シリーズ - 海外を見る インドネシア「ジャカルタ」
IT化、プラットフォーム化が進み、グローバルビジネスが盛んになってきた昨今。日本企業に限らず、海外展開を当初から念頭に据えたビジネスを展開する企業も多い。 ただ、日本にいるだけではわからない事もまた、多い。
前回の記事では、伊藤忠グループの中国現地法人である伊藤忠ファイナンスアジア代表取締役社長 樋口千春氏にお話しを伺った。今回はアジアを中心に、海外での現地採用・グローバル人材採用を支援するリクルートの海外法人ブランドRGF(リクルート・グローバル・ファミリー)のRGF HR Agent Indonesia 拠点長 土肥幸之助が、PT ITO EN ULTRAJAYA WHOLESALE President Director 宮本昌郎氏に、インドネシア・ジャカルタの今を伺った。
補足:PT ITO EN ULTRAJAYA WHOLESALE
伊藤園と現地法人のウルトラジャヤ・ミルクインダストリー&トレーディングカンパニーが合弁で設立した、東南アジア圏に向けた伊藤園のジャカルタ法人。
「世界のティーカンパニー」に向けた、伊藤園の一手
宮本昌郎氏
PT ITO EN ULTRAJAYA WHOLESALE President Director
「2000年前後から、ハワイから北米に向けて海外展開が始まった。10年間粘り強く進め、最近では「シリコンバレーで"お〜いお茶"が流行している」という記事に取り上げて貰えるまでになりました。
北米では健康に感度の高い人向けに、無糖茶を広めるところから進めて行ったのですが、インドネシアはそもそも"無糖茶市場"自体のパイが狭く、伊藤園の世界展開の中でも一線を画した進め方をしています。
具体的には有糖茶市場への新ブランドの投入を進めるなど、ジャカルタの消費者にあったブランドを1から作っていく、というイメージです。」
お話しの中でもありますが、こちらの「お茶・コーヒー」はほぼすべて"ミルクで甘い"ものです。私もこちらに赴任して飲んだ時は、あまりの甘さに面喰いました。
その中で、今までの成功体験に拘らず現地の消費者に迎え入れられるブランド戦略を行っている事は、強みになりうるのではないかと感じられました。
頂いた具体的な数字データで言うと、インドネシアの飲料市場の全体規模が約700億円程度。そのうちミルクコーヒーが市場の6割程度を占め、まだまだ伸びているようです。
それに対してミルクティー市場はまだまだ10億にも満たない規模。そこに対してまだまだ伸びがあるのではないか、と認識していらっしゃるとの事。
「STILL NOW」がイノベーションの源泉。商品企画は現地主導
宮本昌郎氏
PT ITO EN ULTRAJAYA WHOLESALE President Director
「伊藤園では商品開発における理念として"STILL NOW"というワードを掲げています。今でもなお、消費者であるお客様が何を不満に思っているか、を考える事が一番の源泉。
その為、商品開発に関しても企画をジャカルタで行い、開発を日本の伊藤園本社に依頼する、という形になっています。
日本でこれはいける、と思って現地で販売しても、甘さやアロマという観点で消費者の受け取り方に差が出る事が多い。ちゃんと商品を通じて消費者を見て行かないとダメ、という学びがあった。」
海外展開において「マーケティング」「商品開発」「販売」などの機能を現地法人・本国のどちらで行うか、という点は悩まれている企業も多いと感じられます。
ただ、サービスの受け手(消費者・法人等)の声から商品を開発するというプロセスを考えると、現地主導での商品開発というのは正しいアプローチではないでしょうか。
流通目線から見るインドネシアの独自性。
宮本昌郎氏
PT ITO EN ULTRAJAYA WHOLESALE President Director
「伊藤園としても、合弁会社という新しい取り組みではありますが、個人的な感覚として、インドネシアで独自資本で事業を行うのは中々難しいのではないか、と感じます。理由としては、販売網。他国では1つの企業が国中にリーチ出来る販売店を持っていますが、インドネシアは小さな商店が250万店舗くらいある。そういった面をクリア出来たのは、合弁でやれたメリットだと思っています」
確かに国ごとに感覚や慣習だけではなく、ビジネスにおける法律、形態など多種多様なローカル・ルールが存在します。
伊藤園さんでは、基本的には両社で確認しながら、味覚・デザイン・マーケティング活動など、現地の慣習に強く左右されるものは合弁先企業の意見を尊重しつつ、製造における品質管理などは伊藤園の意見を尊重するなど、上手く合弁という強みを活かしながら活動されている様子が見てとれました。
インドネシアのビジネスパーソンと一緒に上手く働く肝は?
宮本昌郎氏
PT ITO EN ULTRAJAYA WHOLESALE President Director
「自分たちで考え、自分たちでアウトプットし、自分たちで能動的に動ける環境を用意してあげる事ですね。一般的に、喧嘩をせず、怒られることが嫌いな人が多いように見受けられますが、そのままでは中々現地での伸びが進みません。今では販売マーケ・人事・バックオフィス等々にローカル主体でTOPがいる状況です。」
多くの企業で「ローカライゼーション」は掲げられていますが、駐在員の転任や交代などで上手くいかない状況なども見受けられます。
結果的には、現地の方々に成長してもらい、主体的に動いてもらう事が、会社の成長に大きく寄与するのかもしれません。
また、インドネシアの方々に関して、「彼らは"チームワーク"というビジネス的な物より、"ファミリー"としてチームを求める事が多い」という話もしていました。
仕事<家族として考える彼らの、本当の"ファミリー"になれた時、より強い組織が出来上がっていくのかもしれません。
プロフィール/敬称略
- 宮本昌郎
- PT ITO EN ULTRAJAYA WHOLESALE President Director
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1966年山口県生まれ。1990年立命館大学卒業後、自動車メーカー、NGO、消費財メーカー勤務を経て2012年伊藤園入社。主に販売・マーケティング業務畑を歩む。20代にホーチミン駐在(1年)、30代にはジャカルタ駐在(7年)を通し、アジアの成長と共に自身のキャリアを積む。伊藤園ではインドネシア現地飲料メーカーとの合弁会社設立に従事し、現在は自身2度目のジャカルタ駐在。茶系飲料製品の新ブランドを立ち上げ、日々拡販に邁進中。
- 土肥 幸之助
- RGF HR Agent Indonesia 拠点長 PT. BRecruit Indonesia・General Manager
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1984年生まれ。2008年、リクルート(当時)に入社。転職・キャリア採用領域にて、主に新事業の営業企画・営業推進・渉外活動に従事。社内公募を経て、リクルートの海外人材斡旋事業RGFに参画。インドネシアでの日系企業向け人材紹介事業立ち上げの為、2013年よりジャカルタに駐在中。現在は、インドネシア・タイの両国において同事業を担当。またインドネシアでは、日系以外の外資や、ローカル企業向けの人材紹介事業についても、インドネシア人のカントリーマネージャーと共に推進を行っている。
関連リンク
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