シリーズ - 海外を見る タイ「バンコク 」

シリーズ - 海外を見る タイ「バンコク 」

インタビュアー:八源寺誠(RGF HR Agent Thailand 拠点長) 企画:榊原 宏一(SEA Planning Group MG) 文:MeetRecruit編集部

IT化、プラットフォーム化が進み、グローバルビジネスが盛んになってきた昨今。日本企業に限らず、海外展開を当初から念頭に据えたビジネスを展開する企業も多い。 ただ、現地にいるからこそ分かることもある。

前回の記事では、日立製作所・ホーチミン1号線プロジェクト事務所の樽家 彰宏氏にベトナムにおける交通事情や、ベトナム文化などについて伺った。

今回は、アジアを中心に、海外での現地採用・グローバル人材採用を支援するリクルートの海外法人ブランドRGF(リクルート・グローバル・ファミリー)のRGF HR Agent Thailand 拠点長 八源寺 誠が、野村総合研究所(NRI)のタイ拠点で、事業戦略策定や、M&A支援を行う加藤 悠史氏に現地の今、を伺った。

東南アジアの中心。AECの中心拠点として働くタイの今

加藤悠史氏

野村総合研究所タイ コンサルタント

「現在、野村総研の東南アジアの拠点としてはシンガポール、フィリピン、インドネシア(駐在員事務所)とタイの4つがあるのですが、最も後発になったのがタイです。元々タイは(東南アジアの大陸続きの各国の中で)地政学的に真ん中にあり、例えばメーカーさんの拠点はタイから派生して周辺国に広がっていますので、タイプラスワン(1か国)、という構造になっている事が多いです。
2015年にAEC(※AEC:ASEAN経済共同体。ASEAN加盟国間における関税撤廃などを通じて、ASEANを一体的な市場、生産拠点として発展させようという取り組み)が発足し、よりASEANでの取り組みが広がることを考えると、東西南北各国を繋ぐインフラが発達していくことにより、物流の拠点にもなると思います。
タイ政府は他にも高付加価値産業への切り替えをおこなおうとしており、例えば、R&D機関の育成や教育費用の増大を掲げています。そういった施策がうまくいけば高付加価値産業への切り替えができると思います。
そういった中で、2013年に(AEC発足前の)最後のチャンス、として進出したのがタイ拠点です」

我々、RGFもタイ拠点を立ち上げて、1年強になりますが、日系企業様からのお問い合わせが大変多く、タイという国のマーケットポテンシャルの大きさに驚いています。アジア諸国のRGF拠点の中でも、最も高い成長を遂げている拠点の一つですので、今後、より一層、サービス品質に磨きを掛けていきたいと思います。元々、東南アジアの工業国として古くから日系企業を含めたメーカーの進出などが進んでいたタイですが、近年ではサービス業に類する各国の現地法人が立ち上がっており、そういった面でもまだまだ成長を続けている国だと思います。

タイの人々と働き、タイを楽しむ、ということ

加藤悠史氏

野村総合研究所タイ コンサルタント

「一緒に働いているメンバーはとても優秀で、こちらに来てから非常に驚きました。
よく南国特有の「毎朝ちゃんと来させるのが大変」みたいなゆるさを指摘される方がいらっしゃいますが、特にそういったこともありませんね。
仕事の面で言うと、日本における「阿吽の呼吸」みたいなものはなく、仕事を任せる際に「今回の業務のゴール」「任せるポイント」「やってはいけないポイント」などをジョブディスクリプションほどではないにせよ、明確に渡す必要があると思います。少し欧米流のマネジメントが必要、という感じでしょうか。その上で、手法やスケジュールはある程度まかせています。
また、意外に思われるかもしれませんが、タイはまだまだ年功序列の国です。組織を構成する際に、肩書きと年齢の不一致や逆転が起きないようにした方が良いですね。 」

タイにきて難しいと思ったのは、タイのビジネスパーソンは給与がトリガーとなって頻繁にジョブホッピング(転職)をするということです。一方で、私がメンバーと話をしてみると、仕事の意義やモチベーションを大事にしていると分かりました。そういう意味では、彼ら / 彼女らは非常に「明確」なものを好むように感じられます。モチベーションを上げるポイントとしても、仕事の意義ややりがい、キャリアアップなどが明確になっていると良いですね。

