入社3年で新規事業を立ち上げた3人の社会人デビューは順風満帆ではなかった~退職者再雇用サービス『Alumy』への挑戦
大学のゼミ仲間だった金田知樹、小町俊樹、鈴木康誠は、2018年4月リクルートに入社。3人でチームを組み、2020年度の新規事業提案制度「Ring」に、退職者再雇用サービス『Alumy(アルミー)』を提案し、見事グランプリを受賞した。現在、『Alumy』の事業開発に打ち込む3人だが、入社2年間、それぞれが、現実とありたい姿とのギャップに悩んでいたらしい。目の前の仕事にどう向き合い、そこから何を学んだのか? そこでの経験が、今どう活かされているのか、一問一答で振り返ってみた。
Q1 リクルートへの入社理由は?
Q2 1年目の仕事内容は? 配属先は希望通り?
Q3 2年目の仕事内容は? 印象に残っている出来事は?
Q4 入社2年間で鍛えられたスキルやスタンスは?
Q5 鍛えられた力は、今の仕事に活かされてる?
Q6 入社前と入社後、リクルートへのイメージは変わった?
Q7 今の自分が、入社2年目の自分に声を掛けるとしたら?
Q8 今、リクルートで働き、新規事業開発に挑戦している理由は?
Q9 『Alumy』に対する世の中の反応は?
Q10 最後に、これからの意気込みを一言
Q1 リクルートへの入社理由は?
個人への理解、目的志向、社会の「不」の解消にひかれて
鈴木:一番自分らしくいられる会社だと感じたからです。それまで、いろいろな会社のインターンシップに参加したのですが、その会社の人たちに気に入られようと振る舞う自分がすごく嫌で。でも、リクルートのインターンシップで「自分のここを直したい」って話したら、一緒のグループの仲間が「嫌いな部分も含めて自分だと思えると、もっと楽になるんじゃない?」って言ってくれて。人事の方も「〇〇さんは、こういうところが優しいよね」「〇〇さんは、ここをすごく頑張っているよね」と、さまざまな角度から人を見ていて、一人ひとりの違いを大事にしてくれそうだと思い入社を決めました。
金田:自分の性格もあり、「合理的に正しいことが早く実行される会社で働きたい」と考えていて、年次に関係なく目的志向で働けそうなリクルートを選びました。変なしがらみによって、こうありたいという姿がねじ曲げられたり、そこへの到達スピードを遅らせるような圧力が働いたりする環境に、ストレスを強く感じてしまうほうだったので。
小町:鈴木や金田とも少し違っていて、自分は仕事で社会貢献したい思いがありました。大学時代、マレーシアの会社でインターンシップを経験し、社会の「不」(不満・不便・不安など)を解決することがビジネスになり、より良い社会につながっていくと考えるようになって。創業以来、「不の解消」に取り組んでいるのがリクルートだったので、そんな会社で社会課題を解決するビジネス創造力を身に付けたいと思い入社しました。
Q2 1年目の仕事内容は? 配属先は希望通り?
希望が通っても通らなくても、目の前の仕事に全力投球
鈴木:メディア営業を希望していたのですが、人材斡旋のエージェント事業(現・リクルート HRエージェントDivision)の事業企画の配属に。正直に言うと、Webサービスじゃないのかと軽くショックで…。でも入社早々、転職支援をするキャリアアドバイザーの四半期目標を設計するという大きな仕事を任され、やる気はありました。事業の過去データから行動分析し、プロセスや施策を検討。部長と面談し、部の目標数字をすり合わせた後、60近くあるグループの各目標に落とし込むというのを、必死になって取り組みました。
金田:自分は希望が通りました。リクルートホールディングスの財務統括部に配属され、資金管理とM&Aにおけるファイナンスリスクマネジメントを担当。入社1年目の1月には、リクルートホールディングス取締役や財務担当役員に、第3四半期決算を報告することに。役員からのどんな質問にも答えられるよう全力で準備しました。その後も、財務について基礎から教えてもらい、知識や考え方を習得。学びが大きい一方で、M&A先の企業を見つけ、この交渉を成立させようと命懸けで仕事に打ち込んでいる人たちを目の当たりにして、自分はこのままでいいのかともやもやし始めて。1年目の終わりには、完全に迷走していました。
小町:1年目からいろいろありまして…。地方での営業を希望していたのですが、いきなり人事部配属。ようやく、会社や事業の未来を見据え、人事戦略を練る役割を志した頃、今度は中途採用事業の営業に異動することに。自分のやりたいことからどんどん離れていく気がして、転職しようと思うほど悩みました。でも、多くの先輩や上司と話すなかで、商品にとらわれず、自分の介在価値も含めてクライアントの企業に提供することがサービスなのだということに気づかされて。だったら自分ならではの不の解消もできるかもしれないと思い直し、なんとか踏み留まっていました。
Q3 2年目の仕事内容は? 印象に残っている出来事は?
