2024年問題に直面する物流業界の力に。『Airウェイト』で“待ち時間”解消へ

2024年問題に直面する物流業界の力に。『Airウェイト』で“待ち時間”解消へ

混雑する場所には発生する“待ち時間”。その待ち時間に自由を提供するのが、受付管理アプリ『Airウェイト』です。もともとはBtoC(Business to Consumer)向けに開発されたアプリで、主に飲食店などで利用されてきましたが、近年は倉庫・運送業におけるBtoB(Business to Business)での利用ニーズも高まっているといいます。『Airウェイト』プロダクト担当者 蔦田慎史にその背景にある物流業界が抱える「2024年問題」と、活用シーンに広がりを見せる『Airウェイト』の今後の展望について話を聞きました。

トラックドライバーの長時間労働の原因のひとつである荷待ち問題とは?

― 蔦田さんはリクルートが提供する受付管理アプリ『Airウェイト』を担当されているとのこと。『Airウェイト』は2014年のサービス提供開始から今年で10年、飲食店や金融・医療機関などで見かける機会も増えてきましたが、最近、倉庫・運送業など当初想定していなかった分野でも利用ニーズが高まっていると聞きました。

蔦田:ええ。ありがたいことにそうなんです。物流業界からの需要が出てきた背景のひとつに「2024年問題」があると思われます。「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって、2024年4月から自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制を設けられることで発生が懸念される諸問題を指しますが、「2024年問題」が起きることで、私たちが享受できていた物流サービスがこれまで通りにはいかなくなる可能性もあると言われていますね。

― メディアでも大きく取り上げられていてよく目にしますが、今、物流業界はどうなっているのでしょうか?

蔦田:物流業界において、トラックドライバーの長時間労働や不足といった課題は以前からあったものですが、今回時間外労働の上限規制が課されることになり、より生産性を上げる必要性が高まっている状況です。

生産性を上げるために移動速度を上げることは難しいので、無駄な時間を削減する必要が出てきますよね。そこで注目が集まっているのが荷待ち時間の短縮なんです。ドライバーの1日の労働時間のなかで一番長いのは移動時間ですが、倉庫での荷待ち時間も軽視はできません。荷待ち1回あたりの待ち時間が平均で約1時間。2、3時間待つというケースも少なくありません。

― 荷待ち問題はトラックドライバーが長時間労働となる原因のひとつであると。解消できれば労働時間を短くすることにもつながりそうですが、そもそも、荷待ち問題はなぜ起こってしまうのでしょうか?

蔦田:例えば倉庫が9時にオープンするとして、各運送会社のトラックがその時間に集中すると、先着順での案内になり待ち時間が発生します。倉庫には「トラックバース」と呼ばれる荷物の積み下ろしのためにトラックを駐停車するスペースがありますが、数に限りがあり、荷物の積み下ろしには一定の時間がかかるため、トラックバースに入るまでの待ち時間が長くなってしまうんです。その間トラックはただ待つことしかできません…。

今後設けられる労働時間の上限規制や人材不足に対応しつつ、輸送力を維持するためには、荷待ち問題の解決は欠かせないものだと思います。

物流業界の「2024年問題」について語るリクルート従業員の蔦田慎史

『Airウェイト』導入で実現できること

― そこで、トラックドライバーの待ち時間を減らす一助として受付管理アプリの『Airウェイト』を使っていただいているんですね。導入することでどんなメリットが得られるのでしょうか?

