2024.12.20しごと
ワークス採用見通し調査(新卒:2026年卒)新卒採用の増勢はやや鈍化も、2026年卒も高い採用意欲
(c) Recruit Co., Ltd.
しごと
株式会社リクルート
株式会社リクルートホールディングスのグループ会社であり、アジアを中心に人材紹介事業を展開するRGF International Recruitment Holdings Limited(本社:香港、CEO:中重 宏基)は、このたび、2021年4―6月期の中国・東南アジア・インドにおける日系企業を中心とした求人・求職者の動向をまとめました。
2021年4-6月期、日系企業による求人案件数は、前年同期比大幅増となった。
2019年同時期と比較すると約1割増。コロナ禍以前の5年(2015~2019年)の同時期の平均求人数と比較すると微増となっている。中国における日系企業の採用意欲は、コロナ禍の影響を脱し、おおむね正常化したと言えそうだ。下半期も2019年下半期と同水準の求人が出てくると見込まれる。
一方、「コロナ禍からの急回復」というステージは終わりを迎えつつあり、足元の景況感も厳しく、国慶節以降は、求人数の伸びが鈍化する可能性もある。
4-6月期は、さまざまな業種で「業績好調」の声が聞こえた。特に勢いがあるのが、半導体・電子部品関連業界。半導体に関しては、人員補強を進めている企業が見受けられ、製造装置から部材、原料と、川上から川下まで好況。
自動車業界企業の採用意欲も高い。自動車生産における半導体不足で完成車の生産・販売に支障が出ているにもかかわらず、意欲が落ちないのは、部品メーカーの顧客層が日系完成車メーカーに加え、外資系・地場系完成車メーカーにも広がってきていることが一因と考えられる。
また、医療品・医療機器業界からも、引き続き多くの求人依頼が寄せられている。中国市場の規模は着実に拡大しているため、このトレンドは長期化すると見込まれる。今後、中国に新規進出する日系企業も増えてくるのではないかと予測される。
日本人求職者の就労状況については、労働ビザ取得手続きがコロナ禍前よりも煩雑になり、取得難易度が高い状況が続いている。一方、他のアジア諸国には、新規ビザ発給はもちろん、ビザ更新でさえも滞っている地域もあるため、それらの国と比較すれば、就労ビザ取得のハードルは低いとも言える。そのため、今後、中国以外のアジアでの転職を希望していた求職者が、目的地を中国に切り替えるケースが出てくる可能性も想定される。
また、現地人材を対象とする求人は、回復基調が鮮明。しかし、求職者の動きはまだ鈍い。とりわけ結婚・出産、マイホーム購入などの重要なライフイベントが続く30歳前後の人材は、安定を重視する傾向が強く、転職活動には慎重な印象。そのことも一因となって、求人は多いが稼働求職者は少なく、売り手市場が続いている。
【転職事例】医療関連製品営業部長(中国人材)/日系・製造業界/40代前半/約45万中国人民元(年収)
総経理
森 大尚(もり ひろたか)
香港の転職市場は、旧正月後の最盛期を過ぎ、落ちついた状況である。一方、3月以降コロナ感染者数は一桁を維持しており、今後の経済回復が期待される。具体的には、大型イベント(制限付き)の再開、新駅の開通に伴う周辺不動産価格の高騰、政府主導の第二弾給付金の実施といった兆しに加え、ワクチン接種完了率が7割に到達すれば、中国との国境開通も予測されるなど、秋以降の本格的な経済活動の再開が見込まれる。これに伴い、国をまたいだ人材採用活動も増加傾向にある。
2021年4-6月期における求人動向として、金融機関や、電子部品業界を中心に駐在員の帰国・移住に伴う退職が発生したことを背景に現地採用の求人が増加。
一方、同期間の求職者の動向については、直近の5―6月では、例年通り昇給・ボーナス支給のタイミングを考慮し、転職活動を控えるトレンドが見受けられる。また今年の特徴として、安定雇用の可能性を重視し、条件の見極めにも慎重になっており、今までよりも厳しく求人条件を精査して転職活動を進めるケースが増加してきている。
在住日本人数は最盛期に比べると半減しており、在住日本人については売り手市場が加速することが今後見込まれる。特に、業界を問わず需要が高まっているのは営業・コンサル職で、今後も継続してニーズは高いだろう。
就業ビザについては、依然審査基準としては厳しいものの取得成功事例(営業職・専門職等)も出ている。
【転職事例】プロジェクトマネージャー(日本人材)/日系/30代/約700万円(年収)
RGF HR Agent
事業責任者
木村 秀之(きむら ひでゆき)
例年インドでは3-5月頃にかけて新規採用の求人が増加するが、今年は新型コロナウイルス第2波が影響。マーケット状況の先行きが不透明であることから、新規採用を控える企業が多く見られた。
