テクノロジーによって教育の新たな潮流を生み出す「EdTech」

テクノロジーによって教育の新たな潮流を生み出す「EdTech」

文:モリジュンヤ

テクノロジーの普及による変化は至るところに現れ始めており、教育という社会にとって欠くことのできない領域も例外ではない。

IT技術の発達、タブレットやスマートフォンなどのスマートデバイスの普及によって、従来の教育の方法は大きく変わろうとしている。

教育(Education)と、技術(Technology)を組み合わせた「EdTech」という造語が生まれるように、この領域は世界的に注目され、多くのプレイヤーが参入している。

リクルートも、目的に合わせてスマホで勉強が可能な「サプリコレクション」というアプリを提供している他、教育系のスタートアップに出資するなど、教育領域においても取り組みを行っている。

教育とテクノロジーといっても、そのサービスジャンルは様々だ。今回は注目を集める「EdTech」という領域におけるサービスカテゴリや、チェックすべきキーワードをいくつかピックアップしてみよう。

EdTech領域のサービスカテゴリ

語学学習

テクノロジーの発達によって選択肢が増えたもののひとつは語学学習だろう。

Skypeを利用してフィリピン人の教師から英会話を習う「レアジョブ」では格安で英会話を学ぶことができる。「OKpanda」というアプリはゲーム形式で英単語を覚えることが可能だ。現代のコミュニケーションに合わせて、英語でチャットする力を養うことを目的とした「Eigooo!」、「chatty」といったアプリも存在する。

HiNative」というアプリでは、単語帳や教科書などではニュアンスがわからない海外の言葉や文化に関する疑問をネイティブスピーカーに気軽に聞くことができる。

プログラミング学習

プログラミング学習の必要性や重要性に注目されることも増え、プログラミング学習をサポートするサービスも数多く登場している。

Codeacademy」や「カーンアカデミー」といった海外のサービスがパイオニア的存在。日本にも、動画でプログラミングの方法を教える「ドットインストール」や、マンツーマンで講師にプログラミングを教えてもらえる学習サービス「CodeCamp」、1つのウェブサービスを作り上げるイメージで、段階的にプログラミングを学習できるサービス「Progate」なども登場している。

MOOC

近年、欧米の一流大学を中心に、インターネット上で無料で受講できる公開オンライン講座を提供する動きがある。これは「MOOC(Massive Open Online Course)」と呼ばれる、高等教育をオープンアクセス化しようという取り組みだ。

多くの講座が無料で受講でき、ネットに繋がれば好きな時間、好きな場所で、世界中の授業を受けることができる。MOOCは教育の地域格差・経済格差を縮める可能性を示している。

2012年4月に米スタンフォード大学のAndrew Ng教授とDaphne Koller教授が創設した「Coursera」を筆頭に英語圏で「edX」や「UDACITY」といったサービスが登場し、英語圏以外の国でも、オンラインプラットフォームが続々と開設されてる。2013年10月には独ハンブルグ大学、欧州大学院、スペインのマドリッド・オートノマ大学など、欧州の一流校が参加する「iversity.org」、2014年5月にはアラブ諸国でも「Edraak」という教育オンラインプラットフォームが開設されている。

日本でもNTTナレッジ・スクウェア社が提供している「gacco」を通じて、日本の有数大学の講義がオンラインで配信されている。大学の講義などの他にも、社会人向けに様々な講座を放送する「schoo WEB-campus」というサービスも存在している。

学習コンテンツ

英会話、受験勉強、資格勉強、料理など目的に合わせてスマホで勉強が可能なアプリ「サプリコレクション」や、知育アプリと呼ばれるスマートフォンやタブレットを活用した幼児向けの学習アプリを開発するスマートエデュケーションなどは学習コンテンツを提供するプレイヤーだ。この領域は単語帳アプリなどを中心に、様々なアプリが提供されている。

これらのEdTech系サービスの他、学習に特化したSNS「スタディプラス」なども存在する。

テクノロジーにより注目される教育の潮流

EdTechがなぜ注目なのかを理解する上で、いくつかの視点が挙げられる。

アダプティブラーニング

「アダプティブラーニング」とは「適応学習」とも呼ばれる、レベルと学び方を学びたい人に最適化する教育の手法。人は一人一人躓くポイントや勉強の仕方が異なる。画一的に教えるのではなく、個々の人に合わせてパーソナライズされた学びの環境を提供することが可能になる。

ソーシャルラーニング

もうひとつが「ソーシャルラーニング」だ。ソーシャルメディアが普及し、同じ場所にいなくとも人とつながることができるようになった。多くのEdTechサービスには、ソーシャル性が備わっており、学習者はコミュニティ内で互いに励まし合い、アドバイスし合うことにより勉強のモチベーションを高め、継続しやすくする要素として注目だ。

反転学習

MOOCは「反転学習」という言葉とセットで語られることが多い。「反転学習」とは、説明型の授業をオンライン教材にして事前学習の宿題にし、従来説明型の授業後の宿題にされていた演習や応用課題を教室で、対面で行う学習形態だ。

オンラインで様々な教育コンテンツを配信するMOOCと「反転学習」という学習形態を組み合わせることによる可能性はアカデミックの場でも注目されている。

教育はすべての人にとって重要なもの。テクノロジーによって、地域と経済の格差を埋め、個人に最適化され、学習管理を効率化していく可能性がある。これは社会に大きなインパクトを与えうる。

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