予期せぬ人事異動も、スキルアップの糧に「半年後にはきっと成長している」

予期せぬ人事異動も、スキルアップの糧に「半年後にはきっと成長している」

リクルートに届いたカスタマーの声を、プロダクトやサービス改善につなげるカスタマーエクスペリエンス推進室。そこで責任者を務めるリクルート従業員の渡邉夏海は、入社以来、さまざまな部署で経験したことが今に活きていると言います。時に、自分の仕事の力量に危機感を抱きながらも、どう乗り越えたのか。自身と企業価値の進化のために、大事にしているものとは?そのキャリアと仕事観に迫ります。

希望ではない異動で、悩んだことも

― 渡邉さんは2002年にリクルートに入社されたとのこと。なぜ、リクルートだったのでしょう。

渡邉夏海(以下、渡邉):就職活動の時、リクルート以外にも数社面接を受けていましたが、なかには「結婚後の働き方は?」「子どもと仕事の両立をどう考えていますか?」と、女性の候補者だけに質問するような場面もあり、違和感を覚えました。しかしリクルートは、面接での会話の節々から、性差・学歴・年齢に関係なく、すべての人に機会が平等に提供されている会社であると感じました。

実際、当時のリクルート社長は河野栄子さん(1997年~2004年、代表取締役社長)。女性社長が少なかった時代に、“機会の提供”を、口先だけではなく、きちんと体現していると感じたことも決め手となりました。入社後も、その印象は変わらず、より実感することが多かったですね。

― どのような場面で、機会を感じましたか?

渡邉:リクルートは事業変革のスピードが速い会社なので、常に「現状の能力よりも少しレベルの高い仕事」が設定されます。最初はスムーズにできなくても挑戦し続けていると成果につながり、結果、自身のできることが増え、チームも組織も成長する。これほど、挑戦の多い機会にあふれている会社は珍しいかなと思います。

他にも、私自身、部署異動の機会が多かったことが影響しているかもしれません。営業・企画・人事・R&D・経営企画・リスクマネジメントなど、いろいろな部署で経験を積んだからこそ、自分の引き出しを増やすことができました。

― せっかく身につけたスキルや知識が、異動でリセットされてしまうような気持ちになったことは?

渡邉:希望ではない異動の時など「自分はなぜ、ここにいるんだろう?」と悩んだこともありました。でも目の前にある機会から逃げずに、半年後の自分が「今の自分、よくがんばったね!」と言えるくらいに、やりきる。

すると、渦中にいる時は無我夢中で気付けないとしても、半年後には、成長している。そんな経験を繰り返す中、成果が出ない最中でもたまにはがんばっている自分を肯定してあげることも大切だなと、今では思います。

また私自身は「上司や会社の判断を信じて、一度は走ってみよう!」と思っていました。マネジメントする側は「個(個人)」をきちんと見て、私にとっても、組織にとっても必要だという判断で、異動があると思っていたので。それにもし、本当に今の仕事が合わないと感じた時や他の挑戦をしたいと思った時は、リクルートには「キャリアウェブ制度」もありますから。

※従業員が自由に応募し、異動できる制度。異動を希望する従業員と、各事業担当者が面接を実施し、双方の希望が合えば成立する仕組み

リクルート従業員であるカスタマーエクスペリエンス推進室の責任者・渡邉夏海

できる人と自分のアウトプットの差分から、「なぜ?」を考え続けた

― 異動という環境の変化を、前向きに捉えられるのはどうしてですか?

渡邉:私も最初からそうだったわけではありません。営業時代に発案した内容が正式に商品化されることとなり、2006年に商品企画スタッフへ異動した際の経験が、転機になっています。企画を推進する上では、細部だけでなく俯瞰する力を求められますが、当時の私はクライアントへの個別提案志向が強く残っていました。

実際に商品企画の仕事がスタートしたのですが、俯瞰して全体を捉えながら分析していく思考の必要性は分かっていても、アウトプットにはなかなかつながりませんでした。営業の皆さんが商品をクライアントへ提案するサポートや、提案資料作成・営業同行などさまざまな手を尽くすものの、成果が出ず…。リーダーとしても、メンバーの頑張りを評価に結びつけることができない自分のふがいなさを痛感する日々。そんな状況を払拭できないまま、人事部へ異動となり、心苦しい気持ちでいっぱいでした。

― そのような思いのなか、さらに新しい場所に身を置くプレッシャーもあったのでは?

渡邉:そうですね。ただでさえ自分の力量に危機感を覚えているなか、新たな部署で必要となる人事・労務に関する知識は皆無の状態。まずは片っ端から専門知識をインプットし、一つひとつのことに向き合いました。

異動して半年が経ち、アサインされたプロジェクトの定例ミーティングでのこと。そこは、自分より遥かに専門性も企画スキルも高いベテランの先輩や複数の組織長が多数参加する場。分析から事象を俯瞰的に捉えるというスキルに課題感を抱いていた私にとって、自分を変えるきっかけになるチャンスだと思いました。

― 具体的にどのようなことを実践したのでしょうか?

