『MINTERIOR』最大84%の業務削減!? インテリア提案をDX
『MINTERIOR(ミンテリア)』は、家具などの商品選定から発注までをネット上で一元化した、インテリアコーディネーター向け業務効率化ツール。2020年8月にサービスを開始し、法人利用数は昨年同時期比で約6倍、ユーザー数は約1.3倍に(2024年3月時点)。インテリアコーディネーターが行う家具選定から提案書作成までの時間が最大84%※削減されたという事例も出てきています。そんな『MINTERIOR』が生まれた背景、そして業界課題に向けた取り組みを、サービスを立ち上げたリクルート従業員の村中 巧と、現在責任者を務める西村拓也に聞きました。
※『MINTERIOR』を利用したインテリアコーディネーター94名へのヒアリング結果より
インテリア業界が抱えていたふたつの課題
― まず『MINTERIOR』のサービス内容について教えてください。
村中:主にインテリアコーディネーターの方へ向けたサービスです。インテリアコーディネーターは、顧客の希望や予算を聞き、その要望に沿った住空間を提案するお仕事ですが、『MINTERIOR』はこのコーディネート業務を効率化できるツールで、家具選定・提案資料作成・発注サポートなどをワンストップで行うことができます。
― インテリアコーディネーターの業務を効率化するとのことですが、一般的に、インテリアコーディネーターの方の業務はどのようなものでしょうか?
村中:会社や人によっても異なりますが、内装イメージ・生活スタイルといったお客様へのヒアリングに始まり、そこからメーカーやブランドごとに家具を検索。それぞれを比較して絞り込み、各アイテムの画像をサイズ・価格・素材・色などのスペック情報を集めて、提案資料を作成するのが基本的な業務です。
並行して、各メーカーに納期・在庫の確認、素材サンプルの取り寄せなどを行い、見積りを作成…といった流れが多いでしょうか。取り寄せの問い合わせ方法は、メーカーによってメール・電話・FAXと異なります。
― 想像していた以上に、やることが多くて細かいですね。
村中:そうなんです。私たちは元々2013年から一般顧客向けに『TABROOM(タブルーム)』というインテリア情報サイトを運営しています。そのなかで、インテリアコーディネーターの方のお仕事やお困りごとに触れる機会が多くあり、何とかできないかと思っていたのです。
― インテリア業界において、具体的にどのようなお困りごとがあったのでしょうか?
村中:大きく分けて、2点あります。1点目が「アナログ業務の不」。先ほどお伝えしたように、インテリアコーディネーターの仕事は確認や書類作成を伴う業務が膨大にある上に、家具の選定・提案書・見積書など、全てバラバラのツールを使っていて、カタログも紙がほとんど。各メーカーへの確認も一本化されておらず大きな負担でした。
2点目は「マッチングの不」。アナログ業務がメインだと、家具アイテムを検索する際は厚くて重い紙カタログを何冊も探す必要があり、提案するメーカーが偏ってしまうことも…。そのため、素晴らしい家具を生み出していても小規模なメーカーは埋もれることがあり、結果、顧客の選択肢が狭まってしまうということが起きていました。
― 業務の煩雑さがインテリアコーディネーターの方の業務負担につながっているだけでなく、提案を受ける側の選択肢の数にまで影響を与えていたんですね。
村中:業務効率化を支援することで、なかなかやりたいことに着手する時間が捻出的できていないインテリアコーディネーターの方だけでなく、消費者の皆さんのより良い選択にもつながるのではないかと思ったんです。『TABROOM』の家具データベースを上手く使えば皆さんのお役に立てるのではないかと。
― そこで立ち上げたのが『MINTERIOR』なんですね。
村中:そうなんです。準備期間を経て、2020年8月に『TABROOM』でもご縁があり、DX化・“家具×IT”という志も一致した三井デザインテック株式会社さんと一緒に『MINTERIOR』を立ち上げました。
DX化で「ワクワクするインテリアの提案書」が短時間で!
― 『MINTERIOR』のサービス開始から約4年。実際に利用されているユーザーの反応は、いかがですか?
