女性活躍って必要?リクルートの担当役員と女性従業員が本音トーク
2021年5月に、「2030年度までに、取締役・上級管理職・管理職・従業員の女性比率を約50%にすることを目指す」と宣言したリクルートグループ。そんななかリクルート社では、3月8日の「国際女性デー」に合わせ、国内リクルートグループのDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)をリードする役員、柏村美生に対して女性従業員ふたりが「女性活躍がなぜ必要なのか」と素朴な疑問をぶつける座談会を実施。働き方が大きく変わる現代を生きる、働く女性達の率直な意見が飛び交いました。
安永:本日は3月8日の「国際女性デー」にあわせて、役員の柏村美生さんを迎えて、社会人3年目の女性営業窪塚さんとワーママでもある私の3人で「女性活躍って必要?それはなぜ?」をテーマにお話できればと思っています。よろしくお願いします。
窪塚:2019年入社の窪塚です。入社当初はリクルーティングアドバイザーとして、企業の採用活動のお手伝いをしていました。今は、飲食店などにシフト管理サービス『Airシフト』の導入を提案する仕事をしています。現在は、オンラインや電話を使った非対面での営業活動が中心です。どうやったらお客様の「不」(不便、不満など)を解消できるだろうと考える仕事が楽しくて、ついつい遅くまで働いてしまうこともある、社会人3年目です。
柏村:私は1998年入社。就職超氷河期でしたね。最初はビジネス経験を積んだら絶対3年で辞めて障がいのある方をサポートする団体で働こうと思っていたのに、もうずっとリクルートにいます(笑)。12回の異動を経験していて、29歳の時には自ら手を挙げて、東京に夫を残し、中国へ6年間単身赴任もしました。
窪塚:6年も中国へ!?そんなに長期間単身赴任というのは、パートナーの方は反対しなかったのですか?
柏村:パートナーはふたつ返事でOKで(笑)。中国赴任がさらに延びる話もあったんだけど、最終的には別居にならない部署に戻してほしいと会社に頼み、帰国しました。パートナーと離れていた期間が長くなって、一時帰国した際に、結構長いはずのマヨネーズの賞味期限が切れているのを見た時「こういう結婚生活をしたかったんじゃないな」と思って。私にとって中国赴任は自ら希望したことで、最高にエキサイティングでした。でも、機会の選択肢として転勤があることは良いと思うのですが、「転勤しないとキャリアが積めない」という状況が日本にはまだあるように思うので、そこは変えていきたいと考えています。
安永:転勤問題も含め、特に女性は働く時にハードルを感じやすいですが、今回美生さんにお聞きしたいのが、「女性活躍って必要なんですか?それはなぜ?」ということです。男性差別じゃない?とか、女性に下駄履かせているんじゃない?とかいろいろ取り沙汰もされますが、どうお考えですか?
柏村:私はあえて、女性活躍ではなく「ジェンダー平等」という言葉を使いたい。日本ではジェンダー平等の話をすると「なぜ女性を特別扱いするの?」という反応が返ってきます。でも、人種による差別をなくそう、その差別から生まれるギャップを埋めていこうということには、そうだよね、となるじゃない?ジェンダーだって同じこと。今は男女間でそもそも凄い差があるから、埋めているだけなんです。意見やアイデアの多様性があることで、会社が社会にポジティブな影響を与えながらサステナブルに成長していくという点でも大事です。リクルートの経営理念「個の尊重」を実現することそのものだとも思っています。
私は学生時代に福祉を学び、当時始めた障がい者支援を続けています。「全ての人に役割がある社会を創りたい」というのが自分のテーマ。その観点からDEIは重要だと考えてきましたが、以前は、ジェンダーの切り口だけにフォーカスして課題を考えることを強くは意識していませんでした。けれど、人事を担当することになり、日本社会のジェンダーギャップの状況を、歴史を含めて深く見たことで、その根深さを痛感しました。そして、そのギャップを埋められずに、障がい者やLGBTQなど、ほかのマイノリティの差を埋めることはもっと難しいと考えました。そこからはこの差をどうにかして埋めなきゃというスイッチが入った感じです。なので今、リクルートで女性管理職や役員が男性に比べて少ないという現状やその背景にあるジェンダーギャップを解消したい。ジェンダー平等を実現したいと考えています。
アンコンシャスバイアスが女性活躍の足枷に
安永:窪塚さんは入社3年目ということですが、これまで働いてきてジェンダーギャップを感じたことはありますか?