私も、会社のビジョンやミッションであるとかは日本では意識してなかったのですが、こちらにきてからは毎月のようにメンバーに対してそれを唱えてモチベートしています。そうやってモチベートしていかないと、人材紹介のマーケットには仕事があるので、メンバーは目移りしてしまいますし、辞めても仕事は見つかります。どのようにメンバーを定着させるかがポイントです。

加藤悠史氏

野村総合研究所タイ コンサルタント

「仕事以外の面で言うと、とにかくお菓子やフルーツなど、いろいろな物をふるまってくれるので、気を付けないと太ってしまいます(笑)
社内にお菓子を常備しておくことなども気を付けていますね。よくメンバーが東京に出張した際に「東京バナナ」を買ってきていたのですが、買いすぎて飽きられてしまいました。
食の面では、タイの中に日本食を出す店舗が2000店くらいあり、その他各国の店舗もたくさんあるので、困ったことはありません。新しく赴任してきた日本のメンバーなどには、「タイで困るなら、世界中どこに行ってもダメだぞ」と言ってあります。
物価安いのでいろいろなものが安く手にはいる一方、価格の高いものも手に入って、幅広いものが用意されています。ペニンシュラのホテルで食事をすることもできて、その横にはローカルなマーケットも広がっている。そのカオスが好きな方はいろいろいな選択肢があって楽しいと思います。私は好きですね。 」

加藤氏が感じる、「海外で働く」ことの良さ

加藤悠史氏

野村総合研究所タイ コンサルタント

「大きく3点に絞ると、1点は、特に我々30代くらいの人にとってよい事だと思うのですが、日本で課長ならこちらでは部長、日本で部長ならこちら拠点長など、日本よりもランクが上がる方が多く高い視点での仕事ができるのではないでしょうか。
2つ目は、日本本社より組織が小さいことが多いので、自分でなんでもやらなきゃいけない点ですね。たとえば法人税のことや、労働規約のことなんて日本で働いている頃は気にしたことがなかった。けどこちらでは必要になる。たとえば我々NRIにはトレーニー制度といって5-6年目の社員がこちらに研修で来るプログラムがあるのですが、そういった社員でも通常日本の事業部では出来ないような、採用の補助をしたり、自分で企画をしたりします。日本で事業部にいると一生関わらないと思うようなことに関われるのがメリットですね。
3つ目、コンサルティング職ならではかもしれませんが、日本人というだけで繋がりが作りやすいので、私のような年齢でも経験豊かな偉い方とお知り合いになれるというのが、いい環境かなと思います。

逆に気を付けなければいけないのは、以前は日本人というだけで価値を認められることもありましたが、タイのビジネスパーソンでも10万〜20万バーツ(日本円にして36万〜72万円)クラスの給与を得る能力がある方が増えてきたので、これからは日本人ということに加えて何らかの価値を出さないと、職に就けなかったり、または給料が安くなってしまいます。過去は日本人であるだけで身分や給与は保証されたのですが、そういったところは少なくなってくると思いますね。

加藤さん自身はプロジェクトベースの滞在で2006年くらいからタイに出張することがあったようなのですが、近年30代前後の駐在員が非常に増えたこともご指摘されていました。私のまわりでも、しっかりとした意思をもって事業に取り組まれている方が多く、そういった面もやりがいにつながるのかもしれません。

より価値がある働き方を出来る人材が重用されるのは、どこの国のビジネスパーソンでも同じです。自分をより高めていくために「海外で働く」という事も一つの大きな選択肢になってきているのだと感じています。

プロフィール/敬称略

加藤 悠史
野村総合研究所タイ NRI Consulting & Solutions (Thailand) Co., Ltd. コンサルタント

1982年東京生まれ。 2004年野村総合研究所グループ入社。 2007年から2008年までタイ国立チュラロンコン大学留学。 2013年より野村総合研究所タイ。
2006年よりタイ関連のプロジェクトに従事。 サービス業を中心とした事業戦略やM&A支援が専門。 最近は日本人出張者に英語で話しかけられるのが悩み。

八源寺 誠
RGF HR Agent Thailand 拠点長

1980年生まれ。 ゼネコンで経理職、自動車部品メーカーでの営業職を経て、 2014年よりリクルート海外人材斡旋事業であるRGFに参画。 上海拠点での勤務を経て、現在はRGFタイにて拠点長を務める。 2014年に営業開始した同拠点の立上げ業務に従事。主に日系企業を中心に採用支援を行う。 日系企業が多く進出するこの市場で事業拡大に挑む。

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