エンジニア起点の事業開発で、どんな社会的価値を生み出せる? 開発責任者・小川健太郎に聞く

エンジニア起点の事業開発で、どんな社会的価値を生み出せる? 開発責任者・小川健太郎に聞く

リクルートは近年、ITを積極的に活用し、事業のデジタルトランスフォーメーションを推進しています。そのなかでエンジニアは具体的にどんな役割を果たしているのでしょうか? 特に就職先としてさまざまな企業を検討している学生の皆さんから、そのような問いをよくいただきます。

そこで今回は、実際に学生の皆さんから届いた質問に答えようと、リクルートの販促サービス『ホットペッパーグルメ』『ホットペッパービューティー』などを担当する飲食・美容領域のエンジニア組織で責任者を務める小川健太郎に、新卒採用担当がインタビュー。エンジニア組織を率いる立場として事業を俯瞰するなかで見えてきたことについて聞きました。

リクルートのエンジニアが取り組んでいること

― リクルートでは、エンジニアはどんな役割を担っているのですか?

小川健太郎(以下小川):まず、プロダクトの機能を開発し運用する役割は、一般的な事業会社と同様です。リクルートの場合、利用者数の規模が大きいプロダクトを多岐にわたって展開しています。例えば、私が担当する美容予約サービス『ホットペッパービューティー』を通じては、年間1億8400万件以上もの予約をいただいており、多くのカスタマーの方々にご利用いただいています。

また、リクルートならではの役割としては、エンジニアが10年後のビジネスにつながる新しい市場を見つける・つくる起点となっていることですね

近年、目覚ましいITの発達によって、市場の新規参入ハードルが下がり、さまざまな事業領域が群雄割拠の状態となっています。それに伴い、企業がより速く、より良いプロダクトを提供することの重要性がますます高まっているため、エンジニアが起点となってビジネスをつくるケースが一般的になってきました。

リクルートの事業開発では、既存市場で限られたシェアを獲得するのではなく、新しい市場を創出し、シェアを最大化することを志向しています。エンジニアはプロダクト開発を通じて、その新しい市場を開拓する、という立ち位置です。

飲食・美容領域で展開するサービス例
飲食・美容領域で展開するサービス例

エンジニアが起点となり、新しいビジネスを生み出す

― 実際に、「エンジニアの力で次の10年後のビジネスにつながる価値をつくった!」といった手応えを感じたこともあるでしょうか?

小川:そうですね…5年以上前になりますが、『ホットペッパービューティー』の案件はとても印象に残っています。

『ホットペッパービューティー』は、美容室やネイルサロン、まつげサロン、整体院などの店舗さんと一般消費者の方を結び付けるプラットフォーム。一般消費者の方は、そこから日本全国のお店を探して、24時間いつでも予約することができます。

当初、その予約は30分単位で設定するシステムでした。しかし、ネイルサロンや整体院のような店舗さんは施術時間が「15分」「40分」「90分」など多様で、30分単位の予約枠では対応しきれません。そこで、幅広い業態のニーズにお応えするために、5分単位での予約を可能にするシステム改修を行ったんです。

店舗で『ホットペッパービューティー』の予約システムが使われる様子
店舗で『ホットペッパービューティー』の予約システムが使われる様子

― 5分単位で予約できると、ちょっとした空き時間に合わせてネイルやマッサージに行けるので便利ですよね。

小川:ありがとうございます。ただ、それを実現させるのは、けっこう大変だったんですよ。というのも、予約枠を30分から5分に細分化するということは、機能が複雑になるに加え、扱うデータ量も爆発的に増えるので、利用者の拡大に伴ってシステムへの負荷はどんどん大きくなっていくんです

システムの安定稼働という最重要課題がある以上、負荷を大きくすることになる予約枠の細分化に踏み切っていいものか? という壁にぶち当たりました。予約枠の細分化によって、店舗さんにとっても、利用者の皆さんにとっても便利なサービスになるでしょう。しかし、中途半端な品質で始めてはかえって社会に悪影響をもたらすのではないか? とエンジニア側からも問題提起し、議論の末、いったんシステム改修は延期するという結論に至りました。

― 社会的責任が大きいからこそ、新しいことを次々にやればいいわけではないんですね。

小川:はい。まず1年以上かけてじっくりシステムの土台を整えた上で、満を持して予約枠の細分化に挑みました。結果として、そのように急激にシステムへの負荷が高まった状態でも、安定的に稼働できる品質を実現しました。

リリース当日のことは、今でも鮮明に覚えています。一般的にリリース直後の新機能の利用は少なく、徐々に増えていくものですが、本件の場合はリリース当日になんと一気に数千もの店舗さんが使い始めてくださったんです。かつて見たことのない状況に、「こんなに多くの店舗さんに待望いただいていたのだ」と気が引き締まる思いや、その期待に応えられた嬉しさ…いろんな感情がごちゃ混ぜになりましたね