また、日本人駐在員の一時帰国対応、自社スタッフのコロナ感染の発生、製造業における工業用酸素ボンベの医療機関への提供など、日系企業においても、事業運営の緊急対応に見舞われる状況であった。
Centre for Monitoring Indian Economy (CMIE)の発表によると、2021年5月には失業率が14.7%に達しており、コロナ禍の不況によって失業となった現地人材の転職希望者が大幅に増加した。マーケット状況を鑑み、昇給率を低く抑えた企業も多く、給与アップを目的とした転職活動層も増加。また、製造業を除く多くの企業では在宅勤務が普及し、転職活動の際の条件選びの一つにリモートワーク制度を重視する傾向の変化も見受けられる。
このような環境下ではあったが、日本からのITソフトウェア開発需要が続く日系IT企業、Eコマースが好調な一部の消費財メーカーでは、積極的な新規採用も多く見られた。
6月のロックダウン解除以降は、マーケットは緩やかに回復へ向かっている。多くの企業では、7-8月末を目途に日本人駐在員をインドに戻す対応を検討。今後は、これまで新規採用を控えていた企業でも徐々に採用を復活させると見込まれる。
コロナ禍の影響もあり、インドでの就業を希望する日本人求職者は減少傾向。しかし、東南アジアの国々を中心に、新卒者・若手人材向けの就労ビザ発給要件が厳格化している中で、インドでは新卒者でも引き続きビザ取得が可能であり、コロナ禍が鎮静化すれば、特に若手層の就労希望者は相対的に増加すると考えられる。
【転職事例】シニアプロジェクトマネージャー(現地人材)/日系・IT業界/30代後半/約200万インドルピー(年収)
カントリー・マネージャー
坂本 智一(さかもと ともかず)
5月のレバラン(断食明け休暇)前の4月に宗教ボーナスが支給されることから、例年、この時期のインドネシアの転職市場は活発化し、欠員補充を中心とした求人が増える傾向にある。4―5月は例年通りの求人増加トレンドであったが、6月中旬以降、新型コロナウイルス新規感染者が急増。これにより、求職者の転職意欲が停滞、採用市場が鈍化し、コロナ禍以前の水準への回復とまでは至らなかった。感染者数は減少傾向にあるものの、緊急大衆活動制限は継続しており、7月以降も転職・採用意欲の停滞が継続する可能性がある。
その中でも求人が堅調なのは自動車業界。政府の奢侈税減免政策を受け、自動車販売台数は回復傾向。それに伴い生産台数も回復しているため、自動車関連の部品メーカー・素材メーカー・関連する商社・物流企業にて欠員補充・新規増員の採用需要が高まっている。
このほか、プロジェクトが継続している建設業界、コロナ禍の影響をさほど受けていないIT・消費財・食品飲料業界でも採用ニーズは堅調に継続している。
3月下旬に、インドネシア入国に際して、居住許可証(ITAS)がなくとも就労ビザ・シングルビザ所持者の入国が可能となった。これにより、インドネシア国外在住の人材の迎え入れも可能となり、選考の対象に。4―6月期では、日本在住・インドネシア国外在住の日本人の採用が決定している。一方、直近感染者数が急激に増加し規制が強化されたため、ビザの新規受付は8月現在で停止中となっており、再開するまでインドネシア国外在住者向けの採用意欲は停滞する可能性がある。
【転職事例】営業(日本人材)/日系・製造業界/20代/200万円(年収)+住居支給、通勤補助支給
カントリー・マネージャー
藤井 義晃(ふじい よしあき)
4月は「アフターコロナ」の雰囲気に満ち、活気を取り戻しつつあったが、5月にはコロナ変異種流入により、再度コロナ感染クラスターが発生。段階規制策の中でも厳しい規制措置のある「Phase 2 Heightened Alert」に再引き上げとなった。
そのような環境の中、当社で取り扱う日系企業の4-6月期の求人案件数は、前年同期比で増加。コロナによる外食制限によって飲食系の求人は一気に冷え込んだものの、スーパーやデパートといった小売業の求人は依然堅調に推移している。またIT業界の求人は引き続き好調さを保っている。
また、就業ビザ取得の厳格化の流れは継続し、企業の人材需要はシンガポール人や永住権を持つ求職者に集中している。また、5月初旬から7月初旬まで入国規制を行った影響で、求人を在シンガポールの候補者に限定する動きも見られている。
【転職事例】シニア・セールス・エグゼクティブ(現地人材)/日系・消費財業界/30代前半/51,000シンガポールドル(年収)
RGF HR Agent
事業責任者
木村 秀之(きむら ひでゆき)
4月以降、新型コロナウイルス感染者数の急激な増加に伴い、タイ政府は規制を強化。前年同時期と同様、特にバンコク市内では在宅勤務を強いられている企業が多い。ワクチン接種も当初の予定より調達等が遅れており、一般国民に普及して規制緩和に至るまでにはまだまだ時間を要すると見込まれる。