どん底だった2年目を乗り越え見つけた新境地
小町:2年目は一番つらかったのが本音です。営業として成果は出ないし、自分ができないことを突き付けられるような毎日でした。そんななか、中途採用事業が、採用側の企業(クライアント)の事業理解を深めることをより強化することになって。クライアントの将来のあるべき姿を描き、人事戦略を設計するという自分が好きなことと事業戦略が合致したことが転機に。最初は、自分の好きなことが自分の強みだとは認識していませんでした。でも、上司がそこをほめてくれたり、先輩が、成果を出していない自分に、クライアントの未来を描くための壁打ちミーティングを依頼してくれたりするようになって。自分の価値発揮の方向性が見え始めた時でもありました。
鈴木:自分も一番つらく、一番認められなかったけど、一番成長できたのが2年目。エージェント事業から、HR領域の新規事業部署の商品企画に異動し、並行していくつもの業務を推進していました。債権回収の電話をしながら、コールセンターのマネジメントをして、クライアント対応して、約款を暗記して…。任された仕事は頑張っていました。でも、「組織や事業のここが良くない!」と文句ばかり言って、改善策を提案するなどの行動は起こさないので周りからも評価されず…。見兼ねた事業と人事の方が、翌年からエージェント事業に戻る段取りをつけてくれて。でも、このまま投げ出したら、一生引きずりそうな気がして、土壇場で「やっぱり、もう少し、ここで頑張らせてください!」とお願いしました。自分で変えられるものから全部変えていこうと腹をくくったら、俄然、頑張りやすくなった。ここでのマインド変化が、「Ring」への挑戦にもつながっています。
金田:自分も「Ring」に挑戦したくなった気持ちの奥深くには、2年目で自分の本心を認識できたことが影響しているかも。実は、2年目に、リクルートホールディングスからリクルートの財務に異動したんです。事業に近く、手触り感のある仕事をしたいという希望もあっての異動だったにも関わらず、もやもやが1年目の500倍に増幅。会社売却の案件で流されるがままに対応していると感じたり、逆に新規事業を立ち上げ、熱量高く動いている人が格好良く見えたり。これまで、財務の側面から参謀役として経営者を支えたいと思っていたのですが、本当は、当事者として事業運営に関わりたいと思っている自分に気づいたんです。
Q4 入社2年間で鍛えられたスキルやスタンスは?
経営者とのコミュニケーション力、目的思考力、“ウリ”を見出す力、
金田:ひとつ挙げるなら、経営者とコミュニケーションを取る力。限られた時間で、何をどう伝えるのか? 経営者はどんな視座で、何を気にするのか? そういったなかで、どう投資決裁を取ればいいのか? 熱意や情熱はもちろん大事ですが、経営判断ができる材料を揃え、合理的に説明する力が鍛えられました。
小町:自分は目的思考力が磨かれた気がします。クライアントのことをクライアント以上に理解する。理解した上で、クライアントの5年後、10年後の未来を描く。“未来から逆算し戦略を立てるのが得意な小町”という商品とリクルートの商品を掛け合わせ、クライアントに提供できる価値を最大化するために考え抜く癖が付きました。
鈴木:“ウリ”の立つ企画を考える力がついたと思います。「営業の生産性が上る」「クライアントの売り上げが〇%アップする」「ガバナンスが強化される」…。あらゆる企画において、相手を説得できる明確なアピールポイントを突き詰めて考えられるようになりました。
Q5 鍛えられた力は、今の仕事に活かされてる?