蔦田:現状、ドライバーの受付は紙での運用をしているケースがほとんどです。ドライバーが倉庫に到着したら、まず紙の受付台帳に必要事項を記載して、順番が呼ばれるのを待つ、あるいは記載した電話番号に電話がかかってくるのを待つことになります。当然、倉庫側には受付対応をする人が必要です。

しかし、受付管理アプリ『Airウェイト』を導入した場合、受付対応をする必要が無くなります。倉庫に設置したタブレットでドライバーが受付を済ませると整理券が発行され、順番に自動で呼び出し、ドライバーはスマホから待ち状況をリアルタイムで確認できます。順番が来るまでの時間が可視化され、ドライバーはその場を離れて待つことができるため、他の荷下ろしを優先するなど別の業務を行ったり、休憩時間にあてたりと待ち時間を有効に使うことができます。

また、受付方法にバリエーションを持たせることも可能です。オンライン上で受付できる「オンライン受付」という機能を使えば、一度受付に行く必要が無くなります。さらに、同じくリクルートの業務支援サービスのひとつで、データ連携ができる予約システム『Airリザーブ』を併用すれば、事前に時間指定で予約できるように。わざわざ受付のために倉庫に出向く必要が無くなれば、その分ドライバーが自由に使える時間が確保できますし、倉庫周辺で起こるトラックの渋滞・混雑の緩和も期待できます。

『Airウェイト』の利用画面例

― 受付のために出向かなくていいのは便利ですね。

蔦田:ええ。それに、業務をデジタル化することで待ち時間を可視化できることも大きいと思います。自動で蓄積されていく受付データには、物流業界が今後取り組んでいこうとしている業務改善の基盤となる情報がたくさん含まれています。

「平均でどれくらい待ち時間が発生しているのか」「どの時間帯に倉庫が混むのか」など、実際に起きていることをデータとして可視化することで、対策として何をすればいいかが見えてくる。「受付業務がラクになる」「自由に使える時間が増える」のは導入後すぐに目に見える変化ですが、1~2年後にさらに業務効率化を図ろうとした時にも、それまでに蓄積されたデータを活用していただけるんです。

― 実際に『Airウェイト』を導入した物流業界のお客様からはどんなお声をいただいていますか?

蔦田:ドライバーの荷待ち時間を管理するために『Airウェイト』を導入した倉庫会社の事例になりますが、待ち管理の手間が削減されたというお声をいただいています。これまでは、トラックバースの状況確認や待機中のドライバーへの呼び出し連絡にとられていた時間をゼロにすることができたと。このような確認時間は1台あたりにすると3~5分だったとしても、最低でも1日50台以上のトラックを受け入れる倉庫にとっては、1日で約2時間半~4時間、1ヶ月で約75時間~120時間と積み重ねれば大変な総労働時間になります。それだけ人の手を煩わせていた時間、ストレスになっていた時間を削減できたと思うと単純に嬉しいですね。

『Airウェイト』の利用画面例

こだわりは“オカン”を想定した使いやすさ? 終わりのない改善で磨き上げる

― 物流業界ではドライバー人材の高齢化・若手不足も問題になっていますよね。現ドライバーにはデジタルに慣れていない世代も多いと思いますが、使い方が分からずに困ってしまうことはないのでしょうか?

蔦田:先ほどの倉庫会社の事例では、ありがたいことにドライバーを含めて使い方で困ったことはないと聞いています。飲食店などでもご利用いただいている『Airウェイト』は本当に幅広い世代の方が触るシステムなので、誰でも簡単に使えるユーザーインターフェース(UI)であることが重要です。どんな方でもシンプルで使いやすいUIであることは、開発側としてこだわりを持っているポイントです。実は自分の“オカン”が使うことを想定して作っているんです。本当にうちのオカンはITが苦手なんです(笑)。なので、ITに詳しくない自分の母親でも違和感なく使えるかを大事にしています。

― その分、UIの開発やアップデートに際して苦労されることも多いのではないでしょうか?

