CBT化で苦手克服!『スタディサプリ』到達度テストが叶える学びの個別最適化
高校で受ける試験と言えば、どんなところでつまずいたか忘れた頃に結果が返ってくる…。でもそれが、結果が翌日には分かり、即座に自分の苦手分野の克服につなげられる仕組みに変わるとか。リクルートで『スタディサプリ』の開発と営業に取り組む畑林一太郎と垂石 怜に、全国の高校生の約4人に1人は受検しているという「到達度テスト」の進化ポイントについて聞きました。
学びの個別最適化に効く、『スタディサプリ』の到達度テストとは?
―2024年4月から『スタディサプリ』の到達度テストがCBT(Computer Based Testing:コンピュータ使用型調査)化されるとのことですが、そもそも到達度テストとは何でしょうか?
畑林:『スタディサプリ』の学校向けサービス(『スタディサプリ for TEACHERS』)を導入している学校で受けることができるテストです。高校1年生の春と秋、高校2年生の春と秋、高校3年生の春向けに実施しており、生徒の皆さんにとっては学校外部のテストであり、模擬試験(模試)に近いテストとなります。模試と言われると、偏差値を出し、志望校合格率が出るものをイメージされる方が多いと思いますが、『スタディサプリ』の到達度テストはそれらとは異なります。現時点で自分が分からない分野はどこなのか、自分の弱点を克服するために苦手分野を洗い出すテストです。
―私の想像していた模試とは全く異なりました。
畑林:そうですよね。私たちの提供している『スタディサプリ』は、生徒一人ひとりに寄り添った個別最適な学びにより、生徒の皆さんの確かな学力の定着を学校の先生とともに支援することを目的としたサービスです。到達度テストも、志望校合格率を出すのではなく、テストで見つけた苦手分野を再度『スタディサプリ』の学習コンテンツを通して勉強し直してもらい、弱点を克服してもらうことを目的にしています。基礎が定着していないと、いくら応用的なことを学んでもなかなか身につきにくいですよね。基礎を固めてレベルアップへの準備ができるよう、テストやその後の学びを設計しています。
―いつ頃から始まったものなのでしょうか?
畑林:2016年から実施しており、22年度は春・秋合わせて累計120万人、重複分を除いた純粋な人数ですと約80万人の生徒さんに受検いただきました。全国の高校生の数が300万人程ですので、約4人に1人が受検してくださっています。
到達度テストCBT化の背景にあるもの
―その到達度テストが今回CBT化されるんですよね? なぜでしょうか?
畑林:第一に、「学び直し」のサイクルを短くしたいという狙いがあります。これまでは紙のマークシート方式でテストを実施していたため、テスト用紙を採点し、結果が分かるまでに3週間~1ヶ月間ほどの時間を要していました。ですが、それだと遅いんです。テストを受けた直後が一番、自分の苦手を自覚し、学び直しの意欲が高まっている時ですから、テストを受けたらすぐにでも結果が出て自分の苦手分野を見つけ、学び直しに即座に取り掛かれるようにしたかったんです。
―確かに。私も「あそこ、できなかった」というのをテスト直後は感じていても、結果が出る頃にはそんなこと忘れて、ただ点数だけに一喜一憂していた記憶があります。学び直しのサイクルを短くする以外の開発目的はありますか?
畑林:先生方の負担を可能な限り減らしたいという狙いも大きいです。紙テストの場合、学校に届いたテスト用紙を教室の人数ごとに数えて、配布して、回収して、採点結果が届いたら配付して…と見えにくい部分ではあるのですが、先生方には大きな負荷がかかっていました。
また、文部科学省が主導する形で高校生への1人1台の学習端末や高速ネットワークの整備も進んでおり、CBTが受検できる土壌も整ってきています。大学入学共通テストにおいてもCBT化の議論は進められており、今後CBTの普及は確実に進んでいくと推察されますので、学校としても早いタイミングでCBTに慣れておくことも重要だと考えています。
到達度テストCBT化のメリットはひとつではない
―時代の流れの側面も大きいんですね。到達度テストCBT化の本格運用は2024年4月からとのことですが、既に23年度から一部高校での先行受検が始まっているのですよね? 垂石さんは先行受検校の営業を担当されていると伺いましたが、反応はいかがでしょうか?
垂石:私は2校を担当し、生徒さん・先生ともにおおむねポジティブな反応をいただきました。ですが、何より驚いたのは生徒さんの順応速度です。タブレット端末で受検いただくCBT版の到達度テストには、後から見直しできるように気になる問題をチェックしておくことができる機能があるのですが、その機能について特に説明をしなくてもすぐに理解して使用されていたんです。デジタルネイティブ世代の凄さを思い知りましたね…。生徒さんからは、端末に直接書き込める点や小さな文字も拡大して見やすくなる点、ペンツールで書いたり・消したりが楽にできる機能について利便性を実感する言葉をいただきました。
また、先生方からは、誤って対象外の問題を解く生徒がいなくなったことへの好反応をいただきました。外部テストでは頻繁に、その学校の授業進捗度に合わせて「下記1~3の大問のなかからひとつ選んで解答しなさい」というものが出てきて、先生からこの問題を解くように案内があることもあるのですが、説明を聞き逃して全部解いてしまう生徒が一定数いるんです。ですが、CBT版では、あらかじめ先生のほうで回答すべき設問をロックできる。間違えて解いてしまうことを無くすことができるんです。これは先生方のチェックの手間を減らせますし、生徒さんには無駄な時間を使わせなくて済みます。
―テスト中って気が急いているから、あるあるのミスですよね。他にCBT版ならではの良さはありますか?
