『坪田塾』塾長 坪田信貴さんのリクルート考

『坪田塾』塾長 坪田信貴さんのリクルート考

社会の幸福感を最大化する仕組み「人材のインキュベータ」に

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

※リクルートグループ報『かもめ』2023年3月号からの転載記事です

ロゴス、エトス、パトスによる仮説力と準備力

リクルートの方々とは、仕事でもプライベートでもさまざまな接点があります。最初の出会いは、STORYS.JP(ストーリーズ)というサイトに『ビリギャル』の原型となった草稿を掲載した時。ここから火がついて出版のきっかけになったのですが、当時そのサイトにベンチャーキャピタリストとして関わっていたのがリクルートの卒業生(元従業員)でした。

その後も、香川でリクルートの方と出会い、リクルートの方々をご紹介いただくことに。そのなかのおひとり、Kaizen PlatformのCEO 須藤憲司さんとは家族ぐるみのお付き合いをさせていただくようにもなりました。近著『才能の正体』は幻冬舎の袖山満一子さんに編集を担当いただきましたが、彼女もリクルートの卒業生ですね。

リクルートの方は卒業生の方も含めて皆、個性的。それを許容しているリクルートという会社の懐の深さを感じます。一方、共通しているのは仕事がデキること。すごいのは、仮説力と完璧な準備力。少ない情報から、相手がきっとこういうことを求めているだろうと予測し、相手の状況や環境を想像し尽くしてアジェンダを準備する。初回から、何も話していないのにどうしてここまで提案できるのだろう…と驚かされることもあります。

ディベートに勝つにはロゴス(論理力)、エトス(相手の感情を動かす力)、パトス(信頼)が必要と言われていますが、リクルートの方はこの3つのバランスが良い気がします。どれかが突出しているタイプの方は、周囲が支えて結果オーライ…のケースもありますが(笑)。

目的地だけを見過ぎて真の課題を見逃さずに

私が塾講師を始めたのは、能力差によらず、どんな生徒でも成績を伸ばすことができるのではないか? と常々考えていて、その確証をつかみたかったから。そして7年半で1000人を教えました。学校での落ちこぼれ扱いをされていた生徒、発達障害と診断を受けた生徒、引きこもりだった生徒も成果が出せる方法を実証できたのです。そうしたら周囲から「カリスマ講師だからできたのではないか」と言われ、今度はどんな先生でも成績を伸ばせる方法はないかと考え、様々な先生たちを集めて自分で塾を開きました。

次は、先生を育てることができるのか…が気になりマニュアル開発などをし始め…。自分の好奇心に従って動いていると本当にキリがないんです。この壮大な実証結果の一部をまとめたのが近著『才能の正体』です。

もともと私は、道に穴があったら気になってしょうがないタイプ。多くの人は自分の目的地だけに目がいっていて、道に大きな穴があってもそれをよけて通り過ぎてしまう。私は、その穴を埋めたら、より多くの人がこの道を通れるようになる。結果、早く目的地に着ける人が増えて社会全体が良くなる…と考え行動してしまう。

今も新たな仕組みづくりのためのシステム開発を数社と組んで進めています。リクルートには似た考え方の人が多いので、気が合うのだと思います。

企業における究極の社会貢献は「雇用」

リクルートは”人のインキュベート“をしてきた会社だと思っています。在野の方々を集めて、さまざまな業界の企業とマッチングをして、働く人と業界の成長を支援する。リクルート自身が育てた人材も独立や転職をして、各業界で活躍している。究極の人材のエコシステムとも言えると思います。その次のフェーズでは何を目指すべきでしょうか。

ハーバード大学の研究では、同じ志を持った人同士でコミュニティを形成し、頼り頼られる関係が人の幸福感に深くつながっていることが証明されています。これは会社で働くことの原型だと思います。職場や仕事との相性が合わずに仕事をしたくない…と感じる人もいるでしょう。しかし、志をともにできる仲間との信頼関係が築ける場所でこそ、人はイキイキと働くことを楽しめて、安定した生活を得られるのだと思います。

そう考えると、「企業」の究極の社会貢献は「雇用」であり、志をともにできる人と企業をマッチングしたり、起業を支援したりすることによって、仕事をしていない人がゼロになった社会では、幸福度が最大化されるとも言えるわけです。リクルートには、ぜひ新たな社会づくりに向けて革新をし続けて欲しいと思っています。

登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

坪田信貴(つぼた・のぶたか)
坪田塾 塾長/吉本興業ホールディングス株式会社 社外取締役

心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」し、多くの生徒の偏差値を上げてきた。一方で、起業家としての顔も持つ。また、人材育成、チームビルディングへの知見を活かし、企業などにマネジャー研修、新人研修を行うほか、現在は吉本興業ホールディングス株式会社の社外取締役も務める。テレビ、ラジオ、講演会でも活躍中。著書に映画化もされて大ベストセラーとなった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA 2013年)ほか多数

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