうした意識が変容するきっかけをくれました。障がいのある村上さんが勇気を持って挑戦されている姿や、通勤し、仕事し、同僚と交流する姿に、生徒たちは純粋に驚いていました」と小杉山先生。
誰もが暮らしやすい環境をつくるという視点
さらに先生は「特に村上さんの『心配されたくない。すごいと思って欲しい』といった発言や、同僚の方の『車いすを意識することはない』『配慮は必要だけれど、遠慮は要らない』といった言葉が響いたようです」と。それを裏付けるように、授業後のアンケートでは生徒たちから 「何でも手を貸すことや、特別な接し方をする必要はないと分かった。相手が求めてから、必要とされる形で助けてもいいのではないかと気づいた」「障がいのある方と一緒にできることがたくさんあると思った」「障がいがあるからといって、何かを諦めなくてもいい」「かわいそうというイメージから、すごいというイメージになった」といったコメントが寄せられたといいます。
そうした中で、小杉山先生が特に目を留めたのが、村上選手がバス通勤する姿が影響したと思われるコメントでした。
「自分の周囲には障がいを抱えた人は見当たらないけれど、もしかしたら将来、自分が環境を整える、快適にする仕事に就くかもしれない」とあり、小杉山先生は「北海道でも田舎に位置する地なので、生徒のほとんどが公共の交通機関を利用することがありません。そうした現実を超え、中学1年生のときにこうした意識で世の中を見る機会を持てたのは素晴らしいことだと感じました」と。答えを押し付けるのではなく、生徒たちが自発的にこれからの生活や生き方に取り入れる気づきがあったようです。
動画で得た理解が、声を掛ける勇気に
その後に実施した車いすバスケットボールチームとの交流会では、いつもはあまり進んで質問をしない生徒たちが進んで選手に質問するなど、教材の成果が感じられるシーンがあったといいます。
「村上さんの動画が子どもたちの背中を押してくれた印象があります。普段はどんな仕事をしているのですか?会場までどうやって来ましたか?といった質問があり、障がいのある方は弱者という固定意識を超え、同じ社会の一員として理解しようとする気持ちが感じられました」と小杉山先生。
小杉山先生が生徒たちを導きたいのは、どんな状態の人が近くにいても当たり前と感じられ、障がいの有無に関係なく、誰もが必要なとき必要なだけ助けてもらえる社会といいます。そのためには生徒たちにいかに広い世界、より多くの情報に触れてもらうかが大切です。一方、専門性の高い授業をゼロから企画するのは難易度が高いという現状もあるとのことで、そうした状況に対してこの教材が貢献できたようです。
インタビューを通して、この教材を活用いただくことで、先生や子どもたちが障がいや共生社会について考えるきっかけになればという想いを強くしました。教材をご活用くださった小杉山先生、ありがとうございました。
子どもたちに、障がいについて考えるきっかけを提供できればという想いから、学校の授業で活用いただける、障がい者理解を目的とした教材を製作し、無償提供しています。
教材の提供については、下記ご案内よりご確認ください。
『考え方を変える=パラダイムシフト』で『つながりの輪を広げる』パラリングは、これからも障がい者理解のための プログラムを通して誰もが自分らしく生きる社会づくりに貢献します。
<お問い合わせ先>
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パラリングとは?
「パラリング」とは「パラダイムシフト(考え方の変化)」と「リング(輪)」の造語で、障がい者理解を広めていくリクルートの活動です。リクルートは障がいの有無に関わらずそれぞれが活躍できる社会の実現を目指して活動をしています。