ダイバーシティの現在地と、各大学の取り組み紹介 ~高等教育の「いま」と「これから」~

「学びたい」「学んでよかった」がもっと増えていく世界を目指す、高校生や高等教育の調査研究機関である『リクルート進学総研』 では、高等教育におけるダイバーシティの現在地や取り組みをご紹介しています。各大学の特色を活かしたダイバーシティを加速する取り組みは、幅の広い議論や多角的な視点だけでなく、あらゆる他者の尊重と多様な人々との協働機会をもたらすものだと考えます。

ダイバーシティマネジメントの「現在地」

ジェンダー平等の推進に限らず、留学生支援、障がい者支援など、各大学でもさまざまな取り組みが行われていますが、日本の大学のダイバーシティ推進は今、どの地点にあり、経営の場ではどのようにこのテーマに向き合っているのでしょうか。高等教育の研究者であり、東北大学総長特別補佐(国際戦略担当)の米澤彰純教授が、ダイバーシティの課題を「パフォーマンス向上」「コミュニティーの多様性・包括性」の観点からひもときます。


学生の声が反映される、ダイバーシティの推進

早稲田大学は、その創立以来、大学コミュニティにおける多様性を重視してきました。「創立150周年(2032年)に向けた中長期計画『Waseda Vision150』において“ダイバーシティ”を核心戦略に位置づけたことにより、キャンパスにおける多様性の実現が、早稲田大学のひとつの“生命線”であると明確に示され、ダイバーシティの推進力は高まった」とダイバーシティ推進室の室長石田京子氏は語りました。早稲田大学のダイバーシティ推進の大きな特徴は、学生の声が目に見える形で反映されていることであり、2017年に設立されたジェンダー・セクシュアリティに関するリソースセンターは、学生コンペでの受賞企画がきっかけとなりました。


すべての学生の多様性と尊厳・人権の尊重を推進「共生」の推進

宮城学院女子大学は、2021年4月より国内の私立女子大学で初めて、トランスジェンダー女性の受け入れの実施を開始しました。「性の多様性と人権」委員会座長の木野 和代氏は、「『隣人愛に立ってすべての人の人格を尊重する』という建学の精神に基づき、本学がこれまでも大切にしてきた『共生』をさらに推し進めるために、すべての学生の多様性と尊厳・人権を尊重し、トランスジェンダー学生の受け入れを進めていく方針が固められた」と語りました。


障がい学生の支援を、すべての学生の学びに

関西大学は、2013年に学生相談・支援センターを開設しました。「障がい学生の修学支援機能」と「学生の総合相談窓口機能」を併せ持つことで、「誰かに相談したいけれど、どこに行っていいのか分からない」という学生が気軽に相談に来られる場となっています。また組織内には、心理相談室が置かれ、心身両面の困りごとに専門的な支援が提供されています。障がい学生支援コーディネーターと心理相談員、事務職員が粘り強く対話を重ねることにより、それぞれの強みを活かしたチームで、学生の多様な困りごとを支援していく体制が形成されています。


ダイバーシティを実践的に学ぶ場としての「国際寮」

南山大学は、1949年の開学以来一貫して「世界で活躍できる人材」の育成に注力し、留学生の積極的な受け入れも行っています。同大学のヤンセン国際寮は、世界で活躍できる人材の育成を加速させるための「戦略的施設」として開設されました。「個」として自ら目標を定め、目標到達に向けて歩むことのできる「セルフプロデュース力」と「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の力を伸ばすために、「Living(毎日の生活における多文化コミュニケーションの実践)」、「Learning(対話型スキル養成講座での学び)」、「Socializing(学生企画イベント等を通じた多様な仲間との関係性からの学び)」の3つのモードでの学びを、寮の教育施策として明確に打ち出しています。


リクルートは「豊富な選択肢の中から自分らしい学びが選べること」「どこでも、だれでも、自由に学びの機会にアクセスできること」で世の中の学びを豊かにしたいと考えています。

これからも、学びの「いま」と「これから」を分析し、社会に発信してまいります。

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