業務効率化で成約率1.5倍に! 不動産賃貸の申し込み業務を支援する『申込サポート by SUUMO』
人材不足が叫ばれる昨今、その対策のひとつとして、ITを活用した業務効率化に取り組む会社も増えてきています。
不動産情報サイト『SUUMO』を運営するリクルートも、賃貸業界における不動産会社の業務効率化を支援しようと『申込サポート by SUUMO』を提供しています。『申込サポート by SUUMO』は賃貸業界のどのような課題を解決しようとしているのか、開発を統括する宮下 俊と営業担当として日々不動産会社に向き合う森本江美子に話を聞きました。
『申込サポート by SUUMO』とは?
―『申込サポート by SUUMO』とはどのようなサービスなのでしょうか?
宮下:2021年に提供を開始した賃貸業界における不動産会社向けの業務支援サービスです。「賃貸物件の申し込みに関わる業務」を従来の紙ベースではなく、賃貸物件入居希望者、不動産会社ともにWeb上で完結できるサービスになります。
―今まで物件の入居希望者が希望する物件を見つけた後は不動産会社に足を運んで紙の申込書に記入する必要がありましたが、それがWeb上でできるというものなんですね?
宮下:そうです。入居希望者の方にとってもWeb上でいつでもどこからでも申し込みができますし、これまで申込書記入対応をしていた不動産会社にとっても、業務効率化につながるサービスになっています。コロナ禍を受けてオンラインでの申し込み需要が高まったことや、2022年の宅地建物取引業法の改正で不動産賃貸契約の電子化が可能になったこともあり、業界全体で注目が高まっているものですね。
賃貸業界の現状と課題
―自分の賃貸契約を思い出してみても、店舗に足を運んでのたくさんの記入を手間に感じた記憶があるので、そのサービスを利用できると嬉しいです。『申込サポート by SUUMO』は業務支援サービスとのことですが、賃貸業界でも業務効率化は急務なのでしょうか?
宮下:まず賃貸業界の現状からお話ししますね。一般的に賃貸不動産会社には、入居希望者、仲介会社、管理会社、オーナー、物件情報を掲載するメディアなど、向き合うべき関係者が多数存在しています。そしてそれぞれ電話や来店、ファクス、メールなどさまざまなツールでのやりとりが発生しており、契約は書面が主。
―想像しただけでやり取りが多く確認も大変そうですね。
宮下:そうなんです。そして賃貸不動産会社の店舗は大規模店舗でない限り、従業員の方は数人が主流。数人で多数の関係者とのやりとりを担う必要があります。また、入居希望者は飛び込みでの来店も多く、時間は読みにくい。ひとりあたりの従業員の業務負荷は高いと言わざるを得ません。
そして、例に漏れず人材不足も深刻です。不動産業界の求人数推移は年々上昇しており、人材採用の難易度は上がる一方。実際に『SUUMO』が接している不動産会社の多くが人材不足を訴えていらっしゃいます。 人材不足も深刻かつ業務も煩雑な賃貸業界において、業務を効率化することは急務であると言えると思います。
―確かに…。森本さんは『SUUMO』の営業として不動産会社に向き合っているとのことですが、同じような課題を感じていますか?
