【生徒事例紹介】『高校生Ring』の経験が、
進路選択や入試に生きた
【生徒事例紹介】『高校生Ring』の経験が、
進路選択や入試に生きた
高校生向けのアントレプレナーシップ・プログラムとして、リクルートが実施している『高校生Ring』。今期は『スタディサプリ』を導入している高校に対してプログラムを提供しています。『高校生Ring』には、決められたテーマやお題はありません。自らの半径5mに目を向け、ビジネスプランのテーマを設定。アイデアを基に事業化するまでのプラン作成に取り組んでいただくものです。
「昨年度の『高校生RingAWARD(最終5組のプラン発表)』を見ると、すごくプランの完成度が高いと思いました。高校生はどのようにプランを作っているのでしょうか? 先生はどのように指導しているのでしょうか? 総合的な探究の時間を活用されていますか?」
今期の参加生徒数は2万5,000を超え、このようなご質問を頂くことも増えました。そこで今回は、参加生徒側の視点から、進路選択に前向きな変化が起こった事例と、入試で『高校生Ring』の取り組みを具体的に活用された事例をご紹介します。
生徒事例1:柏木学園高等学校
[お話しいただいた生徒さん]
学校から指定されていたグループでのビジネスプラン考案にとどまらず、個人での参加も願い出て、自身の興味関心へ主体的にアプローチする1年生。
日常のささいな関心ごとをきっかけに、これまで意識してこなかったビジネスの裏側に目を凝らす。
自分で何かを企画することは、昔から興味がありました。でも、小学校から中学校までは学校の授業でそのような機会は全くなかったので、高校に入学して『高校生Ring』の内容を先生から教えてもらったときに「あ、これだ!」と思って、自然とやる気も湧きました。前回の『高校生Ring AWARD』の動画を見てみると、同年代の高校生たちが大きな会場で自信を持ってこれまで練ってきたビジネスプランを発表している様子が印象的で、自分も挑戦してみたいと思いました。そこで、授業で決められたチーム単位で出すビジネスプランとは別に、先生にお願いして、個人でもチャレンジすることにしました。
個人参加で具体的に考えたビジネスプランは、労働基準法を分かりやすく、楽しく学ぶことができるアプリを開発するという提案でした。元々動画サイトなどで豆知識を調べることが好きで、労働基準法に関する動画が偶然流れてきたときに、興味深い法律だな、と関心を持ったことがプランづくりのきっかけです。『高校生Ring』のためにアイデアを探したというより、普段から自分が気になっていたテーマでプランを作成しました。
労働基準法は働く人たち全員に関係する法律なので、本来なら労働者全員がその内容について詳しい知識を身につけておくべきですが、実際には知らない人が意外と多く、そこに課題意識を持ちました。たとえば、1週間に何時間以上働いてはいけないとか、最低賃金は幾らかとか、必要最低限の知識は身に付けているものの、細かな保障制度までしっかりと把握している人は少数です。まだ浸透していない労働基準法の内容をたくさんの人に届けたいと思ったとき、アプリで分かりやすく、楽しく学ぶことができれば、結果的に日本の労働環境が改善されるのではないか、と考えました。
プランを練る際に苦労したことは、サービスの利益構造です。これまで学校の授業で学んだことがない専門的な内容で、なおかつ普段の生活でもあまり気にしたことがなかったので、自分でつくったサービスを会社が継続的に運用できる仕組みを考えるのは想像以上に大変でした。
『高校生Ring』での取り組みが進路選択の可能性を広げ、学校の授業への意欲も高める。
『高校生Ring』に参加する前は、進学先として心理学部に興味がありましたが、労働基準法について勉強したことがきっかけで法律がより身近なものに感じられ、今は法学部も気になり始めています。
自分から主体的に考えることでいろいろな物事が身近に感じられるから、調べる意欲も自然と湧き、興味を深掘りしたことで結果的には進路の選択肢が増えました。まだどちらの学部を目指すのか決心はついていないものの、『高校生Ring』の経験は自分の進路の可能性を広げてくれた実感があります。
