結婚式の出欠もご祝儀もWebで。『ゼクシィオンライン招待状』で誰もが幸せに
郵送が当たり前だった結婚式の招待状。現金が当たり前だったご祝儀。これらがWebで完結する世界を目指すのが、2023年6月にリリースされたリクルートの『ゼクシィオンライン招待状』です。紙からWebでのやりとりに変わると聞くと情緒や伝統がデジタル化で失われてしまうようにも思えますが、そこには開発者の中西宏貴がブライダル業界と向き合いながら目にしてきた、全ての人の「不安」を解消したいという熱い思いが込められていました。
「感謝」を伝えられるなら、ハガキでなくてもOK?
―中西さんは、なぜこの『ゼクシィオンライン招待状』を開発したのでしょうか?
中西:きっかけは、新型コロナウイルスの影響で加速した消費・購買行動の変化です。キャッシュレス決済、ネット予約…こういったデジタルな行動様式がもはや主流になってきて、私たちは「デジタル化しても失われない本質」に気づき始めたのではないでしょうか。
例えば、レストランで食べた料理の美味しさによって支払方法を変更する人は、あまりいませんよね。それはなぜかと言えば、支払う手段が現金からクレジットカードやキャッシュレス決済サービスに置き換わっても、相手への感謝の度合いに変化はないと感じているからです。
中西:デジタル化が進んでも、情緒的なものが失われるとは限らない。ならば自信を持って時代の流れに乗って、デジタルの力で私たちの負荷・障壁になっている「不」を取り除こう! そう考えた時、自身がブライダル業界で目の当たりにしてきたカスタマーの「不」として浮かんだのが、ハガキや現金といった紙を前提とする招待状とご祝儀でした。
―改めて「結婚式」における本質は何か、カスタマーが困っていることは何か、考えたんですね。この『ゼクシィオンライン招待状』でできることは何になるのでしょうか?
中西:『ゼクシィオンライン招待状』の特徴は「ゲストの情報をリスト化してくれる」「結婚式の招待をハガキではなくWebで行える」「ご祝儀をゲストがオンラインで支払える」の3つ。これらを全てスマホだけで行えることが特徴です。
―スマホだけで! そういえば、コロナ禍も少しずつ落ち着いてきて、周りの友人がちらほらと結婚式を挙げるようになってきました。オンラインでの招待状を受け取る機会も増えた気がします。
中西:他社のオンライン招待状サービスと『ゼクシィオンライン招待状』で大きく異なるのは、「結婚式場がサービスを導入している」という点です。今までのオンライン招待状は、カップルが式場に持ち込み「ハガキではなくこのサービスを使います」と申請するのが主流でした。しかし、この構造だとウエディングプランナー(以下、プランナー)さんもカップルも困る場面があると分かったんです。
―両者が一度に困るんですか?
中西:持ち込まれたオンライン招待状サービスが初見のものだった場合、プランナーの方が設定・操作のアドバイスをできず、万が一サービス側でトラブルが生じてもカップルが気付いていなければ見過ごしてしまうリスクがあるんです。トラブルを防ぐにはこまめに情報を共有する必要がありますが、カップル、プランナーさんどちらにとってもコミュニケーションコストの増加は負担です。
というのも、多くのカップルはお互いの休みが重なる土日に式場とのやりとりをまとめて行う傾向があります。そうなると、施行や式場見学のご案内など全てが土日に集中し、プランナーさんは連絡を確認する時間があまりありません。カップルへのお返事は、基本的に週明けとなり、カップルがその連絡を確認するのは次の土日になってしまうなど、タイムラインが合わない両者のやりとりを最小限に抑えないと、ストレスがたまってしまいます。
―素敵なお祝いのためにストレスがたまるなんて、本末転倒ですね…。
中西:私もそう思います。一方『ゼクシィオンライン招待状』の場合は構造が異なり、サービスの契約主体者は式場です。プランナーが事前に仕様をインプットした上で、プランナーからカップルに招待状をハガキ/Webのどちらにするか(もしくは併用するか)を確認する、という流れです。
―プランナーが慣れ親しんだものを使用できれば、カップルもより安心できますね。
中西:挙式は分からないことだらけ。幾多の式を見届けてきたプロの万全の状態に頼りたいじゃないですか。
―でも、頼るとなると結局やりとりが増えてしまいませんか?
中西:『ゼクシィオンライン招待状』では式場側もカップルと同じ管理画面を確認できるため、カップルが逐一連絡せずとも出欠回答の進捗やいただいたご祝儀が分かります。そのファクトを基に、お花や食事の発注、あとは追加の招待などもカップルに提案できるので、両者のやりとりがとにかく減ります。結婚式場もカップルも、ゲストの方も。全ての人が幸せになる体験を追求しました。
オンラインでご祝儀を送れると、「あるある負荷」を解消できる
―ゲストも幸せに、という話がありましたが、プランナーさんとカップルだけじゃないんですね。ゲストのメリットとは何なのでしょうか?
中西:分かりやすいのはご祝儀をオンライン決済できる機能かもしれません。実は、オンライン決済にすると「あるある負荷」が解消されるんですよ。例えば、あなたが親友の結婚式の受付を任されたとして、ご祝儀を保管する立場になったらどう思いますか?
―光栄ですけど、不安ですね…大事なご祝儀をなくしたらどうしよう、とか。誰かから受け取り忘れたら心配だな、とか。
中西:そうなんですよ。大事なご祝儀を数十万~数百万円管理するって、結構緊張しますよね。簡易的な金庫を使う式場もありますが、それでも「目を離した隙にご祝儀を紛失したら大変! 」と思ってトイレに行けない人もいるくらい、心理的負荷の大きい役回りです。あと、逆にご祝儀を渡す側になった時を想像して欲しいのですが、家にご祝儀袋ってどれくらいストックしてあります?