森本:そうですね。特に地域に根差した長く経営されている会社様では、基本のやりとりがファクスというところが今も数多く存在しています。それに、問い合わせは多いのに人手が足りずに受付しきれない場面も目にしましたし、打ち合わせ中にも電話を受けたり、来客対応をしたりと常に同時並行で複数の仕事を行っていらして…。傍から見ると本当に大変そうだと思うのですが、その環境にいる当事者の皆さんはある種、その状態が当たり前になっているような印象も受けていました。
―ですが、負荷が高いままでは人材も長続きしないですよね。
宮下:そうなんです。特に業務の集中する繁忙期の離職率が高いというお話を不動産会社の方から伺っています。だからこそ、業務効率化を図ることで不動産会社の売上アップだけでなく労働状況の改善にまでつなげることができるのではないかと考えたのです。
それに、これまで『SUUMO』は不動産情報サイトとして、長らく住まい探しのサポートを行ってきましたが、入居希望者も住まいを見つけた後のほうがやり取りが多く大変。いくら私たちが住まい探しを早く簡単にできるようにしたとしても、その後で手間や時間がかかるようでは、『SUUMO』ユーザーの方にとって、より良い体験をご提供できているとは言い難い…。ユーザーの方にも不動産会社の方にも接点のある私たちだからこそできるサービスがあるはずだと、双方にとってより良いサービスになるよう、開発に着手しました。
―それが『申込サポート by SUUMO』なんですね。
『申込サポート by SUUMO』ができること
―実際に『申込サポート by SUUMO』でどのような課題を解決できるようになったのでしょうか?
森本:まず入居希望者が物件を内見後に店舗へ足を運び、申込書を記入するという作業が無くなり、内見も現地解散が可能になります。従来、手書きの申込書はファクスで物件管理会社や審査を行う保証会社に送付していたのですが、それもボタンひとつ、Web上で完結。申込書の記入漏れによる差し戻し・書き直し(のための問い合わせ対応含む)も減り、工数の削減につながりました。
実際に導入いただいた不動産会社様の事例ですが、『申込サポート by SUUMO』導入後1年7ヶ月で、申し込みの9割をオンライン化することに成功し、電話対応や紙の資料を探す時間からも解放され、その分、来客対応やオーナーの相談に時間をかけられるように。結果、従業員ひとりあたりの成約率が約1.5倍になるという大幅な生産性向上を果たした例も出てきています。
―そんなに大きな効果が!
森本:ボタンひとつで申し込み業務ができる点もですが、従業員の皆さんの担当物件の契約ステイタスがWeb上で一覧化できる点にも喜びの声をいただいています。導入前は担当従業員に進捗状況をその都度確認していたそうなのですが、そういった手間が無くなったのは大きいと伺っていますね。
宮下:当初は申し込みをオンラインで可能にするというシンプルな機能でしたが、『SUUMO』の担当営業や導入サポートスタッフを通して不動産会社様から数えきれないほどのフィードバックや要望をいただき、都度改修や年数回の大幅アップデートを行ってきました。とにかく皆さんにとって良いものをという思いを大事に、スピード感を持って日々改良に取り組んでいます。
森本:営業の私からしても、想像以上の早さで改修や新機能追加が進んでいくので、不動産会社様へも自信を持ってご案内できるサービスになっています。
―本気度が伝わってきます。最近行ったアップデートで大きなものは何でしょうか?
宮下:直近では、ライフライン手続きサポート機能の提供を開始しました。入居希望の方が『申込サポート by SUUMO』を介しての物件申し込み時に案内に同意された場合、電気やガスなど自分に合ったライフライン手続きのサポートを受けられる機能です。
入居者の方にとっては、各ライフラインに連絡して申し込み情報を入力するなどの面倒な作業の必要が無くなり、スムーズな新生活開始が可能となりますし、不動産会社の方にとっても、入居者からの問い合わせが減って業務軽減になります。
『申込サポート by SUUMO』を通し『SUUMO』が目指すこれから
―「電気も水道も頼んだのに。ガスだけ開栓依頼を忘れていた」みたいな事態も無くなるんですね。今後はさらにどういうサービスに進化するのでしょうか?
