シッティングバレーボール男子日本代表選手による出張授業
リクルートでは、障がいの有無に関わらず誰もが活躍できる社会の実現を目指す『パラリング』の活動を推進しています。その一環として、共生社会に対する理解が深まる教材の制作や所属するアスリートによる出張授業を実施しています。
2023年5月には、リクルートオフィスサポートに所属する田澤隼選手(東京2020パラリンピック シッティングバレーボール男子日本代表)が、地元青森県弘前市の石川中学校で競技体験授業を行いました。1年生から3年生までの65名に加え、隣接する弘前市立石川小学校の6年生29名にも参加いただき、合計94名での授業となりました。
授業は、生徒会の皆さんによる開会のご挨拶からスタート。校長先生からのご紹介を受けて田澤選手が登場すると、会場から温かな拍手が起こりました。昨年に次ぎ2度目の実施とあって、田澤選手が昨年の訪問時に書いたサイン入りのTシャツを着て再会を喜んでくださる生徒さんも。田澤選手もリラックスした雰囲気で、一つ目のコンテンツである講演に移りました。
今回初めて参加いただく生徒さんもいたことから、改めて田澤選手の自己紹介から。障がいを負った事故から現在までを語る中で「つらい経験だったり、望んだ経験でなかったとしても、自分自身がどう捉えるかが大切。その経験が、その先の人生に活きてきます。」というメッセージを届けました。その上で“その先の人生”として、シッティングバレーボール男子日本代表選手として活躍している現在や、競技の魅力について話しました。
続くコンテンツは、臨場感を持ってパラスポーツに触れることができる『パラスポーツVR動画』。没入感が増すオリジナル紙製VRスコープを提供し、18の競技から好きなものを選んで視聴いただきました。スマートフォンに装着すると360度のアングルで競技を擬似体験できるので、皆さん体の向きをくるくる変えながら楽しんでいました。 多様な競技があることや障がいの有無を超えて一緒に楽しむためのルールなど、共生社会に必要な考え方を学びました。
工夫があれば違いを超えて一緒に楽しむことができる
そしていよいよシッティングバレーボール体験。田澤選手が壇上で基本的な動きをレクチャーします。まずはお尻を床から離してはいけないというルールにのっとり、手と足を大きく動かしての移動。慣れない動きに苦労しながらも、田澤選手のレクチャーで少しずつスピードアップし、会場が湧きます。基本的な動きをマスターした後、学年ごとのチームに分かれてラリーの練習。思うように動けずボールがあちらこちらに飛んでいってしまう段階を経て、気がつけば呼吸をあわせてラリーが続く状態に。
そうして迎えた試合。まずは中学生と小学校6年生の対戦。果敢に挑む小学6年生に、優しくも手心を加えず真剣に迎え撃つ中学生に、会場から拍手喝采が起こります。その熱も冷めやらないままに、今度はバレー部に田澤選手が仲間入りし、先生方と対戦。バレー部の生徒さんを熱くリードし、素晴らしいプレーの数々が生まれます。対する先生チームも負けていません。
印象的だったのは、田澤選手の声かけ。うまくいったプレーにはみんなで喜びを分かち合い、誰かが失敗したときは前向きな言葉で気持ちの切り替えを促します。講演で話した「望んだ経験でなかったとしても、自分自身がどう捉えるかが大切」の体現ともいえ、生徒さんたちの気づきが深まる印象がありました。そして何より、ルールに工夫があれば、障がいの有無を超えて一丸となれることを自らの経験を通して学ぶ時間となりました。
競技で汗を流し心の距離も縮まった中で、最後に生徒さんとの質疑応答。共生社会につながる問いだけにとどまらず、田澤選手のメンタルマネジメントやトレーニングの方法、チームをリードするコツなど、質問は多岐に及びました。
同じ社会に生きる人生の先輩と深めた対話
最後に、体験授業を主催くださった前田先生にインタビューさせていただき、導入いただいたきっかけや昨年1回目を開催した際と、2回目となる今回との違い、今後リクルートの『パラリング』に期待することなどを伺いました。
「石川中学校は、各学年1クラスなんです。小さいころから卒業まで同じクラスメートと過ごし、社会人との接点も限られた狭い環境にいることから、1回目を実施したときは普段の学校生活だけでは得られない体験として企画しました。道徳面やキャリア面での学びを求めていたのです。その後、共生社会を推進するリクルートの『パラリング』の趣旨に触れ、道徳面やキャリア面だけでなく、共生社会を推進する上で欠かせない視点を学ぶ機会へとシフトしました」と前田先生。
先生にとって印象的だったのは、1回目と2回目で生徒さんたちの反応が大きく違ったことだったといいます。「1回目の時は、生徒たちの意識は田澤選手の障がいに集中していました。義足を着けている人が身近にいないため、自分たちとの違いや義足の形状に目がいったのです。ところが2回目は、田澤選手の内面に意識が向かっているのが分かりました。人生の先輩として、どのような考え方や行動を取り入れているのか。とくにバレーボール部の生徒たちは、憧れの競技者として迎えたようで、部活の悩みを相談する生徒もいました。 一番印象的だったのは、悩んでいたときにネットでたまたま田澤選手のインタビュー記事と出会い、心の支えにしてきたという生徒。遠い違う世界の存在だとばかり思っていた方が目の前に現れ、一緒に競技し、目を見て語りかけてくれる経験に心を打たれたようです。」と話す前田先生は、そうした光景を目にされて共生社会に必要なことに改めて気づかされたといいます。
「障がいにフォーカスするのではなく、人生の先輩としてその方の生きざまを通して一人ひとりが持つ違いを理解し、受け止め、誰もが一緒に生きることのできる社会について考えることが、共生社会を推進する上で大切だと感じました。障がいを抱えている人は自分とは違う人、気の毒で助けなければいけないという気持ちではなく、お互いに得意を発揮し、苦手を補い合う。生徒は講演や競技を通じてその点に気づくことができ、結果、最後の質疑応答では自分事として多様な質問へと広がったのだと思います。」と話してくださいました。
最後に前田先生からは「とても良い機会でした。このような授業を今後も定期的に実施できたらと思います。」と嬉しいお言葉をいただき、教材や出張授業を通じて学校現場に貢献したいとの思いを強くしました。
『パラリング』では、学校の授業で活用いただける障がい者理解を目的とした教材やパラスポーツの魅力を体感・理解していただくことを目的とした動画を無償提供しています。
ご興味のあるかたは、下記ご案内をご確認ください。
『考え方を変える=パラダイムシフト』で『つながりの輪を広げる』
パラリングは、これからも障がい者理解のためのプログラムを通して誰もが自分らしく生きる社会づくりに貢献します。
<お問い合わせ先>
株式会社リクルート パラリング 事務局
recruit_pararing@waku-2.com
パラリングとは?
「パラリング」とは「パラダイムシフト(考え方の変化)」と「リング(輪)」の造語で、障がい者理解を広めていくリクルートの活動です。リクルートは障がいの有無に関わらずそれぞれが活躍できる社会の実現を目指して活動をしています。