【前編】厚切りジェイソンが物申す。日本の若者が人生を楽しむためのスキル。

【前編】厚切りジェイソンが物申す。日本の若者が人生を楽しむためのスキル。

文:鈴木貴視 写真:斉藤有美

IT企業役員×お笑い芸人として、大活躍中の厚切りジェイソン。独自の視点から、人生を楽しむための心構えとスキルを語る!

日本人が当たり前だと感じている文化や考え方に対し、アメリカ人の視点から疑問をぶつける漢字芸で大ブレイクを果たした厚切りジェイソン。IT企業役員×お笑い芸人など多分野に渡って活動する自身だが、Twitterにおいて24万人のフォロワーと展開している人生相談も話題に。この度、それらをまとめた著書『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』が発売。

まさに人生を謳歌し大躍進を続ける厚切りジェイソン氏に、将来への悩みを抱える学生や新入・新人社員に向けて、人生を楽しむために必要な心構えとスキルを聞き出す。1回目では、自分の好きなことを実現するための"強い自分の作り方"について語っていただいた。

― ご自身のTwitterでは、連日いろいろな悩みが寄せられ、若者を中心とした人生相談の場になっていますよね。

そうなんですよ。もともとはもらった質問に対して、普通に返答していただけなんですが。

厚切りジェイソン

― そのやり取りが高じて、著書『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』(ぴあ株式会社)が発売されました。その中では、繰り返し「やってみろ」「自分で決めろ」というメッセージが出てきますが。

質問の中で1番多いのが「~をやりたいけど自信がない」という内容なんです。多い時には、1日に500件くらい来たりして。もちろん内容によって返事も変えているんですが、どれも共通して「とりあえず、やればいい」という答えに繋がっていく。失敗する前提で物事を考えているのは、もったいないですからね。

― ジェイソンさん自身も、日頃からそのスタンスで過ごしているんですか?

はい。失敗することを前提で何かを考えたことないですね。他の人が出来るなら自分も大丈夫だろう、と思っていますから。とりあえずやってみて、もし足りないものがあれば考えるし、やっぱり違うと思ったら別のことを考える。それは、ビジネスの現場でも芸人の仕事をしている時も同じで、とりあえずやってみる。

― そもそも、なぜ芸人をやってみようと?

純粋に楽しそうだったから。というか、芸人活動している時の自分も普段の自分も、ほとんど変わらないんですよ。僕はいつもノリノリで、みんなを笑わせるのが大好き。だから、バラエティ番組を観ていて、楽しそうだから自分もやってみたいな、と思っただけで。やって後悔するよりも、やらずに後悔するほうが嫌だから。

― 持ちネタにもなっていますが、日本に対して「Why?」ということを意識し始めたのはいつ頃からですか?

2005年に来日したのですが、きっかけは漢字を勉強している時ですね。僕は部首と部首が合わさって出来るストーリーに沿って、それぞれの漢字の意味を覚えていたんです。でも、例えばご飯を「炊く」という字は、火が欠けていると書くじゃないですか。そういう矛盾から、なんで? と思うようになったんです。

厚切りジェイソン

― 漢字だけじゃなく、日本の文化や日本人に対して「Why?」と思うこともありましたか?

来日当時から今もずっとWhy?と思っているのが「日本人は、なぜみんな自分が思っていることをハッキリ言わないのか?」ということ。

― 日本人って、物事をハッキリ言わないですかね?

ぜんぜん言わない! 例えば、普段は本音で話しているのに、会議になると無口になるとかね。アメリカ人は興味がないと表情とか態度に表れるけど、日本人は興味があっても無くても、とりあえずはノリノリで同意する。つまり、本音と建前。それは非常にやりづらいよ!

