男性の育休は賛成?先輩パパが語る育児、そして家族のキャリア
2022年4月より改正育児・介護休業法が順次施行されます。男性の育休取得に関心が高まっている方も多いのでは? そこで今回、リクルートのパパたちはどのように育児を捉えているのか、自分の仕事、パートナーの仕事、加えて子どもの成長にどう向き合っているのか、語り合ってもらいました。
※2022年1月に実施されたリクルート従業員向け社内トークイベントからのダイジェスト記事です/敬称略
参加者紹介
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 高橋陽太郎(たかはし・ようたろう)
-
リクルート HR領域プロダクトディベロップメントユニット HR領域エンジニアリング部 HRプロダクト開発2グループ
企業向けの人事システムソフトウエア会社を経て、2015年、リクルートジョブズ(現リクルート)に入社。入社以来一貫して人材系サービスの開発を担当。19年4月からアルバイト・パートメディアの開発マネジャーを務める。フルタイム勤務の妻と10歳の長男、8歳の次男と暮らす。2021年に1年弱、妻がアメリカに単身留学。その間ひとりで家事・育児を担った
- 河田 豊(かわだ・ゆたか)
-
リクルート SUUMOカウンターDivision統括部 接客開発推進グループ
大学卒業後、2012年、リクルートに入社。SUUMOカウンタースタッフとして、全国各地の店舗運営に従事。17年4月よりスタッフ職となり、コンタクトセンターの運営、スタッフ研修の企画・運営などを手掛ける。客室乗務員の妻と5歳の娘、1歳の息子と暮らす
- 宮下真衣子(みやした・まいこ)
-
リクルート 広報・サステナビリティ 広報ブランド推進室 社内広報部
大学卒業後、2008年、リクルートに入社。旅行情報誌『じゃらん』編集部、じゃらんリサーチセンターを経て、社内広報へ。リクルートグループ報『かもめ』やリクルート社内報の編集を担当する。夫と7歳の長男、3歳の長女、愛犬と暮らす。本座談会のモデレーター
宮下:今日はよろしくお願いします。おふたりには過去にリクルートのグループ報『かもめ』の連載企画「家族のじかん」に登場いただきましたが、その働き方は大きな反響を集めました。そんなおふたりに登場いただけるとのことで、今日は社内のプレパパ・ママや現役パパ・ママ達がたくさん参加してくださっています。
河田:よろしくお願いします。私は入社以来ずっと、SUUMOのカウンター業務に携わっています。最初の5年間は店舗でお客様対応などを行い、その後、裏方的なポジションであるスタッフ職に移りました。5歳の娘と1歳の息子がいるのですが、育休を取ったのはどちらもスタッフ職の時でした。
高橋:私は人材領域のサービス開発エンジニアリングマネジャーをしています。子どもは10歳の長男と8歳の次男、それに犬のさくらがいます。2021年に妻がアメリカへ留学することになり、ふたりの息子を私ひとりで育児するという経験をしました。
河田:留学ってすごい展開ですよね。お子さんたちは寂しがらなかったんですか?
高橋:もちろん妻についていくという選択肢もあったので、子どもにどうしたいか尋ねてみたら、「日本が良い!」とのことで、私と一緒にいることになりました。
宮下:えー、そこもリクルート流!?子どものうちから「どうしたい?」と問いかけているんですね(笑)。言われてみれば、確かに本人が決めるのが一番ですよね。
働きやすくするコツはスケジュールの共有
宮下:今回は事前に参加者アンケートを実施しましたので、それに基づいていろいろとお話を伺っていければと思います。まずは、1日のタイムスケジュールについて教えてください。
河田:私は妻が客室乗務員なので、子どもを羽田空港内の保育園に預けているんです。毎朝6時半に起きて娘を保育園へ連れていってから、自宅に戻って仕事をしています。夕方は、社内のスケジューラーには18時以降NGとブロックをかけています。
高橋:私は6時45分に起きて朝ごはんを作り、8時までに子どもにご飯を食べさせて送り出し、8時半から17時半まで仕事をしています。スケジューラーにも17時半以降は送迎や夕食作りなど、具体的な家事内容を入れて、会社のメンバーに共有しています。最近子どもが塾に通い始めたのですが、それが16時半開始。なので塾に送った後は、塾近くのリモートオフィス※で仕事をして、また子どもを連れ帰っています。
※リクルートには、自社拠点、外部契約拠点を合わせて、全国に約480拠点のサテライトオフィスがあります
宮下:リモートオフィスにそんな使い方があるとは! 新しい使い方ですね。スケジューラーでブロックしていても業務の都合上、そうはいかない時もありますよね?
