「Ring」のおかげで目が覚めた。この経験を高校生にも届けたい

「Ring」のおかげで目が覚めた。この経験を高校生にも届けたい

『スタディサプリ』の営業として関西エリアの高校を担当する、リクルート従業員の田村乃唯。転職直後、焦りを感じていた田村が変われたのは、社内のある制度がきっかけだったと言います。

転職直後に考えたのは再度の転職⁉ 転職1年目の苦悩

―田村さんは中途採用で入社後、結構苦労されたと伺いましたが…。

田村:そうですね。2021年に「もっと自分を成長させたい!」と意気込み、リクルートに転職。希望していたまなび事業に配属され、オンライン学習サービス『スタディサプリ』の営業として、関西エリアの高校を担当することになったところまでは良かったのですが、そこからが大変でした。大手食品メーカーで営業をしていた経験もあったので、きっと上手くやれると思っていたものの、やる気だけが空回り。高校に商品をご案内してもなかなかご契約に結び付かないという状況でした。

―なぜ空回りしていたのでしょう?

田村:今振り返るとですが、自分の仕事の先にあるものが分かっていなかったんだと思います。とにかく自分の仕事を覚えることに必死で、仕事の先にどういう結果があるのかも掴みきれず、お客様が求めていることを理解する余裕もない。そんな状態だからこそ、頑張って伝えたつもりでも、相手には伝わらない。正直、自分の力不足を感じ、再度の転職を考えてしまうほどしんどい1年目だったことを覚えています。

上手くできない。転職早々つまづいたと語るリクルート従業員の田村乃唯

「Ring」起案で徹底的に自分と向き合う

―ですが、翌年の2022年度には事業内での準MVPも受賞されていますよね。何かきっかけがあったのでしょうか?

田村:この状況を何とか打破したい、そんな思いで転職2年目の2022年に社内の新規事業提案制度「Ring」に挑戦してみたんです。自分で新しいビジネスプランを考え、選考が進めば、実際にその事業を手掛けられるかもしれないというのは、自分にとってはチャレンジでしたが、何か変われるかもと、思いきって手を伸ばしてみました。

もちろん新規事業を考えるのは初めてだったので、Ringで推奨されているように、まずは自分の身の回りにある「不」に目を向けてみることから始めてみました。普段の生活のなかで、何か良くなるといいことはないかと考えてみることは、自分自身のことを見つめる良い機会にもなったと思っています。

―具体的にはRingで何を得られたのでしょう?

田村:自己理解や自己決定の大切さを学びました。私はこれまでの人生で、勉強や仕事は一生懸命やらなければならないものという、漠然とした“やらされ感”を抱えて生きていました。頑張ることに違和感はないものの、そこにあまり自分の意志はなかったような気がするんです。

ですが、Ring起案では、自分はどう思うのか、自分はどうしたいのかが求められる。そこに真剣に向き合ううちに、自己理解が進みました。自己理解が進むと、自分の選択や決定に意志が乗っかってくる。自分が大事にしたい芯が見えてきて、人生に対する自己決定感が一気に高まり、世界が開けていく感じがしたんです。Ringの選考自体は書類選考で落ちてしまったのですが、起案を通してそれ以上に大切なものを得られ、くすぶっていた仕事も少しずつ軌道に乗り始めました。

新規事業提案制度Ring起案を通じて仕事にも好影響が出たと語るリクルート従業員の田村乃唯

―確かに、参加も起案内容も自由であるからこそ、自分が何をしたいのかをとことん問われる経験になったのかもしれませんね。

田村:正直、この機会をもっと早い段階、できれば学生時代に経験したかったです。転職直後も、自分事化して考えてお客様に向き合っていたら、もっと違ったかもしれませんし…。ですがこの経験を経て、自分のように社会人になっても自己理解が足りずに苦労する人を減らしたい、早い段階で自己理解・自己決定の大切さを実感して欲しい。そんな思いに駆られるようになりました。そんな時に、まなび事業が中心となって高校生向けに開催している『高校生Ring』の参加校募集の社内案内が目に留まったんです。

自分が体験した「Ring」を高校生にも届けたい

―リクルートが2021年から実施している、Ringのノウハウを活かした高校生向けのアントレプレナーシップ・プログラムですね。

田村:はい。半径5mの日常のなかで「不」を見つけ、それを解決できるようなビジネスのアイデアを考えてもらうというプログラムで、私が体験したRingを高校生向けにアレンジしたものでした。自分がRingで得た貴重な経験を、担当する高校の生徒さんたちにもぜひ味わって欲しい、そんな思いで、初めて私が担当した学校でもある東大阪大学柏原高等学校(以降、柏原高校)にご提案してみることにしたんです。

生徒さんにとって良い体験になるはずと自分の身を持って感じていたことだったので、自信を持ってご案内することができ、先生方にもご賛同いただけて参加が決定しました。

田村が『高校生Ring』をご案内した東大阪大学柏原高等学校
田村が『高校生Ring』をご案内した東大阪大学柏原高等学校

―柏原高校の生徒さんは、夏休みの宿題として『高校生Ring』への起案に取り組んでくださったんですよね。

田村:夏休みを利用して、「高校生Ring NOTE」と呼ばれる小冊子に書かれている問いに答えながら、新しいビジネスプランを考えていただいたのですが、そのなかで、ある生徒さんのアイデアが一次審査、二次審査を通過し、ファイナリスト5組に選出。そして、2023年1月に東京で行われた最終審査会でなんとグランプリを受賞したんです! 

