データを活用したプロダクトは、どんな社会の“不”を解決できる? データ組織の責任者・大石壮吾に聞く

データを活用したプロダクトは、どんな社会の“不”を解決できる? データ組織の責任者・大石壮吾に聞く
文:高橋夏実(Spacy72)

リクルートは近年、ITを積極的に活用し、事業のデジタルトランスフォーメーションを推進しています。そのなかでデータ人材はプロダクトに対して具体的にどんな役割を果たし、ユーザーへの価値提供に貢献しているのでしょうか?
特に就職先としてさまざまな企業を検討している学生の皆さんから、そのような問いをよくいただきます。

そこで今回は、データ組織の責任者を務める大石壮吾に、新卒採用担当がインタビュー。テクノロジーとデータを活用したビジネスの創出を数多く担当する大石に、取り組んでいるテーマ、そしてプロダクト創りに欠かせないという「AI」との向き合い方などについて聞きました。

リクルートのデータ人材が取り組んでいること

― 大石さんは、2018年に各種プロダクトのデータマネジメントを担当する専門組織を立ち上げたと聞きました。具体的にどんなことに取り組んでいるのでしょうか?

大石壮吾(以下大石):一言で言うと、「データによるプロダクト価値の最大化」です。リクルートは多岐にわたるプロダクトを通じてユーザー・クライアントの方々から非常に多くのデータをお預かりしています。そのデータを分析・活用することで、プロダクトの提供価値をさらに磨き、利便性が高く、価値があると感じていただけるサービスを提供したいと考えているんです。

― ということは、身近なプロダクトでも、既にデータが活用されているんですね。

大石:はい。実は皆さんの身近にあるリクルートのプロダクトにも、データを活用した最新機能が随時搭載されているんですよ。※1

例えば、不動産・住宅に関する総合情報サイト『SUUMO』では、ユーザーが閲覧した物件情報のログをリアルタイムで分析しながら、検索結果で好みに合った順番に物件が表示されるようチューニングしています。ユーザーが物件情報を検索する際に、手動で絞り込んでいく手間を軽減できるので、より快適な住まい探しができるんです。

他にも、旅行情報サービス『じゃらん』では、 Azure OpenAI Service を活用したチャットサービス「AIチャットでご提案」を試験的に導入しています。従来の『じゃらん』はユーザーが、旅行先のエリアを決めた上で自身のニーズをもとに宿泊先の宿を検索・予約いただくことが多いですが、このチャットサービスでは旅行先のエリアが決まっていない段階から、エリアや宿泊先をチャット形式で相談・検索でき、レコメンドが受けられるんです。AIならではの提供価値は、用意された検索条件ではなく自分の言葉で相談し、チャットでのやり取りを通して提案してもらえること。今現在も、ユーザーデータの活用を通じ、提案の精度をさらに磨いていっています。

※1:プロダクト利用時にユーザーの方々から同意いただいたプライバシーポリシーの範囲内でデータ活用を行っています

旅行情報サービス『じゃらん』の「AIチャットでご提案」サービス
旅行情報サービス『じゃらん』の「AIチャットでご提案」サービス

― 実は知らないうちに、便利な機能が増えているんですね…!

大石:私たちが提供するプロダクトは、テクノロジー活用のレベルによって提供価値が大きく変わります。ですから、リクルートにとって、日々劇的に進化するテクノロジーを取り入れながら、より便利で、安心して使っていただけるプロダクトを生み出し続けられるかどうか、は生命線。データ組織は、その最前線を担っていると考えています。

リクルートのオフィスで人事(右)のインタビューに答える大石壮吾(左)
リクルートのオフィスで人事(右)のインタビューに答える大石壮吾(左)

― いろいろな領域があるリクルートだからこそ、データ人材が見出せる価値はあると思いますか?

大石:さまざまなサービス領域での大量の予約データから、ユーザーの志向の傾向を分析し、利便性の高い価値を提供できることは、多岐にわたるプロダクトを有するリクルートならではの価値だと思っています。例えば旅行情報サービス『じゃらん』で旅行の宿を予約いただいた方に対し、旅行先のエリアで『ホットペッパーグルメ』経由で飲食店を予約いただいた場合、支払いに使えるポイントを付与することができる、などの価値提供があります。

データ活用を通じて、社会の“不”を解決する

― ちょっと身近に感じられてきました。ですが、「データ活用」と言っても、さまざまなやり方があるようで、何だか漠然としたイメージです。リクルートは「社会の課題を解決する」プロダクト創りを志向していますが、データ活用を通じて実現した事例があれば、教えてください。

大石:2022年12月にリリースしたばかりの職務経歴書作成機能『レジュメ』はそのひとつです。リクルートが運営する求職活動支援サービス『リクナビNEXT』『タウンワーク』などで共通して使用できるもので、スマートフォンなどのデバイス上で、経験職種に応じた質問ごとに、あてはまるキーワードを選択して答えるだけで、職務経歴書を5分程度で作成できるものです。

データ活用の観点としては、これまでリクルートに蓄積された豊富な求人データや、求職者や企業の採用支援を行うなかで培った知見をもとに、より実際の求人に即した職種・経験を職務経歴書としてアウトプットできるような質問を設計しています。

職務経歴書機能『レジュメ』。質問に答えるだけで、約5分で職務履歴書が作成できる
職務経歴書機能『レジュメ』。質問に答えるだけで、約5分で職務履歴書が作成できる

― これは求職者のどんな課題を解決しているんですか?