高橋:ありますね。ですが、スケジューラーに入れておくことで事前に相談してもらえるんです。事前に分かっていれば「ここは忙しくなるから料理も便利家電に頼ろう」など調整ができます。夕方に家事をして夜に仕事を再開することもあります。家事を挟まず、通しで仕事をした方が効率が良いのでは、と思われるかもしれませんが、家事がなくてもタスクが溜まる時は溜まりますから。時間の問題ではないと思っています。
河田:同感です。自分も周囲にスケジュールを周知することで仕事のスタイルが確立されてきました。以前は娘の就寝時間に間に合わないことがほとんどだったのですが、今では就寝前に一緒に過ごす余裕ができましたね。
パートナーとの家事分担の秘訣は、「決め過ぎない」こと
宮下:パートナーとの家事の役割分担はどうされていますか?
河田:家庭それぞれの話だと思いますが、我が家の場合、妻が自分で家事をやりたいタイプなので、妻がやりづらい保育園の送りやお風呂掃除などを自分がするようにしています。なので、ご飯作りなどは全くしてないです。以前、妻に明確な役割分担を決めようと提案したのですが、却下されまして。役割を決めて履行されなかった時にイラっとするからという理由でした(笑)。そういうのはパートナー同士の性格によりそうですね。
高橋:我が家は子どもが小さい頃は妻の方が始業が早かったので、朝ごはんを作るのは妻、食べさせて片付けるのは私という感じで分担していました。でも、自分もきっちり役割分担をするのは反対派です。河田さんのパートナーと同じ理由ですが、遊び幅を持たせてゆるくしておくのがポイントだと思っています。だって、夕食後の食器洗いの役割を担っていたとして、子どもの寝かしつけをしながら一緒に寝落ちしてしまった場合、翌朝、できていないと責めたくなるじゃないですか(笑)。なので遊び幅は大事だと思います。
宮下:分担して家事がまわることが大事なわけで、そのプロセスは遊びがあってもいいじゃないか、と。私も以前、夫と分担しようと意気込んでタスクを書き出したことがあったんですけど、見事に挫折しました。今思うと、分担することが目的になってしまっていたかも。ゆるさが大事だったんですね…。そのゆるい分担も、お子さんが成長するにつれ変化はありますか?
高橋:10歳の長男は料理をしてくれますね。先日、私が作ったブリの照り焼きに「美味しくない、これなら自分が作る」と言ってきて。だったらどうぞ、と作らせてみたら私より断然美味しかったんです。小学3年生の終わりくらいから料理はできるようになってきましたね。
河田:おお、そんな未来が! 希望がもてます。
宮下:おふたりのお話を伺っていると、パートナーとの相互理解が土台になっているように感じますが、パートナーとのコミュニケーションで何か工夫はありましたか?
河田:最初は全く意思疎通が取れていなかったですよ。一人目の育休は、娘が1歳になって妻が復職する際に取ったんです。取ってはみたものの、当時既に妻の中に子育てルーティンができあがっていて、私が入り込む隙がなくて…。家にいるのに何もできず、居場所がなかったので、それがつらいと妻にぶっちゃけました。そこで初めてお互いの本音を聞けて、ようやく分かり合えた気がします。
高橋:私はろくに話し合っていないです(笑)。どの家事が得意か不得意かなんて見ていたら分かるので、見ていて苦手なところを互いに補うようにしています。向いているほうがやる感覚ですね。その代わり、家庭では守秘義務に抵触しない範囲で仕事の話はたくさんします。その中で互いに仕事の大変さを理解して補い合っている感じです。
「休みづらい」は思い込み。対応策があれば怖くない!
宮下:リクルートは「週休約3日」とも言われているように、有給休暇以外に、男性も取得できる最大40日分の出産育児休暇や家族のケアに使えるケア休暇、ストック休暇(年次有給休暇の未消化分を、上限40日積立できる休暇で、育児や介護、病気の際などに使える)など育児に便利な休暇がありますが、会社の休暇はどう活用されていますか?
高橋:私は昨夏にSTEP休暇(在籍3年以上で取得できる連続休暇)で1ヶ月休み、子どもを連れて妻の留学先であるアメリカを訪れました。他にも(4日以上連続で有休休暇を取得することで手当が付く)アニバーサリー休暇を取って、子どもと遊びに出かけたりしています。リクルートに転職する前は、子どもが病弱だったこともあって有休が足りなくなる事態も発生していたのですが、リクルートの休みの種類の多さのおかげか、初めて有休が翌年に持ち越せるようになりました。
河田:私は子どもの行事などで出産育児休暇や有休を積極的に活用しています。先日も管理職研修があったのですが、子どもの保育園の発表会と重なりまして…。上司に相談の上、研修には途中から参加しました。娘の頑張った姿を見てあげないと一生恨まれそうですからね(笑)。
高橋:私も家族優先ですね。社会人駆け出しの頃に、既にお子さんが成人されている先輩方から、「気づいたら子どもが手を離れていた。育児にもっと関与すれば良かった」という後悔をたくさん聞いていたので。自分は悔いのないようにしようと思っています。
宮下:河田さんが管理職研修を休む際は、上司の方は即答でOKでしたか?
