開発からプロダクトマネジメントへ。『スタディサプリ』配属エンジニアのキャリアストーリー
オンライン学習サービス『スタディサプリ』の進路領域でプロダクト責任者を務める吉田麗央は、2014年入社後に新規プロダクトの立ち上げにエンジニアとして配属され、開発ディレクター・プロダクトマネージャー・プロダクトマネジメントの統括と、一貫して『スタディサプリ』のプロダクトのグロースに携わっています。さまざまな職種を通した10年間の経験が、どのようにプロダクト責任者としてのキャリアにつながっているのか? を聞きました。
プロダクトマネージャーの経験を通じて「チームで動く」大事さを痛感
― 吉田さんは2014年にリクルートに入社されたとのこと。なぜ、リクルートだったのでしょう?
吉田麗央(以下吉田):大学時代からエンジニアとして教育系スタートアップのプロダクト開発に携わっていました。正直なところ、当初はその仕事を続けるか、リクルートに入社するかで迷っていたんです。ですが、日々の開発を通じて「自分は何がやりたいのか」と立ち返るなかで、モノづくりがしたい、そして「せっかく何かを作るなら、社会にインパクトを与えるようなサービスに携わりたい」と実感するようになりました。
リクルートなら、規模や領域を問わず様々な事業を展開しているうえに、営業やプランナーなど、エンジニア以外の職能を持つ多様な人たちとプロダクトを磨き込む経験が積める。そういう環境のなかに飛び込むことで、今後のキャリアのレバレッジを効かせられるんじゃないかと思い、入社を決めました。
― 入社後は、一貫して『スタディサプリ』の開発に携わっているんですね。
吉田:元々エンジニアとしてソフトウェア・アプリ開発が専門だったことから、入社後は新規事業であった『スタディサプリ』英単語学習アプリのエンジニア組織に配属されました。実は組織が立ち上がったばかりだったので、1年目ながらプロダクトを丸々ひとつ担当することになったんです。
― 1年目でプロダクトを1人で担当ですか?
吉田:はい、立ち上がり当初はエンジニア1名体制で、入社するまでこれほどスタートアップライクだとは想像していませんでした。そこで3年ほどエンジニア・プロダクトオーナーとして携わりながら経験を重ね、新たな英語学習サービスの立ち上げにスクラムマスター(開発ディレクター)として参画することになりました。
過去のエンジニア経験からの過信もあって、「なんでここにこんなに多くの開発時間がかかるのか?」「○○をあの配置にすればうまく回るのではないか?」など、周囲を見渡すことなく、先輩たちに違和感をストレートに投げかけては衝突を繰り返していました。
今でこそ、組織をリードする役割ですが、若手の頃は、正直チームプレーが得意とは言えない状態だったと思います。
― 組織長にもそんな過去があるものなんですね、意外です。
吉田:入社4年目には、高校生向けの進路情報メディア『スタディサプリ進路』のプロダクトマネージャー※を任されたのですが、それが転機です。
プロダクトがこれまでよりも桁違いの規模に大きくなったため、より多くの人を巻き込んで業務を遂行する必要がありました。その責任の重さから、「絶対に失敗は許されない」と、緊張感がありました。
※特定のプロダクトの企画や開発、マーケティング、販売や改善などを一貫して管理する役割
初めて担当する領域の事業ドメイン、知っている人が少ない組織という環境のなか、プロダクトマネージャーという新しい立場で参画したので、それまでの小規模なプロダクト開発体制で通用していた「自分が正しいと思う開発の視点」をぶつけるだけでは、物事を前に進められません。自分が持っているスキルや知見もうまく引き出せないような感覚でした。
自分の組織への向き合い方を変えていく必要があると身に染みて、次第に「ひとりだけでホームランを狙いにいくスタイルではなく、チームで得点するための最適解は何なのか?」を考えるようになりました。時には、他の人の知見を頼って助けてもらうなど、自分自身の立ち回り方も柔軟に変えながら「チーム全体で成果を出す」ことに視野が広がっていくのを感じました。
最初こそエンジニアチームと衝突することが多かったものの、その経験を通じて他者をリスペクトする大切さを学び、現在も組織マネジメントに活かしています。
新規のプロダクト開発で得た知見を、よりスケールの大きい開発に活かす
― これまで『スタディサプリ』で複数の新規プロダクトを開発した経験は、その後のキャリアにどうつながりましたか?