窪塚:ないです。けれど、これから先、女性だから注目されるとなると、過大評価されているのかなという気持ち悪さを感じると思います。果たしてこの任用が私の実力に対しての正当な評価なのか?とか…。これに対してはきちんと自分の「ものさし」を持って、過去の自分に対して成長できたかどうかで捉えなくてはならないと思っています。
安永:美生さんも女性を対象とした研修を受けてきた世代ですよね?窪塚さんや私のように、性別にフォーカスされていることに居心地の悪さを感じている女性も多いと思いますが、それについてはどう思いますか?
柏村:リクルートは創業期から、女性の採用やマネジメント層への起用を積極的に行っていたから、自分が研修を受けた当時は、なんで今さら女性だけを集めた研修があるんだろうと違和感がありました。けれど、振り返ると、女性を対象とした研修はあって良かったなと思っています。女性だけが集まってアウトプットしたことで、女性に多い傾向みたいなものが客観的に見えたんですよね。
安永:傾向ですか?
柏村:女性って共感力が高い人が多いから、バランスを重視したコミュニケーションが増えるのだなと。人の意見に傾聴できる良さもある一方、YESかNOのスタンスをとるのが苦手な人も多いのだなとさまざまな気付きにもなりました。ジェンダーギャップがある状況では、女性にフォーカスしたアプローチをとることは大事だと思っています。
さっき窪塚さんが話してくれた、自分なりの成長に目を向けるというのは素晴らしい!でも、管理職などに任用されて「自分は過大評価されているのでは」と感じる男性って、女性と比べたらすごく少ないんじゃない? 女性は、それまでの環境や、育児をする・しないなどで生活が大きく変わることが多いから、「育児と仕事の両立は無理」とか「自分には管理職は無理」といった、女性特有のアンコンシャスバイアスを持ちがち。でもそれって本当にそうなの?無自覚のうちに、自分の可能性を閉ざしてしまっているんじゃないの?“or”じゃなくて“and”でいいし、そのために色んなやり方があるんじゃない?ということを考えてもらうために、リクルート社には女性を対象とした「Career Cafe 28」という研修もあるから、窪塚さんも今後ぜひ出てみてほしいと思います。
窪塚:ありがとうございます。
柏村:それにアンコンシャスバイアスは、もちろん男性やマネジメント層にもある。例えば、結婚を予定している女性がいたら、上司は無自覚に、もしくは、よかれと思って、その女性の新しいチャレンジの機会をしばらく保留したりする。男性に対してはそういうことは相対的に少ないですよね?でもその結果、中長期的に見ると得られる経験が男性の方が多いという事態が発生してしまう。でもそのことは誰も課題として自覚していなくて、「無自覚な配慮」による結果だったんです。典型的なアンコンシャスバイアスですよね。だから、上司に対してもアンコンシャスバイアスに気づいてもらう働きかけをすることがすごく大事。女性メンバーをマネジメントする管理職が、ジェンダー平等の意義やキャリア支援について学ぶ「Career Cafe 28 BOSS」、育児と仕事の両立をVRで体験する管理職向けの研修などは、そうしたアンコンシャスバイアスを崩すきっかけになると思っています。
窪塚:アンコンシャスバイアスのお話を聞いていて、私の仕事でも同じようなことがあるなと思いました。お客様にも現状維持バイアスがあって、私が担当している『Airシフト』の例で言うと、従来の紙のシフト表管理で何とかなっているし、新しいデジタルサービスを導入しなくてもいいと話すお客様が多いんです。実際に導入していただくと、「変えて良かった」という反応が圧倒的に多いのですが、変えるという決断に至るのって、現状を「課題」だと認識するステップが必要なので、難しいんですよね。
柏村:そうそう。変えるのは難しいけれど、課題を可視化すれば分かってもらえる。そして、試行錯誤しながらも、課題を解決しようとしている具体的な事例をお伝えしていくことが何よりも説得力があるよね。
ジェンダーギャップが埋まるのにあと135年
柏村:昨年、世界経済フォーラムが発表した『グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2021』によると、世界でジェンダー平等が達成されるには、あと135年かかると言われている。それくらいジェンダー平等は難しい問題なんです。
安永:135年…。リクルートグループはあと10年以内、2030年度までに、取締役から従業員まで、全ての職層で女性比率を約50%に増やすと昨年宣言しています。なぜ数値目標を宣言したんですか?
