
身近な問いからビジネスプランを生み出す
『高校生Ring AWARD 2024』開催
身近な問いからビジネスプランを生み出す
『高校生Ring AWARD 2024』開催
アントレプレナーシップを「自ら問いを立て、行動し、変化を起こす力」と定義し、先の見通しが立てにくい時代を生き抜く上で、人生を自分の意志で切り拓く能力を育んでほしい-『高校生Ring』はそんな思いから始まったリクルート主催のアントレプレナーシップ教育プログラムです。
『高校生Ring 2024』の集大成として、2025年2月に東京都内で最終審査会「高校生Ring AWARD 2024」が開催されました。

2024年度は全国から3万2,244名の高校生が参加しました。全国から寄せられた数多くのビジネスプランの中から、1次審査、2次審査、そして3次審査を経て選出された5組のファイナリストが、この日のステージに立ちました。彼らはこの日、“半径5mの問い”から生まれた個性豊かなビジネスプランを発表しました。本記事では、当日の様子をレポートします。

昨年に引き続きMCを務めるアナウンサーの青木源太さんと、タレントの岡田結実さんのオープニングトークから開幕した「高校生Ring AWARD 2024」。最終審査会には、リクルートからスタディサプリプロダクト責任者の池田脩太郎と、執行役員の柏村美生に加えて、社外からゲスト審査員をお招きしました。
ゲスト審査員は、
― 学生起業家であり、企業が抱える「もったいない」を「誰かのありがとう」に変えるサービスを展開
株式会社StockBase代表取締役 関 芳実氏
― 企業道や失敗学などの分野で教壇に立ち、アントレプレナーシップに関する多数の著書を執筆
バブソン大学アントレプレナーシップ准教授 山川 恭弘氏
の2名です。
イベントの冒頭、審査員長の池田が、最終審査を前に『高校生Ring』にかける思いを語りました。

池田:「『高校生Ring』はもともとリクルートが40年以上続けている新規事業提案制度から派生しました。『スタディサプリ』や『ゼクシィ』といったサービスもこの制度から誕生しています。この哲学を高校生に共有し“未来を変える想像力”を育てることを目的としています。また“半径5m以内の問い”に焦点を当てることで、自分の身近な生活の中から課題を見つけ、解決策を考える力を養うことが狙いです。
プレゼンテーションを評価する観点は「オリジナルな視点」「ビジネスとして成立する可能性」「当事者意識」の3つです。なかでも特に「圧倒的な当事者意識」を重視し、高校生自身の情熱や解決したいという思いがどれほど伝わるかに注目しています」
会場の期待も高まり、5組の最終プレゼンテーションがついに始まりました。
学校名 | 愛知工業大学名電高等学校 |
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プラン名 | 「Meiden Synergy ~sports analytics~」 |
〈Meiden Synergy ~sports analytics~〉は、スポーツ強豪校の視点から、部活動と学業の両立を支援するサービスです。
「全国大会に出場するレベルの部活に所属していると、週6日は練習があり、勉強時間の確保が難しい。でも将来の夢につながる勉強も部活動も、どちらも諦めたくない」。そんな自分たちの悩みを解決する〈Meiden Synergy ~sports analytics~〉は、選手の練習や試合のデータを計測・分析し、個々に最適な練習メニューを提案するデータ活用サービスです。この分析を通じて、選手やチームの練習が効率化すると、練習時間が短くでき、選手たちは勉強する時間を確保できるようになる。このような仕組みです。
さらには、データサイエンスを学ぶ学生と部活動をつなぐプラットフォームを通じて、学生アナリストの育成とスポーツデータ活用の促進も目指します。
自分たちの部活動と学業の両立だけでなく、アナリストの収益についてもしっかりプランを立てている点も特徴です。身振り手振りに加え、審査員に適宜アイコンタクトを行いながら、訴えるプレゼンでした。

学校名 | 桜丘学園桜丘高等学校 |
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プラン名 | 「Wan Walking」 |
〈Wan Walking〉は愛犬の散歩を代行するマッチングサービス。共働き家庭や高齢者など、毎日の散歩が難しい飼い主と、犬が好きだけれど事情があって飼えない方や犬と触れ合いたい方をつなぐことができます。30分・500円という手軽な料金で利用できるのが大きな特徴ですが、その一方で、ビジネスプラン作成の途中で集計したアンケートでは「手軽すぎて逆に不安」という意見も寄せられたそう。
アンケートの結果を参考に、運営方法や仕組みを再検討。考えたのは「①利用者登録」「②顔合わせ」「③マッチング」「④散歩実施、評価」の流れです。さらなる安全対策として、散歩時に小型カメラの装着や保険加入を義務付けたり、鍵管理ルールを設けたりすることで、安全面を強調しました。
犬を実際に飼っている池田は「500円で散歩代行してもらえるなら、今すぐにでも利用したい」とコメント。プレゼンター2人のぴったり息の合った発表は説得力があり、ワンちゃんに対する愛情があふれるものでした。