河田:即答OKでした。その上司にお子さんはいらっしゃらないのですが、理由を言ったら「それは絶対に(発表会に)行った方が良いでしょ」という感じで。もちろん自分からも「この時間抜けることになるが、その後こういう形でキャッチアップできる」など提案の上でしたけれど。かなり融通の利く環境だと思います。
宮下:そんな上司の方ばっかりだったら、世の中の男性も育児に参加しやすくなりますね。ただですね、実は今回、事前の視聴者アンケートで集めた質問で多かったのですが、そもそも「育休を取りたい」と言い出しにくくなかったか、という点です。どうですか?
河田:一人目の育休は1歳になる頃というちょっと変わった時期での取得だったこと、異動して部署が変わった直後だったこともあって言い出しづらかったです。でも、そんなのって自分が勝手に思っているだけなんですよね。
高橋:そうそう。皆さん、実際にどこかで「こういう場合は、育休を相談してはならぬ」とか言われたことあります? ないでしょ? 実際に今、自分がマネジャーの立場になってみると、全然どうってことないんですよ。せいぜいお休みの間、どう対応しようかな、と考えるだけで。しかし不思議なことに、取る側はすごく申し訳なく感じちゃうんですよね。
河田:そうなんですよ。意を決して言ってみたところ、「ああ、良いんじゃない」とちゃんと受け止めてくださった。休みに入る前後の仕事をどうするかちゃんと考えておけばいいだけなんです。自分の考え過ぎでした。先輩の中には半年育休を取ったパパもいたので、お話を聞いたりもして。その方からは「この後何十年働くと思っているの? その内の1ヶ月なんてどれだけの影響があるの? 誤差でしょ」って言っていただけて。実際に取ってみると、1歳は歩いたり話したりとできることが増えるタイミングでもあるので、それを横で見ることができたのはすごく良かったなと思っています。
宮下:誤差…ですね、確かに。人生100年時代ですもんね。視聴しているプレパパの皆さんからも共感のコメントがたくさん届いています。
応援し合って高めるお互いのキャリア
宮下:おふたりは共働きの家庭ですが、パートナーのキャリアについてはどう考えていますか?
河田:妻は国際線の客室乗務員ということもあって、「明日から4日間フライトでドイツに行ってきます」とか不規則な勤務体系なので、そこを私がフォローできるようにしています。妻の育休中は甘えていましたが、復職してからは自分が動かざるを得ないですからね(笑)。他にも妻には仕事を続けるための定期的な試験があって、試験勉強が必要なんです。そんな時は彼女が集中できるように、「はーい、みんな公園に行くよー」と子ども達を連れ出したりするようにはしています。今後仕事をどうしていきたいかとかも一緒に話したりしますね。
高橋:私は、本人の好きなようにすればいいと思っています。留学に行きたいと言われた時もかっこいいな、羨ましいなと思っただけで。阻害することで後から何か言われても嫌だなみたいな(笑)。家事を全てひとりで回したことはありませんでしたが、想像してみたらできそうだなと思ったので、止める理由もなかったです。ちなみに、やってみての学びをこちらにまとめているのでよかったらご覧ください
(もしもエンジニアリングマネジャーが妻のアメリカ留学に遭遇したら / Scrum Fest Osaka 2021 - Speaker Deck)
宮下:写真もエンジニア的フロー図も多くてめちゃくちゃ分かりやすいです! 家事代行も活用されていたんですね。すごく参考になります。最後にこれからパパ・ママになる方達に向けてメッセージをお願いします。
高橋:私は今、管理職の立場ですが、皆さんの育児を後押ししたいと思っています。本人の中で、休んでいいのだろうかというような心配はあると思いますが、そこは気にせずに休む時は休んで、仕事と育児を両立してもらえたらと思います。
河田:話しながらこんなこともあったなと懐かしく思っていました。私も高橋さんと同じく、ぜひ上司に相談してみて欲しいです。そして、パートナーと本音で話すことが一番大事だと思っています。それができると楽になるのかなと。一緒に頑張っていきましょう。
宮下:今日は貴重なお話をありがとうございました!