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2024.09.17 Tue
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『高校生Ring』のアイデアをもとに、
プロトタイプ制作に挑戦。
2023年度受賞者のその後に迫る

『高校生Ring』のアイデアをもとに、
プロトタイプ制作に挑戦。
2023年度受賞者のその後に迫る

全国で2万5000人以上の高校生にエントリーいただいた2023年度の『高校生Ring』。参加した高校生にとって、このプログラムはどのような機会になったのでしょうか。そこで今回は、『高校生Ring』ファイナリストのその後の様子をご紹介。お話をうかがったのは、2023年度準グランプリ「外来シュポット」を考案した、東京都立上野高等学校の生徒さんです。

大人と関わりながら、自ら決めたテーマに取り組むのが楽しかった

── まずは、『高校生Ring AWARD 2023』で準グランプリを受賞した「外来シュポット」について、改めてご紹介をお願いします。

私が考えた「外来シュポット」は、外来魚が日本の湖や河川の生態系に与えている問題を解決するアイデアです。位置情報を活用したスマホゲームアプリにすることで、ユーザーがゲームを楽しめば楽しむほど、外来魚の情報がマップに可視化されていくという仕組み。釣り好きのみなさんはもちろん、スマホゲームを入口に新規の釣りユーザーも呼び込み、外来魚の調査や駆除を推進していくというビジネスプランです。

── もともと社会問題やビジネスプランを考えることには興味があったのでしょうか。

すごく関心があったわけではないのですが、中学の総合学習の授業や受験勉強で取り組んだ小論文のテーマなどで社会問題について考える機会があり、この勉強自体は好きでした。だから、『高校生Ring』に取り組むのも面白そうだとは思っていたんです。

── 外来魚の問題を解決しようと思ったのはなぜですか。

最初はなかなかテーマが決められなかったのですが、夏休みに滋賀県で暮らす祖父の家に遊びにいった際、琵琶湖で一緒に釣りをしたことがきっかけになりました。釣りの合間に祖父が、「ブルーギルなど人によって持ち込まれた外来種が、琵琶湖の固有種を脅かしている」と話してくれて興味を持ち、私にできることを考えてみたくなったんです。

── 一次、二次、三次審査を勝ち抜いて、ファイナリストとして大勢の前でプレゼンテーションを行い、結果は準グランプリ。そこに至るまでにはリクルートの従業員をメンターにつけてアイデアのブラッシュアップにも取り組みました。そこまでの熱量を持てたのはなぜですか。

一番の理由は純粋に「楽しかったから」ですね。実際に企業で働くメンターさんからビジネスの考え方やプレゼンテーションの仕方を学べたことも大きかったですし、調査の過程で滋賀県庁や琵琶湖博物館に問い合わせをしたときも、私のチャレンジに関心を持ってくれて、資料やデータを提供してもらえた。高校生の私にとってはなかなかない経験で緊張することもありましたが、勇気を出して一歩踏み出せば協力してくれる大人にも出会うことができ、ビジネスアイデアがどんどん磨かれていくのが面白かったんです。お世話になった皆さんのためにも、最後まで頑張ろうと思えました。

「高校生Ring AWARD 2023」準グランプリ「外来シュポット」を考案した、東京都立上野高等学校の生徒さん

── 準グランプリを取って、周囲の反応はいかがですか。

このアイデアのきっかけになった祖父が一番喜んでくれています。一般公開されている最終プレゼンの動画を、近所の人たちにも見せてまわったらしいです(笑)。

せっかくここまで取り組んだのだから、自分の力で実現させてみたい!

── 2023年度の『高校生Ring』としては、今年2月に実施されたアワードで一区切りとなりましたが、「外来シュポット」はその後どうなったのでしょうか。

※ 『高校生Ring』にエントリーされたビジネスプランの著作権やその他一切の権利は、生徒の皆さんに帰属。
※ 「高校生Ring AWARD 2023」セミファイナリスト案件に関して、実際の試作品を用いた検証プロセスをリクルートがサポートするプログラムが用意された。

『高校生Ring』ではあくまでもアイデアを練るところまででしたが、リクルートの皆さんからアドバイスをいただいて、アイデアを実際の形にしてみる、アプリのプロトタイプ(試作品)を作ることに挑戦。作ったものを実際の釣りユーザーや学校の生物部の人たちに見てもらう「ユーザー調査」をするところまでチャレンジしました。

── さらに一歩踏み込んだ取り組みをしているのはなぜですか。

せっかくここまで考えたのだから、アイデアを出すだけで何もしないのはもったいないなと思ったんです。それに、何も対策を打てなければこうしている間にも外来魚は増え続ける。たくさん考えて、たくさん調べるうちに、外来魚の問題が私の中で身近な問題になっていて、これは自分の手でなんとかしたいという気持ちになっていました。だから、自力でもいつかサービスを実現しようと考えていたところ、リクルートの皆さんからのアドバイスもあって、やってみようと思ったんです。

「高校生Ring AWARD 2023」準グランプリ「外来シュポット」

── アイデアを形にするとなると、ただ考えるだけではなく技術も必要になりますよね。「外来シュポット」はアプリなので、プログラミングなども必要だったのではないですか。

そうですね、そこが一番苦労したところです。私はもともと美大志望で、高校でも部活のポスターをアプリで作ったことがあるので、デザインはそこまで苦戦しなかったのですが、プログラミングのスキルが全然なくて…。「情報」の授業でちょっとやったくらいだったから、アプリをイチから作るとなるとどうしていいのか全く分かりませんでした。