西村:実際にご利用いただいているインテリアコーディネーター94名の方にヒアリングをしたところ、家具選定から提案書作成までの時間が、最大84%削減していました。あくまで一例ではありますが、それまで4~5時間かかっていた作業が、導入後は30分程度になっていたという例もありました。「業務の時間が大幅に削減できた」という声が、とても多いですね。
また、ある大手ハウスメーカーとインテリアメーカーが開催した、住宅購入者向けの催事でもご活用いただきました。そこでは、インテリアコーディネーターの対面での家具受注会でのひとりあたりの接客時間が、平均3時間から2時間に短縮したそうです。
催事では、各メーカーが出展予定のアイテムをPDFデータで共有する必要があるため、ブランドをまたいだ比較やコーディネートプランを作成するのは大変なんです。でも『MINTERIOR』を活用すれば、どの催事にどのアイテムが出展されるかひもづけられるので、フェアを選択するだけで対象アイテムをブランド横断で素早く検索し、提案書に組み込むことができます。「お客様を疲れさせることなく、楽しんで家具を選んでもらえるようになった」と、ありがたいお声をいただきました。
― 『MINTERIOR』はインテリアコーディネーターの方はもちろん、消費者の方にとっても嬉しいサービスですね。
西村:そうですね。他にも『MINTERIOR』はカタログ的な家具単体の写真ではなく実例写真が多いので、“インテリア雑誌を見ているみたいで楽しいですね”とお客様にワクワクしてもらえた」「提案資料の精度が上がったことで、対面だけではなくオンラインでの打ち合わせもスムーズになった」というお声も…。
村中:サービス立ち上げ時に思い描いていた世界に近づいているのを感じて、とても嬉しく思っています。ある新人のインテリアコーディネーターの方からは、「家具提案に対する不安がやわらいだ」と言ってもらったこともあります。『MINTERIOR』は直感的に操作ができるので、初めての方でも簡単に使えるのではないかなと。この点も、開発する上でこだわったポイントなので少しでもお役に立てているのかなと。
― もし分からないことがあった場合、サポート体制などはどうなっているのでしょうか?
西村:無料の勉強会やチャットサポート、また専任の担当もつくため、個別でのご相談も可能です。
それに、より使い勝手が良くなるように、機能も常にアップデートしています。複数の画像から似ているアイテムを探せる類似画像検索や、メーカーへの連絡が『MINTERIOR』内で行える機能も、ユーザーの声を反映したものです。
インテリアコーディネーター&その先にいるお客様のための『MINTERIOR』
― 機能拡充面で、今後予定していることはありますか?
西村:『MINTERIOR』に掲載されている商品はテーブルやソファといった家具が中心ですが、インテリアコーディネーターは壁紙・照明など提案の範囲が広いので、カテゴリを拡充していきたいです。
まだ研究段階ではありますが、AIの活用によって、顧客向けのアウトプットをより磨いていけたら…とも考えています。そうすれば、お客様もイメージしやすくなりますよね。
― テクノロジーによってどんな付加価値が生まれ、利便性が高まると感じますか?
村中:インテリアコーディネーターという仕事の本質は、お客様の生活スタイルや好みなどから想像力を働かせ、提案すること。それはデジタルでは図れない、人と人とのコミュケーションから生まれるものだと思っています。
『MINTERIOR』で事務的な作業の負荷を軽減させることで、本来時間を割くべきお客様との関わりに、もっと集中できる環境をつくる。結果として、日本の住環境がさらに良くなっていけばと思っています。「みんなのインテリア=インテリア業界に関わる皆さんに使って欲しい」という思いから名付けた『MINTERIOR』が、それを果たしてくれることが、私たちの願いです。
登壇者プロフィール
※プロフィールは取材当時のものです
- 村中 巧(むらなか・たくみ)
- 株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクトデザイン・マーケティング統括室 プロダクトデザイン室 販促領域プロダクトデザイン3ユニット 事業開発領域プロダクトデザイン部 事業開発プロダクトデザイン4グループ マネジャー
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Webサービス企業での新規事業企画を経て、2016年にリクルート入社。『Airレジ』の企画開発などを経験後、2017年より『TABROOM』にて家具・インテリア事業の戦略企画を推進。現在はプロダクトデザイン部マネジャーとして、複数の新規事業プロダクトのグロースに従事
- 西村拓也(にしむら・たくや)
- 株式会社リクルート プロダクト統括本部 新規事業開発室 アクセラレーション部 TABROOMPJ推進グループ マネジャー
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国内大手通信会社営業・企画職を経て、2019年にリクルートに入社。家具・インテリアサイト『TABROOM』のディレクターを経験後、2022年から『MINTERIOR』にも携わる。2024年より、『TABROOM』『MINTERIOR』の責任者となる