大石:リクルートの調査※2では、転職活動を経験した方のうち、3人に1人が「転職活動をする時間がない」という理由で、結果的に転職しなかったことが分かっています。実際に「仕事と並行して、自分のこれまでの経験やスキルを洗い出し、履歴書や職務経歴書に書くことが難しい」といった声も多く寄せられていました。こうした負荷を軽減できるといいなと思っています。

※2:「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」第2弾 転職と勤務先の合致度・満足度について(2022年10月)

― 何だか分かります。学生時代、学業や課外活動などと並行して、就職活動をするのは大変でした…。

大石:就職・転職活動は、人によっては人生の転機となるような、そして何度かは訪れる大事なイベントにもかかわらず、取り組む際の負荷が高いことが永遠の課題です。

転職活動に活用いただける実績が増えていて、「『レジュメ』を通じてこれまでの半分以下の時間で職務経歴書を作成できるようになった」、「転職活動の準備が手軽にできた」と好評をいただいています。それらの声は、プロダクトを開発する私たちもとても励みになっています。

― 各求職活動支援サービスと連携しているということは、『レジュメ』の情報をもとに、それらのサービスのなかから仕事探しができる、ということでしょうか?

大石:はい、リクルートの求職活動支援サービス共通で使うことができるため、ユーザーが各サービスに登録し直さずとも、各サービスの掲載情報にアクセスいただくことができます。

そのなかで、『レジュメ』の情報をもとに、一人ひとりに合った仕事がおすすめされることで、求職者の方が自分に合った就労機会を得られることに貢献できていたら嬉しいです。

リクルートのオフィスで人事(左)のインタビューに答える大石壮吾(右)

大石さんがリクルートで働く理由

― 大石さんは2001年にリクルートにキャリア採用で入社以来、一貫してプロダクト開発に取り組んでいます。そのやりがいは何でしょうか?

大石:やっぱり、家族や友人が、そのサービスを使って喜んでいたり、便利だと言っている姿を見ると嬉しいですし、もっと頑張りたいなと思いますね。私の妻はITと縁遠いタイプの人間ですが、最近も旅行先を選ぶのに自然とスマホで国内・海外旅行予約サービス『じゃらん』のアプリを開いていました。そのくらい違和感なく、日常のなかでユーザーの方のお役に立てるのがいいなと思っています。

― 最近は、人の仕事・生活を支えるテクノロジーとして、AIに注目が集まっています。データを活用したプロダクト開発において切り離せないものだと思いますが、今後も進化していくであろうAIと、どのように向き合っていきたいとお考えですか?

大石:AIはとても可能性があるものですが、具体的な挙動に関してはまだまだ課題も多いので、非常に慎重に扱っていく必要があります。AIガバナンスにもしっかりと取り組みつつ、リクルートのさまざまなプロダクト領域で活用が進めば、ユーザーの方々にとってより便利なプロダクト体験を提供できることは間違いないので、その一端を担っていきたいですね。

現代におけるAIと人間の関係性は、AIが人間をサポートしてくれるといったもの。AIが完全に人間の代わりになる未来は少し時間がかかるし、共存するという世界が正しいかもしれない。だからこそ、私たちがAIを活用したサービス開発を行うためには、 AI技術を深くまで理解しながら、かつ人間のニーズや倫理性に対して熟慮・検討し、時代に合ったサービスを創っていくことが大切なのではないか、と考えています。

― ありがとうございます。それでは最後に、就職活動中の学生の方を意識した質問です。もし大石さんさんがもう一度新卒に戻って、今のリクルートに入社するとしたら何をしたいですか?

大石:まさに、今この時代だからこそ入社したいですね。私が入社した頃はここまでデータ活用が進化しておらず苦労したので…(笑)。

あとはアイデアを考えることが好きなので、データ活用によって、新しいアイデアをものづくりに反映していくことにチャレンジしたいです。専門性を活かすことで、プロダクトが成長し、ユーザーの方々、ひいては社会に貢献できる。また、同時にそれらを通じて自己成長につながっていることを実感できる組織なので、専門性が高い仲間たちと切磋琢磨して、スキルを上げていきたいなと思います。

登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

大石壮吾(おおいし・そうご)
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 データ推進室 Vice President

2001年、リクルートにエンジニアとしてキャリア入社。『ホットペッパー』創刊や『じゃらん』システムの開発など、事業のエンジニアとして約15年間携わった後、現在に至るまでIT組織のマネジメントを担当。データエンジニアの専門性を活かす組織体制の強化などを行っている。普段は東京から150km離れた自然豊かな地でリモートワークしている。趣味はBBQ、DIY(何かを自分で作ったり修繕したりすること)

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