「夫婦のリアル」を届けたい 『ゼクシィ』ドローンで非接触&遠隔の読者撮影。その新技法とは?
『ゼクシィ』2020年11月号(9月23日発売)の「ふたりらしい家族のカタチ」特集。さまざまな夫婦にインタビューをし、これから家族を創っていくカップルに向けて少し先の未来の情報を提供している。
撮影/保田敬介 編集/千谷文子
実はここに掲載されている、読者自宅での家族のスナップ。そのメイン写真は全てドローンで遠隔撮影されたものだという。このアイディアを実現した『ゼクシィ』編集部の竹林真理奈に、その背景や新技法の詳細を聞いた。
コロナ禍でも、「今のリアルな情報」を届けたかった
竹林:2020年4月の1回目の緊急事態宣言発出後、『ゼクシィ』編集部では感染拡大防止の観点から、撮影を見合わせるケースが相次いでいました。特に緊急事態宣言下に進行した20年5~6月発売号では、撮影企画を急きょイラストに変更したり、過去撮影した写真を組み合わせて誌面を構成することもありました。
-多くのメディアやコンテンツ制作の現場が、そのような対応でしのいでいた時期でしたよね。
竹林:そんな状況ですから、今回のように読者が登場する企画は特に慎重にならざるを得ませんでした。公園など屋外での撮影も考えましたが、それでは普段の生活の様子が見えづらく、「ふたりらしい家族のカタチ」という企画の趣旨に合いません。やむを得ず企画を取り下げる判断もゼロではなかったと思います。けれど、私はなんとかご自宅での実際の夫婦の暮らしぶりが分かる撮影を実現して、企画を成立させたかったんです。
-随分とアツい思いだったんですね。どうしてそこまで?
竹林:コロナ禍で『ゼクシィ』の読者である花嫁さんたちはいろんな不安を抱えているだろうと思っていました。“おうち時間”や“在宅勤務”も増え、結婚式のことももちろんですが、夫婦としてどうしたいか、どういう家族になっていきたいかを考える時間が増えているに違いない。約30年にわたって、カップルのリアルに寄り添い情報提供してきた自負のある『ゼクシィ』。この変化の時こそ『ゼクシィ』らしく「今のリアルな情報」を届けたい、ただただそんな思いでした。
-なるほど。それでドローン撮影という方法がでてきたわけですか。…って、よく思いつきましたね?
竹林:実際は私が思いついたわけではなく、外部のエディターさんと一緒に企画を作っていくなかで生まれました。なんとか撮影させていただくご夫婦の安全を守りながら撮影する方法はないかと、エディターさんに相談したところ、カメラマンさんが「ドローンなら撮れるかもしれない」と。そこからエディターさんとカメラマンさんとデスクの私の3人でテスト撮影が始まりました。お子さんと一緒に登場いただく読者もいますので、自分の娘を動員して自宅で試したり。安全性はかなり確認しました。
安全で早い。加えて、自然な表情が撮れるという予想外のメリットも
-実際にはどうやって撮影するんですか?
竹林:撮影当日にご自宅の玄関前に届けたドローンを、取材対象者ご自身に自宅の中に入れ簡単なセッティングをしてもらった後、カメラマンが遠隔操作で撮影します。撮影中の細かい表情などの指示は全て電話で行い、10分~15分の撮影が終了したら、玄関前にドローンを戻してもらい、取材クルーが回収するというもの。こうすることで取材クルーがご自宅に入ることなく、完全非接触で撮影が完了します。
-15分程度で終了するんですか。早いですね。
竹林:さらにこの撮影方法だと、「高い位置から俯瞰で撮れる」「その場でカメラを向けるよりも被写体の自然体の表情・しぐさが出やすい」といった、予想していなかったメリットも発見することができたんですよ!
-確かに、お子さんたちの表情なんて特に、イキイキしていましたね。ドローンが動くのを「わぁ!」と面白がって見てくれていたのかな、などと想像します。
竹林:そうそう。目線もバッチリでしょう?これを皮切りに、現在では他の編集部員たちもさまざまな非対面撮影にチャレンジしています。機材のことや遠隔での指示の出し方など、かなりの量のリモート撮影のノウハウが溜まってきました。
-他の編集部員の方々も、「花嫁さんのために」という思いでチャレンジしてこられたんでしょうね。
竹林:はい。その思いに突き動かされて「コロナ禍だから仕方ない」とあきらめることなくチャレンジを続けることができたように思います。長引くコロナ禍、未だにさまざまな制約がありますが、どんな状況であっても読者が期待する誌面を届けられるよう、これからも挑戦を続けたいと思っています。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 竹林真理奈(たけばやし・まりな)
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リクルート プロダクトデザイン室 情報誌編集ユニット ゼクシィ編集部
2009年リクルート入社。『カーセンサー』の営業を経て、2014年より『ゼクシィ』編集部。現在はデスクとして誌面の編成や表紙&中吊り、ビジュアル統括の役割も務める