動物をパートナーにした唯一の競技・パラ馬術とは
パラ馬術は元々、障がいを持つ人のリハビリとして理学療法に取り入れられたスポーツです。パラリンピックの競技で唯一、動物をパートナーとした競技で、1996年のアトランタ大会から、上下肢障がいまたは視覚障がいのある選手を対象としてパラリンピックの正式種目となりました。一般の馬術競技では、3種目を実施する「総合馬術」、演技の正確性と美しさを競う「馬場馬術」、障害物を正確に飛び越えてタイムを競う「障害馬術」がありますが、パラリンピックで行われるのは馬場馬術のみです。
パラ馬術における馬場馬術では、障がいが重い順に5種類のクラスに分けられます。その上で、指定の演技で競う「個人課目」、最大4名で組んだチームのうち3名の合計点で競う「団体課目」、個人課目の成績上位者のみ出場できる「自由演技課目」の3種目が実施されています。演技の採点は、決められた運動課目ごとに「着眼点」と呼ばれる基準が設けられ、正確性やペース、調和などを元に評価されます。
また、男女の区別なく混合で行われる点もパラ馬術の大きな特徴のひとつです。
パラアスリート目線のVR動画でパラ馬術を体感してみよう
動画では、パラ馬術グレードⅢの稲葉 将さんの馬術を紹介しています。稲葉さんが乗馬や馬術競技に出会ったのは、リハビリとして体を動かすために、自宅から通える範囲にあった乗馬クラブの記事を見た母親が勧めてきたのがきっかけでした。唯一動物と一緒に行う競技である馬術は、選手だけではなく馬の体調も関わってくるため、必ずしも自分の思った通りに動けない日もあるという難しさがあります。だからこそ、演技がうまくいったときは練習していてよかった、と思うのだそうです。また、馬術競技に参加するには騎乗者資格が必要となりますが、その際は馬とセットで資格を取得します。どの馬とどの試合に出るかは決まっていないものの、一緒に出た馬と常にベストスコアを出せるように準備をして、最高の演技がしたいと稲葉さんは語ります。
演技を行う際の馬上からの景色や臨場感を、ぜひVR動画で体感してみてください。
パラ馬術の工夫や独自ルール、見どころ
パラ馬術では、障がいに応じて馬に合図を送るために、特殊馬具の使用や馬具の改良が認められています。片手でも扱えるバー状の手綱や、靴や鞭を固定するゴムなど、選手が自分自身の障がいに合わせて工夫して改良した馬具が見られます。ただしどのような馬具を使用してもよいわけではなく、事前に申請を行い許可された馬具のみが使用可能です。
パラ馬術では選手をサポートするガイド役を配置できる独自ルールもあります。記憶障がいがある選手にはコースや演技を伝える「コマンダー」、視覚障がいがある選手には位置を声で知らせる「コーラー」の配置が可能です。
パラ馬術は、決められた演技をいかに正確に、そして美しく行えるかという点も見どころのひとつ。また、自由演技課目では「馬のバレエ」と称されることもある、音楽に合わせた優雅な馬の動き、正装で望む選手と馬の華麗な姿にもご注目。選手との信頼関係があるからこその、驚くほど正確に演技を行う馬の動きにぜひ注目してみてください。
【出演アスリート情報】 ※アスリート情報は、取材当時のものです。
稲葉 将(SHO INABA)
・ クラス:グレードⅢ
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