これまでのやり方が通用せず落ち込む日々。そんな状況から脱した帰り道の習慣とは

これまでのやり方が通用せず落ち込む日々。そんな状況から脱した帰り道の習慣とは

『ゼクシィ』をはじめ、結婚や家族に関するリクルートのサービスの数々を担う組織の責任者を務める、衣笠 歩。今でこそ責任者の立場にありますが、そこに至るまでには多くの壁があったと言います。乗り越えるのに何が必要だったのか話を聞きました。

異動直後、否定的な意見を言う人が「敵」に見えた

― 現在、衣笠さんは、『ゼクシィ』をはじめとする結婚や家族に関するサービスを扱う組織の責任者を務めていらっしゃいますが、これまでに経験した壁のなかで一番大きかったものはどんなものでしょうか?

衣笠:営業職から総合企画部にマネジャー(管理職)として異動して、これまでのやり方が通用しなくなった時が一番かもしれません。

私は2006年の入社後すぐにブライダル領域の営業部に配属され、新規クライアントへの提案を担当。茨城営業所を経て、営業推進部や関西営業部などへの異動も経験しながら、ずっとブライダル領域でキャリアを重ねてきました。責任のある仕事を任され、やりがいを持って働いていたのですが、総合企画部にマネジャーとして異動した2017年が、自分にとっての転機だったと思っています。

― どんな転機でしょうか?

衣笠:異動に伴い、業界最大手のクライアントを担当することになったのですが、取引額だけでなく、先方の関係者も社内の関係者も激増。それまでは数えられる程度だった関係者が、一気に数十人に増え、 意思決定の複雑性が増し、意見自体も多様化。何かひとつでも新しいことをしようとすると、事前にデータや根拠に基づいた論理的な説明が求められるようになったのです。

― それはかなり大きな変化だったのでは?

衣笠:その通りです。それまで私は、「良いと思ったアイデアはまず試してみる」というスタイルが自分の強みだと考えていましたが、異動先ではそのやり方が通用せず…。次第に自身のアイデアや提案に対する指摘が「自分への批判」に聞こえてくるように。否定的な意見を言う人は「自分の敵」だ、そんな懐疑的な気持ちが強くなり、そう思ってしまう自分も嫌で、大きなストレスになっていきました。

内省について語るリクルート従業員の衣笠歩

「ヒト」と「コト」を分け、毎日15分の内省を習慣化

― その困難な時期をどうやって乗り越えたのでしょうか?

衣笠:まず試みたのは、「ヒト」と「コト」を分けて考えることでした。否定的な意見は「コト」に対するものであって、自分という「ヒト」への攻撃ではないと理解するように努めてみたのです。

― 具体的にはどのように考えるのですか?

衣笠:「皆それぞれ立場や事情、生き方も違うから考え方も違って当たり前」と半ば強制的にそういった思考へ転換してみたのです。すると不思議なことに、今までは否定的にしか受け取れなかった意見を「その人の立場で見るとそういう意見もあるんだな」と受け止められるようになりました。

そして裏を返すと、これまで何気なくしていた自分の伝え方や態度も周囲の人に影響しているはずと思い直し、そこからは自らのリアクションをコントロールしていくことも意識し始めるように。

― ご自身が周囲の発言を厳しく感じるのと同じように、自分の言動もそうだったかもと思うようになったんですね。どうコントロールしていったのですか?

衣笠:毎日必ず「内省タイム」を設けることで、自らの言動を強制的に振り返るようにしました。ちょうど自分のリアクションについて考えを巡らせていた時に、当時の上長から「歩、どれくらい内省している?」と質問されたんです。答えに詰まる私に、「私、毎日しているよ」と言われまして。せいぜい月1回、忙しくなると3ヶ月に1回程度しか内省する時間を取っていなかった自分との差に愕然とし、その日から内省を習慣づけるようにしました。

早速、帰宅時、ひと駅分(約15分間)内省タイムを持つようにして、歩きながらその日1日の自分の行動を振り返り、自分がメンバーやチーム全体にどういう影響を与えたか思いを巡らせるようにしました。「あの時の言い方は〇〇さんを傷つけてしまったかもしれない」「あの会議での態度は不機嫌に見えたかもしれない」。その時は無意識にやっていることでも、後から振り返って俯瞰してみると自分の至らなさを感じることばかりで…。申し訳なさと不甲斐なさから泣きながら歩いたことも一度や二度ではありません。

周囲を巻き込み「コト」を成す「Lead the Society」へ

― とことん自分と向き合う内省タイム、しんどい瞬間も多かったのでは?

衣笠:正直、自分のできていないこと・嫌なところを直視しないといけないため、精神的にしんどかったです。しかし、俯瞰する習慣を続けていくと、自己認知やメタ認知が進み、自分の思考の癖だけでなく、弱みや強みにも気づけるようになりました。

― どんな強みに気づかれたのですか?

衣笠:自分の強みは、アイデアを思いつき、それを推進するためにチームの皆を巻き込んでいくリーダーシップ。反対に、論理的な説明力やリスクマネジメント力が足りないところが弱みだと気づくことができました。強み弱みを認識できたことで、環境に合わせて強みをどう活かすか、弱い部分は補強しながらも、いかに周囲にもサポートを求めるかを考えられるようになったと思っています。

― 強み弱みの把握は、衣笠さんのその後にどう影響したのでしょうか?

衣笠:自分自身、強みも弱みも凸凹がある人間だと受け入れられたことは、「個の強みは積極的に活かしつつ、弱みは周囲がサポートしていけばいい」という今のポリシーにつながったなと思っています。

特に2020年からのコロナ禍でブライダル業界が大きな影響を受けた時期、このポリシーと「コト」に向かう考え方が役に立ちました。当時、緊急事態宣言発出を受け、人が集まる結婚式自体、延期せざるを得なかったり、実施できても酒類の提供の停止やアクリル板の設置、オンラインでの参列など、希望の形の結婚式を行うことが難しい事態が多く発生しました。しかし、変えられない現状を憂いていても仕方がない。そんななかでも、ふたりらしい結婚イベントや、結婚の総数そのものを増やすような取り組みはできないのかと思案。『ゼクシィ』だけでは難しかった取り組みも、クライアントや行政など多くの方の力を借りて、コロナ禍での結婚式の独自ガイドライン策定などにつなげることができたと思っています。

― 今できる「コト」に向かい、周囲と連携されたのですね。リーダーとして今後はどんな展望を?

衣笠:まずは今後も内省力を磨いて日々考えをアップデートしつつ、「Lead the People(人々をリードする)」から「Lead the Society(社会をリードする)」へと考えや行動を進化させたい。これからもメンバーだけでなく、カスタマー、クライアントとともに「コト」に向き合い、新しい価値の創造にチャレンジしていきたいです。

今後の展望について語るリクルート従業員の衣笠歩

登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

衣笠 歩(きぬがさ・あゆむ)
株式会社リクルート Division統括本部 マリッジ&ファミリーDivision Vice President

大学卒業後、2006年にリクルートに入社。ブライダル領域の営業部に配属され、新規クライアントへの提案を担当。茨城営業所での経験を経て、営業推進部や関西営業部、東海営業部でのスタッフ職を経験後、2024年4月からマリッジ&ファミリーDivisionのVice Presidentに着任

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