『Indeed PLUS』と『レジュメ』導入でどう変わる? リクルートが考える求職者ファーストの新たな“仕事探し”とは

『Indeed PLUS』と『レジュメ』導入でどう変わる? リクルートが考える求職者ファーストの新たな“仕事探し”とは

人材不足を背景に国内労働市場は大きく変化し、求人も増加傾向にありますが、転職に至っていない方が多い現状があります。まだまだ仕事探し、転職活動にはハードルがあるようです。こうした状況に対して、リクルートがどんな取り組みを進めていこうと考えているのか、2024年2月21日に記者向け説明会を開催しました。

説明会後に改めて、リクルートの人材領域のプロダクト責任者、山口順通にインタビューを実施。24年1月30日にIndeedが提供を開始した求人配信プラットフォーム『Indeed PLUS』にリクルートが参画した背景や、AI等のテクノロジーを活用して実現を目指す、「求職者一人ひとりに寄り添ったキャリア支援の実現」に対する思いを聞きました。

1. 人材不足の労働市場で今、「求職者が困っていること」とは

株式会社リクルート 執行役員(プロダクト本部 HR)山口順通が、2024年2月21日情報共有会「リクルートの人材領域におけるテクノロジー活用―『Indeed PLUS』参画と『レジュメ』導入を通じて実現したいこと」で語る様子

人材不足の企業、増える求職者。でも翌年、実際に転職した方は「約1割」

― 人材不足が叫ばれている昨今ですが、求職者にとって転職市場はどのような状況にあるのでしょうか?

山口順通(以下山口):この20年間で女性やシニアも含め就業者数は増加しています。一方、企業側の人材不足は加速していて、転職先を含めて仕事を探している方も増えています(総務省統計局「労働力調査基本集計」)。しかし、弊社の調査では、「転職を考えている人のうち翌年に実際に転職した」という方は、実は約1割しかいないことが分かっています。(リクルートワークス研究所「Works Report」より)

「時間がない」、自分に合う仕事が「分からない」「見つからない」

― なぜ実際に転職する方が増えないのでしょうか。

山口:リクルートが実施した調査によると、求職者の約3割が感じている最大のハードルは「転職活動をする時間がない」ことです。多くの人は働きながら活動をしていると考えられますが、転職活動には何かと時間がかかり、本業を抱えながらなかなか時間が確保できないのではないでしょうか。さらに「自分に合う仕事が分からない」ことや、合う仕事が分かっていてもそうした仕事と「出合えない」ことなども、転職が実現しない代表的な理由となっています。

リクルート「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」第2弾より
リクルート「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」第2弾より

― 転職サイトや人材紹介業なども多数ありますが、求職者の方々のお悩みには応えられていないのでしょうか。

山口:こうした困りごとの背景には、「仕事を選ぶための情報やサービスが豊富とは言えない」という事情があると思っています。これが美容室や宿泊するホテルを選ぶような日常の検討とは大きく異なるところです。

各種WebサイトやSNS等でも、実際に泊まった方の感想や、そのホテルを選択した理由などに関する情報は多い一方、転職先の詳細な情報や転職活動プロセスについては、転職先を検討・決定するための、信頼に足る情報がまだまだ簡単には得られません。

それは、働き方に関する価値観や条件が多様で、誰かの発信した情報が一様に自分に当てはまるとは限らない、というのも要因のひとつだと思います。また就転職の重要な意思決定のために、一人ひとりの多様化した価値観に対応したサービスがまだ生まれていないことも課題だと考えています。

過去、リクルートは『とらばーゆ』で女性の転職支援、『タウンワーク』で地元での仕事選びなど、新たな価値観を社会に提案してきました。変化する局面を迎えようとしている人材領域において、新たな価値の提供をしていけたらと考えています。

― 今後、求職者の方々にどのような新たな価値を届けたいと考えていますか。

山口:私たちが目指したいのは、「1億人1億通りの働き方、その人らしいキャリアを支援すること」です。AIを始めとするさまざまなテクノロジーが実用化されてきた今、改めて、こうしたテクノロジーを活かして課題を解決しながら、貢献していきたいと考えています。

2. 「時間がない」「自分に合う仕事と出合えない」の課題にどう応えるか

リクルートの求職活動支援サービス共通で利用できる職務経歴書機能『レジュメ』
リクルートの求職活動支援サービス共通で利用できる職務経歴書機能『レジュメ』

『レジュメ』を使えば、忙しい人でも仕事探しが進めやすくなる?