―ストックはしていませんね…前回参列した時に買った残りがあるかな、くらいです。それもどこにしまったのか定かではありませんが…。
中西:分かります、私もです(笑)。ご祝儀袋によほどこだわりがなければ、前日や当日にご祝儀袋を買いに行って、ついでに筆ペンも買って、ATMでお金を大量に引き出して比較的きれいなお金を集めて…慣れない筆ペンで書いた字にいまいち自信が持てなくて。現金でのご祝儀って、結婚式に招いた側にとってはまったく本意ではない、ちょっとした「しんどさ」がゲストに強いられていると思うんです。
―確かに、誰かの負担になっているならば、何とかしたいですよね。
中西:日々の支払いだってキャッシュレスなんだから、ご祝儀もそれでいいんじゃないかな、って。しかも、ゲストだけじゃなくてカップルの負荷も軽減できるので、現金という「形式」にこだわらなければ幸せになる人が増えると考えました。
―カップルの負荷、と言いますと?
中西:例えば300万円かかる結婚式を挙げようとすると、式場に結婚式前に300万円を支払う必要があります。もしご祝儀で150万円分をまかなえたとしても、それは式の後。つまり、式前に十分な資金を持っていなければなりません。ブライダルローンもありますが、ご祝儀をいただく前にローンを組むことは、なかなか勇気のいることですし…。
―キャッシュレスだと、この体験も変わってくるのでしょうか?
中西:はい。オンライン決済の分は事前に支払われるため、最低いくらをまかなえるかが分かり安心できます。また、差額を式場にお支払いすればいいので料理のコースや引き出物を少しグレードアップしたり、お花を追加したり、「事前に手持ちがないから避けていたこと」を実現できるかもしれません。
―事前にご祝儀を受け取れることで、カップルもゲストに対して納得のいくおもてなしを見つけられるわけですね。
中西:招待状も同様で、デジタルだからこそできる表現が醍醐味です。デジタルであれば紙の招待状の時のような紙面の制限が原則ありません。思い出の写真を入れたり、長い文章で感謝の思いをつづったりすることも可能です。また、ハガキの招待状はあまり送り分けをしないと思うのですが、Web招待状は「Aさんにはこのデザイン、Bさんにはこのデザインの招待状を送りたい!」といったニーズにも対応しています。
―送り分けたい、というのはどういったシーンなのでしょうか?
中西:例えば、上司には少しきっちりした文面にする、同級生にはふざけた写真を載せて送る、というようにコミュニティの特性や空気感に合わせたい時ですね。送り分けによってコミュニケーションをパーソナライズできて、より心を込めた招待状にすることができるでしょう。あとは、ハガキとデジタルの併用もある意味送り分けですね。URLをクリックして名前を入力するだけなので回答の難易度はそこまで高くありませんが、とはいえスマホが上手く使えない人や紙の文化を重んじる方に対しては、Webではなくハガキの方がフィットしていると思います。
―『ゼクシィオンライン招待状』が広がることで、世の中の「結婚式」はどのように変わっていくのでしょうか。
中西:「結婚式」は、価値が定量では表せない特別なもの。「準備にかかる時間が〇時間削減された!」だけでは、足りないと思っています。準備が楽になった結果、情緒的な価値がどのように膨らむかが重要です。
中西:『ゼクシィオンライン招待状』で、面倒な準備がスマホひとつで完結する。浮いた時間を使い、例えば遠方の祖父母には招待状とは別にお手紙を書く。仲のいい友達に向けてちょっとしたサプライズを準備する。テーブルの上に置くメッセージカードの内容を一人ひとりカスタマイズする…こうした営みでカップルとゲストのつながりが深まったら、すごく幸せだと思うんです。
今までとこれからの感謝も、「おめでとう」も。思いを持った人々とその感情が一堂に会する場が結婚式ですから、この思いがより伝わる仕組みを作っていきたいと思っています。
編集後記:実際に届いた招待状
この取材から2週間ほど経ち、ちょうど友人から結婚式のオンライン招待状が届きました。招待状を郵送する場合は必要になる事前の「結婚式の招待状送りたいから住所教えてくれない?」といった確認がなかった分、嬉しいサプライズを受けた気分。会場の情報はGoogleマップと連携しているので、初めての場所でも安心できます。個人差はあるかもしれませんが、受け取った側として全く抵抗がありませんでした。
オンラインご祝儀機能がカップルにとってもメリットがあると知った今、迷いなくオンラインでの支払いを選択。クレジットカード決済でポイントも付きますし、式の直前にドタバタする必要もないのだと思うと、なんだかとっても楽な気分。
関わる全ての人にとってWin-Winな『ゼクシィオンライン招待状』。なんとなく「紙のほうがいいかな…?」と悩んでいるカップルの方には、ぜひおすすめしたいです。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 中西宏貴(なかにし・ひろき)
- 株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクトマネジメント統括室 販促領域プロダクトマネジメント室(マリッジ&ファミリー・自動車) マリッジ&ファミリープロダクトマネジメントユニット
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大学卒業後、2015年に入社。『ゼクシィ』の結婚式場営業を務めた後、婚活領域で新規事業開発、事業企画、プロマネを経験。その後、結婚領域に戻りメディアの中長期戦略策定やプロダクトマネジメントなどに携わる。23年4月より現職