全ての力が、新規事業開発の原動力に
金田:経営者とコミュニケーションを取る力は、めちゃくちゃ活きています。審査する側の経営者目線に立って3人で考えられたからこそ、今、取り組んでいる退職者再雇用サービス『Alumy』は、「Ring」をはじめ今までの投資審査を通過したのかなと思っています。
鈴木:『Alumy』の“ウリ”を考える時に役に立っています。それと同じくらい、人から言われたから動くのではなく、自分にできることは率先して取り組むスタンスのほうが活きているかも。自分の力を使い倒すような感覚で、新規事業である『Alumy』に全力を注いでいます。
小町:事業価値、企業価値をど真ん中に置いてビジネスを考えられるようになったことが、『Alumy』を起案し育てていくなかで一番活かされていると感じます。
Q6 入社前と入社後、リクルートへのイメージは変わった?
期待とのズレは、ビジネスの現実を知ったから
鈴木:「個の尊重」という点では、期待通り、1年目から自分の良さを伸ばし成長させてくれました。一方で、つらかった2年目も、現実の厳しさを教えてくれたことで、リクルートへの理解が一段深まった気がします。当たり前ですが、どんな仕事もそう甘くない。厳しい環境のなかで、自分をどう奮い立たせ、主体的に頑張れるかどうかが大事。イメージの変化というより、自分の甘さを認識したことが大きく影響しているように思います。
小町:自分もイメージしていたものとズレはあったのですが、それは、リクルートという環境に甘えていたから。自分が動かくなくても、機会はもっと巡ってくると思っていたけど、そうじゃなかった。自分から機会を取りに行く努力は必要でした。
金田:筋が良い起案に対しては、年次に関係なく挑戦させてくれるところは、想像通り。でも、「やりたい!」ということに対して、何でもかんでも挑戦させてくれるわけではなかった(笑)。経営は、その取り組みの筋の良さや本人たちの覚悟を、しっかり見極めた上で挑戦させるかどうか決めていました。
Q7 今の自分が、入社2年目の自分に声を掛けるとしたら?
その経験は未来につながっていく。逃げ出さず、やりきれ!
小町:「何かひとつのことを、めちゃくちゃやりきれ!」と言うと思います。リクルートグループ横断のナレッジ共有イベントの顧客接点部門「TOPGUN FORUM」に登壇するような営業と当時の自分の違いを考えた時、アイデアを形にして「やりきる力」が自分には全然足りなかったので。
鈴木:「その厳しくつらい環境は、普通だよ。全部その後につながっていくから、間違った道を歩んでいるわけじゃないよ」って言いたい。
金田:「意味ないことは何もない」かな。チームをちゃんと作り、役割分担できれば、自分の経験はいくらでも活かせる。例え、今、将来のありたい姿から離れていると感じる仕事をしていたとしても、目の前の仕事をすぐに投げ出したり、腐ったりするのはもったいない。
Q8 今、リクルートで働き、新規事業開発に挑戦している理由は?
人材事業を生業としてきたリクルートが取り組むべきサービスだから
小町:リクルートは社会をより良くするために常に新たな価値を創造してきた会社。他社ではなくリクルートが『Alumy』を提供することで、退職者を再雇用するという新しい常識を日本のなかで創れる可能性が高いと思っています。
鈴木:営業をしていて、日本企業には「退職者=裏切り者」といったイメージがまだ根強く残っていると感じます。その固定概念を壊し、一緒にいた仲間と、一生、仲間であり続けられる世の中に変えていきたい。それを最速で実現するために、リクルートは最適なんです。社内にある、新規事業開発のノウハウ、創業時から培ってきた人材領域に関する豊富な知見と経験といったリソースを最大限活用していくつもりです。
金田:実は、「Ring」の1次審査が通った時、独立して自分たちでやっていく考えも頭をよぎったんです。でも、世の中に一石を投じより大きな影響を早く与えるためには、日本全国の多種多様な企業との顧客接点があり、エンジニアリング等の事業創出リソースのあるリクルートで『Alumy』に取り組むべきだと考えました。
Q9 『Alumy』に対する世の中の反応は?