― 例えば、日本の義務教育〜高等教育で「個を強める」ようなカリキュラムが少ないことも関係しているのかなと思うのですが。

ちょうど最近、娘が幼稚園で紙飛行機を作ることになって「どんな飛行機を作るの?」と聞いたら「先生の言われたとおりに作らないと怒られる」と。でも僕は「先生のお手本よりも遠くに飛ばせる飛行機を作れるかもしれないから、自分なりに考えてみたらどう?」と言ったんですよ。それでも娘は「怒られるからお手本どおり作る」って。日本って、幼稚園からそういう環境なんだってびっくりしましたね。

― ちなみに、アメリカはどういう状況なんですか?

まずは自由に作ってみて、どうやったら遠くへ飛ばせるか考えましょう、というところから始まりますね。ディベートのようなカリキュラムも子供の頃からありますし、間違っていても論理的に説明できるのであれば単位は取れるんですよ。

― ご自身が育った環境と娘さんの環境が異なるわけですが、父親としてお子さまの教育をどんな方針で進めていこうと考えているんですか?

やっぱり誰かに言われたとおりやるのではなくて「まずは自分で考ることが大事なんだよ」と伝えたいですね。だから、僕から娘に何か要求するときは、ちゃんとその理由も説明しています。今朝も幼稚園に行く前になかなか制服に着替えなくてグズグズしていたんですよ。それに対して妻はイライラしていましたけど、僕はまず本人のタイミングに任せて、その後に遅刻したらみんなに迷惑がかかっちゃうからダメなんだよ、みたいな感じで説明するんです。親としては、まず目の前の状況をそのまま受け止めて、その後に本人に考えさせることが大事かなって。

厚切りジェイソン

― 著書の中でも「自分で考え、自分の意見を言えて、その意見をちゃんと論理的に説明でき、自ら仮説を立て、分析出来る人」が重要ということを記載されていますよね。

昔、日本人の新卒の部下に、会社が求めている結果はこれだと提示したら「じゃあ、そうするにはどうしたらいいですか?」と質問されたので説明したんですが、言われたことはしっかりやるんですよ。でも、僕が言ったこと以外のものはやらないし、考えようともしない。上司が全部説明しなければいけない状況なら自分でやったほうが早いし、その社員は必要ないじゃないですか。

― 「自分で考える」「自分で決める」ことを身につけるためには、どうしたらいいんでしょうか? どうしたら、自分を強くしていけるのですかね。

失敗してもいいから、とにかく考えて試してほしいんですよ。失敗してもいいじゃん! 失敗したら強くなるよ!

― 失敗は許されない、というイメージがありますからね。「今」を生きる日本人の中には、まだまだその文化がないのかもしれません。具体的に何をすると「自分で決められる」ようになるのでしょうか?

超シンプルに"他人と違ってもいい"という考え方が出来れば大丈夫だと思うんですよ。まずは自分の意見を言える状況を作らないとダメですよね。若い人がどんどん発言するべきだ、ということが社内で浸透するといいんじゃないですか。きっと、先輩や上司も自分で決めることをせずにやってきた部分があると思うんです。そういうことを引き継いでるから、みんな自分で決めらないのは仕方ない、と思ってるんじゃない? でもね、仕方ないと思ってるから何にも変わらないんですよ。だから変えろよ! と言いたい(笑)。

プロフィール/敬称略

あつぎりじぇいそん

1986年生まれ、アメリカ・ミシガン州出身。17歳の時に、飛び級でミシガン州立大学へ入学。その後、イリノイ大学アーバナ・シャンベーン校へ進み、エンジニアリング学部コンピューターサイエンス学科修士過程終了。IT企業役員として働きながら、2014年10月お笑い芸人としてデビュー。芸歴5カ月で『R-1 ぐらんぷり2015』決勝進出。現在は、テレビ、ラジオ、CM、舞台などで活躍中。

『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』

『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』

著者:厚切りジェイソン/1,296円(税込)/発行・発売:ぴあ株式会社
BOOKぴあ」 全国書店、ネットショップなどで発売中。

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