職務経歴書は書くのも読むのも時間がかかる。『レジュメ』機能開発秘話

職務経歴書は書くのも読むのも時間がかかる。『レジュメ』機能開発秘話

リクルートは約5分で職務経歴書が作成できる『レジュメ』機能を2022年12月にリリースし、『リクナビNEXT』『タウンワーク』など、運営する求職活動支援サービスで共通して使用できるようになりました。開発を推進したリクルート プロダクトデザイン室 大城康平とデータ推進室 稲村秀人にサービスについて聞くと、日本の人材不足に話が及ぶことに。

約5分で完成! 職務経歴書機能『レジュメ』とは?

― 『レジュメ』を実際に使ってみたのですが、自分でテキストを入力せず、質問に対してキーワードを選んでいくだけでいいのでしょうか?

大城:そうです。この『レジュメ』は経験職種に応じた質問ごとに、あてはまるキーワードを選択して答えるだけで、職務経歴書を簡単に作成できる機能です。求職者の方が選択するキーワードと同じものを用いて、企業の採用担当者も候補者検索ができるため、求人企業にとっても、候補者を探す時間の短縮につながります。

レジュメの職務経歴作成画面
レジュメの職務経歴作成画面

― キャリアアドバイザーと面談しているような、優しい画面ですね。私も転職活動経験者なのですが、この「職務経歴書を書く」ことのハードルが高かった記憶があります。

大城:まさに「職務経歴書の作成」が転職活動の障壁のひとつになっているので、少しでもラクにできたらと思いこの機能を作りました。また、人材を採用したい企業の採用担当の方々から「フリーテキストで書かれた職務経歴書を読むのに時間がかかる」というご苦労も聞いていまして、この課題はすぐにでも解決したほうがいいな、と。

左上の特徴③などのテキストを消すalt:『レジュメ』が利用できるリクルートの求職活動支援サービス
『レジュメ』は、リクルートの求職活動支援サービス共通で使うことができるため、サービスごとに登録し直す手間も最小化

― 取り組む動機はシンプルだったのですね。 …とはいえ、世の中にある多様な職種やスキル・経験を網羅して、キーワードを選ぶだけで職務経歴書を作成できるようにするのはかなり難しいのではないでしょうか? どこから着手したのですか?

大城:まず、職種を約1200種類洗い出しました。その職種に紐づく質問を20件ずつ用意し、約1万4000(24年2月現在)件のスキル・経験キーワードを整備しています。質問やキーワードの質を高めるために、少し作ってはプロジェクトメンバーで疑い、また作っては、疑い…。

『レジュメ』開発に携わった大城康平(中央)と稲村秀人(左)
『レジュメ』開発に携わった大城康平(中央)と稲村秀人(左)

大城:今もまだ発展途上ではありますが、議論を繰り返しながら質を高めています。質問やスキル・経験のキーワードの質が悪い場合、求職者の皆さんが本来アピールできたはずの経歴を表現する機会を逃してしまいます。リクルート社内の人材紹介事業において、求職者の方と日々面談し、仕事の紹介を行うキャリアアドバイザーや、企業の採用を支援する営業担当の知見を借りながら、慎重に進めているんです。

― 1200職種と1万4000件のスキルキーワード…気が遠くなりそうです。稲村さんはそれらをユーザー目線で厳しく価値検証する役割としてどんなことを考えたのでしょうか?

稲村:求職者の皆さんがスムーズに違和感なく回答できるように、例えば質問が多すぎないかバランスを見るなど負荷軽減のためにできることを模索し議論していきました。プロダクトマネジャー、デザイナー、エンジニアが一緒にこの機能の思想から話し合ってきたおかげで、目線を揃えて議論できたことがすごくありがたかったですね。

『レジュメ』を通じて広げたい、さまざまな就労機会やリスキリングの可能性

― 『レジュメ』のデータが蓄積されると、どのような展望が開けるのでしょうか?

大城:一人ひとりの可能性を広げるキャリアのサポートができると考えています。『レジュメ』のデータが蓄積されれば、A業界で身につけたこのスキルは、B業界でも使えるといったことが分かるようになり、就労機会や仕事を選ぶ上での選択肢も広がっていくと思うんです。また、Cのスキルを持った人は、Dのスキルを身につけると年収がいくらアップするというのが見えてくれば、前向きなリスキリングもできる。誰もがキャリアについて今まで以上にイメージしやすくなっていくと思います。

リクルートのエンジニアの打ち合わせ風景
打合せをする稲村(右)と大城(中央)

稲村:深刻な人材不足の日本において、一人ひとりが自身の強みを活かせる仕事に出会い、パフォーマンスを発揮していけるかどうかは、重要なテーマです。『レジュメ』を通じて、その人の持ち味を可視化することや、自己アピールのお手伝いをすることで、より多くの方が自分に合った仕事に出会える世界を実現したいと考えています。マッチング精度が上がることにより、自分に合った就労機会を得た求職者の方が増えれば、仕事を通じた成長や生み出す成果の総量も大きくなる可能性が高くなる。働く意欲や仕事のアウトプットといった「質」が上がると、働く個人と企業双方にとってプラスになると思うんです。

まるで一人ひとりにキャリアアドバイザーがつくようなサービスに

― 最後に、今後HR領域で挑戦していきたいことは何ですか?

稲村:開発プロセスでは実は心が折れそうになる出来事もたくさんありました。そこで踏ん張ることができたのは、ひたむきにプロダクト開発に向き合う仲間の存在が大きかったんです。「1億人1億通りの働き方、その人らしいキャリア形成」を支援できるように、一緒に実現する仲間を増やしていきたいと思います。

大城:キャリアアドバイザーが一人ひとりにつくような、仕事探しが簡単になるサービスを実現したいと思います。自分に合った仕事に出会うための取り組みのひとつとして、一人ひとりのキャリアや価値創出の最大化をサポートするプロダクトを志向していきたいと思います。

リクルートで働くエンジニアの大城(右)と稲村(左)
リクルートで働くエンジニアの大城(右)と稲村(左)

登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

大城康平(おおしろ・こうへい)
株式会社リクルート プロダクトデザイン・マーケティング統括室 プロダクトデザイン室 HR領域プロダクトデザインユニット

大学卒業後、2014年リクルートコミュニケーションズ(現・リクルート)に入社。Webマーケティング系のプロダクトの企画開発や、グループマネジャーも経験。2021年より現部署に異動し、HR領域の新規プロダクト開発プロジェクトに参画。稲村秀人さんたちとともに、職務経歴書機能『レジュメ』の価値開発に取り組む

稲村秀人(いなむら・ひでと)
株式会社リクルート プロダクト開発統括室 データ推進室 データテクノロジーユニット アジリティテクノロジー部 アジリティエンジニアリング2グループ

大学卒業後、ベンチャー企業2社を経て、2018年リクルートテクノロジーズ(現・リクルート)に入社。ライフスタイル領域、マリッジ&ファミリー領域、自動車領域で、リアルタイムデータ処理基盤開発やデータマネジメントに携わる。2022年より現部署のグループマネジャーを務める

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