―私も会場にいましたが、凄く堂々とした発表で素晴らしかったですよね。

田村:発表直前にとっても緊張している姿を見ていたのですが、それを感じさせない発表に感動しました。それに、緊張するということは、それだけ準備してきたからこそだと思うんです。高校生がこんなに頑張っているんだから私も頑張らなくてはという思いに駆られると同時に、私が高校生Ringを案内していなければ、その生徒さんが自分のアイデアをアウトプットする機会も、大阪から東京に来て大勢の前でプレゼンする機会も提供できていなかったはずだよなと。グランプリ受賞の瞬間を目の当たりにしたことで、自分の行動で誰かの人生が大きく変わっていくような喜びと責任を感じ、生徒さんたちにさまざまな学びの機会を届けることが、スタディサプリの営業である自分の使命だと確信したんです。

―気づきを得たんですね。

田村:そうです。自分の仕事の先にあるものがはっきりと見えたからこそ、自分の仕事の意義が明確になったと思っています。そこからは結構がむしゃらでした。自分があきらめたら、目の前の生徒さんの可能性を閉じてしまうかもしれない。そんな思いが原動力となって、営業としても、意志を持ってさまざまなご案内をお届けできるように。言葉にも説得力が出てきたからか、苦戦していた状況も打破できるようになったと感じています。

―Ringと高校生Ringふたつがあったからこそ、田村さんのギアが上手く入ったんですね。田村さんの変化以外に、グランプリ受賞された生徒さんも何か変わったことはあったのでしょうか?

田村:グランプリ受賞がきっかけで、良い進路選択につながったと伺っていますし、プログラム自体に参加した生徒さんにも良い刺激になったと聞いています。また、意外だったのですが、高校生Ringの窓口を担当してくださった先生方からも感謝されまして。ビジネス思考も学べるプログラムになっているので、先生方の普段の業務にも活かせるポイントがたくさんあったと教えていただきました。

高校生Ringの話をするリクルート従業員の田村乃唯

高校生に伝えたい!『高校生Ring』の秘訣は自分のなかのモヤモヤにしっかり向き合うこと

―生徒さんだけでなく先生方の気づきにもつながったとは…! 田村さんは高校生Ringの良さはどんなところにあると感じていますか?

田村:今回はグランプリ受賞にまでつながりましたが、受賞が全てだとは思っていません。高校生Ringでは、とことん自分に向き合って考えることが求められます。自分が身の回りの何に課題を感じて、それをどう良くしたいのかを考える必要があり、自己理解・自己決定を求められるんです。結果、勉強だけではなかなか得られない、自分でやれるんだ・やってみたいという気持ちを醸成できると思っています。

高校でも「総合的な探究の時間」と題し、科目の枠を超えた横断的・総合的な学びの時間が設けられていますが、自分で取り組みの課題設定を行うケースは必ずしも多くありません。しかし高校生Ringの場合は、「自分の半径5m」に目を向けて自分で課題設定を行います。世の中の課題を自分事化する考え方を学べることは、きっと社会に出てからも役に立つことだと思っています。自分自身、Ringでそれを実感しましたしね。

―ということは、今後も高校生Ringの案内は継続されるんですね?

田村:もちろんです。2023年度からの本格展開に伴い、積極的にご案内しました(※2023年度の募集は終了)。柏原高校もご参加が決定しており、グランプリを受賞された生徒さんもまた参加していただけるみたいです。そういうお話を聞けるだけでも凄く励みになります。

―それは嬉しいですね。Ring経験者として、これから高校生Ringに挑戦される高校生の皆さんへのアドバイスなどありますか?

田村:うーん。そうですね…。「書くかどうか迷ったアイデアほど、書いて欲しい」ですかね。やっぱり教科書通りのきれいな案を作りたいと思うんですが、そんなことは考えないで欲しいんです。そして、賞に選ばれる・選ばれないとかより、自分のなかで言葉になっていないけれど確かにある、ドロドロ・モヤモヤやワクワクにしっかり向き合って「自分で決めたものを案として書く」のが一番大事だと思います。あくまで私個人の意見ですし、他にもいろいろな意見はあると思いますが、ぜひとことん自分に向き合って取り組んでみてもらえたら。

とにかく昔の自分のようにつらい思いをする大人にはなって欲しくないので、「自分で決める」を大事にしてもらえたらなと思います! あとは、同じことをクラスメイトたちも一緒にやることになると思うので、ぜひ同じ体験をする仲間の存在も感じながら、今しかない高校生活を楽しんでもらえたら嬉しいです。

―田村さんご自身が苦しんだからこその言葉ですね。最後にこれからの抱負を聞かせてもらえますか?

田村:Ringと高校生Ring、このふたつを通して、自分の仕事の意義が明確になり、自分の選択にこれまで以上に意志を持たせることができたと思っています。これはリクルートに転がっていた機会に手を伸ばしたからこそ得られたもの。まずは機会に触れてもらうことが今をより良くする一歩かもしれない。そんな思いでこれからも多くの皆さんに新しい経験という機会をお届けするべく、邁進していきたいと思っています。

20230713_v006

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

田村乃唯(たむら・のい)
株式会社リクルート まなび教育支援Division 支援推進1部 関西1グループ

食品メーカーの営業を経て、2021年にリクルート入社。『スタディサプリ』の営業として関西エリアの高校に向き合う。高校生の頑張りに感化され、最近休日を利用しての副業も始めたのだとか

関連リンク

最新記事

この記事をシェアする

シェアする

この記事のURLとタイトルをコピーする

コピーする

(c) Recruit Co., Ltd.