垂石:端末で受けられるようになったことで、自宅での受検も可能になったところを評価いただいています。登校が難しい生徒さんにとってもメリットですし、テスト自体を学校の授業時間を使って受検いただくのではなく、宿題として受けていただくことも可能になっています。
これは、誰かと比べるのではなく、自分の苦手に向き合うという到達度テストの特性上、可能なことだとも思っています。そして何より、採点が従来に比べて3週間以上早く、試験翌日には結果が見えるところを大変喜んでいただいています。なお、この返却にかかる時間は、現在さらなる短縮も検討中です。
また、あまり予想していなかった声なのですが、CBT版は何度でも無料で再受検できるところに注目いただいていて。受検後に自分の弱点を認識し、そこに対して『スタディサプリ』で学び直した結果、きちんと定着したのか確認できる。そういうものって今まであまりなかったようで、重宝いただいています。
テストがCBT化されることでのさらなるメリット
―採点コストが小さいのも利点なんですね 。反対にまだ改善点もあるのでしょうか?
垂石:数学の計算問題などは紙に書き込むほうが書きやすいという意見や、一斉に接続するので学校の通信環境や端末の充電が不安など、CBTならではの懸念も聞かれます。そういうお声に対しては、問題用紙を用意するなど、各校に合わせたハイブリッド型のご提案をしており、CBT化本格導入後も当分の間は、問題用紙を配布する用意をしています。
ですが、実際に受検の様子を見せてもらったところ、テスト前に「充電忘れていたから充電ケーブル貸して」と生徒同士でフォローし合っていて、大人の心配はさておき、生徒さん達は柔軟に受け入れてくださっているんだなと。
畑林:再受検の需要が見えたのは開発側にとっても発見でした。今後は再受検時の学力変化を分かりやすい形で明示できるような、生徒さんの成長のモチベーションにつながるデザインへの見直しも検討しています。
また、ご懸念いただいている通信環境ですが、不安定な状況でも確実にテストが受けられるように通信量を最大限小さく・分散させる仕組みを開発しました。同様の一般的なWebテストサービスで必要とされている5分の1程度の通信量でも問題なく受検できることが確認できています。可能な限りトラブルが起きない運用になるよう、日々サービスを磨いています。
垂石:サービスの進化につながるようなフィードバックができるよう、まずは高校の皆さんに知ってもらうべく、営業としても「早く・手間なく・何度でも」を実感いただける新到達度テストのご案内に邁進していきます。いつか、「これがないと困る」と言われるようなサービスになれたら嬉しいなと。
学びたい、学んで良かったと思える人を増やすために
―さらなる改善とご案内を重ねている最中なんですね。最後に、おふたりは新到達度テストをどのように使っていって欲しいと願っていますか?
畑林:『スタディサプリ』は、教育機会格差の解消を目指して始まったサービスですが、私自身も「将来への希望の格差をなくしたい」という考えを強く持って、どのようなサービスが必要なのかを日々考えながら開発をしています。進化した到達度テストや『スタディサプリ』を通じて、質の良い学びを提供し、家庭環境などによらずより多くの子どもたちに、自分の可能性を拓いていってもらえると嬉しいです。また、CBT化に伴い先生方の負担が少しでも減り、まさに生徒と対峙している先生方にしかできない教育に時間を割いてもらえるよう、今後もより良いサービス改善に尽力していきます。
垂石:実は私、東日本大震災発災時に福島県在住で、原発の関係で学校から一気に生徒が減り、それまであった6クラスが2クラスになる経験をしました。これまで通りの授業とはいかなくなり、将来への不安も大きかった。当時中学1年生だったのですが子どもながらに「この状況はどうにかならないのか? 人が少なくなっても安心して学べる環境は作れないのか?」という疑問を抱いたんです。そんな私がリクルートでまなび事業に携わるようになり、習熟度別に個別最適化された学びをどんな場所にいても受けられ、自分の望む進路を思い描ける状態が、学びの目指すべき姿なのではないかと思えるようになったんです。
今、『スタディサプリ』の営業になって4年目ですが、そういう世界を創るためにがむしゃらに走っています。到達度テストは学びの健康診断みたいなもの。相対的な評価ではなく絶対評価で自分の今を見つめることができます。ぜひこれを自らの学びのために活かしていただき、望む未来を拓くお手伝いができればと思います。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 畑林一太郎(はたばやし・いちたろう)
- 株式会社リクルート プロダクトディベロップメント室 販促まなび領域プロダクトディベロップメントユニット 小中高BtoBプロダクト開発部 小中高BtoBテクニカルPMグループ
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大手IT企業での教育機関向けのシステム開発やデータ分析事業を経て、2022年にリクルート入社。テクニカルプロダクトマネジャーとして『スタディサプリ』の到達度テストのCBT化業務に携わる
- 垂石 怜(たれいし・れん)
- 株式会社リクルート まなび教育支援Division 支援推進1部 首都圏3グループ
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2020年にリクルート入社。大阪を拠点に『スタディサプリ』の営業として主に兵庫県の高校を担当。22年にチームリーダーとして東京へ