また、考えていたプランが法律関係だったこともあり、普段の勉強でも憲法、社会権などについて学ぶ公共の授業はこれまで以上に熱心に取り組むように心掛けています。以前は難しい言葉がたくさん出てくるので苦手意識がありましたが、最近は興味を持つようになりました。
残念ながら、今回提案したビジネスプランは二次審査を通過することができなかったので、プランを振り返り、改善して来年もチャレンジしたいです。私は部活や委員会に取り組んでいませんが、だからこそ『高校生Ring』の活動には人一倍の時間を注ぐつもりです。この経験で培ったことは受験にも生かしていきたいです。
生徒事例2:東大阪大学柏原高等学校
[お話しいただいた生徒さん]
2022年度の『高校生Ring AWARD』でグランプリを受賞した3年生。その経験を元に大学の推薦入試に合格。
ビジネスプランの種は、想像以上に自分の近くにあった。
自分が考えたサービスをビジネスとして成立させるなら、まだ誰も思いついていないようなアイデアが必要不可欠だと感じていました。しかし、ビジネスプランのきっかけを探そうとしたとき、これだけ便利な世の中で生活していると、自分の身の回りにある不便や不満を見つけ出すということが、第一に難しかったです。周りを見渡してもなかなかいいアイデアが思い浮かばず、そのときにふとこれまでの人生を振り返ってみると、自分自身の過去にプランに活かせそうな社会の課題を見つけました。
中学校に進学する際にバドミントンが強い学校に行きたかったのですが、地元ではなかなか見つからず、県外にある学校に進学しました。偶然にも私は祖母の家が希望する中学校の近くにあったので、そこから通学する方法を選ぶことができましたが、その一方で、進学先の学校に寮や滞在先がなく、希望する学校への進学を諦めてしまう学生もきっと世の中にはいるのではないか、と考えました。
そして、寮や滞在先がなく遠方の学校への進学を諦めている学生と、空き家を有効活用したい高齢者と、少子化や地域の過疎化などで県外からも生徒を受け入れたい高校との三者をつなぐ、県外進学者のためのホームステイマッチングサービスを『高校生Ring』のプランとして提案しました。個人的な経験を基に考え始めたビジネスプランでしたが、SNSを通して全国の中高生約500人にアンケート調査を実施したところ、およそ50%が県外への進学を希望していて、そのうち10人に1人が寮や滞在先がないために進学を断念しているという結果が出て、自分の小さなひらめきがビジネスになる予感がしました。
制作過程の後半では、企業のピッチ動画を参考にしながら企画の提案力を高めたり、先生の前でプレゼンテーションの練習を繰り返して人前に立つ場数を増やしたりしながら、自分の意見を堂々と話す練習をとにかく繰り返しました。結果として、『高校生Ring AWARD』ではグランプリを受賞することができて良かったです。受賞後は、堂々と話せるという理由から学校のオープンスクールの司会を毎回任されています(笑)。
推薦入試への活用。『高校生Ring』での経験が文武両道の学校生活の裏付けに。
『高校生Ring』に参加する前は、自分が大学でどのようなことを勉強したいのか明確には分からず、『高校生Ring AWARD』の質問コーナーでも司会の方に「大学の学部はどのように選びましたか?」と初歩的な質問をしてしまうくらい進路が漠然としていました。
私はスポーツ推薦を利用して大学に合格することができましたが、その大学は推薦応募時に希望する学部を提出する必要がありました。私は『高校生Ring』を機に、会社経営についてもっと詳しく勉強がしたいと感じていたので、商学部を希望しました。
面接では、ほとんど『高校生Ring』の話を聞かれました。これは後から大学の監督から聞いた話ですが、『高校生Ring』の経験を伝えて、スポーツだけではなく勉強にも前向きに取り組む姿勢をアピールできたことが大学合格につながったそうです。スポーツ推薦とはいえ、スポーツと勉強の両方の成績を求められましたが、『高校生Ring』でグランプリを受賞した経験は、私が商学部を志望することへの信ぴょう性も高めてくれたのではないかと感じています。