『ホットペッパービューティーワーク』で美容業界の人材支援を強化
美容師やネイリスト・アイデザイナーなど、美容業界で働く方の就転職を応援する『ホットペッパービューティーワーク』が、2023年春に立ち上がる予定だ。本サービス開始に至った思いと、サロンとサロン利用者・求職者、そして業界の可能性を広げるために『ホットペッパービューティー』が目指す未来について、リクルート ビューティDivisionのDivision長・道本雅典に話を聞いた。
コロナ禍で再認識された美容業界の価値とは?
―昨今の美容業界の動きと、新たな求人サービスに取り組まれる背景を教えてください。
道本:私たちリクルートの美容事業は2000年にフリーペーパーを創刊してから約20年間、「日本中の街にBeauty Smileを。」というビジョンを掲げ、集客やITサービスによる店舗の業務支援サービスを携えてサロンの皆さんとともに走ってきました。
新型コロナウイルス感染症拡大当初は、サロン経営も厳しい状況でした。しかし、弊社で2021年3月に実施した「就業実態調査2021」において、コロナ禍における美容師の満足度・成長実感がともに、「満足している」との回答が2019年から2021年の3年間でぐっと上昇しています。※1
向上した理由のひとつにはおそらく、不要不急の外出自粛を経てサロン利用者・美容業界の双方が改めて「美容が人に与える力の強さ」を実感できたことにあると思っています。
利用者の側でいえば、「爪がきれいになるだけで気分が上がる」「似合う髪型にしてもらって、毎日が楽しくなった」など、「やっぱり、きれいになることの気持ち良さは、日々に活力や潤いを与えてくれる」という気持ちの変化がありました。
そして、サービスを提供した美容業界従事者側も、利用者から感謝や美容の必要性を伝えられたことで改めて、美容は人に自信や勇気を与えられる仕事だとその意義を再発見したことで満足度が上がったのだと思います。
この調査で私たちも美容の仕事は人を元気にする力を持ち、美しくなることで、日々前向きになれる。そんな力を秘めている素晴らしい仕事であると、改めて自信を持ちました。
一方で、美容師の方々は、長時間で画一的な労働スタイルや低めの年収などを理由に、離職してしまっている方も多い状況(美容業を含む生活サービス関連業・娯楽業は3年以内離職率が57.2%)にあります。※2 ※3
これは業界にとって大きな損失になっていると、常々考えていました。
美容業界のポテンシャルを最大限発揮するために
―美容業界から離れてしまう人が多い状況を、どう捉えていますか?
道本:そもそも美容業界には、まだまだポテンシャルがあるにも関わらず、世の中に認識されていない可能性があることを感じています。そのポテンシャルとは、大きく分けてふたつ。ひとつはサロンを利用するお客様が笑顔になれて、それを見た美容業界従事者もお客様を幸せにできたことで、幸せを得られるというポジティブな循環を作り出せる稀有な産業であること。
もうひとつはとてもサステナブルな営みであるということ。美容業界のサービスでは過剰な消費活動や廃棄物が生みだされることもない。例えば、小さなネイルの施術ひとつで人が幸せな気持ちになれる、毎日が楽しくなる。
しかし、改めて国内の美容業界を見てみると、あらゆる産業に比べてサービスの料金レンジが狭い傾向が見てとれます。例えば、料金レンジの高低を比べると、5,000円のバッグと50万円のバッグ、3,000円の宿泊施設と30万円の宿泊施設など、100倍以上の差がつく産業は数多くありますが美容業界はそうではありません。米国を含め、海外では施術者による料金差はもっと大きく、技術を磨いた分だけ評価される世界を実現できています。美容業界でも頑張った人や素晴らしい技術を持った人が、もっと評価されていいはずです。
美容サービスを求める利用者の声を聴き続け、美容業界に携わって20余年の経験を持つ私たちだからこそ、美容業界の可能性をもっと広げられるのではないか。先ほどお話ししたように、利用者が求めるサービスのバリエーションや施術者の評価を可視化したり、施術料のバリエーションを広げたりすることで、美容業界で頑張っている技術者の方の活躍の幅を広げることにつながっていくのではないかと思っています。これが、すなわち働き方や制度、雇う側・雇われる側、そしてサロン利用者との関係性を改善することにつながります。美容業界の皆さんと一緒に、業界に関わる全員が笑顔になれる、より良い業界構造に進化させていきたいと考えています。
採用の課題に踏み込むことが、構造改革の第一歩
―構造を変えるためにはまず何をしなければならないと考えていますか?