柏村:数値目標を出すことや、約50%という水準には今でも社内に色んな意見がある認識です。ただ、これは、「あえて」なんです。具体的な数値目標を出すことで、現状と「ありたい姿」とのギャップが可視化される。そこで初めて、見えるものが揃うんだと思うのです。実際、リクルート社の女性比率は、従業員で約50%、課長級では約30%、経営の意思決定にかかわる役員層となると約10%となります(2021年4月時点、リクルート社単体)。1960年代から女性が活躍してきたリクルートですら、数字で見るとジェンダーギャップがある。さらにずっとこの状態が続いているということは、ジェンダー平等を阻む「何か」がきっとある、存在し続けてしまうんだと思います。そしてその「何か」は、日本や世界のジェンダーギャップの要因と同じなんだろうなと。私は、リクルート社の執行役員として、先輩たちが切り開いてきてくれたバトンを受け取り、とにかくジェンダー平等を前進させていきたいと思っています。
安永:ジェンダー平等を阻むその「何か」って何なんでしょうか?
柏村:リクルートも含めて、日本では、無自覚な「同質化」だと思う。女性も男性もアンコンシャスバイアスの影響を受けているとお話したけれど、その根本にあるのが「同質化」、特に、過去の成功体験に基づいた同質化だと考えています。
具体的には、意思決定、マネジメントスタイル、リーダー像、いろいろな尺度、これらが、これまでのマジョリティである男性を中心としたやり方に同質化してしまっている。例えばリーダーとか管理職って聞いてどんな人をイメージする? ぐいぐい人を引っ張っていく、マッチョで強い人物像をイメージする人が多いんじゃないかな。こんな風に、お手本となるものがいわゆる男性的なものに同質化していたら、やはり女性は異質なものとして弾かれてしまいがちだと思うんです。
管理職層への任用・登用で言えば、あるポストに空きが出た時、その組織がうまく回っている時ほど、前任者に似た人を無自覚に探してしまう。だって今、上手くいっているなら変える必要がないですよね。似たリーダーを連れてくれば良い。そうすると、同質化したリーダーが再生産されてしまう。でも私は、リーダーの数だけ多様なリーダーシップがあったほうが良いと思うんです。
会社もサバンナも多様性で成り立つ
窪塚:どうやったら同質化を崩せるのでしょうか?
柏村:やはり混ぜていくことだと思います。ジェンダーも年齢もキャリアも混ぜていくことで、自然と同質化は崩れていくんじゃないかなと。私はこの一年ほどジェンダーギャップやジェンダー平等について考え続けてきて、最近、生物多様性の重要性と同じことだよな、という考えに至りました(笑)。だって、サバンナにライオンだけがたくさんいてもダメじゃないですか。キリンもゾウもアリンコもいるからこそサバンナが成り立つ。社会も、会社も同じですよね。
安永:同質化を崩して「混ぜる」ための仕組みや仕掛けも作っていくんですか?
柏村:そうですね。例えば、これまで暗黙的に共有されている部分もあった、リーダー任用の要件を改めて言語化することで、マスト要件を最小化し、多様なリーダーが生まれるようにしていきたいと考えています。そして、こうやって取り組んでいくことは、ぜひ社内外に共有していきたい。上手くいった事例も、失敗した事例も、皆で進化していく歴史の過程だと思っているからです。
働き方が変わると組織の常識もアップデートされていく
窪塚:美生さんが入社した当時に比べるとリクルートの働き方もだいぶ変わったのでは?
柏村:入社した23年前は、労働時間がとにかく長かった! 私は楽しくて好きで働いていましたが、ワーママの先輩は子どもを預けて夜遅くまで働いたりと、とても大変だったと思います。でも、2006年に、DEIの専任組織が発足して、全社的に長時間労働改善に取り組み、育児や介護などとの両立もできるように風土や制度を変え始めたんです。そこから働き方が大きく変わってきたと思っています。
窪塚:私は変わった後の恩恵を受けている世代で。同期の男性従業員には既に数ヶ月育休を取った人もいるんですが、それが当たり前にできているのが凄い会社だなと思っています。普通、若手だと育休を取得しづらいと思ってしまうでしょうが、心置きなく取れる環境は本当にいいなと思います。
柏村:当たり前の権利なんだけど、これが当たり前のこととして日本社会に広がったら本当に良いですよね。ジェンダー平等を実現するには、会社全体の働き方を変えることや、子どもを持つ男性の育児参画が必須。会社も全力で支援していきたいですね。働きやすさは絶対に大事。同時に働き甲斐も重要。リクルートは今年、UN Womenが主導する「#HeForShe」に賛同しています。会社全体で、一人ひとりがジェンダー平等について自分なりに考える機会を増やしていきたいと思ったからです。
安永:私は2015年に転職してきたんですが、この5-6年でも急激に働きやすくなりました。2015年当時はリモートワーク試験導入が始まった頃で、リモートワークは週に1-2回くらい。それ以外は朝8時半に出社するルールでした。育児中の同僚は保育園の送迎があるなか、マジョリティにあわせてくれていたのだと今は分かります。でも自分が両立する立場になってみて、私は当時だったら育児と両立はできなかったと思います。今は、リクルート社全体で、原則として「出社を前提としない働き方」になったので、働き方の常識が180度変わりましたね。
