アイデアの起点は「面倒くさい」。Ring Dash初代グランプリを獲得したエンジニア1年目の違和感とは?

アイデアの起点は「面倒くさい」。Ring Dash初代グランプリを獲得したエンジニア1年目の違和感とは?

「不便だなと感じたら自分で手を動かし、解消すればいい。エンジニアとして、自分が使っているサービスを自分でより良くしていきたいという思いがあります」。そう語るのは、2021年にリクルートに新卒入社し、その年にスタートした「Ring Dash(リングダッシュ)」(社内の既存部門に対してアップデート提案ができる制度)に応募し、グランプリを獲得した田中京介だ。1年目で起案したアイデアとはどんなものだったのか。またそこから実現までの過程で感じたリクルートという職場の印象について、話を聞いた。

エンジニアとして社会人デビュー。早速直面する「面倒くさい」会社の慣習

「子どもの頃から本当に朝が苦手で。社会人やっていけるのかな? と悩んでいたところ、リクルートは『全然朝起きられなくていいよ』と受け入れてくれて。“個の尊重”とは聞いていたけど、なんて懐の深い会社だと思って入社を決めました」と語る田中は、現在も午後からの稼働というスタイルで仕事をしている。そんなマイペースな田中は、入社早々、どうにも受け入れがたい「面倒くささ」に直面したそうだ。

それが、勤怠報告の入力。リモートワークとフレックスタイム制が基本となっているリクルートでは、一人ひとりの状況が見えないので、チャットツールなどを使ってチームメンバーに自分の出勤、休憩、退勤の報告連絡を行う慣習が生まれていた。そしてこれとは別に、労務管理上の勤怠管理システムへ、勤務開始時間/休憩時間/勤務終了時間を手入力する必要もあった。

「二度手間に感じたんです。それに、システムへの入力を数日分まとめてする際、『あれ? この日は早退したような…』『いつもより1時間遅れて始業したのって何日だっけ?』といつも記憶が曖昧で、思い出すことにも苦労していました」。

リクルートのエンジニア田中京介は「繰り返し作業」が苦手で、勤怠入力もそのひとつだった

そこで、先輩エンジニアが自作していたツールを使わせてもらうことに。これは、Slack上での「開始します」「休憩入ります」といった報告をツールが自動で拾って、勤怠時間を記録してくれるもの。

「この記録を参照することで、システム入力時に思い出す手間はなくなりました。でも、人は一度楽を味わえば、もっと楽をしたくなるもの。先輩の自作ツールを勤怠管理システムに連携し自動反映できれば、皆、もっと便利になるのになあ…と。もともと自分が、繰り返し作業が嫌いというのもあって、繰り返すことがあるとそれを自動化したくなるんです。既に記録がまとまっているのだから、エンジニアとしてどうにかして勤怠管理システムにつなげられるとも思っていました。でも、新人の自分が突然言ったって、リクルートのような大企業で意見が通るわけないよな、とも思っていました…」。

そんな矢先、田中の元に1通のメールが届く。その年からリクルートで始まった新制度「Ring Dash」への応募参加を募るお知らせだった。

リクルートの「Ring Dash」は社内の既存部門に対する要望を簡単に提案できる制度。新人の田中も早速応募することに

自分ができるかどうかは置いておき、違和感や思いついたアイデアは、まず発信!

「Ring Dash」とは2021年からリクルートで始まった新しい取り組みで、社内の既存部門に対する要望を「誰に何を/なぜ/どうやって」の3項目のみ、各250文字で記入するだけで提案できるもの。従業員は気軽にアイデアを表出でき、既存部門は部門外の視点から改善のヒントをもらうことができる。

「自分のアイデアを聞いてもらえるオフィシャルな機会を活用しない手はないと思い、すぐに応募しました。『何事も勉強だと思ってやってみたら?』と上司が背中を押してくれたのもあります。5月くらいの出来事だったと思います」。