渡邉:ミーティングでは、起案者が用意した資料から定量と定性それぞれの分析結果を基に、課題や根拠、仮説を分かりやすく説明してくれます。その場で出た論点は次回の宿題となり、その流れが毎週繰り返されます。そのため、自身の思考力を高めるいいトレーニングになると考え、会議を録画し、すべて理解できるまで何度も視聴し議事録を取り、翌週までに自分も起案者と同じ提案資料を作成しようと決めました。

定例の場で提出される起案者の資料と自分の資料を見比べ、その差分を都度確認。「この差はなぜ生まれたのか? どうしてここまでの考えに及ばなかったのか?」と内省することを10ヶ月間継続しました。

― 自分が起案者ではないのに10ヶ月も内省して資料作成を! それは誰かから言われた宿題だったのでしょうか?

渡邉:いえ、誰かに言われたからではなく、自ら始めたことでした。最初の頃はアウトプットの質の差が歴然でしたが、継続するうちに少しずつ専門性と思考力が身につき、自分でも成長を実感するまでに。10ヶ月間も愚直に続けられたのは、商品企画時代の苦い経験があったからです。だからこそ、「ここで成長できなかったら辞めるしかない」と腹をくくり、自分のプライドや甘えを捨てることができたのだと思います。

― 人事部での成功体験が、その後も活きたと思う場面はありますか?

渡邉:ひとつの領域で深い専門性と考え方の型ができたことで、その後さまざまな部署へ異動しても、スピード感を持ってアジャストできるように。愚直に自分と向き合い、やりきれたことで自分のやり方(型)ができ、自信につながりました。私が大事にしている言葉に、「守破離(しゅはり)」があります。その「守」、つまり基本となる型を身につける段階を、あなどってはならない。ベースとなる知識を入れたら、複合的な目線で課題を整理して、打ち手につなげる。この考え方は、どの部署でも活用できました。

リクルート従業員であるカスタマーエクスペリエンス推進室の責任者・渡邉夏海

仕事が、さらに魅力的でやりがいがあるものになるように。みんなで最速で実現したい

― 現在は、カスタマーエクスペリエンス推進室の責任者です。具体的には、どのような業務を行っている組織ですか?

渡邉:リクルートが提供するサービスとカスタマーの接点となる、カスタマー対応を担う組織です。いただいた問い合わせに的確に回答すること、災害やシステム障害などの緊急対応に加え、カスタマーの声を分析し、サービス改善につながる提案を各プロダクト部門に届けています。

今、力を入れているのが「デジタルトランスフォーメーションを通じたカスタマーエクスペリエンスの進化」です。リクルートには、カスタマーからの声が年間数十万件届きます。対応の質・量・速度を高めるために、AIなどの最新技術も活用しながら生産性を向上させ、人にしかできない部分に注力する。結果、カスタマーの満足度も上がることを目指しています。

― 渡邉さんが組織のリーダーとして、日頃意識していることを教えてください。

渡邉:メンバー一人ひとりが、その能力を最大限に発揮できるように、組織のビジョン・ミッション設定を行い、スキルアップできる環境をつくること。これが、私の役割だと思っています。カスタマーが抱える「不(不便・不満)」を理解し、寄り添うと同時に、事業の持続的成長に向けた視点を持つ。さらには、細部から注意深く見る「虫の目」と、高いところから俯瞰する「鳥の目」の両方を持てるようになって欲しいと思っています。

実は、以前は「カスタマーコンタクト推進室」という名称でしたが、“顧客体験のレベルを上げる”という願いを込めて、「カスタマーエクスペリエンス推進室」という組織名にしました。この仕事が、さらに魅力的でやりがいがあるものになるように。その世界を、みんなで最速で実現したいですね。

― カスタマーエクスペリエンス推進室は、社内のあらゆる部署との連携が必要で、それぞれにおいての専門的なスキルが求められます。改めて、渡邉さんの今までの経験が活きていると感じました。

渡邉:それは本当に思います! さまざまな部署で知識を得たことで、複合的な目線で課題にアプローチできるようになりました。これまでの自分のスキルでは太刀打ちできない…そういう時こそ、視座を高めるチャンスと捉えます。どの部署であろうと好奇心を持って取り組み、周囲から学び、自分のやり方(型)をつくり、愚直にやりきる。それが自分自身と会社の成長につながり、結果、サービスを通じた社会への貢献につながると信じているので、臆することなく、これからもチャレンジし続けたいです。

リクルート従業員であるカスタマーエクスペリエンス推進室の責任者・渡邉夏海

登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

渡邉夏海(わたなべ・なつみ)
株式会社リクルート 経営管理 カスタマーエクスペリエンス推進室 Vice President

2002年、リクルートに新卒入社。営業や企画職を経て、人事全般の業務を経験。その後、経営企画室にてコーポレートガバナンス業務などを担当し、リスクマネジメント部門へ。2023年より現部署にて、リクルートの全プロダクトの顧客満足度向上に向けたカスタマー対応を行う組織の責任者を務める

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