マネジャーとエンジニアとの両立。“時間が足りない”からの脱出法
マネジャー(管理職)となり、メンバーをフォローしながら、自らもエンジニアとして手を動かしていたリクルート従業員の伊藤健介。いくら時間があっても足りないなかで、自分で自分を楽にする思考法を実践していったと言います。
エンジニアとして手も動かしたい ぶつかったマネジャー業との両立
リクルートに入社後、エンジニアとしてアプリケーションの基盤開発などを担当。2017年にマネジャーになりましたが、当時はマネジャーとしての業務とエンジニアとしての業務、双方に追われフル稼働状態でした。
メンバーから夕方に依頼されたコードのレビューチェックは、メンバーの業務を止めないようなるべく早く戻す。不確実性が高く、タイムリミットがある事業課題に対するソリューション設計は、皆のモチベーションを下げないよう、早く大きな成果を出すために自ら手を動かす。そもそもエンジニアの仕事が好きで自分で手を動かしたい気持ちもありましたし、自分が動いたほうが早いと思うこともあって、ついつい動いてしまう…。結果、自分で手を動かす時間が長くなりがちという状況が続いていました。
しかし、それは健全な状態とは言えない。そう思い、そんな状況を変えるべく、改めて自分もメンバーも楽になる方法を考えるように。
一石三鳥、四鳥を狙う 脳内リソースを有効活用
そこで、マネジャー研修の時に教えてもらい、言葉としては頭に残っていたものの、あまりしっくりきていなかった「一石二鳥ではなく、三鳥、四鳥を狙って考える」ということを意識しながら、実践してみました。
例えば、業務工程を短縮する場合は、その業務工程の短縮だけを狙うのではなく、後に続く工程が円滑になるか、汎用性や拡張性が高いか、といったことも考慮する。また、メンバーの育成においても新人にメンターをつける場合は、メンターをつけた新人にも、メンターになった先輩にも、それぞれどんな意味があるのか、複数の理由が付けられるかを重視し、双方に成長機会が得られるように配慮。自分自身も複数の理由付けができない業務を依頼された時は、断ることもためらわないようになりました。
一石三鳥、四鳥を念頭に、本質的な課題解決に注力する考え方へシフトしたことで、自分のなかの判断軸も定まり、より的確な判断ができるように。結果、組織力と業務効率が上がり、自分にも少しずつ余裕が生まれてきました。
ひとりブレストで思考の整理をスピーディに
そして生まれた余裕で、課題の本質を迅速に見極めるために、頭の中で、インプットした情報を絵に変換し、アウトプットするという“ひとりブレスト”も実施するように。全部の情報を覚えるというのではなく、インデックスを作って情報を紐づけられる状態にしています。これをしておくと情報の組み換えが簡単で、抽象度を上げたり、他のものとの共通点を見出したりしやすく、思考の整理もスムーズなんです。
このほか、すぐに対応できるタスクは即対応し、自分が持つ業務のボールの数を極力減らしています。例えば、4個のタスクがあってどの順番で進めるかの優先順位を考えるとなると、脳のリソースがかなり割かれてしまう。でも、2個即対応できれば、残り2個となり、どちらかを選べばいいので考える時間を短縮できますから。
バッファを生むため、知恵を絞る
こうやって業務の質と思考のスピードを上げていったことで、例えば、サービスで障害が発生するといった有事に備えたバッファも作れるように。メンバーの資料レビューについても、「ここはいい」「ここはダメ」と単に結果だけをフィードバックするのではなく、資料を見ながら思考プロセスも一緒に話し合う時間を持てるようになりました。結果、思考プロセスを一緒に話し合うので、認識齟齬がなくなり、メンバー自身も主体的に動きやすくなったという声をもらえました。
最初は楽になりたいと始めた取り組みでしたが、マネジャーである自分自身が変わることで、メンバーの皆へも多少なりとも還元できていると嬉しいなと…。ある漫画で目にした「知識ではなく、知恵を使え」という言葉を胸に、自分も皆も仕事が楽になり、何か新しいことに取り組めるバッファが生まれるよう、これからも知恵を絞っていくつもりです。
登壇者プロフィール
※プロフィールは取材当時のものです
- 伊藤健介(いとう・けんすけ)
- 株式会社リクルート プロダクトディベロップメント室 アプリケーションソリューションユニット 横断エンジニアリング部 AP基盤グループ
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大手ECサイト運営会社を経て、2011年リクルートに入社。Indeedに出向後、エンジニアとして「Air ビジネスツールズ」や『ポンパレ(2017年サービス終了)』『ポンパレモール』などの開発に携わる。2020年から『SUUMO』アプリの基盤開発や障害対応に従事。2024年から横断組織を主務とし、社内共通フレームワークやライブラリの開発・運用を通してソリューション提供や障害対応を担当