柏村:育児や介護との両立のために、組織として必要な工夫が共有されていなかったんですね。両立する人が増えてくると、「この時間は保育園の送迎タイムだから会議を入れるのは避けよう」とか、周囲の常識がアップデートされていく。そういう意味でもいろいろな人がいるのは良いことですよね。
安永:一方で、同じ社内でも温度差があると感じます。昨年、リクルートが週休約3日になった際に、営業職の人にその件でメディアの取材を受けてもらえないかとお願いをしたんです。ですが、「週休3日なんてお客様からの見え方が悪いからなあ…」と言われまして…。
柏村:確かに、お客様によっては、「リクルートも、自分たちの業界・業種に合わせた働き方をしてほしい」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。けれど、リクルートはこれまでも、お客様と一緒に、社会や業界の常識を変えることをやってきたんですよ。今でこそ女性が働くことは当たり前ですが、『とらばーゆ』(1980年に創刊した女性向けの就職・転職情報誌)は画期的でした。創刊は男女雇用機会均等法の成立・施行前。男性と同じように就職するのも難しい時代に、女性の転職なんてうまくいくわけないと思われていたでしょうが、お客様と一緒にその状況を変えてきたから今がある。それはリクルートで働く一人ひとりが「こういう社会の方が良い!」と思ってチャレンジし続けたからできたことだと思っています。
安永:リクルートだからこそできたこともあるということですか?
柏村:クライアント企業と個人カスタマー、両方をよく知っていて、両方にサービスを提供するプラットフォーマーだからこそできるんだと思う。私自身の経験だと、『ホットペッパービューティー』の事業長をしていた時に、出産を機に辞めていく美容師さんをたくさん見ていました。一方で、自分が続けているボランティアの経験から、障がいのある人や高齢者など、気軽に美容室に通えない人がいることも知っていた。そこで、色々な状況にある美容師さんが働き続けられる場として、訪問美容のナレッジを集め、全国の美容室に知見を共有することで美容師さんの復職や訪問美容の広がりを支援していきました。人材派遣事業の社長時代には、働く時間に制約のある派遣スタッフさん向けの『時短JOB』を実現したりと、お客様と一緒に、それぞれの業界の常識のアップデートに取り組んできた。
だから今回も、リクルート自身がまず自分たちのジェンダーギャップの状況や働き方を変え、そこで学んだことや上手くいった事例を、社会やお客様に役立ててもらえるように伝えて、一緒に取り組んでいくことで、社会が良い方向に変化していくと嬉しいなと思うんです。
リーダーは意外と役得な仕事
窪塚:管理職や役員でも女性比率を高めていくということですが、そもそも美生さんご自身はリーダーになりたいと思っていたのですか?
柏村:それは一切なかったです。上司にもマネジャーになりたくないと言っていて、「そんなこと言ってるからダメなんだ」と怒られたくらいで(笑)。でも、目の前のことに必死に没頭してきたら、今の「係」になっていたというのが本音。中国事業も成功ではなかったし、『ホットペッパービューティー』ではプラットフォーマーとしての責任を痛感する出来事もあった。もう立ち直れないんじゃないかというほど落ち込んだこともたくさんあります。
窪塚:それでも続けてこられたのはなぜですか?
柏村:あえて挙げるならふたつ。ひとつは12回も異動したのに、どこにいっても社内外の素晴らしい仲間に恵まれたこと。もうひとつは、どの事業も、私自身の「社会の役に立ちたい」という原動力に疑いなく向き合わせてくれたこと。
窪塚:社会の役に立っているなと感じたのはどんな時ですか?
柏村:リーダーになると自分で責任を持てる範囲が広がって、できることも増えるんですよね。先ほどお話した訪問美容などは、「これは社会のニーズがある!やりたい!」と思って、事業長としての責任の下、始めた取り組み。自分が異動した後も拡大してくれて、数年後に「日本パートナーシップ大賞」の優秀賞をいただいたと聞いた時は、本当に嬉しかったです。意外と役得なこともあるかもしれませんよ。どうせならば、不安にとらわれず、チャレンジしたらいいと思います。そして、リーダーになると、大切なものや人がどんどん増えて、私にとってそれは本当に素晴らしい経験になっています。
窪塚: 自分のやりたかったことを仕事で叶えることができるって考えたら、リーダーって役得ですね(笑)。私は親族に車椅子ユーザーがいたり、性的少数者の友人がいたりと、マイノリティを身近に感じてきたので、自分も将来、仕事を通じてDEIの実現に貢献してみたいなと漠然と思っていたりもするのですが、今の業務では接点が無くて…。
柏村:今の事業で何か「こういう風にできないかな」と思っていることはないの?
