コロナ禍を経て結婚と結婚式はどう変わる? 『GOOD WEDDING AWARD』から見る未来
リクルート ブライダル総研が主催する第12回いい結婚式のプランニングコンテスト『GOOD WEDDING AWARD』が2022年8月2日に行われました。10年以上にわたり日本の結婚式を見つめてきた『GOOD WEDDING AWARD』。そこから見えた結婚式の変化の兆しや、カップルのあり方が多様化していくなかで、今後「ふたりで生きていく」と決めた全ての人をリクルートがどう応援していくのかについて、ブライダル総研研究員で、『GOOD WEDDING AWARD』運営担当者の金井良子さんに聞きました。
心を動かす結婚式を皆で考えるために生まれた『GOOD WEDDING AWARD』
―はじめに『GOOD WEDDING AWARD』(以下、『GWA』)の開催背景を教えてください。
金井:まず『GWA』を運営し、私も発足当初から所属しているブライダル総研のお話からさせてください。2010年、『ゼクシィ』からは少し離れた第三者的な立場で、ブライダルマーケットの発展に貢献することを目的として、ブライダル総研が発足しました。
当時から、少子高齢化の波で、将来的に結婚はもちろん、結婚式の実施組数が下がっていくことが見込まれており、結婚式という文化とどう向き合うかを真剣に考えていたブライダル総研。業界の方と色々お話をするなかで、最初に取り組むべきは業界で働くウエディングプランナーの仕事をもっと理解し、「カップルの求める良い結婚式とは何か」を考え、それをつくることのできる環境を整えることだという結論に至りました。
結婚式の中身をプロデュースするウエディングプランナーは当時、成約率や売上で評価されるケースが多く、どんなにカップルに寄り添って良い結婚式を作っても、その内容で評価されることは少なく、他の式場のプランナーがどんなプランニングをしているのかを知る手段もほとんどありませんでした。
良い結婚式とは何かを考えていくためにも、プランナーが自らのプランニングを紹介し、互いに聞き合うことで切磋琢磨していく場が必要だと感じ、2011年、『GWA』を立ち上げました。プランニングという数値化しにくいものに対して、基準を設けて評価をしていくことで、業界自体も結婚式作りの中身に着目していく世界になることを願ってのスタートでした。
―参加した方々の心を動かすような結婚式が増えていくことを目指しての開催背景だったのですね。
金井:プランナーや式場同士、なかなか横のつながりも生まれにくい状況だったので、つながりづくりにも貢献できるのではないかという狙いもありました。特にこの数年のコロナ禍のなかで、カップルは結婚式をすることに迷いや悩みを持つ方が増えましたが、プランナーの皆さんも精神的にかなり参っていたのです。そんななかでもカップルのための工夫や頑張る姿を共有し、『GWA』を通して互いに励まし合えることも業界支援につながると感じましたね。
「コロナ禍でも結婚式をする意味」とは?
カップルとプランナーの覚悟を感じた2022年度の『GWA』
ー今年12回目を迎えた『GWA』。今回も感動的な取り組みや今までにない形の結婚式が見られたと思いますが、今年度のエントリーで見られた特徴はありますか?
金井:今回は “覚悟”・“胆力”を感じられるものが多かったです。特にコロナ禍では、「結婚式はなんとなくするもの」ではなくなり、どのカップルも「この状況でも結婚式をする意味」「この状況でするベストな結婚式」を考え抜くようになっています。それに対し、プランナーも目の前のカップルの想いを汲み取り、様々な制限のあるなかでもベストな結婚式を提供しようという“覚悟”と、それを成し遂げていく“胆力”を今回のエントリーからは強く感じました。そして、皆が真剣に結婚式の意味を考えるようになったことで、これまでのある程度形式的な結婚式というよりも、目の前のカップルの求めるオーダーメイドな、ふたりにとって本当に意味ある結婚式と言いますか、結果としてこれまでよりも自由で多様な結婚式が生まれてきている。そんなことを感じさせる内容が多く見られました。
結婚式の多様化がコロナ禍で加速していった
―以前から結婚や結婚式の多様化は見られていますが、多様化とは具体的にどのようなことですか?
金井:多様化に関しては、5、6年前から身に染みて感じていました。いろいろな角度からの多様化があると思うのですが、大きく3点あると思います。
1点目は、カップルの状況が多様化してきたこと。年齢層の広がりや、再婚の方、子どもがいる方など、さまざまな背景のカップルが増えましたし、家同士の結婚という認識も薄れてきています。2点目は、嗜好性の多様化です。結婚式のスタイルやカジュアルさの度合い、テイストのバリエーションが増えてきたと感じます。3点目は、結婚式の意味や価値自体の多様化です。これはすごく大事なことだと思います。結婚式をお披露目と考える人もいれば感謝を伝える場にする人もいますし、人生の棚卸しや周りの人からの承認の場にしたい人もいる。人によって考えは本当にさまざまです。この多様化の流れのなかでコロナ禍になり、大変革が起きたのだと思います。
―大変革が起きているというブライダル業界ですが、何か現在感じている課題はありますか?
金井:大変革のなか、多様化する価値観や要望をしっかり捉えるためには、プランナーとしての経験だけでなく、プランナー自身の人生の経験、視野の広さや社会を見つめる深さも求められているのではないかと思います。
今回の『GWA』もLGBTQの方などさまざまなカップルの結婚式がありましたが、自分と違う価値観や人生を歩んできた人を理解し、プランニングするためには、やはり経験値が必要になってきます。そのためにはプランナー自身のキャリアアップはもちろん、プランナーが長く働き続けて経験を積むためにも、その方々をサポートするマネジメント層の方へも働きかけていかなければならない。そこで、今年からブライダル総研主催でマネジメント層向けに、『GOOD WEDDING COLLEGE』という人材育成や組織づくりのセミナーを通した情報発信を行うなど、少しずつできることを進めています。
人生のさまざまな機会でカップルを応援していく世界を
―ブライダル業界を中長期的に支えていけるような施策も動いているのですね。昨今、結婚式をしないカップルの方も増えていると思います。カップルのあり方や結婚式が多様化していくなかで、金井さんが目指していることを教えてください。
金井:カップルのより良い人生のための、あくまでひとつの手段が結婚式。私は、生きていくなかで一度立ち止まり、人生を振り返り、ふたりがどうなりたいかを考える機会を作ることが必要だと感じていて、結婚式はそれができるひとつのイベントだと捉えています。ただ、結婚式という言葉だと、古き良き典型的なものをイメージしてしまう人が多く、結婚式をするかしないかの選択になってしまっているのが現状。ですが、これまでお話した通り、結婚式は自由! どんな形でも良いですし、結婚してすぐでも、子どもが生まれた時でも、年を重ねた時でも、それぞれのタイミングで人生の節目に大切に味わう機会を作っていけば良いと思うのです。その機会に『ゼクシィ』が寄り添っていられる、そしてどんなに多様化が進んでも、ともに生きていくことを決めた人とその周囲の人達を応援していける。そんな世界を作ることができたらいいなと思っています。
今年の『GOOD WEDDING AWARD』について詳しく見る
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プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 金井良子(かない・よしこ)
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リクルートブライダル総研
1993年にリクルート入社。『じゃらんnet』『ゼクシィnet』など数々のネットサービス立ち上げと運営に携わる。2004年10月より『ゼクシィnet』編集長、2010年4月より現職。『GOOD WEDDING AWARD」』運営担当や『ブライダル専門家』としてテレビ番組でのアドバイザーも務める