吉田:業界理解とアプリ設計の各論を理解してきたことが、より規模の大きいサービスの責任を担ううえで非常に役立っています。
その後は、学校向け進路選択サービス『スタディサプリ for SCHOOL』立ち上げのプロダクトマネージャーに任用されたのですが、リリースまでの猶予は半年間。多くのステークホルダーを巻き込んだ開発で、納期の短さも規模の大きさも、これまで経験したなかでも難易度の高いプロジェクトでした。
この規模のプロジェクトの場合、要件・価値定義を事前にしっかり決める「ウォーターフォール型」で進めるのが定石ですが、それでは納期に間に合わない。最低限の価値定義をして、開発を進めながら柔軟に対応していく「アジャイル型」の要素を取り入れて進めるしかない。
当時の開発ボード陣からは「できるはずがない」という反対の声もありましたが、開発のスピードとサービススケールの見立て、そして何より高校の生徒・先生への最適な提供価値などを考え抜いた末、「ウォーターフォール型」と「アジャイル型」を組み合わせた「ハイブリッド開発」を進めるべきと結論付けました。
― 「できるはずがない」という声もあったなか、どうして実行しようと思えたのですか?
吉田:これまで、それぞれの型で実践してきた経験から、程度を見極めれば「ハイブリッド型」の開発は可能だと思えたんです。
ちょっと専門的な話になりますが…具体的には、例えば資料請求機能や商品の掲載など、ビジネスの価値に絶対的に関わる機能は「ウォーターフォール型」で綿密な計画を立てた開発を行い、継続的な価値の磨き込みが求められるUI/UXについては「アジャイル型」の開発を行いました。確実にホームランを打たなければならない状況でしたが、リスクを取ってでもフルスイングでプロジェクトに取り組むことに決めました。
短期間でのプロダクト開発でしたが、「高校生にとって価値のあるプロダクトを届けたい」一心で進めました。限られた時間で数多くのプロトタイプを作り、高校の授業でβ版を使ってもらいながら、プロダクトのブラッシュアップを重ねた結果、無事にリリースまでこぎつけることができました。
取り組むテーマは「進路選択の支援」から「教育業界への貢献」へ
― これまではプロダクト開発の現場に向き合ってきたキャリアですが、現在のプロダクトの責任者に至るにあたって、ターニングポイントはありましたか?
吉田:自身の開発を通じて価値を生み出すなかで、より多くのユーザーに届けたいという志向がますます強くなったというところですが、2017年に『スタディサプリ』のなかでも特に規模が大きい『スタディサプリ進路』のプロダクトマネージャーに任命された時は、グッと視座が上がったターニングポイントでした。担当プロダクトを実現させることの意義が、単なるプロジェクトを超え、社会に対して影響を及ぼすという自覚が強まった経験です。
また、2023年には、『スタディサプリ』進路領域のプロダクトマネジメント全体を管轄するVice Presidentに任用されて責任範囲が広がったことで、それまで向き合ってきた「進路選択」というテーマのみならず、プロダクトとして「教育業界にどう貢献できるか」を考えるようになり、視座が引き上げられました。
― 結果的に一貫して『スタディサプリ』のグロースに携わってきていますが、吉田さんのモチベーションは何でしょうか?
吉田:入社して10年、さまざまな打席に立ち続けてきましたが、振り返ってみると「ユーザーが『WOW!』と思ってくれるようなサービスを生み出したい」という仕事の軸は、入社時からずっと変わりません。
今後もユーザーの人生を左右する一大イベントである「進路選択」というテーマに向き合いながら、ユーザーにとって思いもよらない機会を提供できるような、価値あるプロダクトを生み出し続けていきたいです。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 吉田麗央(よしだ・れお)
- 株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクトマネジメント統括室 販促領域プロダクトマネジメント室(まなび) まなび進学情報プロダクトマネジメントユニット Vice President
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大学卒業後、2014年に入社。『スタディサプリ』の英単語学習サービスをエンジニアひとり体制から立ち上げ。その後『スタディサプリ進路(アプリ)』のプロダクトマネージャーを経て、『スタディサプリ for SCHOOL』のプロダクトマネージャーとして、『進学事典』のデジタル化を担当。まなび領域のプロダクトディベロップメント・プロダクトデザイン・プロダクトマネジメントのマネジャー、2023年にまなび進学情報プロダクトマネジメント部の部長を経て、現職