窪塚:そうですねぇ…。自分が営業を担当している『Airシフト』が使われる現場では、外国人スタッフの方も多いので、外国語表記にできないのかなと思ったことがあります。
柏村:凄く大事な着眼点だと思います。こんな風に、100人いたら100通りの視点があることで、サービスの価値が進化するよね。窪塚さんは今後も、興味のあるDEIのテーマで自分の業務を見てみては? そして、自分が何を好きで嫌いなのか、自分がどういうタイプの人間なのかを客観的に捉えて自覚しながら仕事や生き方を決めていくことは大切だと思います。私は女性全員にリーダーになってほしいと思っている訳ではなくて、アンコンシャスバイアスや同質化にとらわれずに、自分らしさを大事にしながら自分らしくあり続けてほしいと願っているだけ。そのために、自分の強みや、自分は何を大切にしたいのかをぜひ考えていってほしいと思っています。
社会に目を向けた上で、自分がどう感じるかを大切に
安永:世の中にはジェンダー平等を目指さなくてもいいと考える人も少なくないと思いますが、どうでしょう?
柏村:それは男女どちらにもいると思うんです。でも、いろいろな社会の差別の状況を知ってもなお、本当に変化が必要ないと言えるのかは一度考えてみてほしいと思います。意見はさまざまあっていいと思うのですが、ちゃんと知って、ちゃんと考えることが何より大事だと思っています。なぜ、今こんなにジェンダー平等を重要視するのか、それは時代が、社会の常識をアップデートしようと変化しているからだと思う。私は動き続けてこの変化を加速させていきたいと思います。
安永:ありがとうございます。窪塚さんは今日の座談会いかがでしたか?
窪塚:改めてリクルートって、社会のなかで先行して問題に取り組んできたんだなと感じました。社内は働き方やジェンダー問題が少しずつ改善しつつありますが、社外にはそうではない状況が広がっている。それならば、社外にこの働き方を発信し、社会全体の働き方を良くしていくことが今の私にできることなのかなと思いました。
柏村:私自身は、ジェンダー平等には希望しか抱いていません。ジェンダーギャップを埋め、ジェンダー平等を実現するスタンスで行動していきますが、さまざまな意見があるなら皆さんとぜひ対話したいと思っています。これからもいろいろな意見を聞かせてもらえると嬉しいです。
安永:おふたりとも今日はありがとうございました!
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 柏村美生(かしわむら・みお)
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リクルートホールディングス執行役員 兼 リクルート 執行役員(担当領域:人事、広報・サステナビリティ)
大学卒業後、1998年、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。2003年『ゼクシィ』の中国進出を提案し、中国版ゼクシィ『皆喜』を創刊。帰国後、『ホットペッパービューティー』事業長、リクルートスタッフィング代表取締役社長、リクルートマーケティングパートナーズ(現リクルート)代表取締役社長などを経て、2021年4月より現職。大学時代は社会福祉について学び、障がい者と社会の接点を作る仕事がしたいとソーシャルワーカーを目指してボランティアに明け暮れた。東京大学PHED(障害と高等教育に関するプラットフォーム)専門部会委員を務める
- 窪塚玲美(くぼづか・れいみ)
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リクルート AirプロダクトDivision Airシフト推進グループ セールスディベロップメントチーム
大学卒業後、2019年、リクルートに入社し、リクルートキャリアに配属される。採用支援営業を経て、現部署にてやりとりも作成もラクになるシフト管理サービス『Airシフト』などのセールスを担当。女子高の出身で、「1賢く 2.明るく 3. 強く 4.気高く」の校訓の下、教育を受け、バスケットボール部ではインターハイも目指した。当時の仲間とは社会人になった今も励まし合う仲。DEIに関心を持っている。
- 安永里子(やすなが・さとこ)
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リクルート 広報・サステナビリティ 広報ブランド推進室 社外広報部 コーポレートコミュニケーショングループ
総合電機メーカーを経て、2015年、リクルートホールディングスに入社。入社以来コーポレートの社外広報を担当。3歳の子どもの育児と両立中。本座談会のモデレーター