学校名 | 山口県立周防大島高等学校 |
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プラン名 | 「HAZAKURA」 |
〈HAZAKURA〉は、発達障がい者が日常で抱える困りごとを支援するAI活用アプリ。見た目では分からない障がいゆえ、理解されにくいことも多く、ADHD当事者として悩んでいたことがこのプランの原点です。
音声認識で、授業で先生が話した内容を要約・整理し、複数のデバイスでタスクを共有。これによりユーザーがシングルタスクで物事に取り組む環境を整えます。またAIが感情を検知し、不安を軽減するための声掛けや次に取るべき行動を提案する機能も搭載します。例えば教科書を忘れた場面では、不安で頭がいっぱいになってしまうのを防げるよう、冷静さを促すアプローチを行います。
将来的には利用者からのフィードバックを反映し、持続的に機能を改良することや、海外展開も視野に。発表者は『高校生Ring』に参加したことによって「ADHDの過集中してしまう短所が、粘り強く考え抜く長所に変わった」経験を共有し、多くの人が自分らしく生きられる社会を実現したいと訴えました。アプリ名には「桜の花を支える葉桜のように、人々の助けになりたい」と〈HAZAKURA〉に込めた思いを語りました。

学校名 | 佐久長聖高等学校 |
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プラン名 | あなたのための天気予報アプリ「one's weather」 |
〈あなたのための天気予報アプリ「one's weather」〉は、個人の体感温度や健康状態、行動に対応した天気予報アプリです。既存の天気予報アプリからは一律の情報を得ることができますが、体感や、気候によって受ける体調変化は人それぞれ。「今日は暖かいだろう」と思い、上着を持たずに出て寒い思いをしたり、気圧の変化で片頭痛が起こるタイミングが分からず、急に体調を崩してしまったりした経験から、天気予報アプリをより使いやすいものにできるのではないかという発想が生まれました。
〈one's weather〉の特徴は、アプリを使用し続けることで入力情報が蓄積され、より個人に合った情報が表示されるようになるパーソナライズ機能が搭載されていること。自身の感覚に合わせた情報表示、花粉症やアレルギー症状記録のデータ活用、服装や髪型、メイクなどの提案で日常生活の支援を行ってくれます。
大きな寒暖差や花粉の飛散量、気圧の変化などによって、体調や行動に影響が出やすく悩んでいる方も含め、幅広い個人のニーズが想定され、アプリにおける収益モデルについても細かく考えられていました。

学校名 | 鳥取城北高等学校 |
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プラン名 | 「ホテルゲット」 |
〈ホテルゲット〉は、ライブのチケット予約と同時に宿泊先を手配できるアプリです。ライブのチケットが当選すれば自動的にホテル予約が確定し、落選した際にはキャンセルされる仕組み。さらに公共交通機関の移動時間を考慮した検索や、会場周辺の宿泊施設をマップで確認する機能を備えています。このアプリを導入することで、ライブ参加者には宿泊確保による安心感を提供、ライブ主催者には理不尽なクレームの削減、宿泊施設にはキャンセルトラブルのリスクを軽減できるという、三者全てにメリットがある仕組みです。
将来的にはライブ以外のイベントにも対応可能なサービスとして展開する予定。また民泊機能を導入し、個人宅を通じてファン同士が交流できる仕組みも検討しています。
〈ホテルゲット〉は地方在住者ならではの課題に着目し、イベントチケットと宿泊予約を一体化する実用的な仕組みが高く評価されました。審査員からは「日本人だけではなく、近年増加している海外の観光客にも便利なサービスになるのでは」とインバウンドの需要に期待できる意見もありました。

全国から3万人以上の高校生が取り組んだ『高校生Ring 2024』は、一人ひとりが身近な問いに向き合い、たくさんのアイデアが生まれました。会場入り口には、高校生たちの"半径5mの問い”の一部を、展示して紹介。裏返してみると、なぜその問いが浮かんだか、その背景や問いを解決するためのアイデアが書かれています。大人が見過ごしてしまいそうな、高校生だからこそ生まれる視点にあふれ、多くの来場者が立ち止まって一つひとつの問いとその背景を読み込んでいました。


