リクルートの新規事業は、頼られたら放っておけない皆で。 推し活支援サービス『オシタス』

リクルートの新規事業は、頼られたら放っておけない皆で。 推し活支援サービス『オシタス』

※『オシタス』は2024年9月12日サービスを終了しました。

『ゼクシィ』や『スタディサプリ』を生みだした、リクルートで40年以上続く新規事業提案制度Ring(旧New RING)。実はリクルートの新卒入社者の入社動機のひとつにもRingへの興味を挙げる人は多いらしい。しかし、いきなり素人がアイデアを提案しただけで大きな事業は創れるのだろうか? それとも出したアイデアを形にする秘密の仕組みでもあるのだろうか? こんな疑問を抱く方も多いに違いない。そんななか、推し活を支援するサービス『オシタス』が2022年10月に事業化検証の一環として一部機能をリリース。「自分たちだけではここまで至れなかった」と笑顔で言い切る、起案メンバーのひとりの星 由香里に、欠かせなかったものが何だったのかを聞いてみた。

—星さん、『オシタス』がついにサービスリリースと聞きました! いわゆる“推し活”を支援するサービスと聞いたのですが、具体的にどんなサービスなんですか?

星:アイドル、アニメ、スポーツ選手など、好きな対象をファンが応援する活動を“推し活”と呼んでいるのですが、その推し活をもっと盛り上げるサービスです。ひとりでは楽しみ切れていないファンの方向けに、同じファン同士がつながって複数人で活動できるきっかけを提供します。その一歩目として、まずは“推し”について、いつどこでどんな活動があるか分かる推し活カレンダー機能をリリースしました。他にも順次、ファン同士が一緒に活動できるような機能を追加していく予定です。

新規事業オシタスのサービス画面

—おぉ~! 告知を見逃してしまうとか、推しが複数いて追いきれないといったお悩みが解消できそうですね。これは、ひとつの事業として独立していくんですか?

星:いえ、現時点ではまだ事業化検証の段階です。私たちのサービス『オシタス』は、リクルートの新規事業提案制度のRingから生まれたため、Ringの制度に則って検証をしています。Ringとは、年1回、社内外問わず誰とでも何案でも起案できるビジネス企画コンテストです。『オシタス』は2020年のRingで834件のなかから審査を経て選出され、本格的に検討をスタートしました。Ringの制度では、「ステージゲート」と呼ばれる4つのステップを経ないと事業化できない仕組みになっています。私たちは今ふたつ目の「SEED」ステージにいます。「本当に収益性が見込めるか」検証を始めるところなんです。

リクルートのステージゲート方式の事業開発マネジメントは4段階に分かれており、ステップアップするごとに予算や人員が増加する。予め各ステージの検証事項と撤退条件が決められており、半年毎に撤退 or 継続を判断する。
リクルートのステージゲート方式の事業開発マネジメントは4段階に分かれており、ステップアップするごとに予算や人員が増加する。
予め各ステージの検証事項と撤退条件が決められており、半年毎に撤退 or 継続を判断する。

—なるほど、条件を満たせなかったら次のステージに進めず、撤退…?

星:そうです、バッサリと撤退を余儀なくされます(苦笑)。実は、撤退も過去に経験しています。2018年度に同僚の佐々田 幸さん、南 侑里さんと、別のビジネスプランで審査を通過しましたが、その時は今の『オシタス』と同じ、「SEED」ステージで撤退しました。その後もう一度3人で挑戦したいと思い、それぞれ産休や育休を取得しつつも、連絡を取り続けながら、2020年度のRingに8案を起案して1案が通過し、今に至ります。

新規事業開発に取り組むリクルート従業員
(左から)佐々田 幸、星 由香里、南 侑里。3人で新規事業提案制度Ringに起案するのは2度目。

—サービスリリースに進むまでの厳しさ、そして今後もまだまだ修羅場が続く点、良く分かりました。とはいえ、ここで山場をひとつ越えた星さんたちに、お祝いメッセージが届いています。

星:え、急に…! どなたからですか…?!

—『オシタス』に協力した “Ringサポーター”の皆さんからです!

星:うわー! ありがとうございます! サポーターの皆さんには本当にお世話になりました。

—ところでこの“Ringサポーター”って何ですか? 

星:Ringの検討プロセスにおいて、全社員の方に向けて、一緒に事業を創り上げるサポーターを募ることができる制度です。私たちもこの制度を利用し、『オシタス』の検討段階で、エンタメ業界に詳しい人やご自身が推し活をしている人を募集しました。すると、なんと有志で約30名の方がサポーターとして手を挙げてくださいました。この協力には謝礼は発生せず、ボランティアなんです。業務が忙しいなかでも、みなさんご相談の時間を割いてくださり、大変驚きました。

—公園で「この指とーまれ!」みたいなノリで、そんなに協力者が現れるものなんですね。ではでは、代表して4名の皆さんのメッセージを一気にご紹介します。

リクルートで新規事業開発に携わったRingサポーター

“「オシタスプロジェクトの皆さん、サービスリリースおめでとうございます! 芸能事務所で働いていた経験があったので、お役に立てるかもと思いRingサポーターに手を挙げました。業界関係者と皆さんをつないだり、提案内容に少し意見を言ってみたりと、お手伝いできて良かったです。自分も将来事業を立ち上げたかったのでワクワクすると同時に、事業化検証のプロセスを見て、正直「こんなに細かく設計するんだ…」と、良い焦りも感じました。ものすごく勉強になりました。これからも頑張りましょう!(リクルート 河原克典)」”