道本:サロン経営者が抱えている大きな課題に、今まで私たちが取り組んできた集客(82%)以外に、採用(42%)があります。まずはここに力を注ぎたいと考えて、『ホットペッパービューティーワーク』を作りました。
実は、美容業界は人手不足の一方で、せっかく資格取得しても子育て中で土日や夜間に働けずやむなく離職してしまった休眠美容師の方々や、資格取得後別業界に就職した後でやっぱり美容業界で働きたいと希望する未経験資格者も多くいるのがこの業界の現状です。
こうした未経験資格者を育ててくれる美容サロンも増えてきてはいるのですが、その実態はあまり知られていません。美容業界に長く携わってきた私たちだからこそ、そういった希望を持っていらっしゃる求職者層にも認知拡大をしていきたいと考えています。
今後、『ホットペッパービューティーワーク』を通じてアプローチしていきたいのは、下記4つの層です。
- 業界未経験者
(未経験だが、美容業界で働きたいと思っている人) - 転職時に一旦業界を離れた人
(例:美容師のライセンスを持っていても、お客様が増えず、やむをえず短期間で業界を離れた人) - 以前離職したものの、美容の他ジャンルで復活したい人
(例:美容師アシスタント2年で、デビュー前に退職したものの、他ジャンルで仕事を再開したい人) - 長い離職期間がある人
(結婚・子育てでいったん退職、長いブランクを経て美容業界に戻りたい人)
また、今サロンに面接に来ている求職者は、気になるサロンがあったら『ホットペッパービューティー』に載っているスタイル・メニュー・スタッフの雰囲気・カスタマーの口コミを見て、自分に合うサロンかどうかを確認しているという事実もあります。
そういったニーズがあることも分かっているので、求職者が知りたい「リアル」を届ける機能も実装しています。
具体的には、『ホットペッパービューティー』のメニュー・客層・評価分布・口コミなど、リアルな情報を見られるようにし、採用のミスマッチを減らすことを目指しています。
世界に誇れる技術・人間力が評価され、やりがい溢れる業界へ
―『ホットペッパービューティーワーク』を通じて、美容業界にどう貢献していきたいと考えていますか?
道本:『ホットペッパービューティーワーク』で美容サロンの採用をサポートすることで、採用のミスマッチを減らし、サロンで働く従業員の方の定着率を高めていけたらと思っています。この「従業員の定着」を実現できれば、サロン・サロンで働く従業員・サロンの利用者の「三方良し」の状況を生み出せるはずです。
従業員の皆さんの働く満足度が、労働環境の充実と生産性向上によって上がれば、利用者の皆さんも、より満足度の高い施術を受けられる。その結果、サロン側はリピート率や利益も向上し、店舗運営が安定するという良い循環になります。
こういった仕組みができれば、業界で働く価値が高まり、働きたい人で溢れるようになる。それと同時に料金レンジもバリエーション豊かに広がっていき、頑張って技術を身につけた人にとって、やりがいのある業界に変わっていくはずです。
そして働きたい人が理想のサロンに出会って、イキイキと長く働き続けられる環境であれば、カスタマーの笑顔が増え、「日本中の街にBeauty Smileを。」という『ホットペッパービューティー』のビジョンにもつながります。
世界から注目される日本人ネイリストやスタイリストが多いことを考えても、日本人の技術力はもっと評価されていいはず。世界に誇れる技術力や人間力が適正に評価される業界にしたい。そんな思いを持って今回リリースする『ホットペッパービューティーワーク』を作りました。
私たちが手掛けたサービスでこうした良い循環を生み出し、美容業界全体が変わっていくきっかけを作りたい。そう思っています。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 道本雅典(みちもと まさのり)
- 株式会社リクルート Division統括本部 ビューティDivision Division長
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1999年リクルートに入社。2年半の求人営業を経て、『Hot Pepper岡山版』の創刊営業へ。以降、岡山版、熊本版、福岡版の版元長、『eruca.』(2016年に休刊)創刊に関わったのち、10年より美容カンパニーへ。福岡グループのマネジャー、営業推進グループなどを経て、2015年よりビューティ&ヘルスケア統括本部の美容情報営業統括部統括部長に。2016年ビューティ営業統括部統括部長となり、21年より現職。趣味はトレイルランニングで、最近、夫婦で山登りを始めたそう
関連リンク
- ※1 出典:https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/column/c_hair/28540/
※2 出典:国税庁ホームページ「令和2年分民間給与実態統計調査」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/002.pdf#page=17
※3 出典:厚生労働省ホームページ「新規学卒就職者の離職状況」平成31年3月卒業者)
新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します|厚生労働省 (mhlw.go.jp)