蔦田:確かに「受付する」というボタンの文字の大きさ、ボタンの色ひとつを決めるにも、答えのないものに対峙する難しさはありますね。普段ITに慣れていない方であれば、画面上のボタンを押すことを躊躇することもある。さまざまなユーザーに対して、「どうすれば迷わずに使うことができるか?」を考えなければいけません。

UIを決める時には数字データも参考にしますが、実際に使っていただくユーザーの声を取り入れるために、いろんな方に触っていただき、多くのフィードバックをもらうことにこだわっています。そして個人的にも、普段からユーザーの反応は気にしていますね。今は街中で『Airウェイト』を実際に操作いただいているユーザーを見かける機会も増えてきたので、表情や操作の様子を見て「あそこは変えたほうがいいかなあ」と、実際にUIを変えることも。UI以外も同様にアップデートを前提としたサービスなので、お客様の状況やユーザーニーズの変化に合わせて常に改善を重ねていく、という考え方をしています。

『Airウェイト』の開発に取り組むリクルート従業員の蔦田慎史

「モノを売って終わり」ではなく、現場の事情を汲んだものを提供したい

― 蔦田さんから見て、『Airウェイト』を含む「Air ビジネスツールズ」ならではの強みはどこにあると考えますか?

蔦田:“実情に即したもっと良いものをご提供したい”と常に思っているメンバーがたくさんいるところじゃないですかね。

例えば、現状に何か不便を感じているにも関わらず、物流業界では受付で紙を用意しての荷待ち運用を続けてきているのであれば、何かしらの複合的な理由があるはずなんです。改善したいと思っているけれど通常業務に手いっぱいで、運用を変える余裕がなかったり、紙での運用に利便性を感じていたり…。「なぜ今の運用になっているのか」を無視して、ただ「デジタル化すればいいじゃないですか」と言うだけでは、何も変わりません。現場で運用されてきた理由や背景に寄り添った開発や提案が求められると思うのです。

私たちは実際に現場に足を運んで新しい運用を装着するためのお手伝いをさせていただくこともあります。開発メンバーのなかには物流業界の課題を知ろうと、実際に水産加工会社の倉庫の現場にお邪魔して、倉庫会社の方と何日も一緒に冷凍マグロを運んだり、ドライバーの方の1日に密着して実際の待ち時間を体験したりしながら、どんなところに課題がありそうか探っている者もいるのです。

― そこまで密着するからこそ活用場面が見えてくるんですね…。

蔦田:恥ずかしながら、今回のように物流業界で『Airウェイト』をご活用いただけるというのは、倉庫会社の方からご相談いただくまでは想定していなかったのですが、お声がけいただいた以上全力で応えたいと、現場密着はもちろんのこと、業界調査も含め担当メンバー一丸となって取り組んできました。

物流業界の喫緊の課題である「2024年問題」に対しても『Airウェイト』をはじめとする「Air ビジネスツールズ」でさらに価値をご提供できたらと模索している最中です。求められるサービスであるために、進化を止めず挑戦し続けなくてはと思っています。

― さまざまな業界への汎用性が高い『Airウェイト』ですが、蔦田さんが目指す今後の展望はどのようなものでしょうか?

蔦田:『Airウェイト』を利用いただいたユーザーの声に「こういった小さな革命が嬉しい」というお言葉がありました。小さな改善の提案であっても、「変えて良かった」という小さな幸せが積み重なることで、大きな幸せの集合体になると思うんです。例えば、待ち時間のように「これまで当たり前に我慢してきたことを、我慢しなくていい未来」を創れるまで続けていけたら、と思っています。

『Airウェイト』の展望を語るリクルート従業員の蔦田慎史

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

蔦田慎史(つただ・しんじ)
株式会社リクルート プロダクト統括本部 Airプロダクトマネジメント部

『Airウェイト』『Airリザーブ』プロダクト担当者。プロの馬術選手として活動後、米国へ留学し、経済学とコンピュータサイエンスの学位を取得。2016年にリクルート入社と同時に、関連会社ブログウォッチャーへ。位置情報データの商品開発、販売などを手掛け、17年に技術開発グループの組織長を経験。21年『Airリザーブ』『Airウェイト』の事業企画を手掛け、同年より現職

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