“「星さん、皆さん、おめでとうございます! 前職の声優雑誌の編集という特殊な経験が、まさかリクルートで必要とされるなんて思ってもみませんでした。業界構造をお話ししたり、業界関係者につないで一緒にヒアリングをしたり…。オシタスプロジェクトの皆さんの新しい事業を興そうという姿勢にリクルートらしい起業家精神を目の当たりにしました。『こうやって事業が生まれるんだ…!』と実感できる貴重な経験でした。これからの事業展開によってはお手伝いできたらと思っています!(リクルート 井上かおり)」”

リクルートで新規事業開発に携わったRingサポーター

“「社内報でBTSオタクとして取り上げられた私に、連絡をくださりありがとうございました。もともと新規事業に興味があり、皆さんが数年前に別の事業で起案していた頃から実は応援していて…自分も触発されてRingに毎年起案していたくらいお三方のファンでした!(笑) 壁打ちに参加するなかで、ものすごくわくわくしている自分を発見でき、このサポーター制度で『オシタス』に携われたおかげだなと思っています! 自分自身が過去にRingに起案した時にサポーター制度に助けられたので、今度は自分の番! とも思っていました。こうして役に立てたのが嬉しいです。でもまさか、本業の『タウンワーク』でのファンマーケティングの仕事経験がここで役に立つとは…日頃の仕事って意外に新規事業に必要な細かいインサイトの仮説につながるし、サポーターとして関わったことで、ユーザー目線でプロダクトを企画する知見もアップしました。星さん、皆さん、これからも応援しています!(リクルート 三瓶聖奈)」”

“「サポーター募集のメールを見た時、コレだ! と思いました。まさに使いたいサービスを創っている! って。自分がかなりコアなオタクなので、ユーザー像のひとつとして知見を提供できるかもなあと、サポーターに応募しました。同じ会社とはいえ、1万7千名以上いるので、全然接点のない方と話せるありがたい機会のひとつでした。早くサービスが使いたいですね。頑張ってください(リクルート 佐野湧太)」”

—間近で事業の立ち上げを見られることなんてなかなかないので、サポーター側にとっても良い機会になっていたんですね。

星:私たちが一方的にお世話になりっぱなしだと申し訳なく感じていたので、少しでも皆さんにプラスになることがあったと知ることができて、大変嬉しいです。
今回の新規事業のテーマ「推し活」は、リクルートが営む事業からは縁遠い領域です。そのため、業界構造を知りたい、ユーザーインサイトを知りたい、と思っても、自分たちでアプローチできる先は限られていたため、仮説検証に苦戦していました。このため、社内に助けを求められるのは本当に有難かったです。河原さんや井上さんといった多様な前職の人や、現に推し活をしている三瓶さんや佐野さんたちのおかげで、エンタメ業界の構造やユーザーのことを深く知ることができました。

新規事業開発への意気込みを語るリクルート従業員

—多様な人材が集まるリクルートには探せば何らかの知見を持った人がいるんですね。

星:そうですね。多様な人材がいるだけではなく、社内の助け合う文化があったからこそ、こうして皆さんに協力を得られ検討を前に進めることができたと思います。『オシタス』の検討過程で、リクルートの“助け合いの文化”を痛感する出来事がありました。事業化検証にあたって、先ほどのサポーターの皆さん以外にも、さまざまな知見を持つ社内の人に積極的に相談をしました。その時に立場や担当領域に関わらず、フラットにご相談に乗っていただくことができ、大変驚きました。それまで接点がない人でも、多忙な事業部長であっても、勇気を出してご相談の目的と背景を説明の上ご連絡をすると、時間を割いてくださり、真摯にアドバイスをくださいました。その結果、自分たちだけでは持ちえなかった観点を得ることができ、ビジネスモデルを何度も見直すことができました。事業化に向けて進められているのは、間違いなく惜しみなく助け合う企業文化のおかげですね。

—リクルートの人は、人のために時間を使うのはいとわない人が多いですよね。そうやって頼られたら放っておけない人が多いからこそ、いろんな知見が掛け合わさって新しい価値が生まれるんだなぁと改めて思いました。皆で創り上げるのがリクルートの新規事業の育て方だったんですね。では最後に、星さん、今後も険しい道のりが続くと思いますが、これからに向けての意気込みをお願いします。

星:『オシタス』を使ってくださる方に「分かってるじゃん!」と思ってもらえるサービスを創ることを目指して、使っていただく方の気持ちを大切にしていきたいと思います。そして推し活を通じてユーザーの方の人生を豊かにするサポートができたらと思っています。事業化を目指して頑張ります!

—頑張ってください!

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

星由香里(ほし・ゆかり)

株式会社リクルート プロダクト統括本部 新規事業開発室 インキュベーション部

大学卒業後、2015年リクルート住まいカンパニーに入社。賃貸領域の営業を経験。そ の後、『SUUMO』の商品企画、営業推進を担当。21年4月より『ゼクシィ』の業務支援サービスの運用設計などに関わり、22年4月より現部署。同僚の佐々田 幸、南 侑里とともに挑戦した20年度の新規事業提案制度Ringで準グランプリを受賞し、推し活サービス『オシタス』の事業開発に取り組む。3人でのRingへの挑戦は、18年度に続き二度目

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