宮下:今後は申し込み以外にも契約の電子化や希望物件の内見予約ができるサービス開発を進めていけたらと思っています。リクルートには『HOT PEPPER』『じゃらん』など予約から支払いまでWeb上で完結できるサービスが既にありますが、『SUUMO』はまだありません。良い物件を見つけて内見しようとしても既に入居が決まってしまっていることも少なくないのです。いつかユーザーの方が『SUUMO』上から確実な内見予約まででき、オンラインで申し込みから契約まで完結できるようになれば、不動産会社・ユーザー双方にとって、より良い形になるのではと思っています。
もちろんこれまでのやり方を変えていただくことになりますし、向き合う関係者が多い賃貸業界においては、Webでのやりとりや電子契約に対して慣れていない方が多いのも事実です。ですが私たちも一朝一夕に変わるとは思っていません。10年かけてでも取り組む価値があると思っているので、業界の皆さんと目線を合わせながら一緒にDXを支援していければと。
関わる人も多様な大きなマーケットだからこそ、改善の余地も多く残されていると思っています。正直なかなか地道で大変なことではありますが、『SUUMO』というメディアを信頼し利用している多くの方がいてくださるからこそ、世の中に何か価値をお返しできるのではないか。やらなければならない、との思いで取り組んでいます。
「ともに変わる」を大切に 住まいに関わる全ての人へ
森本:私も営業として、不動産会社様の今に寄り添いながら、今をしのぐのではなく未来まで見据えたご提案をしていければと思っています。私、『申込サポート by SUUMO』をご案内する時、お客様にお伝えしている言葉があるんです。
―何でしょうか?
森本:「一緒に変わっていきませんか?」と。正直、リリース直後の『申込サポート by SUUMO』は同業他社が提供しているサービスに対して追い付いていない機能もありました。ですが、「業務効率化をしたほうが良いと分かってはいるけれど何から取り組めば良いか分からない。それに一気には変えたくない」と思っていらっしゃる不動産会社様に対し「まずは申し込み業務からオンライン化していきませんか? 私たちのサービスも皆さんの声を反映しながら成長していくので、一緒に変わっていきませんか?」とお伝えしてきたんです。
将来的に、人材不足や時代の流れで急な変化を余儀なくされる前に、少しずつでも準備ができるようサポートしたい。変わるのも覚悟と時間が必要なので、寄り添いながら一緒に成長していけたらなと。そんな思いで提案しています。
それに営業としてもこれまで『SUUMO』を通しての集客支援しかできていませんでしたが、集客後までお手伝いできる今は本当に嬉しくて。目の前の不動産会社様のお困りごとに寄り添えているという実感があるんです。
―一緒に成長しましょうと言われると、サービスに対しての要望も言いやすいような気がします。完成されたものをお渡しするのではなく、一緒に最適なサービスを探っていくのですね。
宮下:はい。まだまだこれからです。皆さんに知っていただき使っていただくことでどんどん磨いていければなと。今後も「不動産会社の成長へ貢献することで、『SUUMO』ユーザーの住まい探しをより早く・手軽に」という世界観を実現していくという考えの下、『SUUMO』に掲載された物件情報のデータを活かして、不動産会社様に向けた空室物件の要因分析や募集条件の最適化、設備のリフォーム提案までさまざまなサービスもご提供していければと検討中です。結果としてユーザーの皆さんの利便性向上にもつながっていくでしょう。
―申し込みサービスだけに閉じず、幅広い業務支援を検討していくのですね。
宮下:人生で1回も引越しをしないという方は少ないですから。多くの方が体験する住まいの変化に寄り添えるものをお届けするべく、これからも邁進したいと思っています。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 宮下 俊(みやした・しゅん)
- 株式会社リクルート 販促領域プロダクトマネジメント室(住まい) 賃貸プロダクトマネジメントユニット ユニット長
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2007年にリクルート入社。『カーセンサー』のシステム開発や『ポンパレモール』のプロデューサーを担当後、2015年に転職。2020年リクルートに再入社し、自動車領域のプロダクトマネジメントユニット長を務め、22年1月より現職
- 森本 江美子(もりもと・えみこ)
- 株式会社リクルート 賃貸Division 首都圏賃貸営業1部 首都圏3グループ
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2020年にリクルート入社。以来賃貸領域で営業を担当。23年より『申込サポート by SUUMO』専任営業に