テクノロジーが進化する時代における、リクルートのキャリアアドバイザーの提供価値とは?
『リクルートエージェント』などのサービスを提供するリクルートのHRエージェント領域は、2023年に「一人ひとりの可能性に寄り添い、選択を支える」という新たなミッションを掲げました。では「一人ひとりの可能性に寄り添う」とはどのようなことなのか。また、テクノロジーが進化するなかで、リクルートのキャリアアドバイザーはどのような形で求職者の皆さまに貢献できるのか。カスタマーサービス統括部 統括部長の熊本優子に聞きました。
「働く」に関する悩みは、転職だけでは解決できない?
― リクルートは1977年から、キャリアアドバイザーが転職を検討する方に伴走するサービスを展開していますよね。今回、このタイミングでミッションをリニューアルされたのはなぜでしょうか。
熊本:『リクルートエージェント』に登録してくださる方は年間143万人ほどいるのですが、実際に転職に至る方は8万人ほど。
働き方が多様化するにつれて、働くことに関する悩みも、それに対する解決方法も多様化するなかで、私たちがどのように変わればお力になれるかを再検討したい、と常に考えていたんです。
思考して見えてきたのは、働くことに関する悩みは「転職」だけでは解決できないということ。キャリアへの漠然とした不安、ライフステージの変化。今までの私たちのサービスでは、そういった悩みを抱える方々にも転職先のご提案が中心になってしまい、どうしてもハードルの高さであったり、「今すぐ転職したいわけではないしな…」というモヤモヤを抱かせてしまっていました。
― 従来のサービスでは満たしきれていないニーズがあったのですね。
熊本:現在の日本では、生産年齢人口が減少しています。このまま何も手を打たないと、労働生産性の向上や企業の成長が困難になり、「採用したいのに採用できない企業」「働きたいのに働けない人」など「働く」に関するミスマッチが拡大してしまうかもしれない。この事態を防ぐために、まず一人ひとりが自分に合ったキャリアを主体的に考え、選択していくことが浸透していくといいですよね。そこで私たちは「一人ひとりの可能性に寄り添い、選択を支える」というミッションを新たに定めました。
― ミッションを定めたことで、どのような変化を期待していますか?
熊本:これまでキャリアアドバイザーは今すぐに転職したい方の活動を支援することがミッションとなっており、面談のなかで「今すぐ転職ではないが将来のキャリアについて考えたい、転職以外の選択肢も含めてプロに相談したい」といった期待が明らかになっても、サービスで応えきれず悔しい思いをしてきました。今回、ミッションのなかで「転職支援」だけではなく「キャリア支援」を行うスタンスを明確にし、求職者の皆さまの多様なニーズに応えたいという想いを形にしました。新たなミッション策定を通じて、キャリアアドバイザーをはじめ事業に関わる私たちの行動や意思決定に、今後少なからず影響を与えてくれるものと期待しています。
人とテクノロジー、それぞれの強みを活かして求職者を支える
― 現在はAI活用など、テクノロジーの進化も進んでいますよね。
熊本:そうですね。『リクルートエージェント』では、求職者に対し、求人情報をおすすめ(レコメンド)するなどの転職活動支援を行っていますが、数年前からレコメンドにAIも活用しています。その結果、AIがおすすめした求人に応募し、実際にその企業に転職したという方も増えているんです。希望にマッチした選択肢を素早く幅広く提案するのは、膨大なデータを参照して瞬時にアウトプットできるAIが得意だったりします。
― では、AIではなくキャリアアドバイザーが提供できる価値とは何でしょうか。
熊本:実は、「自分自身の強みや持ち味とは何だろう?」と悩む方が増えています。その悩みに対して対話を通じて一緒に考えるお手伝いをすることは、人が得意とする領域だと思うんです。私たちは「キャリア支援」を提供するノウハウはまだまだ蓄積中の段階ですが、キャリアアドバイザーが培ってきた「内省支援」は人間だからこそできるものだと考えています。例えばキャリアを考える過程でぶつかる「働いていく上で何を大切にしたいのか」「仕事に求めることは何なのか」「自分らしく働くには何が大事か」といった想いを丁寧に振り返りながら、対話を通じて気づきを得ていただくことで、求職者一人ひとりの力が活かされ活躍につながるような、納得できる選択を支援していきたいと考えているんです。
― 人とテクノロジー、それぞれの強みを活かしているんですね。
熊本:はい、今までは「転職」に絞らず多彩なバリエーションのサービスを提供したくても、キャリアアドバイザーの人数にも限りがあり、踏み切れずにいました。しかし、AIが求職者の皆さまをサポートしてくれることにより、そのぶん「人だからこそ提供できる価値」にじっくり向き合える体制の検討も着々と進んでいます。こうした背景もあり、内省支援を通じて、求職者一人ひとりへの「キャリア支援」をより強化できるのではないか、と考えています。
― むしろテクノロジーと人の両輪があることで求職者に貢献できるんですね。
「リクルートのキャリアアドバイザーだから提供できる価値」とは
― ここまで「人だからこそ提供できる価値」の話をしてきましたが、「リクルートのキャリアアドバイザーだからこそ提供できる価値」はあるのでしょうか。
熊本:これはリクルートが大事にしているバリューズ「Bet on Passion(個の尊重)」にひもづいています。経営陣だけでなく従業員一人ひとりが「個の尊重」という価値観を実践・体現し、全ての求職者の個性や情熱といった「らしさ」を尊重し、その人が持つ可能性に寄り添い続けることを大切にしています。相談に来てくださる方の迷いや不安を受容することで、本音の対話を通じた信頼関係を構築する。そんなキャリアアドバイザーとの対話を通じて、求職者の皆さまがご自身のことをより深く知ることができたり、より広い選択肢を見つけ、キャリア観の広がりを実感できたり。そんなご支援ができるように寄り添いたいと思っています。その結果として相談にいらした皆さんに、「この選択をしてよかった」と感じていただけるように、これからも進化していきたいですね。
― ミッション変更後に届いている求職者の声などはあるのでしょうか。
熊本:例えば、育児のために土日休み・リモートワーク・時短勤務という条件でリクルートエージェントに登録した方は、キャリアアドバイザーとの対話のなかで、自分に学童や病児保育などの知識が不足していることに気が付いたとのこと。制度を調べた結果、最初の希望条件に縛られず本当に何を優先して転職するかを決めようと意思決定できたと仰っていました。
また、「なんとなく職場に不満があるものの、何をすれば良いか分からない」という悩みを抱えていた方は、対話の結果「転職ではなく副業に挑戦して別の環境も見てみたい」という考えに至り、新たなキャリアの選択肢を見つけたそうです。
今までは支援できていなかった、多くの求職者の皆さま。そうした方々のお力となり、イキイキと働く人を増やしたい。従業員全員の力を結集して事業をアップデートし、一人ひとりの迷い・不安・希望を捉えて、沢山の「まだ、ここにない、出会い。」を生みだしていきたいですね。それが結果的に、日本の未来の元気につながると思っています!
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 熊本優子(くまもと・ゆうこ)
- 株式会社リクルート HRエージェントDivision カスタマーサービス統括部 統括部長
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大学卒業後、メーカーに入社し法人営業を経てリクルートへ入社。人材紹介事業の法人営業やキャリアアドバイザー、組織マネジメントを担当したのち、2023年より『リクルートエージェント』のキャリアアドバイザー組織を統括している
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