リクルートで働きながら、故郷で副業する。仕事、地域活性、子育ての3両立を実現する働き方とは?
本業で得たスキルを故郷の地域活性に役立てたいと考え、震災をきっかけに副業として地元での起業をしたリクルート 渡邉洋治郎。さまざまな人との出会いで気づけた「自分の強み」や「自分らしさ」があったという。本業と副業、そして子育てを両立している働き方や時間の使い方についても語ってもらった。
副業を通じて得た、人との出会いと経験も「自分の強み」発見の機会に
―渡邉さんは入社以来、リクルートのクリエイティブ畑でキャリアを積まれていますよね。現在はどのようなお仕事をされているんですか?
渡邉:今は、リクルートグループのコーポレートコミュニケーション、各プロダクトブランドのブランディングやプロモーション、インナーコミュニケーションを領域横断で担う部署に所属しています。直近では、リクルートの2024年度 新卒採用サイトのコンセプト~クリエイティブ開発や、飲食領域でのVMVP(ビジョン/ミッション/バリュー/パーソナリティ)開発などを推進しています。
―ご担当されている事業領域が幅広いですね。副業では、2013年に会社を立ち上げたとか。どんな思いで起業を決意したんでしょうか?
渡邉:リクルートでの仕事は、常に新たなチャレンジをしてきたので成長実感はありましたが、もし社外にポンと放り出された時に自分に何ができるのか…と、不安や葛藤もありました。これまで培ってきたスキル(コンセプト開発・グラフィックデザイン・コミュニケーション設計など)を活かして、直接的に社会に価値を生み出していけたらという思いが高まっていた矢先に、東日本大震災が起きたんです。これがひとつのきっかけとなり、2013年3月11日、故郷である仙台でアウン株式会社(AUN Inc.)を立ち上げました。
地域プロデューサー、建築・インテリアデザイナーといった強みが異なる同郷のふたりとともに、プロジェクトベースで活動し、地域でのブランド開発や起業家支援などを手掛けています。
―いきなり起業されたんですか? これが、渡邉さんにとっての初めての副業でしたか?
渡邉:会社を立ち上げる前にも、知人のお手伝いや無償での仕事などをしていました。例えば、身近な方から、展覧会を主催するのでフライヤー(チラシ)を作りたい、という話を聞いて、無償でデザイン提供などをしました。
社外で自分の知識やスキルを通じて貢献してみると、意外なところで評価してもらえたりして、シンプルに嬉しかったですね。そんな経験も起業につながった気がします。
社外で自分の知識やスキルを通じて貢献してみると、意外なところで評価してもらえたりして、シンプルに嬉しかったですね。そんな経験も起業につながった気がします。
―なるほど。本業でのスキルや知見は、副業ではどのように活かせていますか?
渡邉:創業したAUN Inc.では課題解決のみでなく、0→1、1→10、10→100のように「その先の未来の実現」をステークホルダーとともに「見える化」しながらアプローチしていくことを大切にしています。
そのプロセスで、「課題を仮説化してゴールを設計」「期待値を調整」「課題や目的を深掘りし、突き詰める」など、リクルートで鍛えられた力が活かせています。
そのプロセスで、「課題を仮説化してゴールを設計」「期待値を調整」「課題や目的を深掘りし、突き詰める」など、リクルートで鍛えられた力が活かせています。
例えば、宮城県の最南端にある丸森町から「UIJターン(*1)を促進したい」という依頼を受けたことがありました。町の魅力をどう発信するかについて模索した結果、移住して起業したいと思う人を応援するための「持続的な仕組み」や「シンボルとなる場所」を創ることが先決ではないかとご提案させていただきました。そこで、起業サポート体制を整えたほか、重要文化財である「蔵の郷土館 齋理屋敷」の一部をインキュベーション&コワーキング施設として整備しました。
(*1)UIJターン:Uターン、Iターン、Jターンの総称で、東京や大阪などの大都市圏から地方に移住すること
―本業で培われた「強み」を故郷の地域活性に役立てられているんですね。逆に、副業を通して会社での仕事に還元できていると感じることはありますか?