退職者の再雇用に対する期待の大きさを実感
金田:2022年1月から『Alumy』の実証実験をしています。まさに、今日の午前中、ご利用いただいたユーザーの方から電話がかかってきて、留守電にメッセージを残してくれたんです。「退職した自分に対し、再度同じ会社で働く機会を提供してくれたことに、お礼を伝えたくて電話しました。またメールでご連絡します」と。鈴木が言ったように「退職者=裏切り者」という考えが社会には根強くあって、そのことによって失われてしまう機会があることを実感しました。
小町:そういう声が一番嬉しい。企業の方々と会話するなかでも、「リクルートさんなら、何かやってくれそう」と言っていただくことも多いです。これまで、人材マーケットでさまざまな可能性を切り拓いてくれた先人たちの歴史があったからこそ、『Alumy』への大きな期待があるのだと思います。
鈴木:本当にそう思います。リクルートが提供しているサービスということで、営業に行っても期待と信頼を寄せてくださいます。
Q10 最後に、これからの意気込みを一言
100億円の売上よりも、新マーケットの灯を絶やさないために全力を尽くす
小町:まさに今、退職者と、退職者が過去働いていた会社をマッチングできるか、検証しているところ。個人と企業双方への提供価値をもう一段深く探りながら、多くの企業様が『Alumy』を使えるような状態にしたい。今、目の前に、新しい価値の創造を通じて世の中をより良くできるチャンスが迫ってきているので、とても楽しみです。
鈴木:いろいろ大変なことも多いですが、自分もワクワクしています。とにかく、『Alumy』のために自分ができることは、全て取り組むつもり。社内にあるリソースを活用して、世の中の役に立つサービスに成長させていけたらと思っています。
金田:最近は、市場に対する責任も感じています。もしここで、リクルートの『Alumy』がこけたら、日本における退職者の再雇用・協働という新しい文化の創造が、大幅に遅れてしまう。100億円の売上を立てることももちろん大事。でも、今は、お金よりも「元いた会社で再び働きたい」と思う人たちの気持ちを絶やさないようにしたいです。
※「Alumy」の発案から起案までのプロセスは、コチラから詳細をご覧いただけます。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 金田知樹(かねだ・ともき)
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リクルート プロダクト統括本部 新規事業開発室 インキュベーション部 事業開発1グループ
大学卒業後、2018年にリクルートホールディングス入社。財務統括部にて資金管理やM&Aにおけるファイナンスリスクマネジメントに従事。大学時代のゼミの仲間であり、リクルートの同期でもある、小町俊樹、鈴木康誠とともに、20年度の新規事業提案制度「Ring」に応募し、グランプリを受賞。その後、新規事業開発室に異動し、現在、『Alumy』のプロジェクト推進を担当
- 小町俊樹(こまち・としき)
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リクルート プロダクト統括本部 新規事業開発室 インキュベーション部 事業開発1グループ
大学卒業後、2018年リクルートキャリアに入社。半年間、リクルートの人事で新卒採用に携わった後、中途採用事業でリテールと大手の営業を経験。制作・PE統括室 第2ソリューションユニットで、まなび領域のプロダクト開発を経て、現在、『Alumy』の顧客折衝を担当
- 鈴木康誠(すずき・こうせい)
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リクルート プロダクト統括本部 新規事業開発室 インキュベーション部 事業開発1グループ
大学卒業後、2018年リクルートキャリアに入社し、エージェント事業で事業企画を担当。19年から、アライアンス事業やスカウト事業などで3つのHRプロダクトの新規の商品企画を担当。その後、新規事業開発室に異動し、現在、『Alumy』の企画を担当