そうした中でも、企業の採用意欲は落ち込んでいない。4-6 月期の全体の求人案件数は1-3月期と比較すると減少したものの、前年同期比では増加。内需が伸び悩む一方、欧米諸国等での外需は継続しており、輸出へ影響が出ていないことが要因である。
日系企業においては、売上拡大へ舵を切るため、営業職の増員を計画する企業が散見された。「エンジニア知見がある」、「同業界のマーケティング知見がある」など、より専門性が高い経験者を求めている。工場を稼働させるため、欠員補充の採用も継続している。対面面接からオンライン面接への切り替えも進んでおり、ITツールを用いた採用手法が定着してきた。
また、人件費削減のため、駐在員ポストを見直し、現地化を図る企業が増加。特にこれまで駐在員が担っていたマネジメントをローカル人材にシフトするために、ローカル人材の管理職採用を検討する企業が増えている。
自動車部品メーカーでは、昨年度の減産の反動もあり、今年は工場稼働率が比較的高めに推移。一方、世界的な半導体不足やタイ周辺国のサプライチェーンの不安定化により、電子・電機業界を中心に生産計画に遅れが生じている業界もある。
タイ政府によるEV政策の推進によって中国の投資が増えており、すでに中国の大手自動車メーカーのEV工場が操業を開始。日系メーカーが高いシェアを占めるタイであるが、中国をはじめとする諸外国とのEV競争によって、機械・電気、自動化など専門性の高い人材の獲得競争がより一層激しくなっていくと見られる。
【転職事例】
生産管理(日本人材)/日系・製造業界/20代後半/約115万タイバーツ(年収)
営業(現地人材)/日系・生活用品業界/30代前半/60万タイバーツ(年収)
ゼネラルマネージャー(現地人材)/日系・医療機器業界/40代前半/260万タイバーツ(年収)
カントリー・マネージャー
澤野 恵直(さわの よしなお)
4月下旬以降、新型コロナウイルス第4波の市中感染者数増加への対策に追われている影響もあり、4-6月のFDI(海外直接投資)投資認可額は前年同期比27.8%減。ベトナム経済は引き続き厳しい状況にあり、転職マーケットも回復に至っていない。
日系企業の動向として、上半期で新規工場進出案件が止まっている状況で、新規海外進出が継続していた2019年までと比較しても、国内景気は戻ってきていない。
そうした中でも、IT人材マーケットは継続高騰。オフショアIT業界へのコロナの影響は限定的であり、国外からの受注案件数は安定しているようだ。
日系企業の採用動向として、求人委託件数は2020年4-6月と比較し、大幅増。新規進出する日系企業は少ない一方、進出済みの日系企業は2020年に採用を控えた反動から、2021年に入ってから採用数を増やしている。特に、コロナの影響が限定的な医療業界では採用需要は安定増加。求人数は2020年4-6月比で特に大幅増となっている。
現地の製薬会社の子会社化に伴い、社内組織を改革、高度人材を積極採用し、営業体制やマーケティング機能の強化を図る日系製薬企業も見受けられた。
一方、ベトナムは他の東南アジア諸国に比べ、就労ビザが取得しやすい国であったが、状況は大きく変化した。2021年2月以降、ベトナムで就労する外国人の資格要件が厳格化されたことにより、多くの駐在員や現地採用の外国人就労に歯止めがかかり続けている。これにより、内定取消や入国待機状態が発生し、多くの企業と人材へ影響が出ている。
一方、現地人材向けの採用においては、欠員補充目的の採用が減少傾向。先行き不透明な環境の中、転職を控えている様子が見てとれる。しかし、高い知識や技術を保有する専門人材はコロナの影響を受けておらず、キャリアップ・昇給を求める積極的に転職活動を行っている。
【転職事例】マーケティング(現地人材)/日系・製薬業界/40代半ば/88,000USD(年収)
カントリー・マネージャー
横沢 朋(よこざわ とも)
リクルートグループは、中国・東南アジア・インドにおいて、RGF Executive Search、 RGF Professional Recruitment、RGF HR Agentの3つのブランドで人材紹介事業を行っています。
2006年の中国進出以来、進出地域の拡大や、買収を通じ、アジアの8の国と地域、17都市で事業を展開しています。日系企業のみならず多国籍企業や現地企業への人材紹介事業を通じて、主要な業界・職種を網羅し、経営幹部からスタッフレベルまでの企業の正社員採用・求職者の転職を支援しています。
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