コクヨ株式会社『ワークスタイル研究所』所長 山下正太郎さんのリクルート考

コクヨ株式会社『ワークスタイル研究所』所長 山下正太郎さんのリクルート考

生き方とコミュニケーションを進化 まだ誰も経験したことのない最新の働き方とオフィスを実現して欲しい

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2022年6月号からの転載記事です

オフィスの思想が働き方を創る 効率重視型から新たな局面へ

学生時代は建築を学び、オフィスデザインや働き方を専門に研究してきました。当時、印象に残っているのは、米国の広告会社CHIAT/DAY(現TBWAグループ)のオフィス。個室用のコンテナが積み上げられ、緑豊かでバスケットコートもあるキャンパス型のゆとりある環境に圧倒されました。

入社後は、オフィス設計部門配属に。当時は効率性を重視した、密集度高く机が並ぶオフィス。改めて国内外のオフィス環境、働き方の違いを体感させられました。その後、コンサルタントを経て、今に至ります。

めっこり会議する!?ユニークな企業文化と理念

コクヨ株式会社『ワークスタイル研究所』所長 山下正太郎さん

出会いは2016年。リクルートホールディングスの働き方変革推進室(当時)から、海外の最新情報を知りたいと、お声がけをいただきました。

当時の私のなかのリクルートのイメージと言えば、そのオフィスは“不夜城”と呼ばれるほど「働くのが好きな人たち」が集まっている企業。実際にコミュニケーションを始めると、人と人がリアルにぶつかり合う“Collision”こそが、「新しい価値の創造」につながるという強い信念がある。「めっこり会議する」という社内用語には、コミュニケーションの深さと量を大切にしていることを実感しました。

一方、さらに先進的な挑戦をするためには、オフィスや働き方は、もっと自由に捉えていきたい。そこで、私の役割は「リクルートの仮説」が及ばない新しい角度の情報をインプットし、仮説をぶち壊すことだと思いました。

海外の先進的なオフィス視察での反応はとてもビビッドで、最終的に、個席や組織エリアの概念をも手放したオフィス変革への挑戦が印象的でした。それ以来、リクルートワークス研究所や、2021年にオープンした九段下オフィスなどのプロジェクトにも参画させていただきました。

真の意味での脱オフィス 透明性と論理性がカギ

コロナ禍により、リクルートの皆さんは次のステージを目指して「脱オフィス」と「オフィスに人が集まる価値」を両立するというテーマを掲げられました。

グローバル企業では以前から、各国の拠点をつなぐリモート体制であり、コミュニケーションは量より質が重視されています。その“質”とは、透明性あるコミュニケーションと論理性。複雑な人間関係、ハイコンテクストなコミュケーションに頼る企業はオンライン化で苦戦したはず。前提となる情報や議論のプロセスを開示し、誰もが納得する論理的な判断をベースにしていくことで、もっとオフィスから自由になれる。

一方、「オフィスに集まる意味」も、ヒトにとって重要なテーマです。ヒトは自分のためだけには生きられない。協働の楽しみや、新たな出会いや刺激に加え、アイコンタクトや人のぬくもりを感じることも、働く意味、エンゲージメントにつながるポイントです。

究極、月に1回集まって映画を観て、感想を語り合うだけでも満たされるものがある。それが満たされてこそ、仲間と新しい挑戦ができるのです。

“生き方の軸”があるからこそ“働き方”を進化させられる

社会にさまざまなイノベーションを起こしてきたリクルートには、やはり最先端のオフィスと働き方に挑戦して欲しい。究極的には、オフィスを持たない企業というあり方もあると思っています。

オフィスから完全に自由になれるからこそ、新たなオフィスのあり方を発明できるかもしれません。今後世界は、仕事内容に応じて働き方を選択するActivity Based Working(ABW)から、生き方から働き方を捉えるLife Based Working(LBW)へとシフトしていきます。

オフィス通勤から解放された人たちは、時間やエネルギーを地域や社会へ還元し、またそこで得た画一的でない価値観を企業へ持ち帰ってくる。こうしたいわゆるパッションエコノミーの成功には、一人ひとりが、どんな生き方をしたいかを決め、そこから働き方を組み立てていくこと。

例えばオランダでは、自分で学校での時間割を決めるような自律的な教育がなされています。「お前はどうしたい?」と常に問われ続ける企業文化を持つリクルートの皆さんは、より活躍できる時代かもしれません。

一人ひとりのアイデアや力を、地域や社会、そしてリクルートに還元するという、新たな働き方、生き方を世界に提案していって欲しいと思います。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

山下正太郎(やました・しょうたろう)
コクヨ株式会社 『WORKSIGHT』編集長/『ワークスタイル研究所』 所長

コクヨ株式会社に入社後、戦略的ワークスタイル実現のためのコンセプトワークやチェンジマネジメントなどのコンサルティング業務に従事。2011年にグローバルで成長する企業の働き方とオフィス環境を解いたメディア『WORKSIGHT(ワークサイト)』を創刊。また同年、未来の働き方と学び方を考える研究機関『WORKSIGHTLAB.(現ワークスタイル研究所)』を立ち上げ、研究的観点からもワークプレイスのあり方を模索。リクルート 九段下オフィスのアドバイザーを務めた

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