世界に広がる『アーモンド効果』の火付け役「江崎グリコ」に学ぶ。新しい価値を生み磨き続ける方法

健康志向を追い風に、昨今アーモンドミルクの商品化が相次いでいます。その火付け役となったのが2014年、江崎グリコ株式会社から発売されたアーモンドの新形態、アーモンドミルク飲料『アーモンド効果』。
新しい価値を生み、育て、磨き続け、10年目の今年もさらなる展開で成長し続けるなか、マーケターとして大切にしていることや実践されたエフェクチュエーション的アプローチについて、江崎グリコ株式会社 執行役員 木村幸生さんに伺いました。
機会に出会ったら即行動。興味は後からついてくる
実は私のキャリアはマーケティングや新規事業が長く、健康事業にアサインを打診された当時、健康分野は専門外で、特段知識や興味があったわけではありませんでした。しかし、入社以来ずっと携わってきた新商品開発の機会でもあると捉えて、即引き受けました。エフェクチュエーションとの出会いも、最初はある講演会のなかで聞いた一言から。その場で言葉を調べ、その研究者の方に即メール。吉田満梨先生とすぐお会いでき、わずか1ヶ月で社内勉強会開催決定にこぎつけました。どんなことも、機会と思えたら即行動。やってみると予想もしない面白さに気づくことがある。知識や興味は後からついてくるものです。
アイデアは一度出し切る。途中で捨てない
アイデアを出す時、ひとつ考え出す毎に評価をしてしまいがちですが、それはエフェクチュエーションの原則のひとつ「手中の鳥」を誤解しているかもしれません。手中の鳥とは、既存の「手段主導」で新しいものを生み出すという原則です。アイデアは単体では評価できるものでなくても、それらを組み合わせることで良いアイデアになることがあります。だから簡単に評価して捨ててはだめだというのが私の信条です。私が健康事業をスタートした時もその前身のプロジェクトで一度捨てたアイデアを全部机に掘り起こし並べては、何かと組み合わせられないかなどを見直すことに。そのなかで見つかったのが「アーモンド」と「糖質」というキーワード。そこから『アーモンド効果』の開発が始まりました。
不確実が当たり前。複数の代案とシナリオの解像度を上げる
よく〝不確実性の高い時代〞と言われますが、いつの時代も、新規事業やマーケットが不確実なのは当たり前。良い結果だけを期待するから期待と異なる結果だと失望する。希望的な観測だけではなく、悲観的なシナリオを考えていくことが大事です。
社内ディスカッションでは、具体的な行動レベルまで考えておく。そうすれば、思わぬ状況や偶然の出会いをポジティブに活かすことができます。こうした試行錯誤が商品や施策を磨いていくのだと考えています。
新規事業に打率は必要ない。打席に立ち続けること
不確実が当たり前だからこそ「失敗した」と悩んでいる場合じゃないんです。大切なのは打席数。打率じゃない。10回の打席で3本ヒットを打つより、1万回の打席で10本のヒットを打つほうが、数としては成果が出ているじゃないですか。
打席に立てば反対意見も当然出てきます。でも、反対意見を言ってくれる人って真剣なんです。最終的には一番の味方になってくれる。打席に立つからこそ本当の仲間に出会える。リクルートグループの皆さんにも、失敗を恐れず打席に立ち続ける人がいっぱいいると聞いています。ぜひそのパワーを使って世の中を変えていただきたいですね。
※リクルートグループ報『かもめ』2024年11月号からの転載記事です
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 木村幸生(きむら・ゆきお)
- 江崎グリコ株式会社 執行役員 健康イノベーション事業本部長 兼 クロスリージョナル・ブランドリーダー
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1991年に江崎グリコ株式会社に入社。冷菓部門で営業を担当後、冷菓開発企画部を経験。2012年には新商品マーケティング部の部長として、健康事業マーケティング部やアイスクリームマーケティング部で『アーモンド効果』や『SUNAO』などの新商品を開発。2023年に健康イノベーション事業本部長に就任