― 先ほどお話しされていた、求職者の方が感じる課題のひとつ目「時間がない」ということについて、具体的にはどのような方法で解決を目指しているのでしょうか。

山口:求職者の「時間がない」という声のなかで多いのは、「履歴書」や、自らの経験やスキルを棚卸しして「職務経歴書」の準備をすることが困難であるということ。

そこで、サービス登録時に自らのスキルや経験、希望をキーワードの選択式で登録できる『レジュメ』を開発しました。

― キーワードを選択するだけで、他の求職者との差別化ってできるものなのでしょうか。

山口:『レジュメ』には、求職者ご自身の強みがアピールしやすくなるキーワードはもちろん、人事採用担当者と我々との長年のコミュニケーションから企業側が知りたい選択肢も含め約14,000(24年2月現在)のキーワードを用意しています。

それらの組み合わせで、求職者一人ひとりの強みが浮かび上がることになると思います。さらにはその内容を基に、生成AIが職務要約の素案を作成する機能も用意しています。

― 確かに、転職準備時間を削減できるかもしれません。一方で、求職者がさまざまな求人サイト等を利用する際に、毎回、個人情報を登録しなければならないのが大変だということも伺ったことがあります。これについては何か良い方策はありますか?

山口:自分も求職者の立場だった時に、そう思いました。他社様も含めて相当数の求人関連サービスがありますので、求職者の悩ましさは大変よく理解できます。

現在、リクルートの提供する求職活動支援サービスの一部では、一度登録すれば、『レジュメ』が共通化され、各サイトを横断して利用できるようになっています(24年3月時点で、リクルートが提供する8つの求職活動支援サービスが対象)。今後拡大できるように準備中です。

『レジュメ』を活用することで、「自分に合う仕事」が見つけやすくなるか

― 『レジュメ」によって、求職者が感じるもうひとつの課題「自分に合う仕事と出合えない」ということについては、どのように解決できそうでしょうか。

山口:まだサービスが開始されたばかりで、完全に解決できるとは言い切れません。ですが、リクルートが運営する求職活動支援サービス横断で共通のレジュメをご利用いただくことが可能になり、さらに選択式の入力で登録情報も豊富になることで、サービスを提供する側の私たちも、より求職者の方のことを理解できるようになり、求職者側も、より自身に合った求人情報と出合える可能性は高まると考えています。

これまでは、複数のサービスでそれぞれ登録いただく項目、情報が異なっていたため、同じAさんでも、リクナビNEXTに登録したAさんとタウンワークに登録したAさんではデータベース上は別の人として扱われているという問題がありました。こうした状態のままでは、いくら最先端のAI技術を導入したとしても、精度高く、希望に合う求人情報をお届けすることは難しいかもしれません。

― 『レジュメ』登録をお願いするのは、求職者の方に手間をおかけすることでもありますが、登録のしやすさの工夫など検討されたことがあれば教えてください。

山口:選択式にするだけでなく、楽に、簡単に選択できる操作性を模索しました。求職者の方が現在の職種を選ぶと、それに関連するスキルが自動的に表示され、そのなかから選んで登録できるようになるなど、最後までスムーズに登録が行える仕組みを目指しました。

― キーワードについてはどのようなプロセスで設計されたのでしょうか。注力ポイントはありましたか?

山口:求人情報のなかのさまざまなキーワードから、求職者、採用企業双方にとって有効なものだけに絞り込み、選定する作業は本当に大変でした。当初は、求人情報のテキスト解析やデータ分析で抽出することも実施してみたのですが、本当に求められているキーワードが炙り出せていない気がしたんです。

そのため、これまでの人材事業を通じて長年お付き合いをしていただいてきた企業の人事担当者や人材紹介事業のリクルーティングアドバイザー、キャリアアドバイザー等の生の知見も活かして、求職者、採用企業双方が本当に求めているキーワードを追加していきました。

職務経歴書を書くのが難しい理由のひとつは、「自分のどんな強みを書くと採用企業側に伝わるか」が分からないこと。世の中でオープンになっていないこれらの情報を、リクルートが持つ人事担当者との接点や転職エージェントの知見を基に集約して、求職者が選択するだけで自然と自己アピールができることを目指しました。

3. Indeed PLUS、AIテクノロジーで転職活動はどう変わるのか

株式会社リクルート 執行役員(プロダクト本部 HR)山口順通の説明会での様子

求人配信プラットフォーム「Indeed PLUS」に参画

― 『リクナビNEXT』『タウンワーク』『フロム・エー ナビ』『はたらいく』『とらばーゆ』『リクナビ派遣』などの求職活動支援サービスがIndeed PLUSと連携しましたが、これによってどんなことが実現するのでしょうか?

