リクルート流フィードバックとは? 大事なのは「受け止め方」
リクルートには、「あなたはどうしたい?」と問いかけ合う企業文化があります。特にその文化が表れるのは、アイデアや行動に対して意見や改善点を伝えたり評価を行ったりするフィードバックの場面。リクルートの新規事業提案制度「Ring」で2023年度準グランプリを受賞した宮本彩香は、さまざまな先輩からフィードバックを受けながらビジネスアイデアを磨いたひとり。入社早々フィードバックを通じて体感した、リクルートの文化について語ります。
リクルートのフィードバックとは? 上司からの「自分も答えは分からない」
「結論の間違いは、気にしすぎなくていい」フィードバックに向き合う気持ちがこのように変わったのは、入社間もなく『じゃらんnet』のマーケティング施策を担当した時のことです。施策案をいったん自分で考え、どういう優先順位で進めればいいか上司にフィードバックを受けに行くと、上司は「自分も答えは分からないけど」と前置きしてから話し始めたのです。上司と答え合わせをするつもりで案を持ち込んでいた自分にハッとし、「誰かが正解を持っているわけではないんだ」ということを思い知った瞬間でした。同時に、当事者意識の高い仲間と働きたくてリクルートに転職したはずなのに、自分自身が当事者意識を持てていないじゃないか、と悔しくなりました。
以来、フィードバックの場は「答えをもらう場」ではなく、議論を通じて抜けている観点やロジックの弱さに気づかせてもらう場だと再認識。これまで、自分の案の答え合わせをしようとしていたので、「間違ったら恥ずかしい…」という変な緊張があったのですが、これを機にそういう気持ちが消えていきました。
自分の論理の筋道を組み立ててからフィードバックに臨む
その後「Ring」で新規事業を提案する際、論理の筋道の立て方すら分からない時には「今なぜロジックが組み立てられないのか」「どのような手法を用いるべきか」という観点で周囲に相談し、答えが分からないなりに自分で筋道を組み立てました。そのロジックを手に、必要に応じて主体的にフィードバックを受けに行くと、「この課題の信ぴょう性を高めるには、この観点が必要だ」といった具体的なアドバイスをもらえて、筋のいい提案に近付く手ごたえを得られました。
その一方で、自分たちが導いた結論がひっくり返るようなフィードバックを受けたことも。しかしその時に持ち込んだアイデアは、定性・定量調査なども含め考え抜いた自分たちのロジックがあったため、敢えて自分たちの考えを貫くことに。フィードバックを全て受け入れるわけではなく、必要に応じて取捨選択を行う。いただいた意見を一度咀嚼し、それでも自分のロジックが正しいと感じた場合には自分の意見を貫く選択も必要だと思います。
「Ring」の準グランプリを受賞できたのは、決断する過程で自分のなかに確かな判断基準があったから。結論を出せず迷わないためにも、少し時間はかかりますが、1から100まで自分でロジックを組み立て、判断の基準を育む時間が必要だと感じました。
意思決定をゆだねられているからこそ、仕事に納得していたい
こうした経験から改めて大事にしているのは、どんな仕事も正解がないなかで、フィードバックという場を活用し、皆と議論し自分の足りない観点や情報を知り、意思決定の「軸」への納得感を高めていくこと。「誰かがそう言ったから取り組む」といった鵜呑みの状態で案件を進めようとすると、必ずどこかでノックアウトされます。「それって、自分の意思じゃないよね?」というのが周りに伝わり、異論が出ても自分の軸がないから相手を説得できない。そういう時には、思考停止になっていた自分を責めたくなることも。
リクルートは自分自身で意思決定する経験を積める環境なので、判断にあたり「このフィードバックはどこまで反映させるべきだろうか?」と悩んだ時には、その旨も素直に相談できます。「Ring」で取り組んだ案件も、日々の仕事も、自分で舵を取れるからこそ適当な結論を出したくないし、自分たちが一番考え抜き思い入れを持っている状態にしておきたい。「あなたはどうしたい?」と問いかけ合う企業風土が、モチベーションを高め納得して仕事を進められる源泉になっている気がします。
※リクルートグループ報『かもめ』2024年7月号からの転載記事です
登壇者プロフィール
※プロフィールは取材当時のものです
- 宮本彩香(みやもと・あやか)
- 株式会社リクルート マーケティング室 販促領域マーケティング3ユニット(旅行・飲食・ビューティー)旅行・飲食領域マーケティング部旅行マーケティング1グループ
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広告代理店にてタイ・バンコクに6年半駐在し、デジタルマーケティングの基盤構築やデータ分析チームの立ち上げを経験。2022年リクルートに入社。『じゃらんnet』『じゃらんゴルフ』のCRM施策を担当。2023年度の新規事業提案制度「Ring」で準グランプリを受賞