渡邉:そうですね。いくつかあると思っています。まずひとつは、「社会のリアル」を体感する経験が得られていること。例えば地元の喫茶店のマスターから市役所の方まで幅広い方々と、地元で起きている問題の解決策を一緒に考えたりすることは、これまで社内の仕事ではできなかった経験です。リクルートでも、お客様のその先にいるカスタマーや取り巻く地域、社会のリアルを解像度高く理解できているからこそ持てる切り口やアウトプットがあると実感しています。
その他にも、副業を通して自分の「強み」や「持ち味」に気づけたことで、会社のなかでも意識的により自分らしく貢献していけるようになっている気がします。自分の強みや持ち味を客観的に知ることって意外と難しいと思うんです。ワークシートに何か記入するだけでは本当の意味では見つからない。実際に現場で人と出会って語られる言葉の一つひとつが、自分を知るヒントになります。例えば、地元の方と課題解決をしていくなかで、地域ではこんなスキルが必要とされていたんだ、こんな自分の得意分野を活かすことができるんだ…といった発見がたくさんありました。こうした人との出会いや経験を積み重ねていくことで、だんだんと自分の強みや持ち味を自己肯定感につなげられるようになりました。そして、より意識的にその強みを磨いていくと、さらに周囲に貢献できる機会が増えていきました。
一方で、もともと自分のスキルセットにはない相談ごとだとしても、頼りにされると何とかしたくなってしまって…。「ひと肌脱いでいる」うちに、気づいたらできるようになっていたということも。新しい経験で得られたスキルも、会社の仕事に還元できています。強みを磨くだけでなく、思いきって飛びこんで広げていくのもリクルートの社風で培った成長法のひとつ。会社の仕事と副業と相互に循環しあって成長につながっている気がします。
会社の仕事と副業、子育てを両立させる「時間の使い方」の秘訣
―渡邉さんはお子さんもまだまだ手がかかる時期だと伺っています。会社の仕事、副業、子育て…どうやって時間を作っているのでしょうか?
渡邉:起業した時点ではまだ子どもを授かる前だったので、週末や有給休暇を利用したり、仕事を終えた後の時間を副業の時間に充てたり、仙台に出向いたりしていました。
―子育てが始まってからは、時間の使い方や向き合い方に何か変化はありましたか?
渡邉:そうですね。以前は、とにかくノッてきたらとことんやりきるスタンスでしたが、今は、「明日できることは明日やる」というスタイルに切り替えました。週末も平日も子どもが起きている時間帯は子どもとの時間を大切にしています。また副業の仕事は、プロジェクトごとに信頼できるパートナーの方々とチームを組んで、自分はプロデュースやディレクションに徹する。可能な限りリモートで対応するように、など工夫をしています。
―副業で起業してみて、改めてリクルートの風土や環境をどう感じていますか?
渡邉:皆、仕事に熱意を持っていながら、各自の「自由」が認められている環境。だからこそ、「自己責任」という当事者意識も持ちながら多様な働き方を選べているのではないかと思います。また、半期に6~7日間、自分で休む日を自由に設定できるフレキシブル休日といったさまざまな休暇・休日を活用して、副業の時間に充てることができるのも助かっています。人との出会いや経験を広げていくことをこれからも続けていきたいと思っています。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 渡邉洋治郎(わたなべ・ようじろう)
- リクルート マーケティング室 ブランドプランニング3部 クリエイティブディレクション1G
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大学卒業後の2007年、リクルートに入社。一貫してマーケティング室でクリエイティブディレクションを担当。『タウンワーク』、『SUUMO』、採用広報、インナーブランディングなどを経験し、現在の担当は『HOT PEPPER』『リクナビ』等。4歳と3歳の息子ふたりの子育てにも奮闘中