― リリース直後に数千もの店舗の方々から反響があるなんて、改めて責任を感じますね。

小川:他にもストアレビューなど、サービスをご利用いただくカスタマーの方、店舗の方からたくさんのフィードバックをいただきました。「こんな機能が欲しかった」「ここが使いにくい」など、率直なご意見をいただけることが、有難いなと思っています。

エンジニアが考えた世界観を実現しても、実際にカスタマーの方に使っていただいた時にギャップは生じるもの。事業の開発は、ニーズのあるプロダクトをリリースし、そこに対して評価いただいて、それをさらに改善し、また社会に出していく…このサイクルが早ければ早いほど良いと思っています。社会のためになればなるほど良いと思うので、本当に終わりがない仕事ですね。

リクルートのオフィスで人事(右)のインタビューに応じる小川健太郎(左)
リクルートのオフィスで人事(右)のインタビューに答える小川健太郎(左)

小川さんが、リクルートで働く理由

― 小川さんは2012年にリクルートにキャリア採用で入社以来、エンジニアとしてさまざまなプロダクト開発に携わっています。そもそもエンジニアになったのは、なぜですか?

小川:新卒では、システムの受託開発企業に入社し、コールセンター部門で働いていました。

― コールセンター担当…?! エンジニア職ではなかったんですね。

小川:はい、3年ほど勤めた時、その部署が閉鎖されることになり、社内異動をきっかけにエンジニアに転向しました。「自分にできるのか」という不安と、「やってみたら面白いんじゃないか」という期待が入り交じりながら、エンジニアの世界に飛び込みました

― 未経験からエンジニアになって、どうでしたか。

小川:私はエンジニアの仕事に向いていたんだと思います。というのも、エンジニアの仕事は非常に幅広くて奥深く、常に知識や技術の更新が不可欠。元々、新しいことを考えたり学んだりするのが好きなので、知的好奇心がずっと満たされる感覚でした

とはいえ、もちろん最初は分からないことだらけ(笑)。興味が赴くままに学んでいくも、しばらくは知識の点がばらばらにあるような状態でした。それがある時、点と点がつながる瞬間があって、そこから加速度的にいろんなことがつながっていったんです。そういう感覚がすごく面白いから、今でもエンジニアを続けている気がします。

― そんな小川さんにとって、プロダクト開発のやりがいは何でしょうか?

小川:「プロダクトを利用した方の生活がより便利になる」瞬間に立ち会えることです。特に、リクルートの事業は社会性が高いからこそ、この個人的なやりがいを大事にし続けられているように思います。

例えば、美容業界では、『ホットペッパービューティー』があることによって、知名度の高い大手の影で目立たなかった小さなお店がカスタマーから見つけられやすくなり、人気店として繁盛するきっかけが生まれた例も珍しくありません。「『ホットペッパービューティー』があるから起業する夢を叶えられた」という声もたくさんいただきます。社会的責任の大きさを実感するとともに、そこにエンジニアとして関与できていることを誇らしく感じています。

リクルートのオフィスで人事のインタビューに応じる小川健太郎

― 最後に就職活動中の学生の方を意識した質問です。もし今、小川さんがエンジニアチームのメンバーとしてリクルートに入社するとしたら、何をしたいですか?

小川:圧倒的に成長して、少しでも「社会のためになった」と胸を張れる仕事をしたいですね。

― “圧倒的”と付けたのは、なぜですか?

小川:組織で何か困難を突破したり、新しい価値が生まれる時って、個人の発信や提案から始まることが多いんです。一方で、恐れずに発信・提案していくことは、自分に自信がなければ難しい、ともよく感じます。だから圧倒的に成長をし続けたいな、と。

― 個人の成長が、事業や社会にも影響を与えていくという…。

小川:やっぱり各個人が描く10年後って全然違うじゃないですか。それらをアイデアにし、形にしていくうちに、「君のアイデアも面白いね」とか、「あなたがやろうとしていることが、リクルートの行く先かもね」と、皆で見えた可能性に賭けていくことで、会社や事業の未来が切り拓かれていくのではないか、と。

結局、会社は“ 箱”でしかなく、その未来は中にいる個人に委ねられていますから。メンバーであろうと組織長であろうと、立場を問わず、自分なりの価値観から考えたことを、実行していくことが大事だと考えています。

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登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

小川健太郎(おがわ・けんたろう)
株式会社リクルート プロダクトディベロップメント室 販促領域エンジニアリングユニット ユニット長

システムの受託事業会社を経て、2012年リクルートライフスタイル(当時)に入社。『ポンパレモール』『じゃらんゴルフ』など新規事業の立ち上げフェーズにエンジニアとして関わる。2014年新規領域担当のエンジニアグループのマネジャー、2016年ビューティー事業にてプロダクト開発グループのマネジャーとなり、多数の新規事業の開発運営に携わる。2019年NB本部 プロダクトディベロップメント ユニット長に。副業として現在ふたつの会社の経営にも携わる

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