山口:Indeed PLUSは、Indeedが開発・提供する求人配信プラットフォームで、複数の求人サイト(Indeed PLUS連携求人サイト)と企業が利用する採用管理システム(Indeed PLUS連携ATS)とをつなぎます。 この連携により、求職者は、複数の求人サイトを利用しなくとも、普段自身が利用している求人サイト※1がIndeed PLUSに参画していれば、複数の情報ソース※2から適した求人情報が表示されるようになり、より効果的に自分に合った仕事を見つけることが可能となります。

これまで、求人情報をどの求人サイトに掲載するかは、採用企業側によって決められていました。そのため求職者は、自分が利用している求人サイトに、企業が求人を掲載しなければ、その求人情報に出合うことができませんでした。

言い換えれば、他の求人サイトには、その方にとって、より合う仕事があるかもしれないのに、出合えていなかったとも言えます。Indeed PLUSによって求人情報が最適なサイトに掲載※3されれば、求職者の方がより自分に合う仕事に出合えるようになります。

※1:Indeed PLUS連携求人サイトを指します。
※2:Indeed PLUS連携ATSを指します。
※3:求人の内容・特性や閲覧・応募状況等に照らしてIndeedが最も当該求人に相応しいと判断したIndeed PLUS連携求人サイトへ自動掲載します。複数メディアではなく単一メディアにのみ掲載されることもあり、また、Indeedの利用規約、掲載基準及び使用制限が適用されます。

人材領域におけるAI活用

― さまざまなWebサービスにAI技術が導入され始めています。求職者を守るために、リクルートではどのような活動をしていますか?

山口:リクルートでは23年7月に「リクルートAI活用指針」を公開しています。その前段階から、人材領域におけるテクノロジー活用についても有識者との意見交換を重ねてきました。そのなかで、テクノロジーのもたらす可能性だけでなく、仕事探しのインフラとなるサービスを運営する私たちがどのような点に留意すべきか、さまざまな論点も見えてきました。今後も、AIの活用が求職者の方々にとって本当に機会の拡大につながっているのか、社内外のさまざまなステークホルダーや有識者の皆様との対話を通じて、安全安心で、便利なより良いサービスを目指していきたいと思っています。

4. リクルートが目指す「求職者一人ひとりに寄り添ったキャリア支援の実現」

株式会社リクルート 執行役員(プロダクト本部 HR)山口順通が記者からの質問を受ける様子

テクノロジーの力も活用しながら、一人ひとりに寄り添ったサービスを

― 『レジュメ』やIndeed PLUSへの参画で、リクルートが目指す求職活動支援サービスにどの程度近付いたと考えていますか?

山口:まだ1割程度ではないでしょうか。『レジュメ』やIndeed PLUSへの参画はあくまで、多様な働き方をきめ細かくサポートするための「土台」のようなもの。やっと、第一歩を踏み出せたのではないかと思っています。

私たちの願いは、求職者一人ひとりに合った仕事やキャリアに寄り添える存在になることです。HR事業の創業当時には難しかったことが、今ようやくテクノロジーによって実現が可能なフェーズとなってきました。今後は、一人ひとりの求職者の方々の強みを活かし、希望に合ったキャリア実現のお手伝いを、より多くの方々を対象に支援できるようになりたいと考えています。歩みを止めずに求職者ファーストの新たな“仕事探し”のあり方を実現できるように、力を尽くしていけたらと思います。

株式会社リクルート 執行役員(プロダクト本部 HR) 山口順通。インタビューを終えて

登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

山口順通(やまぐち・まさみち)
株式会社リクルート 執行役員(プロダクト本部 HR)

2005年株式会社リクルートに入社。大学院で検索エンジンの研究をする傍らITベンチャーに正社員として勤務。2002年に新卒で証券会社に入社しアナリストとして3年間従事した後、2005年にリクルートに入社してアルバイト・パート領域(旧リクルートジョブズ)を担当。『タウンワーク』を中心とした人材領域の企画職を経験し、2010年にライフスタイル領域へ。『ホットペッパーグルメ』、『ホットペッパービューティー』、『じゃらん』などのプロダクトマネジメントやプロダクトデザインを経て、執行役員に。その後、『Airレジ』、『Airペイ』などの「Air ビジネスツールズ」のプロダクト責任者を経て、18年下期より現職

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