田中の提案は、以前から勤怠管理システムに対する従業員の要望を聞いていた人事・労務担当者の課題と見事にシンクロ。「いつか、誰かに取り組んで欲しいと思っていたんです!」と、大歓迎された。そして、田中がミッションのひとつとして推進することに。

「却下されるだろうと思っていたので、やりましょう! と言ってもらえた時は嬉しかったですね。開発においては、机上の空論ではなく、とにかく“動いているもの”を作り、プロトタイプをSlack上に公開しながら進めました。試してくれた人からフィードバックをもらい、また開発に活かし…2022年2月、勤怠記録の自動化システム『Lico(リコ)さん』としてリリースしました。まさか入社1年目から自分のアイデアをもとにプロジェクトが立ち上がり、開発からリリースまでを経験できるとは夢にも思っていませんでした」。

リクルートの1年目エンジニアが開発した、勤怠記録自動化システム『Licoさん』の画面イメージ
『Licoさん』はSlackに書き込みをすると時刻を勤怠システムに記録してくれる。「おはようさん」「お疲れさん」と言ってくれる人のような存在

ネガティブな気持ちが愚痴になるかアイデアになるかの違いは、議論できる環境にあり

現在、エンジニアとして『スタディサプリ』の開発に携わる田中は、この経験から何を学び、どう活かしているのだろうか。

「嫌だと思った時は、まずネガティブな感情が強く出てしまうものです。勤怠システムの件だって、初めは半分愚痴でした。でもそういうことを周りに言っても、聞いている方もポジティブな気持ちにならないし、あいつはネガティブなことばっかり言っていると思われて自分も損するだけ。違和感を抱いた時こそ、あえて事実だけに目を向ける。個人の感情をいったん差し引いて、現状の課題が何か、どうしたら良くなるかをフラットな目線に立って考えてみることは、日々のプロダクト改善においても結構大事だと感じています。」。

リクルートで『スタディサプリ』のプロダクト開発を担当するエンジニアの田中京介は、フラットなディスカッションができる風土を居心地良いと言う

とはいえ、若手の立場で違和感を口にすることに怖さはないのだろうか。

「極論、自分ができるかどうかは置いておいて、感じた疑問や、改善のアイデアは、まず発信してみるようにしています。リクルートには『自分はこう思うけど、あなたはどう思う?』というスタンスで会話をする人が多い印象。目の前の案だけが正解ではないと分かった上で話し合える人が多いと感じます。だからあまり躊躇せず口に出せるのかもしれません。

発信してみると、今まで皆が思いつかなかった視点だと分かることもあるし、受け入れられなかったとしても、その理由が分かり、別の案を思いつくかもしれない。考えた末『やっぱり自分はこうします』と言うと、『得意な方法でやったらいいんじゃない?』と尊重される感じもまた、エンジニアとしては心地良いですね」。

そんな田中が今後、仕事で成し遂げたいことは、さまざまな経験を積み、皆から頼られるエンジニアになることだそう。

「今ある仕組みが最良だと思い込まず、違和感を探り出し、プロダクトや組織の進化につないでいきたいです」。

リクルートのエンジニア田中京介は入社1年目で社内提案制度「Ring Dash」に応募し、プロダクト開発の経験ができた

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

田中京介(たなか・きょうすけ)
リクルート プロダクトディベロップメント室 販促まなび領域プロダクトディベロップメントユニット 小中高プロダクト開発部 小中高SREグループ

学生時代からリクルートのIT系研修やインターンシップに参加。大学院卒業後、2021年4月リクルートに入社。クラウドの利活用を推進する組織で、『ゼクシィ縁結び』のSRE(Site Reliability Engineer)の立ち上げサポートなどに携わった後、同年10月より現部署。『スタディサプリ』の「小中高領域」のSREの活動を推進。プロダクトの信頼性と開発生産性を支えるための基盤づくりに関わっている。「勤太郎※への勤怠記録の自動化」の提案で「Ring Dash」グランプリを受賞
※社内の勤怠管理システムの呼称

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