結果発表
審査の結果、グランプリは佐久長聖高等学校の〈あなたのための天気予報アプリ「one's weather」〉に決定しました。
審査員からは「既存のお天気アプリとは一線を画す革新的なアイデアでした。お天気情報の精度を追求するだけでなく『半径5mの課題』に真摯に向き合い、体感を重視する新たな視点が評価されました。課題とプロダクトが見事に一致し、多くの可能性を秘めた提案でした」という講評がありました。
受賞者コメント:「リハーサルではすごく緊張していましたが、始まったら楽しくプレゼンできました。審査員の方にも私たちの思いが伝わり『今すぐにでも利用したい』と言っていただけて、3人で頑張ってきてよかったと思いました。このような素晴らしい賞をいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございました!」

そして準グランプリは、山口県立周防大島高等学校の〈HAZAKURA〉が受賞しました。
審査員からは、「当事者として、困りごとをデータとして蓄積していくことで、自分自身の特徴を改めて認識できるだけでなく、そのデータを家族や先生方と共有することで、周囲の理解を深めるきっかけにもなります。また、将来的にデータが蓄積されていくことで、発達障がいなどへの理解が広がり、社会や職場での受け入れやサポートにつながる可能性も感じられます。こうしたネットワークを活用した素晴らしいプレゼンテーションを拝見し、非常に感銘を受けました」と伝えられました。
受賞者コメント:「まずは応援してくれた友人や家族、先生方に感謝を伝えたいです。また、発達障がいの当事者として伝えたいことは、特別扱いしてほしいわけではなく、普通の人間として接してほしいということ。それを叶えるためにも〈HAZAKURA〉のようなアプリが必要だと考えています。私の好きなアニメに、AIロボットが出てきます。そのAIロボが自分のそばにいてくれたら……と思ったのが、〈HAZAKURA〉の始まりです。〈HAZAKURA〉に私が欲しいと思った機能を搭載することで、AIロボに救われてきた私のように、多くの人に希望を与えられると思っています」

受賞者を含め、大舞台を終えたファイナリストたちからは、「やりきった」という気持ちと安堵の表情が垣間見えました。5組の素晴らしいプレゼンに対し会場は盛大な拍手で包まれました。

最後に、2名のゲスト審査員から高校生へメッセージが送られました。
関:「審査も大変白熱する内容で、全員が甲乙つけがたい素晴らしいプレゼンテーションでした。特に印象に残ったのは、皆さんの伝える力です。やりたいことをしっかり言葉にし、共感を得ながら進む姿勢は非常に重要です。これからも周囲の力を借りながら、挑戦を続けてほしいと思います」
山川:「本日のプレゼンを通じて、改めて高校生の皆さんの行動力と創造力の素晴らしさを感じました。この経験が次なる挑戦の一歩となることを心から願っています。さらに追求を続けて、多くの課題を解決し、世界をより良い場所に変えていってください。今日は本当に皆さんから元気をいただきました」

「半径5m」の課題に向き合い、独創的な解決策を示した彼らの姿は、未来への大きな可能性を感じさせました。
最後に、会場では当日のリハーサルや本番の様子を映したエンディングムービーが流れ、『高校生Ring AWARD 2024』は閉幕しました。
審査員長の池田は全国の高校生へ向けてこのようにメッセージを送りました。
池田:「「高校生Ring AWARD 2024」ではグランプリが決定しましたが、グランプリを獲得することだけが正解や結果ではないと思っています。エントリーいただいた全国3万2千人以上の方が、『高校生Ring』に取り組むプロセスの中でご自身の身近な問いに向き合い、「チャレンジしたことが面白かった! やりがいを感じた!」など、皆さんのアントレプレナーシップの思いに火がついた瞬間があるのではないでしょうか。そのような経験が、これからの人生で情熱を持ち何かに取り組むきっかけにつながれば嬉しく思います。また、日本でアントレプレナーシップが広がるよう『高校生Ring』の活動を今後も広げていきたいと思っています。」
来年度の『高校生Ring 2025』はもうすぐ始まります。プログラムに参加した経験がいつの日か、未来に羽ばたいていく皆さんの背中を少しでも後押しする力となることを願っています。
※プログラム参加にあたり提出したエントリーシートの著作権その他一切の権利は、生徒に帰属します。
※名称・内容等はあくまでもアントレプレナーシップ教育プログラムにおけるプラン名・アイデアです。
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