── その状態からどうやって作っていったのですか。

「プロトタイプ(試作品)を作るのはあくまでも検証のためだから、この段階でしっかり作り込む必要はなくて、アプリのデザインや機能が分かるものであればいいよ」と、リクルートの人からアドバイスをもらったんです。私はいきなり完成品に近い状態を目指そうとしていたので、実際のビジネスにおけるプロダクト開発のステップを教えてもらえて、非常に助かりました。また、皆さんが活用されているツールをいくつか紹介してもらい、プロトタイピングを進めることにしました。

とはいえ、それでも簡単にできたわけではないですよ。ツールを使っていると、「これってどうしたらいいの?」と分からなくなるときも度々あったので、YouTubeの解説動画を見て自力で覚えていきました。あとは、リクルートで専門の仕事をしている方にも普段の仕事でどのように使っているのかを質問したこともあります。今後プログラミングの知識が必要になるタイミングもあるから、勉強にオススメのアプリも教えてもらいました。

「高校生Ring AWARD 2023」準グランプリ「外来シュポット」

プロトタイプを作る過程で養われた、やりきる力

── ビジネスの現場で実際のサービスを創っている大人に助言をもらいながら取り組むのは、普段の学校での勉強とは一味違う機会だったのではないでしょうか。

すごく貴重な機会でしたね。学校では、興味の大小に関係なく広くいろんな科目を学んでいますが、今回は自分のやりたいことに特化して専門家から学んでいる感覚。苦労もありましたが、興味のあることだから楽しく学べた気がします。自分のやりたいことを実際の社会ではどう実現しているのか、より実践的なヒントをもらいながら勉強していくのも面白かったです。

あとは、学校の勉強って社会に出てからも役に立つんだなと感じたときもあって。例えば、デザインの仕方。アプリのUIを設計するときは、はじめに写真や文章やボタンなどの枠(ワイヤーフレーム)だけをレイアウトして全体の設計図を作ってから詳細のデザインをしていくことを知りましたが、これって国語の作文や小論文で文章を組み立てるときと同じだなと思ったんですよね。そうした気づきがあったから、学校で勉強する一つひとつの見え方も少し変わった気がします。

── プロトタイプを制作したことは、自身にとってどんな機会になったと思いますか。

「アイデアを形にする」という目標を立てて、それを達成していくために独学したり、周囲の力を借りたりしながら、実現させたこと。諦めずに「やりきる力」を磨く機会になったと思います。また、人に見せられる“もの”ができたのは、サービス実現に向けた次のステップに進むためにも大切なこと。これを見せれば、より具体的に私が取り組みたいことをイメージしてもらえるはずなので、共感・協働してくれそうな人・団体とのつながりを広げるフックになると思っています。

実際のビジネスにおけるプロダクト開発のステップを教えてもらいながら試行錯誤

── プロトタイプを使った「ユーザー調査」はどうでしたか。

みんなが面白がって見てくれたのが、まずは嬉しかったです。アンケートのコメントを読むと、いい意見だけでなく「こうしたらもっと良くなる」と改善意見をもらえたのが参考になりました。なかには自分があまり検討できていなかった観点のヒントになったものもありましたね。例えば、「ゲームに夢中になって釣りのルールを違反する人が出ないように、マップ上に釣り禁止区域を表示した方がいいのではないか」という意見。あとは、「間違った情報の投稿や“荒らし”対策をどうするか」という意見も。実際にサービスを運営していく上では疎かにできない観点なので、釣りや魚に詳しい人たちの意見を収集できて良かったです。

大学で学びたいことが明確になり、行きたい学部が見えてきた

── 実際のビジネスでは、企画段階からリリースまでの間に検討・検証を重ねる中で、事業の方向性やサービス内容を調整することも良くあります。「外来シュポット」は、ここまでの取り組みの中で何か変化がありましたか。

『高校生Ring』にエントリーした段階では、外来魚の調査と駆除を目的に置いていたのですが、水界生態系や環境保護について調べていくうちに、いたずらに駆除を推進するのはリスクがあることが分かってきました。というのも、外来魚対策は湖や河川の状況によってさまざまで、ただ駆除をすれば解決するわけでもないからです。また、別の環境から持ち込まれた魚といえども、今は現実にその場所に生息し繁殖している以上、特定の魚を駆除すれば、その場所の生態系が崩れてしまう。急激な変化が別の問題を引き起こしかねないことも理解しました。

だからこそ、「外来シュポット」が担うべきは、外来魚の「調査」だと役割を再定義。今は、一般ユーザーがゲームを楽しみながら調査に参加できる仕組みとしてサービスの立ち位置を調整しました。「外来シュポット」で得られる調査データを行政や専門の団体に提供し、個別の外来魚対策に役立ててもらうという流れを検討しています。

── 「外来シュポット」は、本当に実現できそうでしょうか。

いきなりサービス化ができるかといえば、現時点ではまだまだハードルもあるのですが、今は市場調査など高校生のうちに準備できることをやっておこうと思っています。来年は受験もあるし、より具体的に取り組むとしたら大学に入ってからですね。そういう意味では、プロダクトデザインが学べるような、クリエイティブ系の学部・学科を目指したいです。

── 『高校生Ring』をきっかけに、進路が定まってきたのですね。

そうですね。美大に行きたいのはもともとの希望だったんですけど、その中でもどんな学部がいいのかは自分のなかで曖昧でした。それが、自ら発見した課題をビジネスで解決しようと取り組んでいくうちに、これを学問としても学びたいと思うように。美大の中でも社会にイノベーションを起こすためのクリエイティブを学べる場所を探して、いくつかオープンキャンパスにも参加しているところです。

「高校生Ring AWARD 2023」準グランプリ「外来シュポット」

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